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2016年02月02日 06:10ドタバタコメディ全体に公開

イノシシと一緒に登山した話(前編)

登山をしていると、ふしぎな出来事があるものだ。自分はパーティを組んでの山行がほとんどで、高校と大学の部活に始まり、会社の人との山行、普段も相棒と二人で登っている。しかし野生動物とパーティを組み、登山口から下山口まで歩いたのは登山人生の中でこの時限りだ。ていうか普通まずないだろう。(^_^;)

これはレコにあげていない話なのだが、動物を中心とした面白い人間ドラマだったので日記で紹介しよう。大分話が長くなるので三部構成にわけることにした。

では はじまりはじまり

2年ほど前、大月にある滝子山という低山に行った時のことだ、その時は高速バスで行って笹子の停留所で降りた。笹子のバス停は高速道路の引き込み車線となっており、出口に金網の柵があるのだが、その扉に次のような看板が取り付けられていた。

『野生動物が道路に入るのを防ぐ為、必ず扉を閉めて下さい』

「まぁシカでも入ってきて、事故を起こすんだろう」と思ってい扉をくぐるとそこはすぐに短い下り階段となっていたのだが、その階段の下には、茶色い生き物が道のど真ん中で私をじーっと凝視していた。

「犬?」かと思ったが、なんだかちょっとブサイクな感じだ。よくよく見ると若いイノシシのようだ。看板に書かれていたのはこいつのことなのか?

イノシシは人間を襲ってくるという話を聞いていたので、脇を通り抜けられるかかなり微妙な感じだ。だがこちらがあれこれ考える前に、そのイノシシはこちらに向かって階段をゆっくりと登ってきてしまった。

「えっ!?何!?((((;゚Д゚)))))))」

襲って来るにしてはなんだか歩みが”ゆっくり”過ぎる。この謎の行動には物凄く戸惑った。ひょっとすると自分達が目的ではないのか?とかあれこれ考えているうちに、50cmほどの距離まで近づいてきてしまった。何かするのか!?と思ったらそのまま脇を通り抜けて、またこちらをじーっと見つめた。

何故見つめられるのかよくわからないが、どうやら襲う気はないようだ。それは幸いと階段をささっと下りた。だがイノシシはゆっくり振り返り、階段を下りてきて、今度は我々のそばでウロウロしはじめた。「まったくわからんが、一応大丈夫そうだ」と、ほっといて歩き始めた。

ところがその後が問題だった。なんとイノシシがついてくるのである。途中で準備体操をし始めると、近くで暇つぶしをするようにウロウロするし、歩き始めるとまたついてくる。まさに”ストーカー”というやつである。餌でも貰えると思っているのだろうか?よくわからないまま、人間2人とイノシシ1匹の奇妙なパーティは、滝子山に向けて歩いて行くことになってしまったのであった。

しばらく車道を登ったところで相棒が「コイツなんとかしないと、ずっとついてくるんじゃない?」と言いだした。私は楽観していたのだが、追い払うべきだと主張する。

実は自分は動物好きなので、”イノシシがついてくる”というシチュエーションにチョッピリ嬉しさを感じていたのだ。もし登山口から子猫が「にゃあにゃあ」言いながらついてきたらどうだろう。きっとトロトロに溶けてしまう人は多いに違いない。”うりぼう”というにはかなりデカイが、小さめのイノシシだ。大目に見てぎりぎり可愛いとも言える。

あと「縄張りの外に出ればそのうち戻るんじゃないか」と考えていた。そう、動物には縄張りというものがあるのだ。動物を飼っている人はよく分かると思うが、彼らは縄張りの外に出ようとはしない。餌を欲しがってあとをついてくる野良猫も、ある境界を超えるとそこでピタリと止まるし、昔リビングで飼っていたウサギなんて、廊下に出した途端、ジッとして動けなくなり、プルプル震えたりする。

ただ、後で知ったのだが、イノシシの縄張りはメチャクチャ広い。ひと山なんて当たり前なんだそうな。なので登っても登っても引き返す気配は無かったのである。

ついに相棒はしびれを切らし、おもむろに道端の石を拾ったかと思うとそれを投げ始めた。

「え"〜〜〜(T_T)」

「さすがにちょっとやりすぎでしょ!」と制するが、私の心配をよそにイノシシはあざ笑うように安全圏に飛び退く。

相棒は「野生動物は人間に近づいちゃダメということを教えないといけない。あえて外して投げているようにしているから大丈夫」

と主張していたが、あまりにノーコンなので、一発命中してしまった。はたまたから見れば動物虐待である。そのうちエスカレートしてだんだん石が大きくなってきた。

ついに相棒は赤ちゃんの頭ほどの石をよいしょと持ち上げて、ほいと放った。相棒の鼻先に落ちただけだったが、その気迫に驚いたのか、ひょい山の中に逃げ込んだ。

効果はあったか!?と一瞬思われたが、ただ距離を置きながら山の中を歩いているだけで、相変わらずついてきていた。そんな事をしているうちに、ついに登山口に着いてしまった。

