これは明治43年測図(昭和5年部分修正)の陸地測量部地形図。中央付近の1456.4m峰が今回登る「霧晴」。中宮温泉から霧晴の山頂を越え,親谷の湯付近に降りる点線路が描かれている(もちろん,現在は廃道)。ホワイトロードなど影も形もなかった当時は,険しい蛇谷の谷沿いを避けて,この山が峠道として利用されていたようだ。この古道の痕跡に出会えたらいいな,なんていうのも今回の山行の目的の一つ。(クリックで拡大できます)
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これは明治43年測図(昭和5年部分修正)の陸地測量部地形図。中央付近の1456.4m峰が今回登る「霧晴」。中宮温泉から霧晴の山頂を越え,親谷の湯付近に降りる点線路が描かれている(もちろん,現在は廃道)。ホワイトロードなど影も形もなかった当時は,険しい蛇谷の谷沿いを避けて,この山が峠道として利用されていたようだ。この古道の痕跡に出会えたらいいな,なんていうのも今回の山行の目的の一つ。(クリックで拡大できます)
いつものスペースに駐車。だいぶ雪が溶けたなぁ
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いつものスペースに駐車。だいぶ雪が溶けたなぁ
冬期閉鎖ゲートを越え,白山白川郷ホワイトロードを歩く。予想以上に急速に雪解けが進んでおり,周囲の山々は黒々してしまっていて驚く。一週間前の福井・姥ヶ岳は取り付きから雪があったのに,この変わりようは…。
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冬期閉鎖ゲートを越え,白山白川郷ホワイトロードを歩く。予想以上に急速に雪解けが進んでおり,周囲の山々は黒々してしまっていて驚く。一週間前の福井・姥ヶ岳は取り付きから雪があったのに,この変わりようは…。
いつも雪崩デブリで片斜面になっている箇所も,雪解けが進んでいて容易に通過できた。
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いつも雪崩デブリで片斜面になっている箇所も,雪解けが進んでいて容易に通過できた。
発電所の堰堤は雪解けの大増水で凄まじいことに
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発電所の堰堤は雪解けの大増水で凄まじいことに
中宮の自然保護センターのあたりでようやく道は雪に覆われた。
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中宮の自然保護センターのあたりでようやく道は雪に覆われた。
中宮温泉の三叉路手前の橋を渡った目の前が,霧晴の北西尾根の末端になっており,そこから取り付く。
う,尾根も全然雪がないなぁ…
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中宮温泉の三叉路手前の橋を渡った目の前が,霧晴の北西尾根の末端になっており,そこから取り付く。
う,尾根も全然雪がないなぁ…
この尾根は細いためか,下部は全く雪がない。藪はそれほど濃くなく,獣道らしき薄い踏み跡が走っているのが救い。
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この尾根は細いためか,下部は全く雪がない。藪はそれほど濃くなく,獣道らしき薄い踏み跡が走っているのが救い。
少し登ると,早くもかなりの急斜面となり,しかも両側が結構切り立っているので,それなりに慎重を要する登りとなる。冬靴は泥・枯葉・木の根に対するフリクションがゼロに等しいため,情けないが雪が出てくる前にアイゼンを履かされてしまった。
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少し登ると,早くもかなりの急斜面となり,しかも両側が結構切り立っているので,それなりに慎重を要する登りとなる。冬靴は泥・枯葉・木の根に対するフリクションがゼロに等しいため,情けないが雪が出てくる前にアイゼンを履かされてしまった。
う,岩まで出てきた…。まさかこんなに険しい尾根だったとは。このあたりは灌木が濃く手掛かりが豊富なので,まだ安心して登れる。
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う,岩まで出てきた…。まさかこんなに険しい尾根だったとは。このあたりは灌木が濃く手掛かりが豊富なので,まだ安心して登れる。
今回は完全に油断していてロープ不携帯なので,ロープなしでも撤退可能(=クライムダウン可能)な範囲で進もうと慎重になっていたのだが,しばらく登ってから上部をうかがうと,何となく傾斜が落ち着いているように見える。これに騙されて,自制を越えてちょっと厳しめの岩場を登ってしまった。
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今回は完全に油断していてロープ不携帯なので,ロープなしでも撤退可能(=クライムダウン可能)な範囲で進もうと慎重になっていたのだが,しばらく登ってから上部をうかがうと,何となく傾斜が落ち着いているように見える。これに騙されて,自制を越えてちょっと厳しめの岩場を登ってしまった。
しかし無情にも,その上にはさらに厳しめの岩場が続いていた…。登って登れないことはなさそうだが,万一,途中で詰まった場合にマズイことになるし,これで岩場が終わる保証もない。そして今やクライムダウンもためらわれる場所にロープもなく立たされている。さあ,どうするか…。
