河内山☆湿原と旧北陸本線のトンネルと訪ねて


- GPS
- 02:49
- 距離
- 6.4km
- 登り
- 390m
- 下り
- 388m
コースタイム
天候 | 曇りのち雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
池河内湿原〜河内山;送電線巡視路の良好に整備された道 河内山〜 古道 |
写真
感想
夜のうちは予報通り、かなりの強雨が降り続く。日曜日は梅雨前線は一旦、南下して、近畿の北部では雨が緩くなる予報だ。しかし、なかなか雨が降り止まない。雨雲レーダを見ると前線から派生したいく筋もの降雨帯が近畿のほぼ全域を通過してゆく。天気予報は見るたびに予報が変わるのは予報が意外と難しいのだろう。
午後は雨が降らないことを期待して、湖北に出かけることにする。琵琶湖の湖西のあたりで、国道の高架からは湖北の山々にはかない低く雲が垂れ込め、北の方では雨が降っているが見える。果たして国道を北上するとすぐにも雨が降り始める。
国道8号線で県境を越えると麻生口で国道を曲がり、小刀根に入る。トンネルと一つ、通過すると今日最初の目的地の小刀根トンネルがある。このトンネルはその先にある柳ヶ瀬トンネルとともに旧北陸本線の遺構である。旧北陸線のこの木ノ本から敦賀の区間は柳ヶ瀬線とも呼ばれていたところだ。今は柳ヶ瀬トンネルは車道となっているが、歩行者がその脇を通る幅の余裕はない。ところで最近、高さ制限を無視してトンネルに突入したトラックがトンネル内の照明を片っ端から壊したらしく、その照明は一部しか復旧されていないという。
小刀根トンネルを訪ねるとそれまで降り続いて雨が上がったところだ。丁度、鉄道ファンらしい雰囲気の若い男性二人がトンネルから出てこられたところだった。トンネルは煉瓦と石積を組み合わせた独特の工法で作られている。
トンネルの入り口では苔むした煉瓦が歴史を物語る。トンネルを奥に歩いていくと、出口が近づくにつれトンネルの中の水溜りや湿潤した天井に反対側の樹々の緑が反映する。短い区間ではあるが、この狭いトンネルを通過できるようにデゴイチの愛称で呼ばれた当時、最新鋭の蒸気機関車D51が設計されたらしい。
トンネルを後にし、池河内へと続く道路の入り口にある杉箸(すぎはし)の集落に入ると十割そばの幟がたっている。果たしてどこに店があるのかと思ったが、その幟が立てられている民家がどうも蕎麦屋らしい。店の前に掲げられた「十割そば」の幟がなければ飲食店とは到底思われない。私と家内とで、とろろ蕎麦と辛味大根のおろし蕎麦を頂き、弾力のある蕎麦に舌鼓を打つ。
蕎麦屋を後にすると笙ノ川に沿って北上する。道幅は意外と広く、走りやすい。湿原が近づいたところで山中に忽然と池河内の集落が現れる。集落を通り過ぎるとすぐに池河内湿原の手前にトイレがある。トイレの脇に車一台分の駐車スペースがあるのでここに車を停めて歩き始める。
木道を歩いて湿原の中に入ると、すぐ左手の川の中から数多くの黄色い花が咲き出している。コウホネの花のようだ水の中から多くの花が咲きだしている様は睡蓮を思わせる。折しも雲の合間から日差しが差し込み始めると、印象派かバルビゾン派の絵画のような光景が広がる。
木道の周囲は完全に水没している。木道から降りないで下さいと書いてあったが、これでは木道以外歩きようがない。コウホネの他にはほとんど花は咲いてはいなかったが、湿原独特の静謐で幻想的な雰囲気が漂う。
湿原の奥に進むと樹林が広がるようになる。ハンノキの樹林らしい。樹林を抜けて湿原の北西の入り口にたどり着くと、車が数十台停められるほどの広地となっている。ここからわずかに北西に進むと、目指す河内山への尾根の取付きがある。
尾根の手前には刈り払いされた広い道が現れる。さすがは関電の送電線巡視路だ。巡視路の管理が行き届いている。ジグザグと自然林の斜面を登ると、まもなく最初の送電線鉄塔にたどり着いた。
