空木岳 日帰り(しらび平〜駒が池)
- GPS
- 11:33
- 距離
- 20.9km
- 登り
- 1,361m
- 下り
- 3,135m
コースタイム
- 山行
- 10:28
- 休憩
- 1:03
- 合計
- 11:31
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
https://www.shinnan.co.jp/hb/hb01_1.html 駒ヶ岳ロープウェイ http://www.chuo-alps.com/ 赤穂タクシー こまくさの湯から駒ヶ根インターバス停まで,約5分,1100円+予約料180円 http://www.akaho-taxi.com/ |
コース状況/ 危険箇所等 |
明瞭 極楽平から檜尾岳への稜線でハイマツが茂っていてやや不明瞭な部分がある。 空木岳から池山小屋までは登山道の保全のために当日も10数名が作業されており, 2年前も同様であったが,大きな石に段差を彫り刻んだり,大変手入れされている。 |
その他周辺情報 | 明治亭駒ケ根店 信州産ロースソースかつ丼 1340円(外税) 信州産ひれソースかつ丼 1445円(外税) ご飯大盛り 100円増し(外税) http://www.meijitei.com/komaganeten.html 駒ヶ根キャンプセンター 5人用テント 4630円 シュラフ 510円 http://www.komacamp.jp/ 信州駒ヶ根高原 早太郎温泉 こまくさの湯 610円 http://www.komakusanoyu.com/ |
写真
感想
【登山コースの選定】
息子がテント泊での山行を計画しており,便乗した。
いつもと同様,行先の候補をいくつか列挙し,天候などの条件から前日に決定する。今回は,土曜日の午後に自宅を発ち,登山口近くでテント泊し,翌朝日帰り登山し,日曜日のうちに帰宅できること,紅葉を楽しめることが条件。
候補として,1.北岳〜間ノ岳,2.空木岳,3.谷川岳,4.瑞牆山と金峰山。
幸い週末はどの方面も快晴が見込まれた。
北岳〜間ノ岳が第一希望だったが,甲府から広河原までのバスが土曜日の早朝しか運行されていないために諦め,空木岳に決定。
空木岳は,息子は初めてだったが,2年前のお盆過ぎの登山日和に2泊3日で木曽駒が岳,宝剣岳,空木岳と縦走して,2泊の山小屋でご一緒になった方たちとの心温まる触れ合いと,雲一つなく稜線がどこまでも続く爽快感。下山の道すがら駒峰ヒュッテの管理人さんに,紅葉の盛りのヒュッテからの眺めは筆舌に尽くしがたい,と教わったこと。ぜひ紅葉の時期に再訪したいと思っていた。
今回の山行で常に気にしなければならなかったのは時間である。2年前には木曽殿山荘泊りで歩いたコースを今回は日帰り登山,公共交通機関利用のために制限がいくつもある。日曜日のうちに帰宅するために,下記のポイントがあった。
1.土曜日,高速バスで駒ヶ根インターBSに午後5時半に到着(渋滞のないことを祈る)
2.行列で有名な明治亭のソースかつ丼を食べる(1時間待ちがざらにあるとか)
3.駒ヶ根キャンプセンターに午後7時に到着
4.日曜日,ロープウェイのしらび平駅行きの始発バスが駒ヶ根駅から午前5時に発車するので その始発バスに必ず乗車する
5.バスに接続しているロープウェイの始発便に乗る
6.千畳敷駅に到着したら,登山届を提出し,午前6時30分には山行スタート
7.山と高原地図のコースタイムによると空木岳まで7時間20分(休憩なし)なので,
空木岳山頂到着は午後1時50分
8.同じく,空木岳からゴールの駒が池までは5時間05分なので,午後7時ころゴール。
9.駒が池から高速バスの駒ヶ根インターBSまでは3km弱,徒歩40分を見込む。
予約した最終便は午後7時50分発
10.新宿駅到着予定午後11時03分
1〜10まで滞りなく進捗していくかどうか,もしも予定通りに進まなかったときの代替案も考えた。
4.5.
始発のバスに乗車できなかった場合,そのままロープウェイも始発便に乗車できないので,駒が池から空木岳をピストンするコースに変更する。稜線歩きを堪能できないが,駒峰ヒュッテからの展望を楽しめる。ただ,同じ登山道を往復するのは避けたいが,時間的に無理だと分かった時点で,山頂を諦めて折り返し下山し,確実に帰りの高速バスに間に合わせることができる利点もある。
(さらに道路も渋滞していた場合,ロープウェイを往復利用して,宝剣岳,木曽駒が岳を周遊するコースも考えた。が,ロープウェイの帰りの便が2時間半待ちだとわかり,その計画はなるべく避けたいと思った。)
7.8.
