ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 6602145
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
白山

【白山】マイナーピーク探訪「霧晴(△1456.3m)」 〜北部白山の隠れた展望台〜

2024年03月30日(土) [日帰り]
 - 拍手
GPS
--:--
距離
13.0km
登り
1,084m
下り
1,097m

コースタイム

日帰り
山行
10:50
休憩
0:00
合計
10:50
6:50
80
駐車地
8:10
8:10
320
尾根取りつき
13:30
13:30
140
15:50
15:50
110
湯谷右岸の林道に着地
17:40
駐車地
天候 曇りのち晴れ
過去天気図(気象庁) 2024年03月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
・ 石川県道53号線(岩間一里野線)と白山白川郷ホワイトロードの起点付近にあるスペースに駐車。だいぶ雪が解けており,7〜8台は駐車できる。
・ 白山白川郷ホワイトロードは冬期閉鎖中。開通期間中は歩行者通行禁止なので注意。冬期閉鎖中も雪崩の恐れのある箇所があるため,特に降雪直後は安易に入らないほうがよい(今は雪解けが進んで特に目立った危険個所はないが,上部からの落雪や落石には注意)。
コース状況/
危険箇所等
 「霧晴」は,中宮温泉の裏手にひっそりとそびえる三等三角点峰(△1456.3m)の点名。山としては「霧晴山」とも呼ばれます。ほとんど登る人のないヤブ山ですが,切り立ったナイフリッジや岩場が連続するピリ辛の尾根を越えた向こうに,360°大展望の残雪の山頂が待っていました。

<積雪状況>
・ この一週間で急激に雪解けが進んでおり,斜面の向きなどにもよるが,1000m位まで標高を上げないと雪がつながらない。雪は締まりつつあるが,まだ沈み込みがあるため,ワカンは携行したほうが良い(スノーシューまでは必要ない)。