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しかし無情にも,その上にはさらに厳しめの岩場が続いていた…。登って登れないことはなさそうだが,万一,途中で詰まった場合にマズイことになるし,これで岩場が終わる保証もない。そして今やクライムダウンもためらわれる場所にロープもなく立たされている。さあ,どうするか…。
岩場の基部は狭いバンド状になっており,試みにそれを右手にトラバースしてみる。写真は,バンドを巻きながら岩場を見上げたところ。
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岩場の基部は狭いバンド状になっており,試みにそれを右手にトラバースしてみる。写真は,バンドを巻きながら岩場を見上げたところ。
こりゃ無理だろうな〜と思いつつも,そろそろと狭いバンドを回り込んでいくと,なんと奇跡的に緩めの斜面に降りられそうな箇所を発見! 助かった〜。でもここもそれなりに切り立っているので,慎重に。
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こりゃ無理だろうな〜と思いつつも,そろそろと狭いバンドを回り込んでいくと,なんと奇跡的に緩めの斜面に降りられそうな箇所を発見! 助かった〜。でもここもそれなりに切り立っているので,慎重に。
岩場を巻いたあと,抜けてきたバンドを振り返る。バンドがつながっていてよかった。
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岩場を巻いたあと,抜けてきたバンドを振り返る。バンドがつながっていてよかった。
そのあとは,P990の西側に発達した岩場全体を巻くように,岩壁の基部に沿って急斜面を登っていく。
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そのあとは,P990の西側に発達した岩場全体を巻くように,岩壁の基部に沿って急斜面を登っていく。
見上げるような岩壁がけっこう長く続く。まさかこんなに岩壁が発達した尾根だったとは…。
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見上げるような岩壁がけっこう長く続く。まさかこんなに岩壁が発達した尾根だったとは…。
数少ない先人の記録では,この北西尾根の下部を避けるようなルート取りをしており,不思議に思っていたのだが,この岩場を避けるためだったんだなぁ…。今ごろ納得。もう遅すぎるけど。
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数少ない先人の記録では,この北西尾根の下部を避けるようなルート取りをしており,不思議に思っていたのだが,この岩場を避けるためだったんだなぁ…。今ごろ納得。もう遅すぎるけど。
ところでこの岩場,どこまで続くんですかね…。
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ところでこの岩場,どこまで続くんですかね…。
やっと岩場が途切れ,そのままP990に登り上げた。
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やっと岩場が途切れ,そのままP990に登り上げた。
しかしP990の後も,残念ながら既に残雪の切れたヤブ尾根が続いている。しかも結構痩せてそうだぞ…
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しかしP990の後も,残念ながら既に残雪の切れたヤブ尾根が続いている。しかも結構痩せてそうだぞ…
比較的穏やかな箇所を挟みながらも,岩の出た痩せ尾根が断続的に続く。しかし先ほどの岩場ほどの難しさはなく,巻いたり乗っ越したり,何とか無難に通過していける。
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比較的穏やかな箇所を挟みながらも,岩の出た痩せ尾根が断続的に続く。しかし先ほどの岩場ほどの難しさはなく,巻いたり乗っ越したり,何とか無難に通過していける。
ナイフリッジをそろそろと渡る。雪がないのは残念だが,この状況だと雪がなくて逆に良かったかもしれない…。
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ナイフリッジをそろそろと渡る。雪がないのは残念だが,この状況だと雪がなくて逆に良かったかもしれない…。
特に湯谷側が切れ落ちており,万一落ちれば即ゲームオーバー,ノーコンティニュー。
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特に湯谷側が切れ落ちており,万一落ちれば即ゲームオーバー,ノーコンティニュー。
こんな岩がちな尾根だったなんてなぁ…。地形図からは全く想像できなかった。
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こんな岩がちな尾根だったなんてなぁ…。地形図からは全く想像できなかった。
しかし,驚いたことに,こんな険しい尾根の途中で,明らかに人為的な石垣を発見! もしかしたら,霧晴ピークを越えていたと言われる古い峠道の遺構だろうか。このあたりは白山修験も入っていたので,古い社の跡だったりしたら面白いなぁ。まあ,実際は,割と近年の林業遺構ってくらいが相場だろうが…
