西穂高岳-奥穂高岳縦走


- GPS
- 18:59
- 距離
- 16.2km
- 登り
- 1,743m
- 下り
- 2,783m
過去天気図(気象庁) | 2012年09月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
写真
感想
西穂高-奥穂高縦走、憧れのジャンダルム登頂。
学生時代に山経験豊かな先輩に初めて南アルプスに連れて行ってもらって以降、山歩きが趣味の一つとなった。途中長年のブランクを経て、6年前、再度山歩きの趣味を復活させた。
「超図説 あこがれの名山ルート&難所ガイド 」まだ初心者と言える頃、この本を読み、今後の山行に思いをはせた。
より難しいルート選び。危険を冒すことなく毎年自分の山の実力が上がるよう、綿密に計画をし、経験を重ねていった。
山に関する情報量が増えてくる頃、徐々に意識をしだすのが、西穂高-奥穂高縦走とジャンダルム登頂。国内一般ルートでは最難関と誉れ高いこのルートをいつかは制覇したい。そう思い始める。
今回、メンバーにも恵まれ、5人での縦走は実現した。
しかし、もしソロで、という条件が付けば、多分今年もパスしていたに違いない。
ルートの「難易度」における様々な意見が私を悩まし、「今の自分の実力で大丈夫なのか?無事に戻ってこれるのか?」多くの悩ましい部分が解消できなかったからだ。
ある人によれば「全行程、全く息つく暇もない」という表現だったり、またある人は「言われているほど難しくは無い」だったりと。
「国内最難関の一般ルート」を実際に歩いてみて、自分なりに感じたことを、ここに記録しておきたいと思う。
【どんなルートか?】
・一日の工程が長く長大なルートである(標準コースタイム10時間)
・工程中に山小屋がなく、水の補給や雷などから避難する場所がない
・もろいガレ場・ザレ場が多く、小規模な落石が多い
・鎖、ハシゴは最小限しか設置されていない(登攀要素が強いルート)
・ルート上で渋滞が発生することがある(タイムロスの原因)
【縦走を成功させる条件】
1)天候が良いこと
-当日は風も穏やかで、ルートが雨で濡れることはなかった
-もし当日、風・雨・雷等が発生していれば困難度は格段に上がっていた
2)体力があること
-通常の10時間コースと異なり、体力を浪費させる要素が隠れている
・途中で水を調達できないため、10時間歩行分の水分・食料を予め担ぐ必要がある
・腕を使って岩登りをする場面も多く、不慣れな人は上半身にも疲労を蓄積してしまう
・避難小屋が無いため、ツエルトや防寒着、非常用の水等ビバークを想定した用具の持参が望ましい
-普段から歩行が早い、あまり水分を必要としない(汗をかかない)、腕を使った岩登りに慣れてる人はなじみやすいが、そうでない人は一般的な10時間コースに比べ、いっそうの苦労がを要すると思われる
3)早寝早起き早立ち
-途中に渋滞箇所もあり、思うようにスピードを上げられない場面もある
4)勇気・思い切り
-天候や体調等のコンディションが悪ければ、日程や目的地を柔軟に変えたり、途中で引き戻したりする思い切りが必要
【当日の出来事】
・15日は西穂山荘でテント泊の予定だったが、サイトが満員でやむなく山荘泊となった。布団1枚に2.5人と、睡眠環境は悪かった。
・16日は2:50起床、朝食を自炊し4:00西穂山荘を出発。西穂独標までの間は50名や30名といった団体ツアー客が隊列をなし、思うように前に進めなかった
・西穂独標を越えると客数は半減、西穂山頂で更に半減。それでもハシゴや鎖の手前では数人から10人程の渋滞も発生。
・奥穂側からの下山者と細い稜線ですれ違うようになると、都度待ち時間が発生
・今回のような秋晴れの3連休ともなると、コースタイムは思うように伸ばせない
(標準コースタイムにはこれら待ち時間もある程度加味されている模様)
・西穂を過ぎた辺りの小高いピークで、別のパーティーが大規模な落石を引き起こした。ルートを外してガレ場を歩き始めた途端、ピークの一部がごっそり谷底へ崩落。余りの恐怖に呆然。けが人は出なかったものの、飛騨側の谷底に転がり続ける落石の轟音と土煙は数分間消えることは無く、正面の壁に取り付く登山者もしばらく岩に張り付き固まっていた。
・西穂→奥穂コースでは難易度が徐々に高まる。いきなり勇気を振り絞る、といった場面は無く、徐々に難しくなっていくのがありがたかった
・ジャンダルムは付け根に荷物をデポし、西穂側からピストン。西穂山頂以降、徐々に難しくなる難所+α程度の難しさであり、想定していたよりも容易に登れた
・ただ、ジャンダルムから降りたあと、信州側から巻く時の第一歩は少しストレスを感じた(少し怖かった)
・馬ノ背からが最難関。縦への登りの後、不安定なナイフリッジ通過。この日初めて恐怖感がよぎった。(でも嫌いではない(笑))無風であったため、そつなく通過。もし不安定な横風や降雨があればかなりの困難を強いられたに違いない。
・馬ノ背を越えればすぐ奥穂高岳山頂。ここまでくれば一安心。
・山中の登山者の半数近くはヘルメット着用。アンザイレンはツアーガイド同行者程度で、この日は数組程度だった。
【ルートを振り返ると】
・数々の核心部分を越えれば、一息つける場所は数限りなくある。ただ、それなりの傾斜がついた場所であったり、浮石があったりと、若干の安定感は欠ける。
・岳沢へのエスケープルート分岐点やジャンダルム手前にはビバークポイントもあり、テントを張ったような形跡もあるほど。
・縦走中、雷が近づいたら、と想像してみたが、恐怖を和らげるような安全を確保できる退避場所は、見つけられなかった。
・ルートは、稜線をほぼ忠実に登り下りする。巻き道は少なく、都度ピークを登っては下りる。腕を使う場面が多く、ストックは西穂独標以降使うことは無かった。
・小さな落石が多い。先行者や奥穂側からの登山者が上にいれば、小石がパラパラと落ちてくる。また自分が登っている最中も数々の小石を落としてしまう。
そのため後続者に一定の距離を空けてもらう必要があった。(タイムロスの原因)
・「ラークッ」と、落石を知らせる大声は至る所で発生。大小含めれば当日十回以上は聞こえた
・翌日は白出沢経由で新穂高に下山。前日の睡眠不足、疲労、筋肉痛も残り、普通の登山に比べれば結構しんどい下りであった。
・山行を終えた時の充実感はこれまでに無いほど。最高の充実感・達成感を味わえた。
【まとめ】
・山の総合力が高い人であれば、それほど難なく通過できるが、総合力に偏りがあれば、長時間のハードな山行で、その弱点が増幅、あぶり出される。
・「総合力判定テスト」的な、これまでの集大成、力試しに向く
・天候に恵まれ、それなりの体力があれば、結果的に通過できる。しかし、ミスを犯せば自分に危険を及ぼすだけでなく、他人に多大な迷惑を掛ける可能性が大きいため、最低限の経験は積み、実力を伴った上で挑みたい。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する