送電線が連なる尾根の右手に目指す河内山が見える。池河内湿原がある背後の谷を挟んで対岸の稜線の上には岩籠山のシルエットが雲の中から姿を表す。送電線鉄塔が立ち並ぶ尾根は傾斜も緩く、歩きやすい道が続く。このまま雲が上がってくれるのかと思ったが、河内山が近づくと雨が降り出した。
江越国境尾根にたどり着くと、送電線鉄塔の建て替えのために切り開かれたと思われる伐採広場が現れる。広場の先には樹高の高い山毛欅の樹々が立ち並ぶ。この江越国境、余呉トレイルのうち、北のトチノキ峠から椿井嶺までの区間は今年の正月にhanabana31とご一緒に歩いたところだ。トレイルの大部分は踏み跡が薄いのだが、ここから庄野嶺越までに至る間のみは踏み跡が明瞭だ。
山毛欅の樹林に入ると途端い濃厚な霧が立ち込めている。霧のせいで幻想的な雰囲気のの中を歩くと、まもなく踏み跡の脇の小さな盛り上がりに三角点の柱石があることに家内が気がつく。その奥には小さな河内山の山名標がある。柱石に気がつかなければ山頂とは知らずに通り過ぎてしまいそうなところだ。
河内山のピークを越えて、p655にかけて山毛欅の回廊が続く。p655を越えてくだり坂になると熊笹が繁茂するようになる。熊笹の中を小さな鞍部に下降すると、いつしか尾根上の霧が晴れている。
尾根には霧が気まぐれに現れたり消えたりする。山毛欅の尾根を辿るうちに唐突に幅の広い道に飛び出す。三角錐の屋根を載せたコンクリートの建築物は果たして何かと思うが、郵便ポストらしい。ここに郵便物を入れて滋賀県側の中河内と福井県側の池河内でやり取りをしたということなのだが、果たしてどんなやり取りがなされたのだろうか。
庄野嶺越からはよくぞここまで掘り込んだものだと感心するような深い掘割式の古道が続く。道の深さは優に背丈以上はあるだろう。道の両側はコアジサイが繁茂しているが、その短い花期はすでに終わったところのようだ。
尾根が終わり、なだらかな谷に出ると歩きやすい道が続くものとばかり思っていたが、それどころか沢沿いの薄い踏み跡はしばし不明瞭となる。渡渉を繰り返し、葦が繁茂する広々とした谷に出ると、背丈を越える葦の間を歩けるところを歩いて先に進むほかない。
雨が降り病んでいるのが救いだ。これらの草が雨に濡れていたらず草露でずぶ濡れてなったことだろう。唐突に葦の茂みが終わり、植林地に出る。植林地の中の薄い踏を辿ると池河内の裏手に集落に飛びだした。
車に戻りを靴下を確認すると二匹ほど大きなマダニがついていた。幸い今回は皮膚は噛み付かれていなかった。
樫曲(かしまがり)に出て、国道に出て敦賀方面に向かうと、トンネルを越えたところに国道脇にもう一つ、トンネルがある。このトンネルは明治29年に開業した旧北陸本線(杉津線)が敦賀を出発して最初に通過するトンネルだ。
トンネルの入り口にはどこかにセンサーがあったのだろう、トンネルの中のレトロなデザインの電燈は私達がトンネルに入った途端、白色の明かりを灯したかと思うと次第に煌々と橙色の明るい光を放ち始める。トンネルの両側はトンネルを迂回する国道が走っているのだが、120年以上の時を経たそのトンネルはそこだけ時空を切り取られたかのような異次元空間の雰囲気を漂わせている。
トンネルを最後は中池見湿地に立ち寄る。近くの市街地では北陸新幹線の高架の建設が着々と進んでいる。駐車場から丘陵の斜面を登ると突然、茫洋とした湿原が現れ、一瞬にして別世界に彷徨いこんだかのような感覚に捉われる。再び雨が降り始め、湿原の景色は急速に雨に霞んでゆくのだった。
コメント
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またまた興味の引かれるレコをありがとうございます。山部分じゃないんですけどm(__)m