2年前の記録では,空木岳まで8時間40分,空木岳から5時間15分かかっていた。空木岳までは小屋で同宿の方々と歓談および写真撮影しながらだったので,その時間をどれだけ縮められるか,空木岳から下りは2年前も,温泉でゆっくりしたくて急いで歩いたので,やはり5時間強かかるのは短縮できそうにない。
コースタイム通りに休憩なしで歩き通すことができた場合には日曜日のうちに自宅に帰ることができるぎりぎりの山行計画,さらに,ゴールまでの1時間半は日没後の足元不如意の状況。
代替案として,ゴールの駒が池の3km手前の林道終点で,タクシーの送迎を利用する(1時間短縮できる)。さらに,タクシーに乗っても高速バスの最終便に間に合わない場合,深夜になってもヘッドランプで駒が池までは下山し,ホテルに泊まる。そのために予めホテルに依頼しておいた。(さらに遅れて下山できなかった場合,池山小屋で夜明かしする。シュラフは持参しないので,レインウェアなどすべてのウェアを着込んで。)
いずれにしても,池山小屋を通過する時間で最終判断し,タクシーを予約したり,高速バスを翌朝の始発便に変更する手筈を整えた。
〈宿泊先について〉
下調べはしていたが,行先決定は前日になり,手ごろなホテルはすべて満室。駒ヶ根ユースホステルのドミトリーも男性1人分の空きのみ。テント泊の予定で調べていたときに,駒ヶ根キャンプセンターが立地的にも便利で,持ち込みテント(1人1000円)だけでなく,常設テント(5人用4630円)も利用できることがわかった。さらにツリーハウスも常設テントとあまり変わらない料金であり,寒さに弱いのでツリーハウス(5人用7200円)を希望した。管理人さんによると,当日はコテージ利用客ばかりで,5人用の常設テントやツリーハウスのサイトは200mほど奥にあり,闇の中不安になるかもしれない,5人用の料金で10人用の常設テントを用意しますので,10人用ならば管理棟のすぐそばで,炊事場やトイレも近いので安心いただける,と提案されて,有難くお受けした。
時間優先でホテル泊りも考えたが,結果的に当初の予定のテント泊になった。
情報を集めているときにわかったことだが,山行当日の日曜日には,駒ヶ根ハーフマラソンが開催され,そのために高級旅館をのぞいてホテルは満室だった。
<ロープウェイしらび平駅行きのバス>
これまでに千畳敷の駒ヶ岳ロープウェイを利用した山行を2回経験して,JR駒ヶ根駅からロープウェイしらび平駅までの路線バスの始発はとても混雑すること,黒川平から先が一般車進入禁止のため大駐車場のある菅の台バスセンターでは大勢の方が早朝から数百人行列されること,補助席を使って乗車できる人数しか乗せないので,始発バスは菅の台バスセンターの行列の方たちを乗せずに素通りすること,始発バスのあとたくさん増便されるけれど,始発バスよりも早くは到着しない,始発バスに乗った人がそのままロープウェイの始発便の列に並ぶ。ロープウェイの始発便はしらび平駅午前6時発,千畳敷駅午前6時07分着。
さらに,前述の駒ヶ根ハーフマラソンにより,午前6時から交通規制が敷かれ,始発バスの次の1時間後の便から影響を受けることもわかった。
千畳敷を午前6時30分にスタートするにはどうしても始発バスに乗らなければならない。これまで同様,菅の台バスセンターよりも手前のバス停,今回は切石バス停から乗車する。
<荷物の軽量化>
常設テントおよびレンタルのシュラフを利用できることで荷物が軽くなった。朝食はテント内でしっかり食べ,昼食はパン,チーズ,柿,蒸かし芋,行動食に好物の甘味,ゼリー飲料などを用意した。飲み物は,一人1〜1.5ℓ。水場が数か所ある,ただし,木曽殿越近くの水場はとても美味しいけれど,往復20分弱の時間的余裕は見込めない。木曽殿山荘と駒峰ヒュッテの営業小屋で足りない分を補充する。
さらに今回はこまくさの湯に入る時間がとれそうにないから,最低限の着替えしか持って行かない。
ヘッドランプの電池の予備だけは必需品。
【登山前】
土曜日高速バスのバス停に向かっている頃,実家の母から木曽御嶽山噴火の知らせ,私たちの山行の心配を問うメールが届いた。そのあと知人からもいくつか。詳細はわからなかったが,千畳敷のロープウェイは通常通り運行されていること,御嶽山から30km離れていることなどがわかり,そのままバスに乗車する。
