聖岳3013m(便ヶ島)


- GPS
- 18:59
- 距離
- 21.5km
- 登り
- 2,581m
- 下り
- 2,571m
コースタイム
14年5月2日 金曜日
※ 04:00 便ヶ島970m-(0:45)(118%)-
▲ 04:53 西沢渡1100m-(1:10)(99%)-内コンドラ渡し13min、偵察7min
▲ 06:02 ガレの上1400m-(0:50)(148%)-
▲ 07:16 大木の広場1800m-(0:25)(56%)-
▲ 07:30 (1920m)-(0:30)(100%)-
− 08:00 (小休止)-(0:45)(51%)-
▲ 08:23 苔平2050m-(1:20)(151%)-内ワカン装着10min
▲ 10:24 薊畑2400m-(0:30)(73%)-
− 10:46 (小休止)-(0:20)(90%)-
▼ 11:04 聖平小屋2260m-(1:00)(130%)-
− 12:22 (幕営)-(0:00)(%)-
歩数 27135歩
14年5月3日 土曜日
※ 01:10 (幕営撤収)-(1:00)(50%)-
− 01:40 聖平小屋2260m-(0:30)(93%)-
▲ 02:08 薊畑2400m-(1:00)(117%)-内デポ作業15min
△ 03:35 小聖岳2662m-(1:20)(118%)-
△ 05:09 聖岳2014m-(1:00)(95%)-
− 06:06 (大休止)-(0:50)(188%)-
▽ 07:40 小聖岳2662m-(0:40)(125%)-
▽ 08:30 薊畑2400m-(0:30)(117%)-
− 09:05 (小休止)-(0:50)(90%)-内アイゼンOFF10min
▼ 09:50 苔平2050m-(0:40)(140%)-内休憩10min
▼ 10:46 大木の広場1800m-(0:40)(120%)-
▼ 11:34 ガレの上1400m-(0:45)(91%)-内休憩10min
▼ 12:15 西沢渡1100m-(0:40)(188%)-渡渉終えるまで20min
▼ 13:30 便ヶ島970m-(0:00)(%)-
歩数 25574歩
※ 標準CT 結果CT %CT
▲ 05:45 06:22 111% 負荷22kg 登り
▼ 03:55 04:43 120% 負荷19kg 下り
△ 02:20 02:44 117% 負荷13kg 登り
▽ 01:30 02:24 160% 負荷13kg 下り
※ 13:30 16:13 120% 合計
− 05:00 04:29 090% 休憩その他
過去天気図(気象庁) | 2014年05月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
【4月30日(水曜日)山行計画】
GW山行として漠然と考えていた「テン泊まりで3000m峰」、さてどこへ登ろうか・・・
池山吊尾根、聖岳東尾根・・・行ってみたいコースは沢山あるが自分の実力では行けない、
安全登山の基本として行きたい山よりも行ける山に登るというのがあったと思う、
この基本を守ろうとすれば行けるところは限られる。
加えて今年は残雪多く3000m級は冬季並みの慎重さが必要だろう、それならば、
夏道を歩いたことのあるコースを選ぶという冬季マイルールを適用すべきと思う、
山行案(却下理由)
椹島→悪沢岳(ザイルが必要かもしれない)
椹島→聖岳(沢筋なので雪崩や滑落が怖い)
奈良田→農取岳(沢筋なので雪崩や滑落が怖い)。
便ヶ島→聖岳
結局、消去法で自分が行ける可能性があると判断したコースは便ヶ島→聖岳、
ここしかなかった。
レコの記録を参照して1600mから雪が現れると予想、
ここより標高の高い場所はコースタイム割増1.5倍に設定、
聖平に下るのは大変なので薊畑−小聖岳間の樹林帯に幕営、
ツェルト泊に初挑戦するけれども悪天候に備えてテントも持参、
ワカン、スコップ、ピッケル、ヘルメット・・・なんだか冬季フル装備、
聖平の冬季小屋を利用すれば3kg以上軽量化できそうだが、
まぁこれも訓練みたいなものだと思って背負ってみることにした。
林道赤石線の開通再確認、登山計画書作成、長野県、静岡県の両県に電子申請、FAX。
事前のツェルト設営練習には半日を費やした。
【5月1日(木曜日)移動日】
// テレメータ雨量 塁加雨量
// 釜沢 4/30 19:00 43mm
// 遠山川 中川原 4/30 22:00 49mm
// 南信濃 4/30 22:00 48mm
およそ50mmの累積雨量が気になる、降雪があったのだろうか?