そしてここである問題に気づく。

「行動食が食べられないじゃん!?」イノシシの真意は分からないが、普通に考えれば餌をねだっていると考えるのが自然だ。休憩しているときに何かを食べると狙われる可能性が高い。

ついに私が闘う番が回ってきた。シャリバテのリスクがあるのでやむをえまい。闘牛の牛が角を立てて突進するがごとく二本のストックを突き出すように構え「どどっと」迫り、何度か脅しをかける。しかしイノシシはマタドールのようにヒラリと山の中に逃げる。

相棒はそんなんじゃダメだと言わんばかりにストックでイノシシをピチピチ叩きだした。本人いわく「縄張りを外れると可哀想だ」と主張していたが、やはりはたまたから見ると、虐待にみえた。

あとで金太郎よろしくイノシシの背にまたがろうとして気づいたのだが(あそぶなよ!)、皮膚がかなり分厚く硬い。羆と刃物で戦う場合、人間の手では刃物を貫き通せないなどというが、ああ、こういうことかとよく分かった。野生動物の皮膚のすごさは半端ではない。小石があたろうが叩こうが実は効果がなかったのだろう。

いい加減こっちも疲れてきた。よく考えれば危害を加えられている訳でもない。そのうちどっかで帰るだろうと、放っておくことにした。名前でもつけるかと、取りあえず「イノキチ」と呼ぶことにした。今の若い子なら「イノッシー」とかつけるんだろうなと思うと、なんだか歳を感じる。

名前をつけると、なんだか親しみが湧いてくる、よく見れば牙も生えていない。まだ”うりぼう”を卒業して、さほどたってはいない感じだ。目を見るととても綺麗な目をしている。動物の純粋な目だ。また、フレンドシップなのか、何かの要求なのかわからないが、たまに後ろからド突いてくるのが、ムツゴロウさん感覚でとらえれば可愛らしい。ただ休憩の時に地面を掘り返した泥だらけの鼻でド突くので、パンツが汚れた。

あと30分くらいで山頂だなぁ、そろそろごはんかなと思った時に、今日予定していた昼のメニューを考えると、実は相当の危機に陥っていることに改めて気づいた。(まあ嫌な予感は途中からしていたのだが、、、、)なぜならイノキチを避けて食べるなんて、どうあがこうが絶対不可能なメニューだったからだ。

その日の昼は、よりによって
「チーズフォンデュ」だったのである。

つづく

写真左:バス停の階段の下から見つめるイノキチ
写真中央:何故かついてき始めたイノキチ
写真右:登山口への車道をついてくるイノキチ


中編はこちら
www.yamareco.com/modules/diary/36225-detail-113898

他のドタバタコメディを読む
www.yamareco.com/modules/diary/36225-category-4
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コメント

RE: イノシシと一緒に登山した話(前編)
初めまして。

第二話・三話も楽しみにしています。

でも、三枚目の写真、
一緒に散歩してる風で良いですよ
2016/2/2 13:50
RE: イノシシと一緒に登山した話(前編)
heheさん はじめまして
ありがとうございます!大変励みになりますm(_ _)m
週末までには中編をアップできるように頑張ります( ̄^ ̄)ゞ
三枚目の写真、犬だったらなんの変哲もない写真なんですけどね〜〜。
2016/2/2 18:44
RE: イノシシと一緒に登山した話(前編)
追い払われようとしても、ヒタヒタついてくるイノキチ君。
なんだか涙が出て来そう(;_:)
どんな思いでついてくるのでしょう。
けど、突然親が現れてっていう危険もあるし・・・。

時々思うことなんですが、動物と話ができたらなぁ・・・

続編、楽しみにしています。
2016/2/3 10:06
RE: イノシシと一緒に登山した話(前編)
sim_mmsさん
こんにちは
そうなんですよね〜話ができたらなとつくづく思いました。
仕草や行動を観察して想像するしかないわけですが、結局の所、本当のことは分かりませんよね。最後下山口までついてくることになるのですが、最後の方になってくると、手掛かりとなる仕草を見せるので、もう少し想像できるかもしれません。お楽しみに!。
読んでいただきありがとうございます!m(_ _)m
2016/2/3 12:45
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