【大峰奥駈】大普賢岳に逝く!
- GPS
- 09:29
- 距離
- 10.4km
- 登り
- 1,345m
- 下り
- 1,343m
コースタイム
7:35 和佐又山のコル
8:20 笙ノ窟
8:50 石ノ鼻
9:40 奥駈合流
9:50 大普賢岳山頂〜休憩
10:30水太覗
11:43七ツ池
12:00七曜岳〜休憩
12:30無双堂分岐
13:50無双堂〜大休憩
16:30和佐又山のコル
16:45和佐又山ヒュッテ
天候 | 晴れ時々曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2011年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
和佐又山ヒュッテに続く林道は倒木が多い(この日も朝から一部倒木が道を塞いでいた) 駐車スペースは和佐又山ヒュッテの前の広場で、結構広い。駐車料金1000円とられますが・・ |
コース状況/ 危険箇所等 |
登山ポストあり。 全般に道が険しい。大普賢岳までは鉄梯子や鎖など整備されているものの、そこから先は結構険しい。国見岳南側の薩摩転びは冷静に通過したほうがいいと思う。七曜岳から無双堂への下りは噂通り厳しい。しかも粘土質の地盤は滑りやすいので要注意。 道迷いしないようにテープでマーキングされているが、マーキングのピッチが長く、見落とさないように。 この日は和佐又〜大普賢の間で、小普賢岳のあたりで道迷いされた老夫婦がおられた。 和佐又山ヒュッテ周辺ではキャンプサイトがありテント泊も可能だが、山頂で会った学生風の若いお兄さんによると、野犬が多いのか夜は犬の鳴き声が聞こえて怖くて寝れなかったとのこと。また、前日に和佐又山を往復したときにも野犬らしき犬の唸り声が茂みから聞こえたとのこと。 事実は定かではないが、一応念のため。 |
写真
感想
早朝4時に発って、6時半過ぎに和佐又山ヒュッテに到着。
途中、R169で迂回路に回されたり、和佐又山に登る車道が倒木で塞がれていたりと出だしからいろいろありながらも準備をして7時半頃から出発。朝日が綺麗。雲が山の間から湧き上がっていくのも見えて、前回の稲村の時とは大きく違う天気。空気もピリッと冷えていて気も引き締まります。
数年前にも和佐又山ヒュッテのバンガローに宿泊に来たことがあったが、その頃に比べるとトイレが綺麗になって、当時全く入らなかった携帯電話の電波がしっかりと入るようになっていてびっくり。
登山口からしばらくは、緩やかな登り。ススキが朝日に照らされて逆光で輝いています。途中、キャンプ場を横切って石のゴロゴロとした広い道を抜け、記念碑のようなところを抜けるとようやく山道らしくなってくる。ここまででも、ずっとブナの大木があちこちにあってとても気持ちのいい樹林帯。
和佐又のコルから、無双堂への分岐を大普賢岳方向に尾根伝いにさらにブナの樹林帯をいきます。ここまで来ると遠くに弥山や手前に行者還岳のピークがみえて奥駈の縦走路の峰が見え隠れします。
やがて道は岩壁の左側を巻くように取り付いて、指弾ノ窟や朝日窟、笙ノ窟を経由して、少し急な鎖場と斜面を一登りすると日本岳のコル。この辺りからは小普賢岳の北側を巻くように道が取り付き、雰囲気もだんだん険しくなって、鉄の梯子や階段があちこちに出てくるようになります。
突然岩の上の方から人の声が聞こえてくるなぁと思っていると、そこは石ノ鼻と呼ばれる岩の突端の展望所でした。ここからは水太谷や日本岳越しに展望を得ることができます。ここまで来ると大普賢岳が壁のようにそそり立ち、「まだ、こんなに標高差があるんだな」と、その高さを痛感させられます。それに、どこから取り付いて登っていくのかわからないくらい急に見えます。
また、しかもここから小普賢岳と大普賢岳のコルまで再び数十メートル降りなければなりません。このあたりに遭難の碑があると後から知りますが、全く気づきませんでした。
ただ、コルの周辺は少し広さがあってテントでも張れそうなどと思いながら通過しました(本当に張ってはいけないと思います)。
大普賢岳の上りにつくと、再び鉄梯子や鎖が続き、どんどん上へと登って行きます。それにしても、これらの鉄梯子や階段がなければこの山どうやって登ったのでしょうね?それこそまさに修行だったでしょう。
さて、どんどん上り詰めていくと、今度は笹に埋め尽くされたブナの樹林の上りになり、斜面を巻くように行くと、大峰奥駈の縦走路との出合に着きます。右に行けば山上ヶ岳、左に鋭角に曲がると、大普賢岳山頂です。