// 天気予報、飯田市
// 2日(金曜日) 晴れ/7時〜晴れ 9〜26℃、3m/s
// 3日(土曜日) 晴れ/曇り 10〜23℃
// 4日(日曜日) 曇り/晴れ 9〜20℃ 予備日
15:15自宅出発
16:57静岡駅前
駅前の登山用品店で山スキーブーツの成形依頼、ついでに足首が曲がらない件について相談、
超ガニ股が足首の曲がらない原因ではないかという自己分析を足を使って具体的に説明すると
「曲がらないでしょうね」とあっさり言われてしまい、「やっぱり、あはは・・・」と苦笑。
カント調節の前にソールを入れるのが定石らしいがブーツには既に矯正ソールが入れてある、
店員さんは暫らくカント調節と格闘したがブーツの調節幅が極端に小さいらしい、店員さんが
「どうしようかなぁ・・・」と悩んでしまったので「自分のガニ股が原因なので・・・」
ということで終了することにした。試しにパッドを入れていただけるらしい、
いろいろ相談にのっていただき、どうもありがとうございました。
18:13静岡駅前出発
20:25静岡市内で夕食を済ませればよかったものを、そのまま走り続けたら都会を離れて
しまい食堂が見当たらない、結局セブンイレブン磐田下野部店のコンビニ弁当で夕食。
林道赤石線に入ると落石多数、避けながら走る。
突然目の前に鹿が現れ、向こうが驚いて左側の崖を駆け上がっていった、
すると握り拳大の落石がゴロゴロと林道に落ちてきた・・・
落石の一因は彼らだったのか・・・。
対向車が来るとは思えないから連続カーブにもかかわらず加速する、
次第に運転が楽しくなり調子に乗ってスピードを出し過ぎた、
登りの先がなぜか一直線に続いているという先入観でアクセルを踏み込む、
ところがヘッドランプが当たっても目の前に何も無い!!!やばい!!!
超スローモーションだった、瞬間のはずなのにやけに長い時間に思えた。
車は全く減速せず崖っぷちにゆっくり近づいて行くように見えた。
でもやけに冷静で「この減速度では落ちる、やっちまった、これで終わりだ・・・」
と覚悟した瞬間があった、しかも「最後ってこんな感じなのか」まで考えた。
フルブレーキでギリギリ停止・・・
といっても実際は崖まで数mぐらいはあったのかもしれない、
でも少なくとも前方のボンネット越しには何も見えないほど崖に迫った。
放心状態を脱してとりあえず車をバックさせて崖から離れる。
林道は右斜め後ろへカーブしていた、なぜここにガードレールが無いのか?
今思えば落差の小さな段差程度だったのかもしれない、
けれどヘッドランプが当たっても暗闇の先には何も映らなかった。
吸い込まれそうな暗闇・・・怖くて車を降りて崖を確認する気にはなれなかった。
なんだか心霊ドラマのような体験、とにかくこの場所を離れたい、
ここからは安全運転、変な汗が、脂汗が出てきた。
とにかく一回命拾いした、なんだか生かしてもらった気がしてならない。
転落事故なんてなぜ起こすんだろう?・・・ぐらいに他人事と思っていたが、
今回の体験を通して彼らの気持ちがよく解った。
22:52易老戸Pに到着、500mlビール一本飲んですぐに就寝。
【5月2日(金曜日)】
2:00起床、準備開始、また寝不足、駐車場は5台くらい。
準備をしていると左に駐車していた2名の方も登山準備を始めた、光岳に向かうという。
条件が良ければ光岳から聖岳へ向かうが、ワカン持参していないので無理はしないとのこと、
便ヶ島へ向かうトンネルの先で崩落があり引き返して易老戸に駐車しているとのことだった。
食欲が湧かずコンビニで買った朝食のロースカツ丼はザックに放り込んだ。
ザック軽量22.35kg、重いけど夏縦走の訓練と思えば・・・
3:15頃、便ヶ島へ向かう。
心配だったトンネル先の崩落は軽乗用車ならば余裕で通過できた、便ヶ島P到着。
3:30頃、1名が入山していった、この方とはその後会っていないと思う。
4:00 便ヶ島P 970m出発
予定より一時間遅いスタート、登山届投函。
ここからの歩道は崩落の連続、10ヵ所以上崩落していたと思う、
特に足幅ぐらいの狭いステップに命を預けるような危険個所が3ヵ所ぐらいあった。
4:30頃、明るくなり始める。
4:53 西沢渡1098m
昨年夏に設けられた木橋が無い、けれど雪解け時期なので渡渉するという考えもない、
ゴンドラが対岸にあるので引き寄せる、渡り終えるのに13分もかかり腕が疲れた。
偵察のためウロウロしているとM1が下山してきたので挨拶、でも会話をする雰囲気ではない、
この方、躊躇なくロープウェイ付近を登山靴のまま渡渉したのでビックリ、
しかもこの時間に下山?
