百名山・水晶岳〜18時間超の激歩(七倉から日帰りピストン)
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- GPS
- 18:27
- 距離
- 43.0km
- 登り
- 2,832m
- 下り
- 2,816m
コースタイム
0:15七倉 ― 1:19高瀬ダム ― 3:33三角点 ― 4:27烏帽子小屋4:29 ― 6:44野口五郎小屋 ― 7:01野口五郎岳7:02 ― 7:27真砂分岐 ― 8:16東沢乗越 ― 8:55水晶小屋 ― 9:31水晶岳9:33 ― 10:08水晶小屋 ― 10:35東沢乗越 ― 11:46真砂分岐 ― 南真砂岳 ― 湯俣岳 ― 15:11湯俣15:15 ― 17:26高瀬ダム17:38 ―18:42七倉
【コースタイム】
七倉―高瀬ダム 1:04
高瀬ダム―烏帽子小屋 3:08
烏帽子小屋―野口五郎岳 2:32
野口五郎岳―水晶岳 2:29
水晶岳―湯俣 5:08
湯俣―高瀬ダム 2:09
高瀬ダム―七倉 1:04
天候 | くもり→土砂降り→晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
◆七倉〜高瀬ダム〜烏帽子小屋(ブナ立尾根) 七倉から高瀬ダムは、長いトンネルのある舗装道路です。 高瀬ダムからブナ立尾根登山口までは、つり橋を渡り、沢沿いに歩きます。 ブナ立尾根は、北アルプス3大急登の一つと呼ばれるにふさわしい登りです。 深夜なので、「権太落し」と呼ばれるせり出した大岩や、崩壊地は、良く分かりませんでした。 ◆烏帽子小屋〜野口五郎岳 小屋からキャンプ場の中を通過して一旦下り、鞍部から三ツ岳に向かって稜線を登り返します。三ツ岳は巻きます。その後は、砂地の道を緩やかに歩き、下ると野口五郎小屋、登り返して、間もなく野口五郎岳頂上です。 危険な感じはありませんが、岩場や斜面を横切るので、よそ見をすると、ひょっとすると、谷底に落ちるかもです。 ◆野口五郎岳〜水晶小屋〜水晶岳 野口五郎岳頂上から砂地の道を巻くように下ると、竹村新道との分岐「真砂分岐」に至る。少し下って鞍部となり岩の稜線を登って、下ると、東沢乗越という広めの鞍部になります。そこから再び岩の稜線を登り、砂地の急な登りをジグザグに行くと、水晶小屋に至ります。小屋の左側から少し登りすぐ右に稜線歩きをして、最後に岩の急道を巻くように登ると狭い山頂に至ります。最後だけは要注意かな? ◆水晶岳〜真砂分岐〜竹村新道〜湯俣 水晶岳から真砂分岐までは、記載省略。 竹村新道は、真砂分岐から3時間半程度でしたが、稜線でもアップダウンがあり、森の中でもアップダウンがあって、過酷なルートです。 私的には、登りでは使いたくないルートです。 ◆湯俣〜高瀬ダム〜七倉 湯俣からダムまでは、川沿いの道をひたすら歩きます。ひたすらです。 最初は未舗装の狭い道をときどきアップダウンしながら歩きます。 途中からは、舗装道路となり、最後に長いトンネルで、ダムに到着します。 ダムから七倉までの舗装道路は、タクシーを使わない者だけが「ツラさ」を味わえます。 |
予約できる山小屋 |
七倉山荘
|
写真
感想
夏休み山歩きのトップバッターは、以前からずっと歩きたかった「水晶岳」しかありません。数年前、三俣蓮華岳から、鷲羽岳に隠れるように見えた黒い山、それが私が最初に、「水晶岳」を「水晶岳」として認識した最初でした。
まさに、「黒岳」と呼ばれるにふさわしい山肌です。
水晶岳のことを調べてみると、宿泊しないで登山口に戻るためには、七倉からブナ立尾根、野口五郎岳を経由して向かうしかないことが分かりました。以前、百名山全山を日帰りで走破した方のサイトを見たことがあり、夜から歩けば、なんとかいけるという、漠然とした思いを持って、「その日」が来るのを待っていました。冬山をするわけでもなく、トレランをする訳でもない私にとっては、夏山の、それも、できるだけ、日の長い、夏の早い時期に照準を合わせるしかありません。
それに、水晶岳を歩くもう一つの目的は、ブナ立尾根を歩くこと。昨年の「ヤマケイ」で100急登特集を読んで、剣岳の早月尾根、甲斐駒ケ岳の黒戸尾根、谷川岳の西黒尾根、燕岳の合戦尾根、笠ケ岳の笠新道は歩いているので、何としても、「ブナ立尾根」を歩いてみたいと思ったのでした。
