おめでとう♪甲斐駒ヶ岳登頂



- GPS
- 18:58
- 距離
- 21.7km
- 登り
- 2,861m
- 下り
- 2,854m
コースタイム
- 山行
- 6:12
- 休憩
- 1:02
- 合計
- 7:14
- 山行
- 9:35
- 休憩
- 1:50
- 合計
- 11:25
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
危険個所なし(一般的な危険個所はある) |
その他周辺情報 | 尾白の湯 |
予約できる山小屋 |
七丈小屋
|
写真
感想
本格的な秋の到来を告げる10月の水曜日の夕暮れ、甲府のアウトドアショップエルクのへルメット売り場で物色している2人の男がいた。
俺と友達で市会議員のSである。Sは大病を患い今後の体力維持の為に登山を趣味とすることにした。そして目の前にずっと見続けてきた甲斐駒ケ岳に登ることを一つの目標にしてトレーニングを重ねて来た。とは言っても市会議員のSは市民相談の数は他の市会議員とは比較にならないほど膨大な数だ。更に議会などの公務も重なり中々休暇がとれない。これまで1年半で編笠山と乗鞍の夏と春の3回だけだ。
自営業である俺は、全く知り合いもいないこの地に引っ越してきて以来どれほど甲斐駒から激励されたことだろう。「揺るぎない信念で堂々たる人生を歩め!」と厳父のような山容から声が聞こえてくる。
大病を患ったSもきっと甲斐駒に激励されていたに違いない。
甲斐駒はそれだけ地元の人々に対して影響力を持つ山なのである。
Sが甲斐駒に登りたいと言った時、俺が手伝うと言った。そして3回のトレーニングを経て今度の金曜日と土曜日、遂に甲斐駒ヶ岳への登山を決行することとなったのだ。
尾白川渓谷の駐車場に車をとめて歩き出した。10月の朝6時の空気はかなり肌寒い。クヌギやコナラの紅葉の向こうから差し込む赤い朝日がキラキラと瞼をくすぐる。
コースは修験道として名高い黒戸尾根。クラシックルートだ。俺としては冬を入れて3回目の黒戸尾根だが今日は記念すべきSとの登山となることから服装もクラシックルートに合せてクラシックスタイルとした。10年以上タンスの中でクリーニング屋の袋に入ったまま眠っていたニッカポッカ。昨夜引っ張りだしてみたら虫に食われてる様子もない。それに合わせてチェック柄の山シャツとウールの厚手のロングソックス。靴もゴローのS8を久しぶりに引っ張りだした。
革の重登山靴は振り子が振るように足が動くので面白い。足元が安定している感覚だ。
Sは前回の残雪の乗鞍では、かなり俺より遅れる状況だったので心配していたが今回は先になってスタスタと歩みを運んでいる。あまりにスタートからスタスタ歩くので逆に心配になる。笹平の分岐あたりから案の定、足取りがヨレてきた。聞くとザックが重いとか言っている。重量を聞くと10kgあると。「メチャ軽いやんかー!」と思ったが彼のプライドを考慮しそれは言わなかった(>_<) この調子で行くと逆に疲労で歩けなくなる可能性があると思われ、刃渡りの手前あたりから俺が先頭でゆっくりゆっくりと歩いて彼をリードした。50分歩いては10分休憩するペースを厳守した。5合目でヘルメットを装着。新品のヘルメットは俺と同じグリベル。但し青色。いそいそとヘルメットを被る姿が嬉しそうだ。
Sは他の登山者にきやすく甲州弁で話しかける。「どっからきたですか?」「へーすげーじゃん」その飾らない人柄に他の登山者も笑顔がこぼれる。
お昼の1時頃、七丈小屋に到着した。Sは今日はもう歩かなくてもいいんだ!助かったーという気持ちとよくここまで来たもんだ!と言う感動が入り混じっていた。
受付を済ませ2階にあがりザックを所定の場所に片付け、シュラフカバーを広げ毛布を重ねていつでも寝れるように準備をして階下に下りた。
