雁戸山バリエーション 茶畑尾根


- GPS
- 31:33
- 距離
- 18.1km
- 登り
- 1,598m
- 下り
- 1,599m
コースタイム
- 山行
- 6:34
- 休憩
- 0:45
- 合計
- 7:19
天候 | 27日:曇り時々晴れ 夕方から風雪 28日:朝方まで風雪 日中は晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自転車
入口前は除雪されており、2,3台は駐車可。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
●茶畑尾根(笹雁新道 林道入口〜北雁戸山) 雁戸山の冬期バリエーションルートで、登りで利用した。 笹雁新道が通る尾根の末端から取り付き、尾根通しで北雁戸山に登頂する。 取り付きは急登だが、よく探せば鉄塔管理用の道が見つかるので、 この道を辿れば楽に尾根上に上がれる。 そのまま尾根を進めば、2基の鉄塔を通過。 鉄塔を通過後に道は無くなるが、尾根上の雪は豊富で灌木には悩まされない。 例年に比べると雪は少なく、鉄塔を過ぎるまでは殆どラッセル無し。 鉄塔を過ぎて幅広の樹林になる頃からラッセルになるが、雪量はスノーシューで脛位で、 酷いラッセルは特に無かった。 難所となるような箇所は特に無いが、標高1100mから続く細尾根の状態が悪い。 尾根が狭いので雪庇近傍を進む事になるが、崩壊が進んでおり多数の亀裂が出来ている。 雪で隠れて見えない亀裂も潜んでいるので、一歩踏み出す際は注意を要する。 西茶畑(ニセ雁戸山)まではスノーシューで歩き、西茶畑から先はアイゼン使用。 雁戸稜線(笹雁新道分岐)までは急登が続き、部分的に斜面がクラストしているので スノーシューでは厳しい。 滑落危険もある急登なので、アイゼン&ピッケルを使用した方が無難。 尚、今回は登り利用なので道間違いの危険は特に無かったが、多数の分岐がある尾根 なので、下り利用だと尾根を間違う危険がある。 特に、P1380からの下り方向と、その先の分岐が間違い易そうな感じなので、 よく方向を確認して尾根を下るようにしたい。 ●蟻の戸渡り〜北雁戸山〜南雁戸山 幾つか危険個所があるが、例年に比べると雪が少なく、アイゼン&ピッケル使用に 慣れた登山者であれば、特に困難となる箇所は無い(と思う) 敢えて難所を挙げるとすれば、南雁戸山の前衛峰からの下りで、雪壁は無いものの、 足場となる岩が所々で凍結しているので、足だけではなく、周囲の灌木や岩を掴みながら 下らないと危険。 難易度の低いミックスルート、と言った感じで、ロープを使わなくても下れる状態だが 油断は禁物。 蟻の戸渡りからの下りも難所と言えば難所だが、多くの登山者が歩いた後でトレースが あったので、安定して下降出来た。ここもロープは使用せず。 ●八方平避難小屋 今回の宿。 無人小屋として開放されているが、小屋の入口は横へのスライド式のドアで、 レール部分は小屋の中にある為、この部分が凍結すると外からは開けられなく なってしまう。 という問題が去年まではあったが、今年からその対応として、 小屋の裏手にある窓の鍵が取り外されたようだ。 (鍵が外されている窓は1箇所のみ) 常時、窓の鍵が解除されている状態なので、ドアが凍って小屋に入れなくなる、 という問題は解決されている。 窓も凍ったらどうする? と言われれば答えようがないが・・・、この対応はありがたい。 小屋のストーブは健在だが、火力は相変わらず弱い。 やはり、もう寿命なのだろうか・・・ ●前山〜カケスガ峰 夏道は前山の東側を巻くように付けられているが、十分な雪量があるので稜線通しで歩ける。 トレースがあったので、カケスガ峰までは快走路だった。 ●カケスガ峰〜笹谷古道 カケスガ峰から笹谷古道までは不明瞭な地形が続き、トレース無しなので道迷いに注意。 坂元沢左岸上を進むようにすればルートは判り易いかと。 尚、笹谷古道の合流点付近に2基並んだ鉄塔が立っており、近くにピンクリボンが 多数付けられているが、これは登山ルートを示すものでは無く、 スキーヤーのドロップポイントを示すもの。 このリボンに従うと坂元沢へ誘導されてしまうので注意。 笹谷古道は雪が少ないお陰で登山道の道型が出ており、進路が判り易い状態。 特に問題となりそうな箇所は無かった。 ●笹谷IC〜笹雁新道 林道入口 笹谷ICからは1km位の車道歩き。 車通りの多い国道なので、交通事故とドライバーの視線に注意。 車内のお子様からはジロジロ見られるので恥ずかしい^^; |
