日帰り北鎌尾根《独標直登》


- GPS
- 16:40
- 距離
- 38.1km
- 登り
- 3,531m
- 下り
- 3,697m
コースタイム
- 山行
- 15:21
- 休憩
- 1:33
- 合計
- 16:54
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
1,200 円/24H 以降、24時間毎に1,200円を加算。但し24時間未満の端数が生じたときは、これを24時間に切り上げる。 ※GoogleMAP上の表記は 新穂高第3駐車場(登山者用有料駐車場) |
コース状況/ 危険箇所等 |
▲北俣乗越〜北鎌沢出合 最悪。一言で表現出来る。 浮石だらけの急斜面を右にある巻道を利用しながら下る。その先も浮石だらけの巨岩地帯を下る。 白出沢がかわいく思える。 ▲北鎌沢出合〜北鎌のコル 右俣を、北鎌のコルに向かってひたすら登る。 好みの巨岩を越えてゆく。 道には迷わないので無心で登りたい。 沢中央に太い給水ポイントが2箇所あった。 最初の給水ポイントで給水は済ませた。 ▲独標 直登か、巻道、お好みで ▲P11〜P15 一瞬も気を抜けない難路 稜線通しを念頭に置いた結果、とんでもない所をクライムダウンする羽目になった。 幸運を祈る ▲山頂直下 裾野は広い カニのハサミは念頭に置いておきたい。 次回登頂する時は、祠の裏から格好よく登頂して、場を沸かせたい。 |
その他周辺情報 | 荒神の湯/300円 8月の日中は岩が焼けて、とても入れる温度では無かったが、9月の夕刻も熱かった。40℃は超えていると思われる。 |
予約できる山小屋 |
槍平小屋
|
写真
感想
日帰り北鎌尾根をやってきた。
ルートは下調べをしたので気負いはなかった。P13〜P15だけ気をつければいい。だが、足を踏み入れてみれば、中々どうして下調べが当てにならない。結局は現場での自己判断が重要となる。
いつものように日曜の午後、3時間のドライブをした。運転に退屈してきたので、ウルフ・オブ・ウォールストリート(吹替版)を見た。見たことのある映画だった。16時早々に高山入り。名古屋の気温40℃から5度くらい下がっただけの35℃だった。
高山も暑い。夕方、道の駅でようやく30℃を切った。
かつ庵で特盛ロースカツ丼を食べたが満腹にならず、吉野家で牛丼を注文した。食べ過ぎだ。
18時半も過ぎれば辺りは暗くなる。
仮眠の時間だ。
準備を整え、0時登山開始。
今回は、グローブを忘れてしまった。手痛い失敗だ。暗い夜道を右俣林道を進む。先週に続き2回目だ。千丈乗越に上がればとても寒かった。暗いうちに槍ヶ岳を通過。これだけ早ければ山荘界隈に人も少ない。水俣乗越まで初めて東鎌尾根を下ったが、結構険しいのに驚いた。西鎌尾根のような危なげない登山道を予想していた。早朝の稜線で素手は完全に冷えきった。早く標高を下げたい。明るくなってきて、東鎌尾根から北鎌尾根の全容が見えだした。何度も何度も北鎌尾根に視線を送る。今日辿る稜線だ。独標はどれだか全く分からない。水俣乗越到着。手に血が通い始めたのか、北鎌沢出合への下山中、両手がずっと痺れていた。
北鎌沢出合への悪路にはとても辟易した。
信じ難い悪路だ。ここを重い荷物を背負って下りるなんて超人に違いない。北鎌尾根に次ぐ難所だ。
道なき道の長大な枯れ沢を下る。ここには不思議な巨岩が沢山あった。なぜこんな岩石ができたのか。時間があれば、ゆっくり眺めていられる退屈しない。シューズはくるぶしまで覆う登山靴が有利だろう。不安定な足場を早く進める。誰もいない広い谷底で悪戦苦闘して北鎌沢出合に到着。やっと着いた。
北鎌のコルに向かって枯れ沢を登る。
ここは危なげなく、今回一番楽しい岩登りだった。コル方面は、視界の先にずっと見えていた。ここは右だの左だのあるらしいが、ただ右俣の好きな巨岩を越えて行けばいい。道に迷いようがない。
岩は安定している。多少のクライミングのスキルがあれば楽勝だ。水なら沢下流中央にじゃぶじゃぶ溢れている。汲む時に慌てて転ばないように注意したい。ここは滑る。大変楽しい登りではあるが、残置のゴミが点在する。リュックに靴、布切れ。ゴミ拾いがしたくなったが、またの機会に。コル付近に近づくと、重い荷物を背負っている登山者が1人いた。今日北鎌尾根に挑戦している私以外の唯一の登山者だ。バテバテとの事だった。荷物がとても大変そうだった。抜かせてもらい、難無く北鎌のコルに到着。さぁ、北鎌尾根へ。
標高を上げていくと後ろを振り返れば北の方には素晴らしい眺望が開けてくる。
北鎌尾根稜線に立つと、天気が良ければ大パノラマが広がる。今日は最高の天気だったおかげで素晴らしい景観を独り占めした。北鎌尾根は岩峰ばかり注目されるが、北アルプス北方を最前列で独り眺められる特等席でもある。いっぱい空気を吸い込んだ。ここにまた来たい。この時点で既にそう思っていた。独標が見えてきた。稜線に立つと独標がどれだかは誰の目にも明らかだ。北鎌尾根の象徴的存在の独標は、直登以外は頭にない。ジャンダルムも直登しかしないが、ここ独標も、直登以外ない気がする。馬鹿げた拘りというやつだ。実際目の当たりにして、糞をチビりそうになった。まぁそういう代物だ。
