雪の立山(過去レコです)。
- GPS
- 32:00
- 距離
- 5.8km
- 登り
- 621m
- 下り
- 617m
天候 | 曇り。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2008年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
トロリーバス、ケーブルカー、ロープウェイ、もう一度トロリーバスを乗り継いで室堂へ。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
危険です。 |
写真
感想
2008年5月、GWを避けて次の週末、5月9日に立山に登る事にした。連休中は晴れの日が続いていいたが、この週末は前線が北上して天気予報は雲と雨のマークがついている。中央道、長野道を経由して扇沢に向かう。扇沢駅の無料駐車場に車をとめ、身支度を整える。
駅は中国語を話す団体さんで混雑している。何もそんなに大きな声で話さなくても良いのに、日本語が聞こえるとほっとする。こんなにも大勢の人が乗れるのだろうかと心配するが、トロリーバスは5台同時に発車するので、余裕を持って坐る事ができる。後立山連峰、針の木の下を貫通するトンネル、バス1台がようよう通れるほどの幅、真ん中で行き違い出来るようになっている。16分で黒部ダムに到着。クロヨンダムを歩いて渡る。谷には雪が残っており、ダム湖の水量は少なく、雪融けには程遠いことが窺がわれる。黒部湖からケーブルカーで5分、黒部平駅に着き、さらにロープウェイで5分、大観望駅に到着。その頃には中国語を話す人の姿も少なくなり、室堂までのトロリーバスは空席が目立つ。室堂ターミナルのレストランで昼食を食べ、生ビールを1杯空ける。
ターミナルを出ると一面白一色。階段3段を下りるだけで延命水のある広場に出るが、肝心の延命水も、[立山]と書かれた大石も、5mはあろうかと思われる雪の下に埋もれ、ただ雪原が広がるばかり。中国語を話す観光客で大賑わいの中、アイゼンをつけストックを持ち、いざ出発。今日は時折日差しも射す天気で、昨日降り積もった雪は緩み、アイゼンは不要と思われるが念のため着けておく。雄山と浄土山の鞍部、一の越に向かって緩やかな登りが続き、何処からでも登ることが出来そうだ。本日の宿泊地、目指す一の越山荘は手に取るように見える。トレースを辿って真っ白な雪原を歩いて行くと、左手に立山室堂山荘が見え、ちょっとトイレを借りる。ここにはもう観光客の姿は無く、静かな山の世界、山スキーを履いたり、ボードを担いだり、浄土山に登る人の姿が見える。わたしは浄土山の斜面につけられたトレイルをトラバースし、一の越に向かう。緩やかな勾配が続き、振り返れば奥大日が、手前に尾根を伸ばして横たわっている。大日は雲の中。一の越からボーダーが滑り降りてくるのを、しばらく立ち止まって見る。徐々に勾配を増し、浄土沢の源頭で腰を下ろしてひと休み。荷物がデポしてあるので、滑り降りて来たスキーヤーのものかと思うが、そのまま気持ちよさそうに通り過ぎて行ってしまう。ここからジグザグの石畳の夏道が続く筈だが、今は雪の下、一の越目指して一直線にトレースがついている。下から見ればたいした事は無い斜面だが、最後はかなりの急坂を頑張って登る。山荘前の広場には数名のスキーヤーがたむろしている。
アイゼンを脱いで小屋に入るとアンちゃんが出てきて、「泊まりですか?」と聞く。「予約してあります」と云って宿泊手続きをする。靴箱には一つも靴が置いてないので、「ゴールデンウイークは混んでいたでしょう?」と聞くと、「そうでもないです。今夜の宿泊客はあなただけです」。ゴールデンウイーク明けですいているだろうとは予想していたが、わたしだけとは思ってもいなかったのでビックリ。 前回泊まった時は夏の最盛期であったが、6畳間に8人詰め込まれた記憶がある。「昨日は大荒れで雪が降ったが、今日は穏やかです」と云う。暖房器具は何も無い2階の6畳間、汗をかいた肌着と厚手の長袖シャツを着替え、フリースを着込む。缶ビールを1本、これでは足らずウイスキーをチビチビ。小屋のアンちゃんが、「小屋の名物、アンカです」と云って、行火を持ってきてくれる。夕食前に外へ出ると、澄みわたった空気の下、日暮れにもかかわらず輪郭鮮やかに、大日、奥大日、別山がしらじらと並んでいる。清冽な空気が指先を冷やし、肩をすくめて小屋に戻る。広い食堂で夕食を摂り、少しTVを見てから部屋に戻る。明日は風が強ければそのまま室堂に戻り、周辺を散策しようと考えながら眠りにつく。深夜、風の音に起こされウツラウツラと夜を過ごす。