ブナ立尾根について、ヤマレコの記事を見てみると、午前2時過ぎに歩いた方の記事で、2時間半で登ったというものがありました。さすがに、そんな時間で歩けませんが、その分、もっと早い時間に歩きだせば、私にも歩けるという、漠然として思いが膨らんでいきました。そこで、8月の初旬に夏休みを取って、実行に踏み切ったのでした。
七倉には、前日の20時ころに到着。午前0時スタートと決め、車中で仮眠をしました。目覚めると、満天の星空が・・やったーと心の中で叫びました。
七倉から高瀬ダムまでは、日中はタクシーが走ってくれるのですが、午前5時30分からと決められています。
当然、この時間では、ダムまで歩くしかありません。最大の難敵は、長い長いトンネルの「恐怖」に勝つことです。トンネル内は、夜は消灯されてしまいます。
その上、クマの目撃情報もあるらしく、左手に予備のライト、右手に熊除けの鈴を持って、3つの大きなトンネルを越えていきます。
「恐怖」に何とか打ち勝ち、ジグザグに歩くと高瀬ダムに到着します。街灯がちょこっとあるだけで、ダムは真っ暗、水面も全く見えず、本当に怖いです。
右に道を取り、再びトンネルに入って、不動沢つり橋を渡り、広い沢の砂地を慎重に道を選びながら、キャンプ場の表示を横目で見つつ、ブナ立尾根の登山口に到着します。登山口の道標の横には、12から0まで番号がふってあります。12が現在地、9がゴンタ落とし、6が中休み、4が三角点、そして0が烏帽子小屋です。
ブナ立尾根は、暗闇の中、急登なのかどうなのか、大変なのかどうなのか、全く分かりません。深夜ラジオのオードリーのオールナイトニッポンをガンガン鳴らして、熊除け&恐怖対策を講じています。ゴンタ落としの9番の存在すら気付かず、12番の次は、8番というありさまです。こんな調子で、もくもくと歩いて、ダムから3時間08分で、烏帽子小屋に到着しました。
烏帽子小屋には午前4時27分に到着。すでにトイレ渋滞が始まっていましたが、まだ日の出前なので、鈴を鳴らさないようにして、テント場を通りぬけて行きます。空を見ると・・曇天(どんてん)、雨降るなと心で祈って、いよいよ稜線歩きになります。
しばらくして、一瞬、ご来光を拝めましたが、本当に一瞬だけ・・明るくなればなるほど、鉛色の雲の色が際立っていきます。しばらくすると、稜線は完全にガスに包まれてしまいます。その上、風が強い・・。眼鏡が水滴に、頭に手を持っていくとしっとり濡れています。日が高くなれば、霧は晴れるはず・・と信じて、稜線歩きを続けます。三ツ岳は頂上を踏むことなく、横腹を歩きます。あこがれの「裏銀座コース」なのに、展望は全くありません。晴れていれば、右に赤牛岳、左に餓鬼岳、燕岳というところでしょうか?心の慰めは、足元のお花畑だけですが・・・私は、花の名前を知らない・・・。きれいな花を写真には納めます。
ゴツゴツした大きな岩を乗り越える場所もあり、ガスがいつの間にか、霧雨化していきます。岩も滑りだします。緩やかな稜線のアップダウンが続き、すっと、下ったところで、突然、野口五郎小屋が登場します。小屋の前の軒先でパンをかじっていると、小屋の中から長野県の山岳救助隊のジャンパーを着た若いお兄さんが出てきて、「どちらに行かれますか」と聴かれました。雨も降りだしたこともあって、
このまま、竹村新道から下ろうかなという気持ちも芽生えていたこともあり、つい、「とりあえず真砂の分岐まで行ってから考えます」と答えてしまいました。
お兄さんは、「そうですか、気を付けてください」と言って、小屋に戻って行きました。あとから、分かったのですが、小屋から真砂分岐まで目と鼻の先だったので、「とりあえず・・」というのは適当な回答ではありませんでした。恥ずかしいです。
小屋から少し登ると、野口五郎岳頂上です。風が強く、強い霧雨になっています。野口五郎岳も人気の山ですが、時刻は午前7時なのに、頂上には誰もいませんでした。とても寒いので、先を急ぐことにします。砂地の道を巻くように下っていくと、竹村新道との分岐、「真砂分岐」になります。そこからちょっと、下って、岩の多い道をアップダウンして水晶小屋に向かいます。東沢乗越あたりになると、とうとう土砂振りになってしまいました。リュックに入れた雨カッパを装着せず、ヤッケと帽子、折り畳み傘で歩く、ひねくれ者は、ズボンがびしょぬれになってしまいました。