縦走路まで来ると、西の谷側から強い風が吹きつけて、時折谷から雲が湧きあがってきて寒い!更に、この山脈から東は曇り、西は腫れているようで、ちょうど大台ケ原の方は晴れていて明るいのに対し、稲村ヶ岳は山頂はすっぽりと雲に覆われています。ちょっと残念。
でも、ここからはほんの少しで大普賢山頂に着きます。
狭い山頂。日頃から強風に煽られているのか、木々も背丈が低くねじれているかのよう。
ここで、思案のしどころです。
ここから先に進むのか、来た道を戻るのか。
同じ頃に山頂についた学生風のおにいちゃんは、テン泊であまりぐっすり寝れなかったので、ピストンにしときますとのこと。
後から来たカップルも、ひとまず今日はこのまま引き返すと。
内心ちょっと不安になりながらも、行動食を食べて結局先に進んで見ることにしました。
山頂からは、低い潅木帯の急下りです。下りきると、草地のなだらかで展望の良いところに着きます。「水太覗」です。
展望がすばらしい。すぐそこは断崖絶壁です。ここからはしばらく、尾根を巻いてなだらかなスロープを歩くことになります。
こんな調子なら、全然いけるかも、と余裕をかましながら歩くのもつかのま、徐々に大普賢岳のキツさが見え隠れします。
ところどころにある急下りや、急な上り。
特に、薩摩転びは本当にきつい難所です。鎖場から始まり樹の根っこを掴みながら岩壁をトラバースしたり、岩場を転げ落ちるように降りて行ったり、まさに薩摩転びの名前にふさわしい下り。
下った所に「稚児の泊」と呼ばれる静かな平らな広場で少し休憩して、先をいそぎます。なんだかんだ言って、徐々に脚にくる山です。時間も遅れ気味。
そこへ忽然と、聖域のような場所に出てきます。
まるで、もののけ姫のシシ神の森のように苔むした林地。ブナの大木にも苔が生えて、本当にここが標高1600mの尾根の上か?と戸惑うくらいの神聖な雰囲気の漂う場所。しばらくその景色に見とれましたが、もう少し先を急ぎます。
やがて尾根の上に小さな窪地がいくつも現れます。
「七ツ池」
と呼ばれるところのようです。
特に大きな窪地は「鬼の釜」と呼ばれるようですが、池の名前に反して、水のある気配はありません。
更に進んで、大きな岩の鎖場をかなり苦労しながら乗り越えると、斜面にかけられた木の橋が見えてきました。ここからは、稲村ヶ岳方面がよく見えます。
いつの間にか、稲村ヶ岳にかかっていた雲も取れてよく見えるようになっていました。特にバリゴヤの頭の荒々しい斜面が印象的です。
そこを超えるとすぐ、七曜岳の山頂です。
これまた狭い山頂に、高齢のパーティーが出発の準備をしているところです。
10人もいたら窮屈な感じのする山頂、パーティーが出発して静かになった所で、パイナップルの缶詰を開けて食べます。
疲れた体にパイナップルは効きます。ちょっと、体は冷えますが・・
そうこうしていると、今度は下から小柄なおじいさんがストック一本で上がって来られました。
水太林道から無双洞を経て登ってきたのだが、あまりに登りがきつくて荷物を途中で置いてここまで登ってきたとのこと。このおじいさんとは、また後で合うことになります。
おじいさんに挨拶して、七曜岳を後にします。
もう結構、脚がガクガクですぐ直下の斜面も滑って転ぶかと思うほど。
この先、激下りが待っているのは知っていましたが、予想をはるかに超える下りであることは露にもしらず、とにかく冷静にゆっくり行こう、などと考えながら奥駈道をゆきます。
何度か道標をやり過ごし、弥山方面と、無双洞・和佐又方面の分岐に来て、ここで奥駈道とはお別れになります。この分岐から行者還岳まで1時間半と道標にありましたが、時間的にも体力的にもそんな余裕はありません。
分岐からしばらくは歩きやすい斜面でしたが、いつしか道は複雑に絡まった根が露出した急斜面を下っていきます。厳しい下り。すでに弱っている脚に、この斜面は本当に堪える。それに露出した根っこ、これがまたヤバイ・・(笑)このあたりから迷いやすいらしいので、樹に付けられたテープを目印に慎重に進みます。
一旦、道はなだらかで広い尾根道になって、落ち葉を踏みしめながら歩きます。
すると、先の樹になにやらレジャーシートがかかったままになっています。近づいてよく見ると、シートの下にザックが。どうやらさっきのおじいさんのザックのようです。
ここまでは、登ってきたんだ、と感心しながら先を行くと、再び急斜面をジグザグに行く激下りが始まります。
この行はもっと最悪。道が不鮮明だし、目印の間隔も粗い。なによりもっと悪いのは、落ち葉の下は粘土質の地質っぽくてよく滑る!!
