取立山〜大長山☆霧氷のブナ林を越えて広大な雪稜にテン泊山行
- GPS
- 10:02
- 距離
- 17.1km
- 登り
- 1,713m
- 下り
- 1,710m
コースタイム
- 山行
- 4:39
- 休憩
- 0:04
- 合計
- 4:43
- 山行
- 5:00
- 休憩
- 1:07
- 合計
- 6:07
天候 | 1日目、2日目ともに曇り時々晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登山口〜取立山;多数のトレースあり 急登はあるもののトレースのおかげでアイゼンなしでも問題になく登ることが可能 取立山〜鉢伏山;なだらかな急登はないのでアイゼンは必要ないと思われる 鉢伏山〜大長山;早朝で雪が硬くアイゼンを装着して登ったが日中はアイゼンなしでも問題なく登れるかもしれない |
その他周辺情報 | 勝山温泉センター「水芭蕉」 https://mizubasyo.jp |
写真
感想
今年は積雪期にまだテン泊山行をしていなかった。家内が長距離を歩くのは嫌だとか早朝から出発して行くのは嫌だとか何かと我儘を捏ねるので、大長山への山行を考えることにする。この山は雪のコンディションが悪くない限り日帰りが十分に可能な山ではあるが、鉢伏山のあたりでの広々とした雪稜のテン泊は魅力的に思われる。三連休の初日となる土曜日は北陸地方は天気が悪そうではあったが、そのお陰で日曜日は霧氷も期待できるので格好の機会と思われた。
【一日目】
比良の東麓を琵琶湖に沿って北上すると山の上の方には厚く雲がかかっているが、雲の間から一瞬、垣間見えた稜線は白くなっている。取立山の駐車場に到着したのは11時を大きく回ったところだった。駐車場には既に数多くの車が停められているが、車を停める余地は十分に残っていた。
駐車場の傍の雪に乗ってみると雪は締まっており、踏み抜きもない。思い切ってスノーシューを車に置いていくことにした。11時半を知らせるサイレンの音を聞きながら出発する。
キャンプ場へと入る道路はもちろん除雪されていない。積雪は1m近くはありそうだ。雪の上にはかなりの数のトレースがついている。キャンプ場からは夏期駐車場に向かって積雪した道路を辿るトレースも多いが、右手の尾根に向かう。
尾根とはいえなだらかな斜面には複雑な山襞が広がり尾根筋が明瞭ではないせいもあり、トレースはいく筋にも分かれている。自然林の尾根筋を選んで登っていくと、再び左手から登ってくるトレースと合流するとだだっ広い平地に出る。ようやく夏期駐車場にたどり着いたようだ。雪の上からわずかに赤い屋根を見せているのは電話ボックスだ。ということはこのあたりで既に積雪は2m半ほどはあるのだろう。
少し登ると背後に大日岳と勝山盆地の展望が広がる。空には青空が広がり始めているが、大日岳の山頂部にはわずに雲を被っている。
取立山への登りの夏道は急斜面を九十九折に登って行くのだが、トレースはその間をショートカットしながら登って行くので、効率よく高度を稼ぐことが出来る。
樹林を抜け出して尾根に乗ると急登が続くが、樹木の少ない爽快な稜線が始まる。右手には経ヶ岳から法恩寺山にかけての稜線が大きく視界に飛び込んでくる。尾根の先では取立山の山頂部では樹林が白く輝いている。霧氷がついているようだ。取立山への登りでは3組ほどすれ違う。
取立山の山頂に立つといよいよ鉢伏山にかけての長い広々とした雪稜が視界に飛び込む。雪稜には人が歩いている気配が感じられない。取立山を過ぎると途端にトレースが少なくなる。尾根にわ今朝のものと思われるワカンのトレースが続いている。
鞍部の先には霧氷を纏ったブナの叢林が広がっており、折しも午後の日差しを受けて霧氷が白く輝き始める。東の空は重苦しい薄墨色の空が広がっている。鞍部から背後を振り返ると取立山のドーム状の山頂部が日差しを浴びて光沢を帯びている。
ブナの樹林を抜けると再び雪原の小ピークに達する。原高山と呼ばれるところらしい。樹木のない広々とした雪稜が続く。板谷の頭と呼ばれるピークに登ると鉢伏山への鞍部からの登り返しにも見事な霧氷を纏ったブナの樹林が続いているのが目に入る。
やがて樹林帯に入ると樹高の高いブナの回廊となり、霧氷を纏ったブナの梢が織りなす美しい穹窿の下を歩く。やがてブナの樹林を抜けると雪原の斜面を登り、広々とした鉢伏山の山頂へと至る。
鉢伏山の山頂からはついに大長山の大きな山容が視界に飛び込んでくる。登り返しが急峻に見えるせいだろうか、家内はこの鉢伏山で十分だと云う。山頂の東側には大きな雪割れた生じており、その深さはゆうに4mほどはありそうだ。鉢伏山の山頂から先にはトレースが見当たらない。風で消えてしまったのか、あるいは大長山に向かう人がいなかったのか。
鉢伏山の山頂でテントを張っても良かったのだが、西風を警戒して山頂から尾根を降った先のなだらかな雪原にテントを張ることする。風はほとんど感じられないのだが、テントを張っている間にも急速に気温が下がってゆく。テントを設営し終わると指先がすっかり悴んでしまうが、風がないせいかテントの中が暖かく感じられる。