駒ヶ根インターに定刻通り到着。朝食は途中の双葉SAで調達。峠の釜めし,おにぎり,サンドイッチなど。
夕食に地元の名物ソースかつ丼を食べてみる。予め評判の店を4店舗メモしておいたが,行列覚悟で発祥の店,明治亭の駒ヶ根本店を訪ねる。インターから400mと近かった。もしも1時間以上待つ場合は,諦めてまず宿泊先にチェックインし,荷物をおいて菅の台バスセンター近辺のいくつかの候補に向かうつもりだった。
行列は20名ほど。意外と10分待ちでテーブル席に着席。実は,カツ丼はあまり好みではなく,さらに味の濃いものも苦手,以前仙丈ケ岳に登るときに食べたソースかつ丼は美味しくなかった。でも,せっかくだから,と食べてみたら,あっさりしていて,大量のキャベツのおかげで胃もたれもせずに美味しくいただけた。息子が大盛りにしたけれど,食べきれないというので,それも食べた。食べ終わる頃には,さらに混雑してきて,マラソン大会出場者らしき方々が胃袋を満たしに来られていた。私たちも翌日の長時間の山行の準備は万全になった。
キャンプセンターでは親切に手配していただき,無料のシャワーも利用し,寝袋も冬用だったので,レンタル毛布を追加しなくても気持ちよく朝まで眠れた。すぐそばのBBQコーナーで,コテージの泊り客が賑やがだったが,眠る頃にはひっそりして,10人用テントでゆうゆうと過ごせた。
日曜日午前4時に起床,午前5時に駒ヶ根駅を始発で出るバスに切石バス停から乗車。宿泊先からは切石公園下バス停が最寄であったが,その近辺にはいくつかホテルがあるので,念を入れて,もうひとつ手前のバス停まで歩く。実は,キャンプセンターでプラティパスに水を補充するのを忘れて,途中で気づき,自動販売機を探しながらバス停1つ分歩いたが,見つからなかった。
バスは菅の台バスセンターの手前の駒が池バス停で大勢乗ってこられて,ほぼ満席。菅の台バスセンターは予想したよりは少なく(やはり御嶽山の影響があったのか),それでも150名ほどの行列。でもバスは素通り。次のバス停で10名ほどを乗せて,補助席も埋まり,そのまましらび平駅まで。
ロープウェイの始発便の行列に並ぶことができた。発車までにロープウェイの乗車券と,自動販売機で飲み物を購入。500mlのペットボトルが200円。
この日は混雑日のために,9分間隔で運行。
だが,始発便が予定時刻の午前6時よりも7,8分遅れて発車,千畳敷駅到着が午前6時15分くらいになる。まずトイレに向かって,うっかり着込んだままだったタイツを脱いでトイレから出ると,トイレは男女とも行列。登山届を急いで記入して,予定通り午前6時30分にスタート。
千畳敷から見上げる宝剣岳方向や私たちの登る先も快晴のように見える。でも,初めて木曽駒が岳に登った時は,雲一つない千畳敷カールを登り切ったら,風雨が強く10m先が見えない状況に驚いた。
今回の山行の天候と安全を登山口の神社で祈った。
【登山】
始発便の乗客は観光客よりも登山客が大半であったが,皆さん木曽駒が岳コースのようで,空木岳に向かうのは僅かであった。雲一つなく,時折心地よい風,そういえば今回は一度も汗を拭うことはなかった。
極楽平に登り詰めてから空木岳山頂までの間ずっと,右手に噴火する御嶽山がくっきりと,左手にはおぼろげに富士山が見渡せていた。気持ちのよい稜線歩きで,ある程度のアップダウンはあるものの苦にはならず,疲れもせず。
宿泊の問い合わせをしたときに,あるホテルの方が,千畳敷の紅葉は翌週の方がピークで,見頃まで1週間早いですよ,と教えてくださったが,本当のピークを知らないだけかもしれないが,赤く色づく葉は真っ赤に染まり,黄色く色づくものは黄金のよう,常緑樹は瑞々しい緑色,花崗岩は白く,空は真っ青,私の目に鮮やかな紅葉が焼きついた。稜線歩きになると一部茶色に枯れかかっているものも見えたので,千畳敷カールは茶色がまったくなく,今が盛りの紅葉であった。