<ルート状況>
・ 霧晴の北西尾根の末端から取り付いたが,P990の手前で岩場が現れ,距離は短いが岩登りを強いられる(それほど難しくはなさそうだが,少なくともハイキング気分で来た人間には明らかに荷が重い)。この難所を避ける場合は,中宮温泉の裏手あたりから斜面に取りつき,P990に直接登ってしまったほうが良い(もちろん,敢えて登攀的な山登りがしたい場合は,尾根末端から登ったほうが楽しいでしょう)。ちなみに,今回はこんな岩場が出てくるとはつゆ知らずに登ってしまい,ロープを携行していなかったため,核心部は岩場の基部のバンドをトラバースして抜けました。ただ,このトラバースも決して楽ではない。
・ P990のあとも小さな岩場や痩せ尾根が断続的に出てくるが,慎重に通過すれば大丈夫なレベル。
・ なお,登山道のないヤブ尾根だが,ヤブはそれほど濃くなく,薄い獣道が走っているので,悪くないペースで進める。ただし,1100mより上は残雪に覆われたため,ヤブの状況は不明です。
・ 下山は,北西尾根の難所を避けて,北西尾根を少し下ったところから尾根を外れ,湯谷側の斜面を下降して湯谷沿いの林道に降りた。この斜面もそれなりに急で,断崖が断続的に出てくるため,ルート取りに注意が必要。断崖に阻まれたら,下流側にトラバースしていけば何とか降りられるところが出てくるはず。
これは明治43年測図(昭和5年部分修正)の陸地測量部地形図。中央付近の1456.4m峰が今回登る「霧晴」。中宮温泉から霧晴の山頂を越え,親谷の湯付近に降りる点線路が描かれている(もちろん,現在は廃道)。ホワイトロードなど影も形もなかった当時は,険しい蛇谷の谷沿いを避けて,この山が峠道として利用されていたようだ。この古道の痕跡に出会えたらいいな,なんていうのも今回の山行の目的の一つ。(クリックで拡大できます)
4
これは明治43年測図(昭和5年部分修正)の陸地測量部地形図。中央付近の1456.4m峰が今回登る「霧晴」。中宮温泉から霧晴の山頂を越え,親谷の湯付近に降りる点線路が描かれている(もちろん,現在は廃道)。ホワイトロードなど影も形もなかった当時は,険しい蛇谷の谷沿いを避けて,この山が峠道として利用されていたようだ。この古道の痕跡に出会えたらいいな,なんていうのも今回の山行の目的の一つ。(クリックで拡大できます)
いつものスペースに駐車。だいぶ雪が溶けたなぁ
いつものスペースに駐車。だいぶ雪が溶けたなぁ
冬期閉鎖ゲートを越え,白山白川郷ホワイトロードを歩く。予想以上に急速に雪解けが進んでおり,周囲の山々は黒々してしまっていて驚く。一週間前の福井・姥ヶ岳は取り付きから雪があったのに,この変わりようは…。
冬期閉鎖ゲートを越え,白山白川郷ホワイトロードを歩く。予想以上に急速に雪解けが進んでおり,周囲の山々は黒々してしまっていて驚く。一週間前の福井・姥ヶ岳は取り付きから雪があったのに,この変わりようは…。
いつも雪崩デブリで片斜面になっている箇所も,雪解けが進んでいて容易に通過できた。
いつも雪崩デブリで片斜面になっている箇所も,雪解けが進んでいて容易に通過できた。
発電所の堰堤は雪解けの大増水で凄まじいことに
発電所の堰堤は雪解けの大増水で凄まじいことに
中宮の自然保護センターのあたりでようやく道は雪に覆われた。
中宮の自然保護センターのあたりでようやく道は雪に覆われた。
中宮温泉の三叉路手前の橋を渡った目の前が,霧晴の北西尾根の末端になっており,そこから取り付く。
う,尾根も全然雪がないなぁ…
中宮温泉の三叉路手前の橋を渡った目の前が,霧晴の北西尾根の末端になっており,そこから取り付く。
う,尾根も全然雪がないなぁ…
この尾根は細いためか,下部は全く雪がない。藪はそれほど濃くなく,獣道らしき薄い踏み跡が走っているのが救い。
この尾根は細いためか,下部は全く雪がない。藪はそれほど濃くなく,獣道らしき薄い踏み跡が走っているのが救い。
少し登ると,早くもかなりの急斜面となり,しかも両側が結構切り立っているので,それなりに慎重を要する登りとなる。冬靴は泥・枯葉・木の根に対するフリクションがゼロに等しいため,情けないが雪が出てくる前にアイゼンを履かされてしまった。
2
少し登ると,早くもかなりの急斜面となり,しかも両側が結構切り立っているので,それなりに慎重を要する登りとなる。冬靴は泥・枯葉・木の根に対するフリクションがゼロに等しいため,情けないが雪が出てくる前にアイゼンを履かされてしまった。
う,岩まで出てきた…。まさかこんなに険しい尾根だったとは。このあたりは灌木が濃く手掛かりが豊富なので,まだ安心して登れる。
