七面山・敬慎院に宿泊し希望峰を経て八紘嶺へ―踏み跡のない新雪を踏みしめ倒木の修験道を行く


- GPS
- 30:20
- 距離
- 14.7km
- 登り
- 1,999m
- 下り
- 1,623m
コースタイム
天候 | 晴ときどき曇 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
高尾06:56(JR中央本線) 甲府08:38/09:03(JR身延線) 下部温泉10:29 下部温泉駅🚏11:46(早川乗合バス)¥400(登山リュック有は+¥200) 赤沢入口・七面山登山口🚏12:12 角瀬(北参道)→羽衣(表参道)(タクシー¥1460) 復路: 梅ヶ島温泉🚏15:26(しずてつジャストライン)¥1630 静岡駅🚏17:13 静岡17:24(JR東海道本線) 熱海18:43/18:55(JR東海道本線・上野東京ライン) 小田原19:18/19:23(小田急小田原線) 町田20:22/20:34(JR横浜線) 八王子20:59 |
写真
感想
先月、天子山塊の毛無山に登った時に七面山が見えたのだが、一緒に登ったHrは七面山に毎年登っているとのこと。
今年は登ったのか尋ねたところまだということなので、早速一緒に七面山登山をすることにした。
Hrは毎回七面山だけなので今回は八紘嶺まで歩きたいとのことだ。
行きは甲府駅で身延線に乗換え、下部温泉駅へ。
今、JR東日本では特急あずさ運行開始55周年記念のスタンプラリーをしている。
特急あずさの主要停車駅であずさに使われた車両の形のスタンプが押せるのだが、甲府駅は国鉄189系。
地元の八王子駅では一番好きなE351系のスタンプを押していたが、ちょうど甲府駅に来たので国鉄189系のスタンプを押すことができた。
山へ行くときにE351系はかなり乗ったが、国鉄189系はあずさとして乗ったかどうか記憶は定かではない。
ただ波動用として活躍していた時にホリデー快速として何度も乗ったことがある。
ちょうど思い入れのある2つの形式のスタンプが押せたのでこれで満足だ。
下部温泉駅から早川乗合バスに乗り、七面山登山口バス停へ。
ここからも北参道で登れるのだが今回は表参道となる羽衣までタクシーで移動しそこから登ることにした。
羽衣から今日の宿泊地となる敬慎院まで標高差1200mあるのだが、さすがは表参道、傾斜もほぼ一定なのではないかという感じでよく整備されていて登りやすい。
最初は杉の大木に囲まれていて、いかにも寺社の表参道なのだが、標高1000m近くになってくるとツガやブナなどの自然林の林相が見られるのが面白い。
広葉樹の葉の散った梢の間からちらちらと富士山が見えてくるので気分が高まってくる。
途中甲府盆地方面に向かって展望が開けた場所があり、奥秩父山塊の稜線がうっすら冠雪しているのが見えた。
思いのほか早く和光門に到着した。
ここまで来たらもう境内みたいな感じだ。
鐘楼横の坂道を一気に登ったら随身門。
ここで富士山方面に向かっての大展望が開ける。
西側からの富士山は1ヶ月前に天子山塊の毛無山から見ているのだが、その天子山塊越しの富士山なのになぜかその時よりも大迫力に思える。
今晩は敬慎院でお世話になるので、そのスケジュールに従う必要がある。
受付を済ませた後、まずはお風呂(石鹸類使用不可)で身を清める。
山の上のお風呂が嬉しくゆっくり浸かりすぎたので、富士山のアーベントロートを危うく見逃しそうになってしまった。
再度随身門前の好展望地へ行くと、ちょうど夕焼けのラインが富士山を薄桃色に染め上げている最中だった。
17時からの精進料理の夕食を済ませた後はいよいよ夕方の勤行である。
七面大明神を祀る本堂の内陣まで入れていただくことができ、貴重な体験ができた。
お経が載っている冊子もあるので、お坊さんたちがどこを唱えているのかを確認しながら参加することができる。
ああ、お経ってこういう内容なんだなというのが興味深く、そして途中からお坊さんたちがその仏教用語を輪唱するように唱えだすところが神秘的だ。
なるほど、こうやって修行をするからきちんとお経を唱えることができるようになるんだなと思った。
お堂も部屋も非常に冷え込んでいたが、真ん中にはストーブを設置してくれていた。
広いお堂はさすがに暖まらないが、部屋は暖かい。
ただ寝る時はさすがにストーブは止めてしまうので、夜間は0℃近くまで冷え込んだと思う。
布団内は貸していただける湯たんぽで暖かいのだが、やたらと頭が冷える。