このズボンは、もう何年も履き続けているもので、つい最近も、ヒザの部分が破けたのを、かがってもらったばかりです。岩場の道もツルツル滑りだし、段差の大きい場所を足のチカラで越えて行きます。「もう帰ろうかな」と思いながら、右足で岩を登ったそのとき、ヒザのかがった部分が目に入りました。それを見た瞬間、最愛のツレが再生不能と思われる程度に破けた部分を、一生懸命、直してくれたんだった、私は一人じゃない、彼女のためにも、もう少し頑張ってみよう、気持ちを奮い立たせることができました。彼女の応援をもらった気持ちです。ちなみに、彼女とは、この4日後の8月7日、一緒に仙丈ケ岳に行っています。
さて、土砂降りの中、新たな気持ちとなった私は、足取りも軽くなり、急な登りも淡々と歩くことができ、あっという間に水晶小屋に到着。そのまま、水晶岳頂上を目指すことにしました。最初は緩い稜線歩き。ここらへんに来ると、水晶岳から戻ってくる人がどんどん湧いてきます。後ろからも、空身のおじさん・おばさん4人組みがスゴイ勢いで追い抜いていきます。私は、びしょびしょ姿の傘差し野郎でヘロヘロ状態なので、仕方ありません。水晶岳は、最後に岩の道を一気に登り詰めます。追い抜いた4人組のペースが一気にダウン。追い抜かれるのが嫌なのか、4人で私をブロック。おい、邪魔をしないで、歩かせてくれぇ・・。いいかげん、着き合っていましたが、ガマンできず、「スミマセン、抜かせてください」で、ようやく譲ってくれました。途中、ライチョウを拝むこともでき、喘いて登って、やっとの思いで水晶岳頂上に到着しました。雨は止んだものの、相変わらず、視界5mといったところでしょうか。少し遅れて到着した4人組に写真を撮ってもらい、9時間16分かけて歩いたのに、ものの2分で、下山することになりました。何しろ、展望もなく、その上、風が強くて寒いのです。
そこから、先は、淡々と歩き、東沢乗越を超えた辺りで、ガスが晴れだし、真砂分岐辺りで、視界が一気に広がって行きました。竹村新道に入り、しばらく歩いて振り返ると、何と、水晶岳の頂上部分も見えるではありませんか。この日は長丁場なので、天候の回復をのんびり待つことはできないので、仕方ありませんが、これが、自然相手の山歩きです。
竹村新道は、距離が長いうえ、アップダウンがたっぷりあり、稜線から樹林帯に入ると、展望もなく、深い山の中でアップダウンを繰り返すので、思いっきり厳しいです。標高差も真砂分岐から湯俣まで1400m余りあるので、なかなかのコースでした。天候が回復し、ぐちゃぐちゃ道でなかったのが、せめてもの救いです。
湯俣に到着し、晴嵐荘で微炭酸のCCレモンのペットボトルを300円で購入。ぬるかったけど、とてもおいしかった。奥の食堂では、女性2人が生ビールを飲んでいらして、ここに泊まろうかなと、一瞬思ってしまいました。その誘惑を打ち消し、長い林道歩きが始まります。
約2時間かけて高瀬ダムに到着。もう、タクシー呼ぶしかないと。たまたま、親子2人組がいらして、一緒にタクシー呼びましょうということなったのですが、携帯電話は圏外、公衆電話は10円玉オンリーなのに、私も親子さんも10円玉が1枚もない・・・仕方なく、七倉まで、3人とも歩くことになりました。
七倉には18時42分に到着。全行程18時間27分のハイキングでした。
なお、その後2日間は、大雨で山歩きはできず、8月7日に新穂高から鷲羽岳日帰りピストンをしました。この顛末は、別にレコします。
コメント
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とてもハードな山行ですね。
18時間寝られはしますが、歩くなんて考えもつきません。
湯俣温泉からの帰りに見上げた稜線、いつかのんびり歩いてみたいと思っています(*^^*)
myu522さん、コメントありがとうございます🍀
勢いで歩いたコースですから……。
タクシー乗れなくて、泣けました(>_<)🍀
今更ながらMISICAさんの記録を遡っています。
「最愛のツレ」。グッときますね。
登下降ルート以外は私もすべて歩いていますが、その分凄さを実感できます。
ここまで日帰りに拘るMUSICAさんはどんな人なのだろう。
MUSICA研究はつづく。(笑)
borav64mさん、こんばんは。
古いレコを御覧いただき、恐れ入ります。
日帰りの拘りですか?
ズバリ、小屋泊まりが苦手で、テント泊は帰ったあとの後片付けが面倒くさいからです。
でも、行きたいところは行きたい・・・。
長いルートは早く歩き始めれば足りるし、急な場所は頑張ればいい。
それだけのことです。
それって、変人ですか?
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