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しかし,驚いたことに,こんな険しい尾根の途中で,明らかに人為的な石垣を発見! もしかしたら,霧晴ピークを越えていたと言われる古い峠道の遺構だろうか。このあたりは白山修験も入っていたので,古い社の跡だったりしたら面白いなぁ。まあ,実際は,割と近年の林業遺構ってくらいが相場だろうが…
途中,左手にけっこう高い滝を見下ろす。
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途中,左手にけっこう高い滝を見下ろす。
岩が出てくるたびにドキッとするが,近づいてみると割と容易に抜けられることが多い。
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岩が出てくるたびにドキッとするが,近づいてみると割と容易に抜けられることが多い。
痩せ尾根にへばりつくように,天然ヒノキやゴヨウマツが林立している。
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痩せ尾根にへばりつくように,天然ヒノキやゴヨウマツが林立している。
そして,標高1100mくらい,地形図で尾根が若干広くなったところからは,待望の雪尾根となった。
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そして,標高1100mくらい,地形図で尾根が若干広くなったところからは,待望の雪尾根となった。
それまでの険しい尾根が嘘のような,穏やかな残雪の尾根が続く。しかし強い日差しで雪が緩み,沈み込みがあるので,ワカンを履いた。
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それまでの険しい尾根が嘘のような,穏やかな残雪の尾根が続く。しかし強い日差しで雪が緩み,沈み込みがあるので,ワカンを履いた。
この尾根は(その険しさからは信じられないが)けっこう人の手が入っていたようでところどころに切り株もあり,あまり大きな木は多くないが,そこかしこに立派なブナやトチノキ,ミズナラ,天然ヒノキも見られる。
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この尾根は(その険しさからは信じられないが)けっこう人の手が入っていたようでところどころに切り株もあり,あまり大きな木は多くないが,そこかしこに立派なブナやトチノキ,ミズナラ,天然ヒノキも見られる。
標高を上げるにつれて,中宮道の尾根の向こうに,純白の白山の山稜がせり上がってきた。
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標高を上げるにつれて,中宮道の尾根の向こうに,純白の白山の山稜がせり上がってきた。
北側には冬瓜山からシリタカ山の稜線も良く見える。
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北側には冬瓜山からシリタカ山の稜線も良く見える。
12月に登った猿ヶ浄土も,黒い岩壁を帯のようにめぐらせてそびえている。
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12月に登った猿ヶ浄土も,黒い岩壁を帯のようにめぐらせてそびえている。
そして北西尾根を登り切った小ピークに立つと,ようやく目の前にたおやかな霧晴ピークの姿が。
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そして北西尾根を登り切った小ピークに立つと,ようやく目の前にたおやかな霧晴ピークの姿が。
青空へ続くような霧晴ピークへの登り。
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青空へ続くような霧晴ピークへの登り。
振り返れば,山毛欅尾山など。
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振り返れば,山毛欅尾山など。
そして,霧晴の山頂に到着。予想以上に,すっきりとしたピーク!
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そして,霧晴の山頂に到着。予想以上に,すっきりとしたピーク!
360°の大展望。湯谷の頭に続く尾根の途中の一ピークに過ぎないので,眺めは微妙かと思っていたら,そんなことなかった。ひとつの独立峰と呼ぶにふさわしい,素晴らしい眺望だ。
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360°の大展望。湯谷の頭に続く尾根の途中の一ピークに過ぎないので,眺めは微妙かと思っていたら,そんなことなかった。ひとつの独立峰と呼ぶにふさわしい,素晴らしい眺望だ。
当然,目の前には堂々たる白山。四塚山や七倉山,ちょっと頭が見えているのは,大汝峰だろうか。
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当然,目の前には堂々たる白山。四塚山や七倉山,ちょっと頭が見えているのは,大汝峰だろうか。
間名古の頭から大汝峰に続く稜線は相変わらず純白で,美しいねぇ。 おや? もしかして火の御子峰も見えてる?
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間名古の頭から大汝峰に続く稜線は相変わらず純白で,美しいねぇ。 おや? もしかして火の御子峰も見えてる?