旧北陸本線跡のご紹介いただいて早速ググりました。色々とウォーキング企画もあるルートなんですね。バスツアーもあるよう。
南今庄駅から敦賀駅まで廃線跡を歩けるようで、早速プランニングです。途中にスイッチバック箇所もあるとかで、鉄道オタクには垂涎かも。
まだまだ業務が混んだままでして、いつから登山再開できるやら。脹脛も細くなってしまいました。
ののさんは山や湿原ではなく、きっとこの旧北陸本線のトンネルに反応して下さるのではないかと、秘かに期待しておりました。
雨の日になると、この旧北陸本線の鉄道遺構を辿って南今庄から敦賀まで歩くという計画がが浮上するのですが、訪れることをずっと見送ってしまっておりました。しばらく雨続きなので、私もそろそろここを歩いてこようかなと思います。
湿原だけでは物足りないのでと思っていましたが、江越国境とセットされるとは、さすがyamanekoさんです。更に旧北陸線トンネルまで。樫曲トンネルにそんな粋な仕掛けが有ったのですか?今度車で通ったときに歩いてみます。
コウホネは小さな花ですが黄色が濃いのでよく目立ちます。カキランでもあればよかったでしょうが。
中池見湿原は、年間の維持費が1000万円かかるそうで市議会が問題にしています。どうなることやら。
私も池河内に自転車をデポして、刀根越から江越国境を池河内越まで等と考えたりしていたので、参考にさせてもらいます←と言うか先を越されてしまいました(笑)
naojiroさん コメント有難うございます。
>湿原だけでは物足りないので・・・
今回の河内山は確かに湿原を訪れたついでの登山の感じがありましたが、この河内山から庄野嶺越は間違いなく椿井嶺から栃の木峠までの江越国境の間ではハイライトであり、美味しいところをつまみ喰いする感じがあります。
標高600mそこそこでこれだけの山毛欅の美林があるのはさすがに若狭の山ならではの魅力ですね。ここはまた違う季節にでも中河内側からでも訪れてみたいと思っています。
>中池見湿原は、年間の維持費が1000万円かかる・・・
例の庄部谷山から芦谷山への稜線に風力発電を作ったら電力会社からお金が舞い込むことでしょう。
>刀根越から江越国境を池河内越まで
それはなかなかロングですが、歩きがいのありそうなところですね。是非ともその計画を遂行して下さい。池河内からの自転車のサイクリングも気持ちよさそうです。
yamanekoさん、naojiroさん、no2さん、こんばんは
去年、クルマでですが、トンネル巡りしてました。
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=763433980761018&id=100012832682690
長いトンネルは、歩くのは怖そうで、ライトや反射テープの武装が、必要そうです。
参考まで
マップです
https://www.city.tsuruga.lg.jp/about_city/news_from_division/kankou/kanko_ka/tunnelcard.files/kiokunotabihe_map.pdf
yonedaさん マップどうも有難うございます。
トンネルはかなり長いものがありますので、ライトは必携だとは思っておりましたが、車も通行できるところでしょうから、確かに反射テープもあった方が良さそうですね。naojiroさんやno2さんにもお知らせさせて頂きます。
思いの中に大切に仕舞われていたような風景があります。
湿原の入り口にある古民家はほとんど幻のように見えますが〜
もしかしたらyamanekoさんの演出に酔わされていて、本当はよくよく見ると今時の若い人の美意識によって
作られたもの?なんてうがった見方してしまいました💦
この民家からこだわり強そうな若い夫婦が出て来たら幻滅!(笑)