やることがないので焼酎を注文した。俺は七丈小屋のスタンプカードが3回目のスタンプを押してもらったのでワンドリンクサービスになるとの事で微妙に嬉しいい♪
食卓で自炊コンロが使えるのも有難い。お湯を沸かしながら焼酎のお湯割りを飲み続けた。朝コンビニで買ってきた摘みなどを食べながら雑談。超ノンビリの時間を過ごした。いい加減酔っ払ったころ隣の席に道を間違えて遅くなったという男性が座った。聞いてみると黒戸尾根のつもりで日向山への道を歩いていたと。「食事の時間に間に会って良かったですねー♪」とそれから山談義で話が弾んだ。聞いてみるとヤマップをやっていると。そこで相互フォローの関係となった。17時から食事。カレーと蕎麦、カレーはお代わり自由との事だったがいい加減食べて飲んでいたのでこれ以上無理だった(>_<)
翌朝、3時半起床し出発準備。昨夜知り合ったよーくん(ヤマップ名)も同じ頃、起床した。俺が階下でSの準備を待っているとよーくんは先に出発して行った。
外は思ったほど寒くない。外のベンチにも霜は降りていなかった。Sのトイレが終わるのを待ってよーくんから遅れること15分後くらいに我々もスタート。
さて、今日は山頂まで登って一気に下山だ。Sの体力が持つだろうかと心配。ゆっくりと俺を先頭に甲府盆地の夜景と天空に浮かぶオリオン座を見ながら歩き始めた。
2本の剣が刺さる大岩の前あたりから東の空に横に一直線にかかる赤い光のラインが生まれた。我々の歩みと共にそれはやがて上空へ黄色い滲みを発生させて天の藍色との間に見事なグラデーションを魅せている。隣の鳳凰三山や北岳、さらに富士山などの山々がシルエットとして浮かびあがった。Sは初めて見る山上での夜明けのドラマに歓声をあげた。
やがて、太陽が顔を出した。光源から無数の光条がこの世に放たれ眼の前の甲斐駒が真っ赤になったと思ったら近くの千丈や鳳凰三山、北岳なども赤く染まっていった。
暫く立ち止まり地球の回転に我々の呼吸を合わせ、ゆっくりと始まる朝に身を置いた。(
)ああ、なんと荘厳な朝に出くわしたのだろう。このクラシックルートで多くの修験者もこの荘厳な朝の中、山頂を目指したのだろうか。などと思いを巡らしていると思わず涙がこぼれた。
ゆっくりと山頂を目指して歩いていると多くのトレランの若者や夜中に登山口を出発したという日帰り健脚の登山者が大急ぎで俺達を追い越して行った。山頂に近づく頃、俺達を追い越していった人々が早くも折り返してきて「もうすぐそこですよー」と声をかけてくれる。
山にはいろんな楽しみ方があるなぁと改めて思う。しかも世代世代で千差万別。それだけ山は大きな許容性を持っているのだろう。
摩利支天への分岐のところで「せっかくだから摩利支天に寄って行こうか?」とSに尋ねると「行かなくていい!もうフラフラだ!」と言うので今回も摩利支天をのがす事になった。山頂に到着してみると小屋を先に出た「よーくん」がいた。よーくんも初めての甲斐駒に感動していた。彼と肩を組んで記念写真を撮った。よーくんが先に下山して行った後、しばらく遠望の北アルプスや中央アルプスなどの写真を撮り、朝食として用意してきたコンビニのおにぎりなどを食べ、7時頃下山を開始した。
下山も七丈小屋での休憩時や下山中の道道で多くの登山者に声をかけながらSは歩いた。
俺はSに言った「君は市会議員になる為にこの世に生まれてきたようなもんだ。分け隔てなく人に声を掛け、それだけ多くの人の声を聴ける能力は素晴らしい。更に世の為に頑張ってくれ!」と(^^)v
15:30頃。フラフラになりながらもながーい黒戸尾根を無事に駐車場へと下山した。
夢にまで見た甲斐駒をやり切ったとSの顔は充実で輝いて見えた。
帰りに俺が設計に関わった「尾白の湯」でひと風呂浴びて、ノンアルで乾杯し、甲斐駒初登山の成功とSの新しいステージへの出発を祝ったのでした♪
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