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バス停からずっとイノシシ（名前:イノキチ）についてこられた我々は、威嚇して追い払おうとするも効果はなく、山頂まであと30分のところまで来てしまう。その日の昼ごはんはチーズフォンデュなので、狙われること間違いない。大ピンチであった。
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前編はこちら
http://www.yamareco.com/modules/diary/36225-detail-113767
自分は山での食事はしっかり料理をするたちである。在籍していた大学の部活がしっかり料理する伝統があったこともあり、それが当たり前の感覚として身に沁みこんでいる。
当時は余りある体力にものを言わせ、合宿に中華鍋を担いでいって『麻婆茄子』とか炒めていた。今思えば「別にコッフェルで作ってもいいんじゃない？」というツッコミだらけだが、「やってみようぜ」という学生のノリでワイワイやるところが楽しかったのだ。
さらに、女性部員も多かったせいか、アルプス縦走の最中でもお菓子なんか作っていた。といっても粉ゼリーを“巨大なコッフェルいっぱい”に固め、みんなでスプーンですくって食べるようなワイルドなものだ。お盆を使って全裸で踊っている男の先輩に対して「見えてますよ」と冷静にツッこむ連中だったので、今時の山ガールとちょっとイメージが違うかもしれない。
と、そんなわけで滝子山に行った時も、時間もあるし『チーズフォンデュ』でもやってみるかという発想は、あんまし特別なものでもなかったのだ。
しかし、こんな時によりにもよってチーズフォンデュである。調理中は元より食材を出した瞬間にイノキチに食われること間違いない。このままだと、行動食も昼ごはんも食べられず、シャリバテになりながら歩くハメになることは目に見えている。
今度こそ本気で『対策』を打たねばなるまい。私の脳みそはフル回転した。イノキチの行動を一つ一つ思い出してみるとある特徴的な点が見つかった。
同じ道を先に登っていた"おじさん"が一人いたのだが、追い抜いたとき、偶然だったのか、その人にまとわりついて、我々から一時的に離れたことがあった。ちょうど投石の直後で自分たちとイノキチの距離が離れていたときだ。
だが我々が休憩している時にすぐに追いかれ、結局イノキチは戻ってきてしまったのだが・・・。ちょっとまてよ！その時のイノキチの行動を分析すると『距離が近い人間についていく性質がある』のではないか！？。
ちなみにその"おじさん"は「もうイノシシには関わらんぞ」と言わんばかりに我々の後ろを距離をおいて登ってきていた。我々が休憩すればそれを察知して距離をとって休憩する。まるで雪山の”ラッセル泥棒※”である。そこにはイノシシをめぐり登山者同士の奇妙な駆け引きがあったのだ。
※ラッセル泥棒：先頭でラッセルする人を手伝わず、気づかれないように後ろから距離を置いてついてくる人のこと。
相棒と作戦を練る。その作戦はこうだ。
�＿嫉海靴討�る登山者が見えたらペースを上げ、イノキチを引き離す。
�△修里泙泪據璽垢魄飮�したまま何食わぬ顔で挨拶してすれ違う。
こうすれば、イノキチは『より近い距離にいる下山者』についていく可能性が高い。まあ、下山者はこれから帰るわけだからそんなに困ることはないだろうし、イノキチも元のすみかに戻れるので良いだろうと、自分の罪を許した。
数分後、ターゲットとなる下山者が下りてきた。さあ作戦実行だ！ペースを上げ、イノキチとの距離を徐々にあけてく。そして挨拶し、さらにダメ押しで「あそこにイノシシがいますよ〜」とさりげなく声をかけ、そのまますれ違う。後ろを振り返ると下山者は止まって物珍しそうにイノキチを眺めていた。イノキチのほうも興味を持ったようで下山者に近寄って行った。やった！成功だ！
そのままイノキチは下山者の後をついて一緒に下山していった。「あーよかった。」無事に山頂に到着することができたのだった。自分としては、一緒に登っているのが楽しかった所もあるので、ちょっと寂しい所もあったが、これで心置きなくチーズフォンデュが食べれる。ホッとしてザックを下ろして腰掛けた。
山頂にはすでに何グループかの登山者がいた。そしてさらに何組か登ってきて少しずつ賑わって来る。しばらくすると、さっきの"ラッセル泥棒おじさん"も上がってきた。
・・・しかし
その後ろにはイノキチがいたのである。
((((；ﾟДﾟ)))))))
意外にも山頂の登山者たちは興味深々であった。イノシシ自体珍しい上、こんなにフレンドリーなのヤツも珍しい。「あら珍しい！イノシシなんて」大人気のイノキチである。
しかし登山者がたちがご飯を食べ始めようとすると、雰囲気は一転する。イノキチはご飯を頂戴とばかりに擦り寄るのだが、巨体な上、泥だらけの鼻で擦り寄るので嬉しくない。
塔の岳山頂の野良猫『塔くん』は今やヤマレコで大人気だ。うちの相棒も日々ネコレコ写真を漁るほどである。餌をせがむのが塔くんなら、よしよしとメロメロになってしまうところ、悲しいかなイノキチ。体がでかすぎる。