フード付のフリースを持って行っていたので、それを被ってやっと眠ることができた。
翌朝は日の出前から朝の勤行が始まる。
ただ、登山者は日の出を見るために途中退席してよいとのことだ。
自分は登山の際の日の出=御来光になぜか興味が薄く、他の人が見に行っても寝ていたり、山小屋泊の時はちょうどトイレが空くのでトイレタイムにしてしまうことが多いのだが、今回はさすがにこの神聖な地でそんな天邪鬼なことはしない。
心洗われているのだ。
七面山からは春分秋分の時には富士山から日が昇るとのことだが、冬至も近い今の時期はかなり南側の駿河湾、伊豆半島方面から昇ってくる。
昨日の夕暮れの時は薄桃色〜紫色に染まっていた空も、朝日の時は朱色に染まっている。
久しぶりの日の出もなかなかいいものではないか。
この日はいよいよ七面山から希望峰を経て八紘嶺までの縦走だ。
八紘嶺はの名称は「八紘一宇」から採ったらしいし、希望峰というのもなんとなく新しそうな名称な気がする。
おそらく明治時代になってから付けたのではないだろうか。
八紘嶺までの稜線は、2年前の「令和元年台風19号=東日本台風」で被害を受けて倒木があるとの情報は得ていたが、まずは雪の具合も気になる。
週半ばに降雨があり、山では多少は雪は積もっているだろうと自分は軽アイゼンを持ってきていたのだが、他のメンバーは持ってきていないとのこと。
これだと雪の具合では引き返すことになるかなあと思いつつ出発。
出発してすぐにシカの群れに遭遇し、しばし撮影タイム。
雄鹿の群れをこんなに間近に見たのは初めてだった。
ナナイタガレの大崩壊地の淵を七面山山頂に登るときと、希望峰への登りではやはり軽アイゼンはあったほうが安心かなという感じだったが、なんとか無事に登り切る。
希望峰では、聖岳、荒川岳から白峰三山までの南アルプスと、その手前の布引山、笊ヶ岳の稜線が眼前に広がった。
Hrは、来年南アルプスの主稜線からこの笊ヶ岳の稜線を越えて歩きたいねというのだが、果たしてそんな必要はあるのだろうか。
自分としては、聖岳や赤石岳、荒川三山を歩くだけで充分な気がする。
希望峰までは雪道といえども踏み跡がたくさんあり安心して歩いていたのだが、希望峰を過ぎるととたんに踏み跡がなくなった。
最初踏み跡があるなと思って八紘嶺に向かって歩き出したのだが、よく見るとそれは全てシカの踏み跡なのだ。
週半ばの積雪以来、希望峰から八紘嶺を歩いた人はいないようだ。
途中クマの踏み跡もあり、その踏み跡に従って行くのは嫌だなあと思ったのだが、クマさんの踏み跡は途中から登山道を外れ、山の中へと入っていった。
ピンクテープがあるので登山道自体は迷わないなと思っていたのだが、いくむし山に近づくにつれ倒木地帯に突入した。
最初はこんなものかと思っていた倒木も、次から次へとどんどん激しくなっていく。
太い大木は乗っかって乗り越えなければならないし、その上に雪が積もっているので滑りそうだ。
梢部分でふさがれている場所は藪漕ぎのようにもなるし、あまりにも複雑に絡み合ってふさがっている場所は、大きく迂回する必要もある。
迂回しているうちに本来の登山道を見失い、登山道に復帰するまで時間を取られる。
思った以上にひどい倒木だった。
行けども行けども次から次へと邪鬼が現われ行く手をふさいでいるようだ。
それを乗り越え迂回して、まるで修験道だ。
八紘嶺へ近づくとその倒木たちも雪も姿を消していった。
倒木がなければこんなにも穏やかな稜線だったのかという感じだ。
八紘嶺は梅ヶ島温泉方面から登っている人も多いので展望が開けるのかと思っていたのだが、展望は開けず残念。
それでもかなり駿河湾が近づいた感じがして、周囲はササ原の空間が開けブナが目立つようになる。
どこか丹沢山塊を思わせる雰囲気だが、ヒメシャラの大木があるところなどは天城山のようだ。
倒木で時間を取られ、梅ヶ島温泉15:26発のバスに乗れるか心配だったのだが、無事1時間ほど前には到着できたので、温泉も楽しむことができた。
「濃い温泉」というキャッチコピーのポスターが貼られていたが、なるほど硫黄の強い香りのする、つるつるするいい温泉だった。
そこからバス2時間弱乗って静岡駅に。
新幹線で帰る友人たちとはそこで別れ、自分は普通列車の旅。
新幹線とは違う日常の風景があるのが普通列車の旅の面白さだ。
来年こそは、南アルプス南部の山へ行きたいなと強く思った。
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