西側には加賀禅定道,そして楽々新道の稜線。
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西側には加賀禅定道,そして楽々新道の稜線。
東側には北縦走路の峰々。ちょこんと尖がっているのは,妙法山だ。野谷荘司山も見えるねぇ
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東側には北縦走路の峰々。ちょこんと尖がっているのは,妙法山だ。野谷荘司山も見えるねぇ
その左手に見えている大きな山は,国見岳かな。右肩に覗いているのは,三方岩岳だろう。山腹には冬期閉鎖中のホワイトロードがうねうねと白い線を描いている。
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その左手に見えている大きな山は,国見岳かな。右肩に覗いているのは,三方岩岳だろう。山腹には冬期閉鎖中のホワイトロードがうねうねと白い線を描いている。
そして,やっぱりこの山,笈ヶ岳! この山がきっと綺麗に眺められるのでは,と思って登ってきたが,やっぱりそうだった。
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そして,やっぱりこの山,笈ヶ岳! この山がきっと綺麗に眺められるのでは,と思って登ってきたが,やっぱりそうだった。
笈ヶ岳から仙人窟岳の稜線。真ん中の鞍部は,切り立っていて難所になる箇所だ。
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笈ヶ岳から仙人窟岳の稜線。真ん中の鞍部は,切り立っていて難所になる箇所だ。
この山の素晴らしいところは,北部白山の主要な稜線や山々を,余すところなくぐるりと眺め渡せるところだろう。まさに,「北部白山の展望台」と呼ぶにふさわしい。
ちなみに,山頂にはプレートなどは見当たらず,峠越えの古道を思わせる痕跡も見当たらなかった(残雪の下には,何かあるかもしれないが)。
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この山の素晴らしいところは,北部白山の主要な稜線や山々を,余すところなくぐるりと眺め渡せるところだろう。まさに,「北部白山の展望台」と呼ぶにふさわしい。
ちなみに,山頂にはプレートなどは見当たらず,峠越えの古道を思わせる痕跡も見当たらなかった(残雪の下には,何かあるかもしれないが)。
いつまでも居座っていたい山頂だったが,登ってきた北西尾根をノーロープで下るのは不安が大きいと分かった今,新たな下山ルートを探さなければいけないので,そうゆっくりしていられない。後ろ髪ひかれながらも,下山を開始する。
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いつまでも居座っていたい山頂だったが,登ってきた北西尾根をノーロープで下るのは不安が大きいと分かった今,新たな下山ルートを探さなければいけないので,そうゆっくりしていられない。後ろ髪ひかれながらも,下山を開始する。
北西尾根をしばらく下ったあと,尾根が狭くなる手前で,何とか湯谷側の斜面に降りられそうな箇所を見つけたため,アイゼンを再度装着し,残雪を頼りに尾根を外れ,斜面に入る。なかなかの急斜面なので,ピッケルを構えたまま慎重に,湯谷に向けて下降。さあ,無事降りられるか?
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北西尾根をしばらく下ったあと,尾根が狭くなる手前で,何とか湯谷側の斜面に降りられそうな箇所を見つけたため,アイゼンを再度装着し,残雪を頼りに尾根を外れ,斜面に入る。なかなかの急斜面なので,ピッケルを構えたまま慎重に,湯谷に向けて下降。さあ,無事降りられるか?
途中,幾度か断崖に阻まれたが,その度に下流側にトラバースして降りられるところを見つけ,何とか下降を継続。やっと安心できる傾斜のところまで降りてきた。
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途中,幾度か断崖に阻まれたが,その度に下流側にトラバースして降りられるところを見つけ,何とか下降を継続。やっと安心できる傾斜のところまで降りてきた。
眼下に雪解け水を集めて瀬音を高めている湯谷と,その右岸の林道(地図には記載されていない)が近づいてきた。どうやら無事に降りられそうだ。
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眼下に雪解け水を集めて瀬音を高めている湯谷と,その右岸の林道(地図には記載されていない)が近づいてきた。どうやら無事に降りられそうだ。
湯谷右岸の林道に降り立った。林道は大量の雪解け水で川のようになっていた。
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湯谷右岸の林道に降り立った。林道は大量の雪解け水で川のようになっていた。
降りてきた箇所の湯谷川の対岸には,ちょうど中宮道の階段が見えていた。もちろん,湯谷川を渡る橋は外されている。
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降りてきた箇所の湯谷川の対岸には,ちょうど中宮道の階段が見えていた。もちろん,湯谷川を渡る橋は外されている。
しばらく林道を下ると,中宮温泉の旅館が見えてきた。もちろん,この時期はまだ無人。
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しばらく林道を下ると,中宮温泉の旅館が見えてきた。もちろん,この時期はまだ無人。
くろゆり荘と,その向こうに聳える猿ヶ浄土。
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くろゆり荘と,その向こうに聳える猿ヶ浄土。
猿ヶ浄土の南壁には,落差100mはあろうかという多段の滝がかかっていて,まさに壮観。雪解けのこの時期にしか見られない景観かもしれない。
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猿ヶ浄土の南壁には,落差100mはあろうかという多段の滝がかかっていて,まさに壮観。雪解けのこの時期にしか見られない景観かもしれない。
帰路のホワイトロードは,行きよりもさらに雪解けが進んでいた。そこで見つけた,春のいぶき。
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帰路のホワイトロードは,行きよりもさらに雪解けが進んでいた。そこで見つけた,春のいぶき。
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