山頂のシアワセな昼ごはんは、微妙にパニックの様相を醸し出してきた。イノキチや"ラッセル泥棒おじさん"に対して非難の目が向けられ始める。すかさず”おじさん“、われわれを指差し、こう言った。
「この人たちが連れてきちゃったんですよ！」
「はいーーー？！★※？♂！☆▲！？」
((((；ﾟДﾟ)))))))
折角巻いたのに、山頂に連れてきたのはあなたじゃん。
つづく
写真左：ストックに興味を持つイノキチ
写真中央：止マッテナイデ早ク行コウヨー！
写真右：山頂まであと30分位のあたり。
後編はこちら
www.yamareco.com/modules/diary/36225-detail-114114
他のドタバタコメディを読む
www.yamareco.com/modules/diary/36225-category-4
こんばんは。
前回もコメさせて頂いたものです。
お忙しい中の第二弾のアップ、ありがとうございます。
いやぁ、楽しみにしてましたが、
＞・・・しかし
＞その後ろにはイノキチがいたのである。
スミマセン、爆笑〜〜〜
この後の展開に目が離せません
にしても、今回の写真も良いですね〜〜〜、
ほのぼのと言う言葉がピッタリ
すっかりイノキチ君とフレンドシップな関係が
出来上ってますよ
もしかして、そのままペットにって展開！？
では次回も楽しみにしております。
heheさんこんばんは！
山頂におじさんが連れて来ちゃったときは本当に口があんぐり開きました。罪を犯してまで巻いたのに〜orz
モチロン我々にもちょーだいと寄ってきてザックをドロドロにされましたよ。まったくもう。(´Д` )
でもきっとどっか嬉しかったんですよね〜heheさんのご察しの通り、写真にはウソをつけない。撮ってる人の気持ちが写っちゃうんですよ。σ(^_^;)
しかし事実は小説よりも奇なりなどと言いますが、山の事なんかすっかり吹っ飛ばされて、もはやイノキチと取り巻く人間の事しか覚えいません。動物も人間も面白すぎる。
珍道中はまだまだ続きますので楽しみにしていて下さい。来週の月曜までにはアップするとおもいます。
ありがとうございましたm(__)m
cajaroaさん、今晩は。
今週末日曜日に、イノシシ出没可能性がある、筑波山薬王院コースを登ろうかと悩んで、日記に投稿しましたが、この日記を読んでいたら、あまりに可笑しくて爆笑してしまいました。
で、何だか気持ちが軽くなった様で、イノ君かイノちゃんに遭遇しない事を願いつつ、内心ドキドキしながら登って来ようと思います。
あっ、私の日記に👏頂いた様で有難うございます。
ak0211さんこんばんは
あっ バレました！？
がんばれの拍手です。
この日記で不安が吹き飛んだのなら何よりです。ぜひぜひ楽しんできてください！
基本的に動物は人間を怖がるので、そこまで怖がらなくてもいいと思いますよ。イノキチはかなり特殊ですね。
本当はその辺りに何かいるのかもしれないが、気づかないだけなのかも。っていつも山で思います。
良い山行を！！
こんばんは。
イノシシには何度か遭遇したことがありますが、いずれの場合も、こちらの存在に気付くと、向こうが逃げていきました。
（１回は、そのまま茂みに潜んでうなり声をあげていて、怖かった(･･;)
その時は、撤退しました。）
勝手な想像ですが、写真を見る限り、敵意や警戒心が感じられず、むしろ好意的なようにも見えます。（あくまで、無事帰って来た人の話だからであり、実際に自分が単独で行動中遭遇した場合は危険な判断だという前提です）
ただ、ここまで人を警戒しないのは、誰かが飼っていた、あるいは近くに可愛がっている人がいるのかなぁと、想像は膨らみます。
滝子山は、昨年秋に登りましたが、イノキチ君も鹿さんも見かけませんでした。
時折茂みでガサッと音がするのは、鳥さんだけ。
それでも、周りに誰もいないと一瞬ビビってしまいますが(^^;
興味深い話をありがとうございます。
次編も楽しみにしています。
sim_nnsさん
こんにちわ
イノキチの行動の謎については、後編にて少し触れようと思いますが、普通の野生動物としてはやっぱりヘンですよね。
ツキノワグマにも出会ったことありますが、向こうもこっちを見ないようにソーっと横切って去って行ったくらいです。
危ないのは出会い頭ですよね。そうでもない限り、お互いに恐れから干渉したがらないため、かなり厚いボーダーがあるような気がします。
登山者とも話したりしたのですが、登山者が残した山頂の残飯を狙っていだんじゃないかとか、いろいろ諸説ありました。
なんだかまるで『ナウシカ』の世界です。
「森へお帰り」の一言で帰ってくれたらよかったのですが・・・
ありがとうございます！m(__)m
後編ではもう少し判断材料が揃いますので楽しみにしていて下さい！
（ネタバレになるので言えないんです）
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