早速にもロースト・ビーフをつまみに赤ワインで乾杯だ。この日の夕食は牛肉と舞茸のガーリック・ソテーから始まる。後半はこれにライスを投入してリゾット風に調理する。そろそろ夕陽の時間だろうかと思ってテントの外を覗いてみると、外は10m先も見えないような濃い霧が立ち込めていた。
【二日目】
稜線の上だったので多少の風を覚悟はしていたが、朝になるまでテントを揺らす風はほとんど吹くことがなかったのは有難い。テントの外に起き出してみるとブルーアワーの青い色に染まる鉢伏山の上には月がかかっている。
生憎この日は東の空には雲が多く、綺麗なご来光は期待できないようだ。前日の夕方の踏み抜きの跡があるが、早朝の稜線の雪は明らかにカチカチになっている。12本爪のアイゼンを装着して向かうことにする。
歩き始めて水分を全てテントの中においてきてしまったことに気がつき、取りに戻る。鞍部に向かってなだらかに下降する。鞍部から先の登り返しの尾根の両側にはブナの樹林が広がっているが、尾根は樹木のない雪稜となっている。尾根をそのまま直進すると最後はかなりの急斜面となるので小さな谷を渡って左手の斜面にトラバースすることにする。
谷には数日前のものと思われるスキーのシュプールがあるので、そのシュプールを追って歩き始めた途端、大きく踏み抜くことになる。なんとスキーのシュプールの下は雪割れが生じているのだった。少し尾根を戻り、谷の斜面の緩やかななところを対岸に渡る。
ブナの高木の樹林の斜面はそれなりの急登であるが、アイゼンのおかげで硬い雪面でも安心して登ることが出来る。この雪の締り具合からすると直登ルートの急斜面は雪がかなり硬そうであり、ここを登るのはかなり勇気がいることだろう。
やがて樹林を抜けると徐々に傾斜も緩やかになり、広々として雪稜が広がるようになる。左手には白山が大きく広がるが、その山頂部には笠雲がかかっている。南の三ノ峰は雲の下であり、その肩には避難小屋が明瞭に見える。三ノ峰の上に広がるすりガラスのような雲を通して朝の太陽が淡白い光を放ち始める。
大長山の山頂は風もほとんどなく、静寂の朝の山頂は意外なほど穏やかな空気が漂っている。山頂のすぐ南側の小ピークまで足を伸ばしてみる。ピークからは小原峠を挟んで赤兎山へと続く稜線の好展望が広がる。赤兎山の避難小屋はここからは山の影になると思うのが、雪の多い今年は避難小屋は雪に埋もれているのではないだろうか。
赤兎山から経ヶ岳にかけての長い稜線を目で追ってみる。稜線は経ヶ岳に近づくにつれて鋭いナイフリッジとなっているのが遠目にも判る。この稜線を長男と共にに辿ったのは一昨年の同じ日であったが、実際、経ヶ岳の北峰の手前に連続するナイフリッジはかなりの難所であった。経ヶ岳の左手には荒島岳、右手の彼方には銀杏峰・部子山が朝陽に照らされて白銀の頂きを輝かせている。
眺望を堪能すると辿ってきた尾根を引き返す。鞍部への復路は登りに辿った尾根の右側のブナの疎林の中を下降する。緩斜面に疎らにブナの高木が生える快適な樹林となっている。
テントに戻るとアイゼンはここからは不要と判断し外すことにする。テントを撤収し、鉢伏山から下山し始めるとすぐにも大長山を目指す日帰り山行の登山者達と続々とすれ違う。取立山からの長い雪稜の上にも数組の登山者が歩いているのが見える。
鉢伏山からは再び霧氷のついた樹々の中を下降してゆくが、昨日に比べて霧氷はかなり落下してしまっているようだ。取立山のあたりでは気温が上昇したせいか樹々の霧氷は跡形もなくなっていた。荷物が軽くなったせいもあるだろうが、雪山の下山は早い。鉢伏山までは前日の登りの半分に近い時間で戻ることが出来る。
取立山の山頂も数組のパーティーで賑わっていた。尾根を下降すると下から続々と登山者が登って来られる。下るにつれて雪がかなり腐れ気味になってくるがそれほど踏み抜くことなく登山口に帰還することが出来る。駐車場は満車であり、道路沿いの余地にもかなりの車が停められていた。
登山口の近くの国道沿いにはミチノクフクジュソウの群生地があるのだが、今年は雪が多いせいで群生地はすっかり雪の下であった。そのかわりに国道の周囲では多くの蕗の薹を見つけることが出来る。
下山後に勝山温泉センターの「水芭蕉」で一風呂浴びると、越前大野の蕎麦の名店「梅林」に寄り道する。登山で水分を失った後のせいか大根おろしがたっぷり含まれたかけつゆはなんとも美味しく感じられるのだった。
「花垣」を醸す南部酒造場で日本酒を入手し、芋きんつばを求めて伊藤順和堂に立ち寄るとなんと売り切れとのこと。ショッピング・モールのvioにある支店にはまだ残っているということだったので、支店に立ち寄り、念願のいもきんつばを手に入れると、福井の文殊山に向かうのだった。
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