翌日は6時に起床、7時から朝食。今日は寒そう、毛糸の帽子をかむり、フリースの上にカッパを着込んでぶくぶくになる。小屋のおじさんが、「風が強いので雄山まで登って、そこで縦走するかどうか判断したらいいです。その先、狭い尾根があるので気を付けて下さい」と送ってくれる。小屋の前の広場に出ると室堂側から強い風が吹き上がり、凍った雪にアイゼンがカリカリと快い音を立てる。雄山を見上げると、中腹に一人取り付いている人が見える。これで勇気づけられ、わたしも登る事にする。夏道には雪がついてなく、岩がごろごろ露出しているが、右手は一面雪に覆われ、山頂まで続いている。雪の中に先程の人のものだろう、足跡がついており、わたしも雪の中に入る。緩やかそうに見えた斜面はすぐに急斜面となり、足を横向けにして一歩ずつステップを切って登る。さらに勾配は増し、横向けでは立つことが出来なくなり、靴先を斜面に蹴り込む。がんがん蹴飛ばすが、氷化した雪は固くて靴底を載せる事が出来るほどの足場は出来ない。つま先だけ引っ掛けるのがやっとで、これが外れたら一の越まで滑落、旨く行っても骨折はするだろうと考えると冷や汗が出る。風は夏道に遮られ左程気にならないが、ひと足ひと足蹴り込み、つま先だけで慎重に登るのは大変気を使う。足跡か消え、斜面は益々急になり、これ以上雪の斜面を登るのは無理だろうと判断。ガレ場が露出する夏道に入り、安全そうな場所でアイゼンを外す。アイゼンを外したものの、小石がごろごろした急なガレ場は、登る事もトラバースする事も出来ない。仕方なく、つぼ足で雪の中に戻るが、とても登る事が出来るような斜面ではない。にっちもさっちも行かなくなり、さてどうしようかと考えていてもしようがないので、ハイマツを掴んで道無きガレ場を登りだす。やっと赤矢印を見つけて、まともな夏道を登ることが出来るようになり、ひと安心。今まで止んでいた風は遮るものが無くなり、室堂平から吹き上げて来る強風に堪えなければならない。ところどころ雪が着いた所を避け、通常では登らない岩を這い上がる。登りついた三の越にはロープが張ってあり、✕印が付けてある。今登って来た道は、進入禁止の道であったようだ。クワバラクワバラ。三の越からは広い尾根となり、見上げれば雄山神社の社務所が見える。見上げた時は緩やかそうに見えたが、登り始めると結構急である。大岩を曲がり込んだり、よじ登ったりしながら、狭くなった急登の稜線を登りきると社務所の建つ頂上台地に着いた。
わたしより先に登った人は女性で、これから下山するところであった。女性一人でよくまあこんな所を登ってくるもんだと感心。社務所は雪に埋もれ、屋根だけが出ている。雄山神社の明神鳥居も雪の中から頭だけ出して、わたしは鳥居を上から見おろすことになる。雪が舞い始め、白馬はおろか剣もその全貌を現さない。鳥居の横に杭が埋もれていて、雪の隙間からみると、「大汝」と読める。岩と岩の間に道があり、そこから覗くと、大汝、真砂岳、別山への縦走路が見える。大汝までの稜線直下、室堂側の山肌には雪がつかず、後立山側からの雪が伸びだし雪庇を作っている。小屋の主人が云っていた、「狭い尾根に気を付けろ」という言葉が思い出され気が萎える。降り出した雪は止む様子はなく、風のおさまる気配はない。人の姿は勿論無い。縦走している人の姿でもあれば勇気づけられるのだろうが、今日はここまでと縦走は断念。
靴紐を締め直し、ガレ場の急坂を慎重に下る。雷鳥がハイマツから抜け出し間近かに現れ、人を恐れる様子は全く無い。白い雷鳥はさすが天然記念物、綺麗だがその鳴き声はゲーゲーといただけない。まだ冬毛のままのもの、夏毛に変わりつつあるもの、大きいもの、小さいもの、赤い鶏冠をつけたものなど、色々現れ、100m程飛ぶものまでいる。ロープが張られ、✕印が付いた岩場は避け、左手のトレースのついた道を下ると、雪の急斜面のトラバースとなる。急斜面にトレースが出来ているが、アイゼン無しで入り込んでしまったので、立って下ることが出来無い。お尻を使い、靴底のかかとで雪を蹴って足場を作りながら一歩一歩下るが、足場がしっかり出来ていないとツル〜りと滑る。このまま滑って行くと200mは滑落、生きては帰れないと思うと雪を蹴るかかとに力が入る。ガレ場に出てひと安心。この先、ガレ場と雪の道がまだらになっているのを見て、遅まきながらアイゼンを着ける。下を見れば、室堂から一の越へ歩いてくる人や、雄山に登りかけている人の姿が見える。しばらくアイゼンを着けて下るが、ガレ場をアイゼンで下るのも難儀で、雪が少なくなってきたのを見計らってアイゼンを脱ぐ。落石しないよう注意しながらガレ場を下り、時々雷鳥さんに挨拶をする。左手の雪の斜面を見ると、ボードを背負って登ってくる人がいる。どうせ一の越からはまたアイゼンが必用になると、下り難いガレ場から雪の斜面に出て再びアイゼンを着ける。こうしている間にも雷鳥さんがうろちょろし、白黒まだらの頭に載っている赤い鶏冠がひときわ目立つ。一の越にたむろしていたスキーヤーが一斉に後立山側、黒部湖目指してガリガリとアイスバーンを削りながら滑り降りていく。それを見おろしながら雪の中を下り、一の越に到着。なんとも危うい登りと下りであった。
朝はカリカリの雪であった一の越の広場は、お昼になった今は大分緩んでいる。休むことなく一の越から下る。スキーを履いて登ってくる人やボードを担いで登ってくる人と行き違うが、わたしのように単なる山登りの人は少ない。汗も出始め、フリースを脱いでザックに詰める。
室堂に戻ると、昨日にも増して大勢の観光客で賑わい、相変わらず中国語が飛び交っている。ターミナル周辺のこんなに人の多い所にも雷鳥がいて、観光客が喜んでいた。
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