反省。
哲学者が思惟に包まれながら歩くのに良い感じなコースですね。
オマケにお蕎麦まで付いて来て嬉しいや😄
doiさん コメント有難うございます。
なぜトンネルが魅力的に感じられるのかというと、そこを通り抜けた先には異空間が広がっているのではないだろうか・・・という秘かな期待があるからかもしれませんね。千と千尋の世界に入る前に長いトンネルを通過するというも、不思議な国のアリスが兎を追って穴を通り抜けるのも、異空間に入るための必要不可欠な通過儀礼であったといえるでしょう。
山上や山中の湿原もそこに辿り着いた瞬間、異空間を垣間見る・・・ような印象を抱くことになると思います。
ところで、この古民家は蕎麦屋のある杉箸の集落から移築したものだそうです。この杉箸や池河内の集落も実に魅力的なところだと思います。
https://www.city.tsuruga.lg.jp/about_city/cityhall-facility/shiyakusho_shisetsu/gaibushisetsu/nakaikemi.html
そうでしたか。実際に生活している民家と早とちりして、勝手にトリップしてしまいました!😁ドンピシャの景色だったので。(笑)
山猫さん、お知らせありがとうございます。
yonedaさん、旧北陸本線跡マップありがとうございます。山猫さんのレコにて興味を持ち、色々とググっておりましたが、このマップには辿り着けませんでした。
とても参考になります。
マップを改めて見ると、今回山猫さんが歩かれたエリアも含めて通すプランも頭に浮かびました。そうとなると距離も増えますので趣が変わってしまいますが、サイクリングとして走るのも面白いかな?なんて。
能登の羽咋にて鉄道跡のサイクリングロードを走ったこともありますが、こちらは海岸線と違って山間部ルートですので上り勾配が気になりますけど。基本鉄道跡なので勾配も「‰」ですからなんとかなるでしょう。南下の方が楽かな? とは言いつつ…
山猫さんが仰っておられる「トンネルの魅力」「パラレルワールド的な魅力」は、やはり歩かないといけませんね。日本一の鉄道難所を通るため腕利きの機関士が集められた区間にて機関士の苦闘に思いを馳せるのもやはり歩かないと。
急勾配解消じゃなく離合用のスイッチバック部や、待避トンネルの行き止まり部なんかも見たいです。行き止まりのトンネルってどんな感じだろうとか。これはオタクの領域を越えてる??(笑)
昨年歩いた旧福知山線の廃線跡ルートも面白かったです。あちらは渓谷の横を枕木が残ったままのハイキングルートですよね。観光化し、人も多いので感じるものもまた違うんですけど…
行きたいところのプランが山積みとなってきました。色々と面白い情報ありがとうございます。
ののさん 横レスどうも有難うございます。
>南下の方が楽かな?
いいえ、絶対北上の方がいいです。その理由は・・・私の次のレコを読んで頂ければご理解いただけるかと思います。
>「トンネルの魅力」「パラレルワールド的な魅力」は、やはり歩かないといけませんね。
>基本鉄道跡なので勾配も「‰」ですからなんとかなるでしょう。
徒歩ならでは・・・と言いたいところですが、案外、自転車もいいかもしれませんね。勾配も大丈夫だと思います。
>腕利きの機関士が・・・
>急勾配解消じゃなく離合用のスイッチバック部
>待避トンネルの行き止まり部
さすがの蘊蓄
>行き止まりのトンネルってどんな感じだろう
誰しもが思いますよね。トンネルの奥には意外なものが・・・
>これはオタクの領域を越えてる??
間違いないでしょう
>旧福知山線の廃線跡ルート・・・観光化し、人も多いので・・・
旧北陸本線の鉄道遺構はかなりハード・ボイルドです。
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