5:12 西沢渡を出発、造林小屋の後ろに回りこんで九十九折の激急登スタート、
見慣れてしまった登山道だがピンクや紫に咲くツツジの美しさに何度か足を止める、
クマバチがせっせと採蜜しているのを見てもうポイズンリムーバーを携帯する季節と思う。
6:02 ガレの上1400m 夏道
6:39 1600m 暑くてシャツ一枚、汗で濡れる。
7:16 1800m 夏道
7:30−8:00 1920mで休憩
大木の広場で休憩を取りたかったが場所が分らない、しかたなく登山道脇に腰を下ろす。
カツ丼に手をつけるものの食欲が湧かず半分残す。
濡れたシャツに汗冷えして寒い、ここから汗を掻かないペースで歩いてシャツを乾かそう。
微かに声?いやラジオの音が聞こえる、どうやら付近で休憩している人がいる。
歩き始めるとラジオの主、M1W1Pの方が休憩を取っていた、
時間切れで聖岳を諦めて下山中とのこと、
トンネル先の崩落について先行者に聞いたらしく便ヶ島から脱出できるか心配していた。
昨日聖平小屋に泊まったM1の方が聖岳にアタック中とのことだった。
8:23 苔平2050m
1800mぐらいから雪が現れ2000mを越えると腐れ雪道、たまらずワカン装着。
トレースは4名分以上あるはずなのにアイゼントレース1名分しか見当たらない、
始めはトレースを忠実に辿っていたが雪が腐ってワカンでも踏み抜いてしまう、
たまらず日の当たらない場所を選んで適当に登る、
2070mを越えた辺りから登山道?と思うほど荒れており、
樹木や倒木が邪魔になって凄まじく歩きにくい、
さらに根元や倒木下で雪が空洞になっており足元が崩れると腰丈まで落下する、
勢いついて片足だけ落ちようものなら捻挫や骨折するかもしれない。
10:24 薊畑2400m到着。
薊畑に到着すると南東方向に上河内岳がドーンと現れ、北方向には聖岳がそびえる、
頂上付近で1名の方がアタックしているのが見え、山頂に隠れるまで見送った。
計画では樹林帯に幕営予定だったが思っていたよりも人出が多いので
注意されかもしれないと思い込んで聖平小屋で幕営することに変更した。
ここで残りのカツ丼を食べて出発10:46。
薊畑下の雪原で3名分くらいのトレースを確認することができた、
それらのトレースもいつの間にか1名分だけになり、見覚えの無い樹林帯が続く、
雪が深いのでたまに踏み抜くけれど下りなのでワカン歩行が快適、
思いがけず聖平小屋の裏手に出たのでワープしたような気分になった。
11:04 聖平小屋2260m到着
小屋周辺を偵察、冬季小屋の前には焚き火の跡、小屋を覗き込むと誰も居ない。
(帰宅後写真を見て登山靴があったことに気付いた、誰かいたのかもしれない。)
ツェルト設営スタート
設営時間に拘らず自分の納得いくまで何度も固定をやり直す、一時間以上かけた。
練習はもちろん役にたったが、実際設営するのとは大違いだった、12:22設営完了。
反省点
割箸ペグを固定する紐が長すぎる
ポールを立てる紐が短すぎる
ペグを引っ張る方向と埋める深さがポイント
陽が射して暖かく、だだっ広いテン場に1人っきりは最高に気持ちのよい時間だった。
水を求めて沢を覗きこむものの雪に覆われて流れが無い、
諦めて雪を溶かすことに、さてどこの雪を使おうか悩んだ、
小屋付近は誰かキジを打った可能性があるので×、樹木の付近も最適な小キジ場だろう、
結局広いテン場のど真ん中、表面は汚いのでスコップで掘り起こして純白の層を切り出す。
二回に分けて1Lの水が完成した。その直後12:50頃、Aさんが小屋に到着した。
しばらくAさんと談笑、GW前半は仙丈へ、昨年のGWは上河内岳に登られたとのこと。
Aさんが沢沿いに水流の音が聞こえる場所を発見、でも雪が崩れる可能性があるので保留。
13:30過ぎにBさんが到着すると小屋泊の人数が増えたこともありAさんは再び水場に挑戦、
見事に雪に穴をあけ水場を掘り当てた。三人で沢の水をいただく、これは旨い!