1
う,岩まで出てきた…。まさかこんなに険しい尾根だったとは。このあたりは灌木が濃く手掛かりが豊富なので,まだ安心して登れる。
今回は完全に油断していてロープ不携帯なので,ロープなしでも撤退可能(=クライムダウン可能)な範囲で進もうと慎重になっていたのだが,しばらく登ってから上部をうかがうと,何となく傾斜が落ち着いているように見える。これに騙されて,自制を越えてちょっと厳しめの岩場を登ってしまった。
1
今回は完全に油断していてロープ不携帯なので,ロープなしでも撤退可能(=クライムダウン可能)な範囲で進もうと慎重になっていたのだが,しばらく登ってから上部をうかがうと,何となく傾斜が落ち着いているように見える。これに騙されて,自制を越えてちょっと厳しめの岩場を登ってしまった。
しかし無情にも,その上にはさらに厳しめの岩場が続いていた…。登って登れないことはなさそうだが,万一,途中で詰まった場合にマズイことになるし,これで岩場が終わる保証もない。そして今やクライムダウンもためらわれる場所にロープもなく立たされている。さあ,どうするか…。
1
しかし無情にも,その上にはさらに厳しめの岩場が続いていた…。登って登れないことはなさそうだが,万一,途中で詰まった場合にマズイことになるし,これで岩場が終わる保証もない。そして今やクライムダウンもためらわれる場所にロープもなく立たされている。さあ,どうするか…。
岩場の基部は狭いバンド状になっており,試みにそれを右手にトラバースしてみる。写真は,バンドを巻きながら岩場を見上げたところ。
1
岩場の基部は狭いバンド状になっており,試みにそれを右手にトラバースしてみる。写真は,バンドを巻きながら岩場を見上げたところ。
こりゃ無理だろうな〜と思いつつも,そろそろと狭いバンドを回り込んでいくと,なんと奇跡的に緩めの斜面に降りられそうな箇所を発見! 助かった〜。でもここもそれなりに切り立っているので,慎重に。
2
こりゃ無理だろうな〜と思いつつも,そろそろと狭いバンドを回り込んでいくと,なんと奇跡的に緩めの斜面に降りられそうな箇所を発見! 助かった〜。でもここもそれなりに切り立っているので,慎重に。
岩場を巻いたあと,抜けてきたバンドを振り返る。バンドがつながっていてよかった。
1
岩場を巻いたあと,抜けてきたバンドを振り返る。バンドがつながっていてよかった。
そのあとは,P990の西側に発達した岩場全体を巻くように,岩壁の基部に沿って急斜面を登っていく。
そのあとは,P990の西側に発達した岩場全体を巻くように,岩壁の基部に沿って急斜面を登っていく。
見上げるような岩壁がけっこう長く続く。まさかこんなに岩壁が発達した尾根だったとは…。
2
見上げるような岩壁がけっこう長く続く。まさかこんなに岩壁が発達した尾根だったとは…。
数少ない先人の記録では,この北西尾根の下部を避けるようなルート取りをしており,不思議に思っていたのだが,この岩場を避けるためだったんだなぁ…。今ごろ納得。もう遅すぎるけど。
1
数少ない先人の記録では,この北西尾根の下部を避けるようなルート取りをしており,不思議に思っていたのだが,この岩場を避けるためだったんだなぁ…。今ごろ納得。もう遅すぎるけど。
ところでこの岩場,どこまで続くんですかね…。
1
ところでこの岩場,どこまで続くんですかね…。
やっと岩場が途切れ,そのままP990に登り上げた。
2
やっと岩場が途切れ,そのままP990に登り上げた。
しかしP990の後も,残念ながら既に残雪の切れたヤブ尾根が続いている。しかも結構痩せてそうだぞ…
しかしP990の後も,残念ながら既に残雪の切れたヤブ尾根が続いている。しかも結構痩せてそうだぞ…
比較的穏やかな箇所を挟みながらも,岩の出た痩せ尾根が断続的に続く。しかし先ほどの岩場ほどの難しさはなく,巻いたり乗っ越したり,何とか無難に通過していける。
1
比較的穏やかな箇所を挟みながらも,岩の出た痩せ尾根が断続的に続く。しかし先ほどの岩場ほどの難しさはなく,巻いたり乗っ越したり,何とか無難に通過していける。
ナイフリッジをそろそろと渡る。雪がないのは残念だが,この状況だと雪がなくて逆に良かったかもしれない…。
2
ナイフリッジをそろそろと渡る。雪がないのは残念だが,この状況だと雪がなくて逆に良かったかもしれない…。
特に湯谷側が切れ落ちており,万一落ちれば即ゲームオーバー,ノーコンティニュー。
1
特に湯谷側が切れ落ちており,万一落ちれば即ゲームオーバー,ノーコンティニュー。