写真
雪庇の近傍を歩かざるを得ないので、ちょっと嫌な感じ。
崩壊が進んでおり、亀裂が多数あり。
雪で隠れて見えない亀裂もあるので踏み抜かぬよう、一歩一歩は慎重に。
この尾根も冬期ルートとして利用出来るが…
残念ながら、現在はワカン・スノーシューでのゲレンデ歩行は許可されておらず、リフト利用も出来ない。
スキーヤー限定の尾根になるかな。
雪が少ないので登山道がハッキリ見えており雪壁無し。
これまで歩いた中では最も容易な状態だった。
とは言え、岩に氷が張り付いているので油断は禁物。
ナイフリッジが出来るほど雪が降らなくなった、という事だろうか…
冬期雁戸山の登頂が易しくなるのは良い事だが、それはそれで少し残念。
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
ハードシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
予備手袋
防寒着
ゲイター
バラクラバ
ゴーグル
着替え
靴
ザック
サブザック
スノーシュー
アイゼン
ピッケル
スコップ
行動食
非常食
調理用食材
調味料
飲料
水筒(保温性)
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
針金
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
タオル
ナイフ
カメラ
ポール
テント
テントマット
シェラフ
ロープ(30m)
ハーネス
スリング
カラビナ
HMS
ディジーチェーン
灯油
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感想
地形図を眺めるのが好きな登山者にとって、北蔵王は面白い山域だ。
特に雁戸山の東には多数の尾根が走っており、これらの尾根に登山道は無いが、
冬期ルートとしての可能性を感じさせる。
実際、これら尾根群は冬期ルートとして利用されており、この山域の地形に
精通したスキーヤーによって開拓されている。
スキー利用を前提としたルートだが、中には雪山登山としても面白いルートがあり、
今回は、そんなルートの一つである「茶畑尾根」を紹介してみよう。
茶畑尾根は尾根上部に登山道(笹雁新道)が通るも、下部に登山道は無く、
尾根が雪で覆われた冬期に通行可能となる尾根。
笹雁新道へ続く林道の入口付近まで尾根末端が伸びており、冬期であれば、
この末端部から取り付く事が可能だ。
そして、忠実に尾根を辿れば笹雁新道に合流し、北雁戸山へと至る。
冬期雁戸山登頂のメインルートと言えば、関沢ICから入山し、笹谷峠から縦走路を
辿って登るルートが一般的だが、この茶畑尾根は、より低い標高から始まり、
歩く距離も長い。
利用する登山者は皆無、と言える状況なので、当然ラッセルは厳しくなり、
テクニカルな要素こそ無いものの、体力面ではメインルートよりも厳しいルートだ。
このルートを歩く登山者は、2度の絶望感を味わう事になるだろう。
尾根に乗ると、雁戸山があるべき方向に見えるのは一際目立つピーク。
これは「西茶畑」と呼ばれるピークなのだが、あまりに目立つので、
雁戸山だと思いこんでしまうに違いない。
そして、尾根を登るにつれて視界が開けてゆき、雁戸山だと思い込んでいたピークの
背後に真っ白な稜線が見えてくる。
そこで登山者は、自分が目指していたピークが雁戸山では無く、
その更に奥に真の雁戸山がある事を知り、最初の絶望感を味わうのである。
まぁ、このようなニセピークに騙される事は、登山ではよくある事である。
気を取り直し、西茶畑まで登りきり、雁戸山まであと僅か。
ここまでの苦労も、あと少しで報われる。
しかし・・・
西茶畑の山頂に立った登山者は、そこから見える光景に唖然とするだろう。
それは、まさに絶望を絵に書いたような光景。
西茶畑の山頂から急下降し、その後、コルを経由し一気に登り返す。
この登り返しは、半端では無い。
ここまでの長い行程は、ウォーミングアップに過ぎなかった…
そう思えてしまうような急登が北雁戸山へと続いている。
それを目の当たりにした登山者は、ここで2度目の絶望感を味わうのである。
登山者に2度も絶望感を与えるお茶目(?)なピークの西茶畑。
そう、これが通称「ニセ雁戸山」と呼ばれるピークである。
何故、ニセ雁戸山と呼ばれるようになったのか、理由は定かでは無いが、
このルートを歩いて2度の絶望を味わされた登山者の恨みにも似た感情により