独標基部まで想像していたほど楽ではなかったが、到着した。さぁ、本番だ。どんどん登ってゆく。こんな所で落ちても誰も助けてはくれない。そもそも落ちたら下の方の森の中のどこかへ行ってしまう。幸いなことに現場に立つとそういうマイナス思考は思い浮かばす、クライマーズ・ハイになる。頂上に近づくと、ヒョッコリと槍ヶ岳が眼前に現れる。達成した瞬間だ。ここにはジャンダルムのように羨望の眼差しで迎えてくれるギャラリーはいないが、とんでもない大絶景が迎えてくれる。ここ以上の大展望は北鎌尾根には他に無いだろう。もう終わった気分だ。最高だ。ゆっくりする間もなく、まだ距離があるように見える槍ヶ岳に向かって出発する。
ここからヤバい地域(P11〜P15)に突入すると思い、気を引き締めたが、ホントにヤバかった。
岩石が剥がれる。大きい石も動く。急斜面で小石が表層雪崩を起こす。よく稜線通しと言われるが、絶対にそうとも言えない。巻いた方が楽な場合もある。ルートファインディングと言われるが、どれが楽で安全なルートなのか、何回も通った人間でないと分からないだろう。
ここにルートファインディングなど存在しないと思う。自分が通ったルートがその日の最適ルートだ。多少のクライミングスキルと度胸で乗り切る。
ただ1つ、戻れないような場所には踏み込まないこと。先へ進めなければ、そこでジ・エンド。積んでしまう。緊張を緩められない、とても恐ろしいルートだった。
恐ろしいルート故か、残置ロープが多い。興醒めだ。ルートを指し示す目印も興醒めだ。バリエーションの頂点、北鎌尾根を汚している気がする。自分で考える楽しみを奪うのは宜しくない。
そして山頂直下に到着。早く登頂したいのに、どこから登ったらいいのか分からない。多分、ルートは幾らでもあって、どこからでも登れるのだろうが、しばらく悩んだ。チムニーを登るという事前情報と、祠の裏から登頂したいという希望があって、自分で目論見をつけて登るのは躊躇(ためら)われた。
2つの主要ルート(と思われる)にはロープが残されたり目印があったりする。どっちだ?
どちらとも違う第三のルートがある気もする。悩む。山頂直下はほぼ垂直なので、一旦登れば、戻るのに苦労する。ロープが残されている方は、先へ進めばそもそも危険過ぎて戻れない。先の見えない岩棚を進んで行き詰まり、戻る道の足元は何百メートルも切れ落ちている。
人の話し声が聞こえているが、悩んだ。今日一番停滞したのは山頂直下だった。
結局、進んだルートでは祠の裏から登頂できず、中途半端な向かって右側から登頂してしまった。クライマックス感は皆無だった。あっ、登っちゃったっていう感じだ。槍ヶ岳は初登頂だったのに喜びは全くといっていいほど無かった。山頂にいた登山者には、登ってきたのは東尾根?西尾根?とか聞かれる始末。まぁいい。早く下りたい。槍ヶ岳下山は渋滞だった。こんなにも待たされるのか。穂先の北と南では世界が変わる。穂先は異世界への結界だ。なんか格好いい。
槍ヶ岳山荘で、飲料を補給した。
ここから新穂高に向けて一気に下る。
とても楽しい一日だった。
ひがくの湯は満車で、久々に荒神の湯へ行った。新穂高温泉は、ビキニの若い外人のカップルが居て素通りした。ここでは脱げないだろう。温泉もインバウンドが席巻している。晩飯は昨晩と同じくかつ庵へ。
帰りの運転はとても眠かった。道中、度々仮眠を取り、帰宅したのは1時を回っていた。
私が思う北鎌尾根をやるのに必要な能力は、体力、多少のフリークライミングスキル、度胸だ。
ここへ来るような登山者は体力も能力もあって当然と思っていたが、遭難のニュースに接すると、そうでも無いらしい。
ここへ来るなら体力はあって当然、誰も助けてはくれない、全て自己責任で完結する覚悟が必要だ。行動可能な体力は必要最低条件。その上で必要なのはフリークライミングの基本的スキルだ。北鎌尾根では一般登山道にはないクライミングやクライムダウンの場面がてんこ盛りだ。しかも危ない。緊張の糸を切らしてヘマをすれば、墜死に直結する。体力とある程度のクライミングができた上で、度胸も欲しい。
怖がっているようでは持てる能力の発揮は難しい。怖い場面、冷や汗をかくような場面には、必ず遭遇する。どんな場面でも自分で何とかする。思い切って踏み出す度胸が欲しい。現実を打開する選択肢を取るには、度胸が必要だ。
今回、初めての北鎌尾根は、緊張の抜けない恐ろしくも楽しい山行だった。北鎌尾根は想像していた通り恐ろしく、想像していたよりも素晴らしかった。
好天に恵まれたのが大きかった。
来年、好日、またやろう。
今年54歳、北鎌尾根の虜になった。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する