こんな岩がちな尾根だったなんてなぁ…。地形図からは全く想像できなかった。
1
こんな岩がちな尾根だったなんてなぁ…。地形図からは全く想像できなかった。
しかし,驚いたことに,こんな険しい尾根の途中で,明らかに人為的な石垣を発見! もしかしたら,霧晴ピークを越えていたと言われる古い峠道の遺構だろうか。このあたりは白山修験も入っていたので,古い社の跡だったりしたら面白いなぁ。まあ,実際は,割と近年の林業遺構ってくらいが相場だろうが…
2
しかし,驚いたことに,こんな険しい尾根の途中で,明らかに人為的な石垣を発見! もしかしたら,霧晴ピークを越えていたと言われる古い峠道の遺構だろうか。このあたりは白山修験も入っていたので,古い社の跡だったりしたら面白いなぁ。まあ,実際は,割と近年の林業遺構ってくらいが相場だろうが…
途中,左手にけっこう高い滝を見下ろす。
途中,左手にけっこう高い滝を見下ろす。
岩が出てくるたびにドキッとするが,近づいてみると割と容易に抜けられることが多い。
1
岩が出てくるたびにドキッとするが,近づいてみると割と容易に抜けられることが多い。
痩せ尾根にへばりつくように,天然ヒノキやゴヨウマツが林立している。
1
痩せ尾根にへばりつくように,天然ヒノキやゴヨウマツが林立している。
そして,標高1100mくらい,地形図で尾根が若干広くなったところからは,待望の雪尾根となった。
2
そして,標高1100mくらい,地形図で尾根が若干広くなったところからは,待望の雪尾根となった。
それまでの険しい尾根が嘘のような,穏やかな残雪の尾根が続く。しかし強い日差しで雪が緩み,沈み込みがあるので,ワカンを履いた。
1
それまでの険しい尾根が嘘のような,穏やかな残雪の尾根が続く。しかし強い日差しで雪が緩み,沈み込みがあるので,ワカンを履いた。
この尾根は(その険しさからは信じられないが)けっこう人の手が入っていたようでところどころに切り株もあり,あまり大きな木は多くないが,そこかしこに立派なブナやトチノキ,ミズナラ,天然ヒノキも見られる。
1
この尾根は(その険しさからは信じられないが)けっこう人の手が入っていたようでところどころに切り株もあり,あまり大きな木は多くないが,そこかしこに立派なブナやトチノキ,ミズナラ,天然ヒノキも見られる。
標高を上げるにつれて,中宮道の尾根の向こうに,純白の白山の山稜がせり上がってきた。
2
標高を上げるにつれて,中宮道の尾根の向こうに,純白の白山の山稜がせり上がってきた。
北側には冬瓜山からシリタカ山の稜線も良く見える。
北側には冬瓜山からシリタカ山の稜線も良く見える。
12月に登った猿ヶ浄土も,黒い岩壁を帯のようにめぐらせてそびえている。
12月に登った猿ヶ浄土も,黒い岩壁を帯のようにめぐらせてそびえている。
そして北西尾根を登り切った小ピークに立つと,ようやく目の前にたおやかな霧晴ピークの姿が。
3
そして北西尾根を登り切った小ピークに立つと,ようやく目の前にたおやかな霧晴ピークの姿が。
青空へ続くような霧晴ピークへの登り。
2
青空へ続くような霧晴ピークへの登り。
振り返れば,山毛欅尾山など。
振り返れば,山毛欅尾山など。
そして,霧晴の山頂に到着。予想以上に,すっきりとしたピーク!
3
そして,霧晴の山頂に到着。予想以上に,すっきりとしたピーク!
360°の大展望。湯谷の頭に続く尾根の途中の一ピークに過ぎないので,眺めは微妙かと思っていたら,そんなことなかった。ひとつの独立峰と呼ぶにふさわしい,素晴らしい眺望だ。
2
360°の大展望。湯谷の頭に続く尾根の途中の一ピークに過ぎないので,眺めは微妙かと思っていたら,そんなことなかった。ひとつの独立峰と呼ぶにふさわしい,素晴らしい眺望だ。
当然,目の前には堂々たる白山。四塚山や七倉山,ちょっと頭が見えているのは,大汝峰だろうか。
2
当然,目の前には堂々たる白山。四塚山や七倉山,ちょっと頭が見えているのは,大汝峰だろうか。
間名古の頭から大汝峰に続く稜線は相変わらず純白で,美しいねぇ。 おや? もしかして火の御子峰も見えてる?
2
間名古の頭から大汝峰に続く稜線は相変わらず純白で,美しいねぇ。 おや? もしかして火の御子峰も見えてる?
西側には加賀禅定道,そして楽々新道の稜線。
1
西側には加賀禅定道,そして楽々新道の稜線。
東側には北縦走路の峰々。ちょこんと尖がっているのは,妙法山だ。野谷荘司山も見えるねぇ
1
東側には北縦走路の峰々。ちょこんと尖がっているのは,妙法山だ。野谷荘司山も見えるねぇ