前述した通り時間がぎりぎりで,空木岳山頂までをコースタイム通り7時間20分で歩けるか,欲を言えば,1時間短縮して,下山時のヘッドランプ歩きを避けたい。常に時間を気にしながら,でも紅葉の美しさに感動しながら,気持ちよく稜線歩きを楽しんだ。残念ながらコースタイム通りでしか歩けず,熊沢岳から木曽殿山荘,空木岳山頂まででわずか短縮出来て,空木岳山頂で35分の余裕が出来た。が,写真を撮っていただいたり,柿と蒸かし芋で空腹を紛らわせたり,一期一会の会話を楽しんだりしていたら,あっと言う間に余裕時間もなくなった。
山頂には駒が池コースを登ってこられたと思われるパーティーが何組かいらした。幼い子供連れもいらして,あの長い尾根を登ってこられたかと思うと感心した。
その時に伺った,何年か前に木曽殿山荘で定員の5倍の400名で宿泊を断られて,夜通し歩いて下山された話には驚いた。400名って,食堂なども開放して受け入れられたことでしょう。
いつまでも歓談していたかったが,急いで下山にかかり,なんとかヘッドランプを使いたくなかった。山頂直下の駒峰ヒュッテは,管理人さんが自慢されただけあって紅葉の展望ポイントだった。極楽平からずっと歩いてきた稜線の山肌が美しく染まっているのがすべて見えた。しばし見惚れていた。
息子はヒュッテに立ち寄り,水を購入し,管理人さんとお話した。始発のロープウェイで空木岳に登頂し駒が池まで縦走して,今夜中に新宿行のバスで帰宅する予定に驚かれたそうだ。息子が,ここまでの道のりをコースタイムぴったりでしか歩けなくてあせっている,と話すと,山と高原地図のコースタイムはかなり厳しい設定で,健脚自慢の人がずいぶんタイムオーバーしてがっかりされている,コースタイムで歩ける方が素晴らしくて珍しいことですよ,と言われたそうだ。また,管理人さんのご親族が御嶽山の噴火当時山頂にいらして,怖い思いをしながらも無事に下山された話を伺った。
下山路は長距離で標高差も2000mあるが,快適に順調に進んだ。持参したストックを使用するのをうっかり忘れていたくらいだった。ただ,駒峰ヒュッテからタカウチ場までは息子を先に進ませた。GPSは息子の記録で,私は15分ほど遅れてタカウチ場に到着した。
帰宅のための最終判断をする池山小屋には予定よりも1時間早く到着し,なんとか真っ暗になる前に駒が根高原の灯りのあるあたりには到達できるのでは,という目処がついた。林道終点でマイカーが7,8台駐車してあり,ここでゴールの人が羨ましかったが,気力はまだまだ残っており,さらに,こまくさの湯に1時間ばかり立ち寄れそうで足取りが軽くなった。やっとスキー場のすすき野原が見えてきたが,そこからが思ったよりも時間がかかった。
こまくさの湯が見えてほっとして,無事に歩き通せたことに感謝した。
【登山後】
こまくさの湯はゴールの駒が池から山に向かって奥にあり,駒ヶ根インターBSまで思ったよりも時間がかかりそうなので,タクシーの予約をしてから温泉に入った。おかげで1時間半ゆっくり休憩がとれることになった。
タクシーでバス停に到着すると,数組の登山客,皆さんお疲れ様,紅葉の一番よい日に山行できてよかったですね,という気持ちになった。ところが,新宿行きのバスが20分遅れて到着,さらに日曜日の恒例の渋滞のために,この先もかなりの遅れが予想され,新宿到着は1時間遅れかも。となると,新宿駅からの帰宅の足がないことに不安になる。経路を変えたり深夜バスを調べたりしていると,小仏トンネルで渋滞30分,さらに事故も発生,とひやひやし通しであった。最終的には運を天に任せて,どうしようもない場合は歩いて2時間で帰宅する,と腹をくくる。幸運にも30分遅れですみ,自宅まで電車で帰りつくことが出来た。今振り返れば,いったん覚悟したものの,新宿から2時間歩くのは無理だったことだろう。
【感想】
念願の,紅葉の盛りの空木岳の稜線歩きは,想像していた通り見事な景色で感動した。紅葉は日射しに照らされてこそ映える。お天気に恵まれたことも幸いした。空木岳はお気に入りの山のひとつになった。2年前の時から,息子に勧めていたが,今回一緒に堪能できた。キャンプや登山に慣れている息子が一緒だったので,日帰りの強行登山であったが,綿密な計画とともに,予定通りにいかなくても安心だった。