ニセ雁戸山という通称が付けられたのではないだろうか、と私は勝手に考えている。
(・・・ちなみに、これは小生の経験談であります)
だが、決して悪いルートでは無い。
蟻の戸渡り直下のような極端な難所は無く、メインルートよりも安全性は高い。
また、稜線東側の風下側からアクセスし、強風域となる稜線歩きは少ないので、
強い季節風の影響はあまり受けない。
「蟻の戸渡り怖いし、風も強いけど、どうしても雁戸山に登りたい!」
という登山者にとっては選ぶ価値のあるルートだ。
(ハードラッセルは覚悟しなければならないが…)
尾根上からの眺望も良く、見所も多い。
カケスガ峰から南雁戸まで連なる白き稜線、
台形型の北雁戸山、
切れ落ちた南雁戸東壁、
等々、メインルートからは見られないような絶景も備える素晴らしい尾根。
マイナールートにしておくのは勿体ないような良い冬期ルートである。
今回は、この茶畑尾根を登り、北雁戸と南雁戸に登頂。
その後は八方平へ向かい、八方平避難小屋泊まりの一泊二日で行ってみた。
八方平避難小屋は、毎年冬になると欠かさず訪れている山小屋で、
蔵王連峰の帝国ホテル、とでも言うべき快適な山小屋での一夜は、
今年も満ち足りたものであった。
夕方になると天候は荒れ始め、深夜になると激しい風雪に見舞われたが、
堅牢なる八方平避難小屋が揺らぐ事は無く、この風雪は朝には治まるはずなので、
今時点で天候が荒れていようが余裕である。
雁戸山方向から聞こえてくる甲高い強風音を肴に飲酒に勤しむ我。
そんな余裕の結果が・・・、翌日の出発、9時半、という醜態である。
如何に小屋が快適であろうとも、ちょっと遅くまで飲み過ぎたか…
深夜0時近くまで飲んでいれば、そりゃ寝坊もするだろう。
すっかり天候が回復した翌朝、二日酔いで痛む頭を抱えて再び雁戸稜線へ向かう。
八方平避難小屋に泊まると、毎回こうなるのは困ったものだ。
前方に聳える雁戸稜線、あれを越えるのは二日酔いでは厳しいのは判っているが…
判っちゃいるけど止められない、というヤツである。
やれやれだぜ。。。
これでは如何にもダメ人間なので、今年の目標として、
山泊まりでの飲酒を控える事、を掲げようかと思う所存。
あくまでも控えるだけで、止める気は毛頭ないのがダメなところだが…
とりあえず、次回からは持参する酒量を減らします(-_-;)
なにはともあれ、今年の山行では最も天候に恵まれた二日間。
雁戸山の絶景あり、また二日目の北雁戸山ではレコユーザーの方にお会いする等、
思い出に残る出来事もあり、今年の雁戸山も充実した山行となった。
毎年、冬の雁戸山には訪れているが、ハズレが無いのが素晴らしい。
これも、雁戸山という名峰と八方平避難小屋の快適な山小屋暮らしがあるからだろう。
来年冬の雁戸山でも、充実の山行を期待したいものである。
コメント
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今年も帝国ホテルに宿泊ですね!
自分も1月にはじめてお邪魔させていただきましたが、いい宿ですね
ただ小屋のストーブ、最初は小屋が広いので暖まらないのかな?と思ていたのですがやっぱり火力弱いですよね?
1月はブドウ沢口から八方平に向かいましたが、八方平小屋に行くならやはり雁戸山を越えて行かないとですよね!次回は雁戸山を越えていきたいと思います
それと南雁戸の肩、夏ルートが解るぐらい雪少ないのですね…驚きました
いつも山形側からの入山なのでそろそろ宮城側からも登ってみたいものです
今年も北蔵王の帝国ホテルに御邪魔させて頂きました
ストーブが少し残念なところですが、何度泊まっても良いホテルであります。
雁戸稜線も相変わらず良いルートで、今年は雪が少なく見応えにやや欠けましたが、
その分、難易度が下がっているので楽出来ました。
冬期の雁戸山は、山形側のルートがメインですが、宮城側も良いルートが沢山あります。
特に、今回の茶畑尾根は、雁戸稜線で天候や雪質悪化して進退極まった際のエスケープとしても利用出来るので、覚えておく価値はあるルートだと思います。
八方平小屋泊まりだと、翌日に雪質悪化して蟻の戸渡りが下れない、なんて事態になる危険性もありますが、このルートを覚えておけば安心です。
下山した後、どうやって関沢へ帰るかが問題ですが・・・
その時は笹谷古道〜笹谷旧道を歩いて帰るか、もしくはセントメリースキー場で
ヒッチハイクでも^^;
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