沢の水で具沢山カレーを作る、作った水は洗浄用にする。
今回は面倒な炊飯ではなくアルファ米、15:00調理完了、カレーとビールが超旨い!
食事しながらのマッタリタイムが最高、食事中にM2Pの方々が到着した。
15:30トイレがどんな様子か偵察に行くと冬季用トイレのドアは雪に埋もれていた、
この程度なら掘り起こせると思い訓練のつもりで雪かきする。
思ったよりも大変で腰が痛くなる、とくに下層の雪がカチカチに凍りついて叩き切るのが
大変だった。
その後AさんBさんと3人で暫く談笑、Aさんは登山歴8年だったかな、とにかくベテラン、
Bさんは新年に池山吊尾根に登ったというベテラン、18時近くまで話込んだ。
もうそろそろ寝ようというころスキーヤーの方が到着、この方、北の方へ向かうという、
聖を越えて赤石を越えて北の方へ、世の中には凄い人がいるものだと思った。
今夜、冬季小屋泊はAさんBさん、それにM2Pとソロスキーヤーで5名、
自分を含めると聖平小屋6名の宿泊ということになる。
18:30ぐらいには寝入ったと思う。
【5月3日(土曜日)】
23:30自然に目が覚めた、静寂な夜のおかげで一度も目覚めずに爆睡できた、
ツェルト内は4℃ぐらいで幕内は結露、
装備を濡らさぬよう起き上がる前にタオルで拭き取った、
幕外は霜付いていており気温は氷点下だったろう、足元の雪は締まっている。
風が無いので身体を動かしていれば手袋なしでも過ごせる気温だった、
ツェルトは狭いが思ったより快適でこれならもっと寒くてもいけそうだ。
ギラつく星空を見てやる気まんまん、予定通り御来光目指して登ってみることにする。
ヘルメットにヘッデンを仕込んでいたらワイヤが切れた、
これまで入山前に切れたことがあったが現場で切れたのは初めて、
修理して使ってきたけれどこれで引退だな・・・。
真っ暗闇で何も見えないので手さぐりでデジカメを見つけ、
液晶画面の明かりを頼りに予備ヘッデンを探り出した。
1:40聖平小屋2260m出発
予定より10分遅れてスタート、
冬季小屋に泊まる人々の睡眠の邪魔にならないよう静かに歩く、
小屋の裏から登り坂に取り付く、雪が締まってアイゼンが良く効き踏み抜くことも無い、
スキーヤーのトレースを辿りながら思ったより早く薊畑に着いた。
テント、スコップ、予備食料などをバッグに詰めてデポ。
2:23 薊畑2400m出発、北西に進むべきところを間違って北へ進んでまう。
軌道修正のため西側へ直登すると1名のトレース発見、あとは追従するだけで気が楽だ。
尾根を西へ迂回するところで足場の雪が突然崩れて空洞へ落ちた、
怪我が無くてよかったが雪面が腰より高かったので脱出するのが大変だった。
西側崩壊地の上部を越えて尾根上に達し、すぐに尾根を跨いで東側の樹林帯を下る、
ここからの樹林帯は木々が邪魔になって歩きにくい、
正規の登山道は東側の樹林帯を横切っていると思われ、ここは冬季ルートだと思った。
樹林帯を抜けると聖平小屋へ繋がる沢筋の雪原を越えて尾根へ登り返す。
3:35 小聖岳2662m
ここまで樹林帯通過で難儀したがここからは森林限界、直登すればコースタイムよりも
早く登頂できると考えていた・・・が、それはとんだ見当違いだった。
予想外のナイフリッジが現れてストックからピッケルに装変、
暗闇のナイフは恐怖で一歩一歩慎重に、
幸いなことにピッケルがよく決まる雪質で根元までしっかり刺さった。
(暗闇で恐怖に感じたナイフだったが帰りはそれほど怖くなかった。)
正面の東斜面は危険なトラバース、西側の尾根は激急斜面という場面でトレースが無い、
どちらに進むべきか暫らく悩んだが、正面にトレースが無いのだから尾根上にあるのだろう、
尾根に向けて壁のような斜面をキックステップで直登、これまで経験したことの無い斜度だ、
ピッケルがよく効いて登り上がることができた、やはりトレースは尾根上にあった。