来シーズンは飯豊連峰縦走などを考えているので,避難小屋泊りを想定して,やや大きめのザックを新調し,今回の山行で試した。最初はなんだかしっくりこなかったが,下山する頃には馴染んできた。シュラフ,カバー,マット,食料を加えると,かなりの重さになるだろうから,その重さを担ぐ筋肉をつけることが今後の課題だ。ここ最近の山行で,12時間程度のコースならば一度も座らずに歩き通せる持久力を確認できたことは収穫だった。夏山シーズンが終了しても,身体の鍛錬に日々励みたい。
【御嶽山噴火について】
上記のとおり,快晴の紅葉盛りの稜線歩きは想い出に残る山行となった。が,常に右手に見えていた御嶽山では噴火の勢いが衰えず,噴火後5日経た今日でも詳細は掴めず,現在わかっている47名の亡くなられた方は,ほぼ損傷死だとか,秋晴れの御嶽山の紅葉を楽しみに無理のないコースで登ってこられて,突然の災害に命を絶たれた無念,未だに発見されていない遭難者も予想される。また,山頂にいらして命からがら下山されてこられた方たちの,いろんな恐怖に何度も絶望しながら,満身創痍で辿り着かれた。情報が明らかになるにつれ,本当に痛ましく,遭難者ご本人だけでなく,ご親族の心痛は如何ばかりかとお察しする。遭難救助に尽力されている自衛隊や地元の警察消防,関係者の方々のご苦労も並大抵のことではない。どうぞ今以上の被害のでないことを祈るばかりである。
私たちは登山を始めて僅か5年ばかりで,まだまだ経験も少ない。最初は気軽に遊歩道や街道歩きを楽しむ程度であった。登山は疲れる,汚い,身体が臭い,などマイナスのイメージもあるが,なぜかそれを補って余りある幸福感がある。心身ともに元気になれる。自分の身体でこんなところまで歩いてこられるという達成感がある。本来人間は歩くものだと気付かされる。
山行回数を重ねるにつれて,人間は自然界の一員だと思い知る。前週の岩手山〜八幡平でも,松川温泉のすぐ近くの登山道のど真ん中に,大きなとぐろ巻の大便の,まだ湯気がたっているのを発見した。おそらく熊であろう。
人間がどんなに技術革命にやっきになっても,自然の力には敵わない。山崩れが起きそうだからと,コンクリートで山肌を覆っても表面だけ。津波を防ぐために巨大な堤防を築いても,予想をはるかに超えた津波に飲みこまれる。
登山のために,新幹線に乗り,さらにそこからバスを2本乗り継いで,登山口の麓に向かう。都会生活から考えたら,日本むかしばなしに出てくるような場所だ。でも,その山麓に宿泊すると,地物の山菜,川魚,美味しいお米,水,源泉かけ流しの温泉,そして空気まで美味しい。心豊かな生活がそこにある。
だが,自然は脅威でもある。1年の3分の1は雪に閉ざされる苦労。雪だけでなく,地震,洪水,津波,台風,,,登山はまさに自然の脅威を切実に体験する場である。
私たち夫婦の故郷はどちらも阪神淡路大震災,東日本大震災で大きな被害を受けた。震災当日は故郷に滞在していなかったが,身近な人が大勢被害に苦しんだ。その時に思ったことは,まずは自分自身を守るために自分で何ができるか考えて,普段から準備すること。自分に余裕ができれば,身近にいる人を手助けする。
登山でも同様に思う。登山のために知識を身につけ,経験を積み,人の助言にも耳を貸す,道具やウェアは命に直結するので納得のいくものを選ぶ,山行前は天候の変化を分析して直前に行先を決め悪天での登山はしない,万一の場合のエスケープルートを考える,登りは3割の体力で余裕を持たせる,山岳保険に入り,登山計画書を提出し,日頃から身体を鍛える。
そのように心がけていても,今回の予知できない噴火には対処できない。御嶽山の山頂でなくても,箱根の大涌谷のような観光地でもありうる。突然の災害には,さすがに動じると思うが,すぱっと諦める境地にもなれるが,家族のことを思うと最後まで必死で生き残るためにもがく。
今回の噴火で,登山することの意味を問う意見も聞こえてくるが,登山のおかげで元気に過ごせている我が家では,これからも登り続けていきたい。安全に,慎重に。
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