そして、このあたりからは谷底の沢の音が聞こえてきて、降り着く先が近づいているのはわかるのですが、歩けど歩けどいっこうに近づく感じがしない。
まっすぐ折りたくても、あまりの急勾配(本当に45度くらいありあそう)でこの滑りやすさなので無理。ジグザグに下って行きますが、時々踏み跡を見失うくらいわかりにくい道。ほんと、体力的にも心理的にも、もうフラフラです。
ジグザグながらもまっすぐ谷底に行くのかと思いきや、道は一旦右の植林の方に逃げ、急斜面をかわして岩の上で一旦また左へと回りこむ。一体どこが無双洞なんだ、と思いながら下るとようやく沢に近づき無双洞へ到着。この到着の直前も、砂のようなザレた道で滑り落ちそうになるトラップがありましたが・・
このあたりは、まだ紅葉も残っていて、水量も豊富。無双洞からもとめどなく水がわき溢れて、素敵なところです。
ヘトヘトになりながらも、ここで食事を。
いろんなメニューを考えていましたが、もう疲労も相当なもんだったので、簡単な雑炊を食するので精一杯。無双洞の水を汲むことすら頭にはもうありませんでした。
(この先、水簾の滝から水太林道へ降りてエスケープしようか?)
(あ、そうだ。さっきのおじいさんに車で和佐又山ヒュッテまで送ってもらえ)
などと悪魔がささやきます。
そんなことを考えて休憩していると、先ほどのおじいさんが。
それから程なく、中年の男性と、その息子と思われる中学生か高校生位の男の子が降りてきました。
おじいさんが、挨拶して先に川をわたって下り始めました。その後に親子が。
悪魔のささやきを振り払って、私もそそくさと用意して下り始めます。
・・いや、下らなかった!
沢をまたぎしばらく斜面を巻いていくと、石灰岩質の白い岩がゴロゴロした涸れた沢を歩きます。
ここから、再び今度は急登がはじまります。
極めつけは、ほとんど垂直に近い岩壁上り。
要所要所に、鎖やアングルが設置されているので岩にマーキングされた矢印を頼りに、冷静にゆっくり登れば大丈夫ですが、高所恐怖症にはたまらない所でしょう。
登りきって、大きな岩壁を右に巻いていくと、今度は
「この先滑落注意」の標識が。
(こんどはどんな難所が現れるんだ!)
と思いきや、何の変哲もない斜面を横切っていく道。
ここまでも、もっと滑落しそうなところはあっただけに、こんな所で誰が落ちるのだろうと思ってしまう所ですが、もうここまでで脚がガタガタになっていると、たしかにふらついて谷の方に落ちてもおかしくないかもしれない・・・などと考えながら無事通過(実際ここでは、滑落事故が多発しているみたいです)。
やがて道は、緩やかな傾斜の道になります。暫く行くと、先ほどの親子が。ちょうど休憩を終えて出発する所みたい。でも、そのお父さんと少し話することが出来ました。お父さんが言うには、
「大普賢は大峯の面白い所が凝縮したところ」
だそうです。まさに同感。山歩きの醍醐味をいろんな形で見せてくれる山です。
ブナの原生林、笹原の気持ちのよい尾根歩き。鎖場の急下り、急登り。神が宿るかのような神聖な広場、美しい沢。
なるほどなぁ。と思いながら父子を見送って私もしばし原生林の下で休憩。
静かな森の中でただ一人、風の音と森のざわめきしか聞こえない大自然の中の小さな自分を思うと、なぜかとても強く心の中から「生きてる」という言葉がわきあがってくるのを感じました。
そして、もう今年はこの山に来るのもできないかもしれないと思うと、少し寂しくなりました。
ここから、後ひと踏ん張りで和佐又山です。立派なブナの大木をいくつも見ながら最後の余韻に浸って歩く。いい感じです。和佐又山のコルから後は下るだけです。
和佐又山ヒュッテに降りると、もう登山者はみんな降りた後のよう。足の遅い私はいつもこんな感じ。下りると、もう誰もいない。
でも、いいんですよ。山を独り占めしてる感じがして^^
それでもやはり、次回はもう少し早く歩きたいな。何度も来たい山だと思いました。
はじめまして。
すごくいいレポありがとうございます。
読んでいて情景がうかんできます。
まるで”沢木耕太郎”のようでした 。
神秘的な山みたいですね。是非私も行ってみたくなりました。
レポ楽しみにしていますね 。
駄文ですみません(^_^;)
ちょっと長すぎたと後悔していたので、読んでいただけて嬉しいです。沢木耕太郎さんがどんな方かは知りませんが、ありがとうございます。
また、時々駄文を上げると思うので、その時はまたお付き合いください^^
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