その左手に見えている大きな山は,国見岳かな。右肩に覗いているのは,三方岩岳だろう。山腹には冬期閉鎖中のホワイトロードがうねうねと白い線を描いている。
その左手に見えている大きな山は,国見岳かな。右肩に覗いているのは,三方岩岳だろう。山腹には冬期閉鎖中のホワイトロードがうねうねと白い線を描いている。
そして,やっぱりこの山,笈ヶ岳! この山がきっと綺麗に眺められるのでは,と思って登ってきたが,やっぱりそうだった。
3
そして,やっぱりこの山,笈ヶ岳! この山がきっと綺麗に眺められるのでは,と思って登ってきたが,やっぱりそうだった。
笈ヶ岳から仙人窟岳の稜線。真ん中の鞍部は,切り立っていて難所になる箇所だ。
1
笈ヶ岳から仙人窟岳の稜線。真ん中の鞍部は,切り立っていて難所になる箇所だ。
この山の素晴らしいところは,北部白山の主要な稜線や山々を,余すところなくぐるりと眺め渡せるところだろう。まさに,「北部白山の展望台」と呼ぶにふさわしい。
ちなみに,山頂にはプレートなどは見当たらず,峠越えの古道を思わせる痕跡も見当たらなかった(残雪の下には,何かあるかもしれないが)。
4
この山の素晴らしいところは,北部白山の主要な稜線や山々を,余すところなくぐるりと眺め渡せるところだろう。まさに,「北部白山の展望台」と呼ぶにふさわしい。
ちなみに,山頂にはプレートなどは見当たらず,峠越えの古道を思わせる痕跡も見当たらなかった(残雪の下には,何かあるかもしれないが)。
いつまでも居座っていたい山頂だったが,登ってきた北西尾根をノーロープで下るのは不安が大きいと分かった今,新たな下山ルートを探さなければいけないので,そうゆっくりしていられない。後ろ髪ひかれながらも,下山を開始する。
いつまでも居座っていたい山頂だったが,登ってきた北西尾根をノーロープで下るのは不安が大きいと分かった今,新たな下山ルートを探さなければいけないので,そうゆっくりしていられない。後ろ髪ひかれながらも,下山を開始する。
北西尾根をしばらく下ったあと,尾根が狭くなる手前で,何とか湯谷側の斜面に降りられそうな箇所を見つけたため,アイゼンを再度装着し,残雪を頼りに尾根を外れ,斜面に入る。なかなかの急斜面なので,ピッケルを構えたまま慎重に,湯谷に向けて下降。さあ,無事降りられるか?
1
北西尾根をしばらく下ったあと,尾根が狭くなる手前で,何とか湯谷側の斜面に降りられそうな箇所を見つけたため,アイゼンを再度装着し,残雪を頼りに尾根を外れ,斜面に入る。なかなかの急斜面なので,ピッケルを構えたまま慎重に,湯谷に向けて下降。さあ,無事降りられるか?
途中,幾度か断崖に阻まれたが,その度に下流側にトラバースして降りられるところを見つけ,何とか下降を継続。やっと安心できる傾斜のところまで降りてきた。
2
途中,幾度か断崖に阻まれたが,その度に下流側にトラバースして降りられるところを見つけ,何とか下降を継続。やっと安心できる傾斜のところまで降りてきた。
眼下に雪解け水を集めて瀬音を高めている湯谷と,その右岸の林道(地図には記載されていない)が近づいてきた。どうやら無事に降りられそうだ。
1
眼下に雪解け水を集めて瀬音を高めている湯谷と,その右岸の林道(地図には記載されていない)が近づいてきた。どうやら無事に降りられそうだ。
湯谷右岸の林道に降り立った。林道は大量の雪解け水で川のようになっていた。
1
湯谷右岸の林道に降り立った。林道は大量の雪解け水で川のようになっていた。
降りてきた箇所の湯谷川の対岸には,ちょうど中宮道の階段が見えていた。もちろん,湯谷川を渡る橋は外されている。
2
降りてきた箇所の湯谷川の対岸には,ちょうど中宮道の階段が見えていた。もちろん,湯谷川を渡る橋は外されている。
しばらく林道を下ると,中宮温泉の旅館が見えてきた。もちろん,この時期はまだ無人。
1
しばらく林道を下ると,中宮温泉の旅館が見えてきた。もちろん,この時期はまだ無人。
くろゆり荘と,その向こうに聳える猿ヶ浄土。
2
くろゆり荘と,その向こうに聳える猿ヶ浄土。
猿ヶ浄土の南壁には,落差100mはあろうかという多段の滝がかかっていて,まさに壮観。雪解けのこの時期にしか見られない景観かもしれない。
1
猿ヶ浄土の南壁には,落差100mはあろうかという多段の滝がかかっていて,まさに壮観。雪解けのこの時期にしか見られない景観かもしれない。
帰路のホワイトロードは,行きよりもさらに雪解けが進んでいた。そこで見つけた,春のいぶき。
1
帰路のホワイトロードは,行きよりもさらに雪解けが進んでいた。そこで見つけた,春のいぶき。