(正面のトラバースはたいした危険ではなく帰りは余裕で通過できた)
尾根を越えてやっと聖岳へ取り付くことに、頼りのトレースは岩場を越える度に見失う、
夏道の九十九折は雪に埋もれているのでルートは自分で切り開くしかない。
「グゥワァ、グゥワァ」どこからか雷鳥の鳴き声が聞こえるが姿を見せることは無かった。
アイゼンは効くけれどピッケルが刺さらない、雪面の下が凍りついている。
ときには這松を掴んで登ってゆく、明らかに自分の経験レベルを超える斜面だった。
日の出時刻が近づいて地平線が赤く染まり富士山のシルエットが強調される、
急がないと御来光に間に合わないが、疲れきってペースを上げようという気にはならない。
東寄りに進めばせめて日の出が見えるかもしれない、
期待を込めて東へ進んでみるも岩場で行き詰まる、
この岩場を越えたとしてもその上の斜面はとても登れるものではない、
諦めて少し戻って西へ転進した。
岩場を越えると頂上へ向けて最後の雪面、ここはトレースがはっきりしており登りやすい。
4:50頃、日の出の時間を迎える、逆光の富士山、朝日に輝く上河内岳が美しい。
山々の間を二本の白い線が巡り、しかも立体交差している、
あれは雲?風の流れ?光の屈折?あの現象は何だったのだろうか。
山頂直前でついに太陽が現れた。
5:09 聖岳3013m登頂
陽の光が雪面に反射して輝いている、
兎岳、小兎岳、中盛丸山、大沢岳、百間平−馬の背、赤石岳・・・、
昨年夏に縦走した山々は雪化粧、
御嶽山、中央アルプス。赤石岳西斜面の向こうに見える大きな山は塩見岳か仙丈ヶ岳か?
富士山、上河内から光岳の稜線もよく見える。
奥聖岳に行こうと思ったがトレースが無い、
弱かった風がどんどん強くなって体が煽られるようになった、
予定よりもだいぶ体力を消耗している、奥聖岳は諦めることにしよう。
山頂標識は雪に埋もれている。
だれも居ない独り占めの山頂、時間はたっぷりある、
すぐに帰りたくなかったので一時間ぐらい山々を眺めていた。
6:05 下山スタート、さようなら聖岳、また登らせてください。
やはり登りより下りの方が難儀した。
上部の雪原こそ順調に下れたが急斜面になると雪の上を歩くのが怖い。
岩場になるとトレースも無く自分がどこを登ってきたのか判らない。
岩と岩の間に凍った雪面があるのでピックでホールドして慎重に降りた。
ここでBさんとすれ違い、アイゼンワークを教えていただいた、
この斜度の雪面なら正面向いて下れるとのこと、
ここでいきなり実践するのは怖いので下の緩い斜面で練習することに、
Bさんどうもありがとうございます。
話を終えて振り返るとBさんはもう10mぐらい上を登っている、速い!
会った覚えの無いM1の方とすれ違った後Aさんとすれ違った。
その後、小屋に泊まっていたと思われるM2Pの方とすれ違う。
難所を越えたところでBさんに教えてもらった歩き方を早速練習する、
このアイゼンワークができれば、岩場を避けて歩くことができそうだ。
後ろを振り向けばBさんがもう追いついている、風が強いのですぐに下山してきたとのこと。
Bさんの歩き方を後ろから観察したがとにかく速い、あっという間に小さくなってしまった。
登りで回避したトラバース、昼間は全く怖くない斜面だった、
よくわざわざ尾根に直登したもんだと思えるくらいトラバースのほうが楽チン。
直登したときのキックステップは気温が上がったせいかすっかり消え去っていた。
ナイフも昼間になるとまったく怖くない、ナイフリッジというよりナイフっぽいという感じ。
小聖岳でBさんが休憩を取っていたので写真を撮っていただく、ありがとうございました。
Bさんは光岳を目指して聖平へ続く沢筋をダイレクトに降りるとのこと、ここでお別れ。
別れて歩き始めた直後「ザザザザー」という音に振り返るとBさんが滑り落ちてゆく!
「滑落?」一瞬青ざめたが、よく見ると華麗なシリセードだった、
カメラの電源を入れる間もなく遠く離れてしまったが、最後に手を振り上げてくれた。
この時期に聖岳−光岳を縦走するにはBさんのような機動力が必要だろう。
薊畑でパッキングしているとAさんが追いついてきた。
早々とパッキングを済ませてAさんは先に降りていった。
ここからは苦行、
これまでにない疲労感を覚え400mおきに休憩をとりながらゆっくり歩く。
いま思えば、富士滑走、御嶽ゲレ滑走の疲れが抜け切れておらず、しかも寝不足スタート、
調子が上がらないのも頷ける。
尾根では多くの方々とすれ違う、憶えているだけでM1×3、M1W1×3、M5W1P、M2P。
西沢渡に到着するとまたゴンドラが対岸に・・・疲れ切って引き寄せる気にもならない。
Bさんが滝の付近なら石伝いに渡渉できると言っていたので渡渉点を探すことに・・・
しかしどう見ても簡単に渡れそうな場所は見当たらない。
大ジャンプを試みれば渡れそうだが20kg近いザックを背負ってコケたら・・・
濡れる程度なら構わないが骨折でもしたらしゃれにならない、
迷ったあげく靴を脱いで渡渉することに、笊ヶ岳以来の渡渉・・・
これも訓練だと思えば貴重な体験に思えてそれなりに楽しめた、
水位は見た目よりも深く膝丈、ストックは水圧を受けて流されそうになる。
ここから便ヶ島までが最後の難関、疲れ切った体に崩壊地は本当に酷だった。
崩壊地は数十ヵ所あったと思うが、そのなかでも油断できないのが10ヵ所ぐらい、
足幅ぐらいのステップに命を預ける超怖い場所が3ヵ所ぐらいあったと思う、
もし滑落したらザレ急斜面を数十m滑り落ちて最後は河原へ数m落下するという感じ、
生還できるとは思えない。せめてお助けロープさえ設置してくれれば・・・
ザック計量18.15kg
自分の実力を越えるコースだった。
とても滑落停止訓練をせずに挑めるコースではない。
これで今シーズンの雪山終了、来年はもっと心技体を鍛えて挑みたい。
コメント
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1000leavesさん、はじめまして。
下山中に便ヶ島の登山口近くでいろいろとお話をうかがったものです。
その節は有用な情報をありがとうございました。
またお疲れのところ車まであと少しのところで時間をとらせてしまい申し訳ありませんでした。
私は便ヶ島の到着が遅れてこの日は出発をあきらめ光岳に行こうかと思案してましたが、1000leavesさんの情報も加味して結局翌日聖に日帰りすることにしました。
おかげさまで翌日なんとか達成することができました
でも朝の素晴らしい写真を拝見するとやはり山中に泊まりたかったと悔しい思いをしております
次こそは!
Kanosukeさん、どうもこんばんは。
いやぁ、まさか日帰りで登頂されるとは思いもよらないことでした。
あの日、遅くなったため登山を控えたという慎重な決断に共感しましたが、
翌日に日帰りを決行されるとは・・・慎重なんだか無茶なんだか・・・。
しかし過去ログを見させていただくと経験に裏打ちされた健脚の持ち主と判り、
なるほどと感心しております。少し健脚程度の人は決してマネしないほうが良いですね。
一見30代の方かなぁと思っていたのですがプロフィールを見て驚きです、先輩でした。
データを素直に分析すれば、黒戸尾根、笊ヶ岳よりも厳しいコースを
より負担の大きい残雪期に日帰りされたということになるのでしょうか。
70Lザックの重量も大変気になるところです。
光岳は北西斜面になるのでより残雪の悪影響を受ける気がしますが、
いまのところ情報が無いので難易度は謎ですね。
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