装備

備考 ・ 20m程度の補助ロープでもいいので,ロープは携行したほうが良い。もちろんロープを使わなくても十分登れる山だが,特に下山時の安心感が全く違う。(今回,完全に油断していてロープを持っておらず,少なからず後悔した)。
・ アイゼン・ピッケル必須。雪は締まりつつあったが若干沈み込みがあったため,ワカンを使用。

感想

 「三等・霧晴」は,中宮温泉の南東にある△1456.3mの小ピーク。「霧晴山」とも呼ばれる。読みは「きりはれ」かと思いきや,点の記を閲するに「キリバリ」とルビがふられている。この「キリバリ」の意味は分からないが,おそらく,「霧晴」というのは,地元の呼び名にムリヤリ漢字を当てはめた,陸地測量部お得意の当て字なのだろう。だとしたら,なかなか風流な文字を当てたものである。
 また,この山は,昔は険しい蛇谷流域を行き来するための峠道でもあったらしい。写真欄No1にも掲げたが,昔の陸地測量部地形図を見てみると,中宮温泉からこの霧晴ピークを通り,親谷の湯の付近に降りている点線路が描かれている(現在はもちろん廃道)。白山白川郷ホワイトロードなどというものが影も形もなかった往時,険しい蛇谷の谷底を避けるため,この山を越える形で人々が行き来していたのではないか,と想像する。この界隈は白山修験も入っていたので,往古の修験者も中宮や笈ヶ岳,妙法山での修行のために(そして修行の合間に温泉でゆっくりするために)通ったのでは,と想像すると楽しい。
 
 古道が通じていた昔はともかく,現在では登る人も稀なこのヤブ山にどうして登ったのかというと,これはもう完全に,「霧晴」という洒落た山名(というか点名)に惹かれたからである。「猿ヶ浄土」や「山目平」に引き続き,安直な理由ですみません。
 しかし,登る前は,情けないことだが,山名が素敵だということ以外,この山の真価について全くわかっていなかった。なにせ,ネット上で見つかる過去記録は,この山の登頂を目的としキチンと山頂も踏んでいるものに限定すると,komaQ-kakoさんが12年前に登られた無雪期(6月)の記録の一本のみ。登路もよく検討しないまま(まあ,情報が少なすぎて,検討のしようもないのだが),素直に安直に霧晴の北西尾根の末端から取り付いてしまった。
 しかしこの尾根,地形図ではなんでもない尾根に見えるのだが,実はなかなかの難物だった。全体的に痩せた岩がちな尾根で,特にP990の手前に大きな岩場が発達していた。穏やかな尾根のハイキングでサクッと登れるとばかり思っていたので,ロープは持ってきていない。にもかかわらず岩場の規模を見誤って登りすぎてしまい,一時は登るのも降りるのも容易でない状況に立ち至った。上記の過去記録で,先人がわざわざ北西尾根の下部を避けるルート取りをしている理由がここに至ってようやく理解できたわけだが…こんな岩場の真ん中で理解に至っても,いささか遅すぎる。最終的には岩の基部をトラバースして何とか抜けることができたが,久しぶりに緊張する場面だった。
 思えば,過去に登った岩底谷の左岸尾根(仮称・行者尾根)や途中谷の左岸尾根(猿ヶ浄土直登尾根)も,同じく岩場が断続的に現れる険しい尾根だった。蛇谷流域の尾根は,地形図上ではどんなに何の変哲もない小さな尾根に見えても,実際は険しいことが多く,注意が必要なようだ。でも,しっかり装備を整えて,最初からそうした登攀的要素を織り込んで登るのであれば,きっとそれなりに楽しめる尾根だと思う。
 そんなちょいピリ辛な尾根を越えて登り出た霧晴の山頂は,想像以上の大展望。白山や笈ヶ岳はもちろん,北方稜線,中宮道,楽々新道,加賀禅定道と,北部白山の主だった稜線やピークがほぼ全部見渡せる。360°北部白山である。中宮道の稜線の末端にある小ピークに過ぎないので,眺望は微妙かと思っていたが,良い意味で裏切られた。「北部白山の隠れた展望台」と呼ぶにふさわしいと思う。
 岩場に痩せ尾根とアトラクション要素が適度にちりばめられた尾根と,360°大展望のすっきりとした残雪の山頂。小さなヤブ山に過ぎないが,お気に入りの山になりそうだ。「霧晴」という名前そのままに,よく晴れた日にまた登りに行きたいと思えるような山だった。

お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:227人

コメント

まだコメントはありません
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する

この記録に関連する登山ルート

この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。

ルートを登録する

この記録で登った山/行った場所

関連する山の用語

この記録は登山者向けのシステム ヤマレコ の記録です。
どなたでも、記録を簡単に残して整理できます。ぜひご利用ください!
詳しくはこちら