北岳厳冬2013 (奈良田〜池山吊尾根〜北岳山荘〜北岳)
- GPS
- --:--
- 距離
- 46.1km
- 登り
- 4,157m
- 下り
- 4,159m
コースタイム
06:45 奈良田の里温泉駐車場
07:00 冬期閉鎖ゲート前
10:25 あるき沢橋(池山吊尾根登山口)
13:00 池山御池小屋(幕営)
【1月1日】
06:00 池山御池小屋
09:35 ボーコン沢ノ頭
11:00 八本歯ノ頭
12:40 吊尾根分岐
13:40 北岳山荘
【1月2日】
悪天候の為、北岳山荘で停滞
【1月3日】
10:30 北岳山荘
11:50 北岳山頂
13:00 八本歯のコル
13:50 ボーコン沢ノ頭(幕営)
【1月4日】
08:30 ボーコン沢ノ頭
10:00 池山御池小屋
12:45 あるき沢橋
16:00 奈良田の里温泉駐車場
天候 | ※気温,風速は標高2900m地点、9時の計算値 12月30日(日):移動日 天気:雨 気温:-3.8℃,風速:20.1m/s 12月31日(月):奈良田→池山御池小屋 天気:麓は晴れ 気温:-14.3℃,風速:21.3m/s 1月1日(火):池山御池小屋→北岳山荘 天気:晴れ 気温:-15.2℃,風速:21.8m/s 1月2日(水):北岳山荘にて停滞 天気:大荒れの吹雪 気温:-13.4℃,風速:33.0m/s 1月3日(木):北岳山荘→北岳山頂→ボーコン沢ノ頭 天気:吹雪 気温:-19.3℃,風速:21.5m/s 1月4日(金):ボーコン沢ノ頭→奈良田 天気:晴れ 気温:-16.8℃,風速:20.4m/s |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
トイレ、自販機利用可能です。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
○冬期閉鎖ゲート 今年も閉鎖されています・・・ (これについては、あまり触れない方が良いのかな。) ゲート高さは約3m。 どうやって越えたかは書かないでおきます^^; ○奈良田〜歩き沢橋 登山口の歩き沢橋までは約12kmの林道歩き。 殆どは乾燥路面でしたが、一部凍結しており歩行困難な箇所有り。 林道には幾つものトンネルがありますが、天井には大きな氷柱が下がっているので頭上に注意して下さい。 また、凍結している箇所もあるので足元にも注意。 ○池山吊尾根 歩き沢橋前の登山口から雪道。 年末年始に多くの登山者に歩かれた後だったので、ラッセルの必要は殆どありませんでした。 ボーコン沢ノ頭まではトレースがしっかり付いており、迷うような箇所もありませんでした。 ○八本歯 コルへの下りは急斜の岩雪ミックスルート。 去年はここにフィックスロープが設置してありましたが、今年はロープが切れて無くなってました。 軽装であればフリーでも行けそうですが、重装の場合はロープ持参を推奨。 危険な箇所は4m程度の下り部分だけなので、回収を考えるのであればロープ長は10mもあれば十分。 ロープ支点は雪に埋もれておらず利用できました。 ○北岳山荘〜北岳山頂 トレースは岩稜西側の夏道上に多く付いていました。 しかし、そのルート上は硬い雪で覆われ危険な状態になっている箇所があります。 装備重量、登山者の技量によっては滑落の恐れがあるので、危険に感じた場合は岩稜上を進んだ方が安全です。 岩稜上は、岩と雪のミックスルートですが、特に難しい箇所は無し。 但し、北岳山頂付近には東側に雪庇が発達しているので踏み抜かぬよう注意。 ○北岳山荘 2階の2室のみが利用可能でした。(1室の大きさは8畳程度) その他の入口は閉鎖されており利用出来ないようです。 室内には無線機が設置されており、「非常時のみ利用」、との事。 試しにスイッチを入れてみると電源は入りました。 (もちろん、利用はしませんでした) ○北岳山荘から間ノ岳方面 1月1日に縦走者のトレースがありましたが、その後悪天候が続きトレースは無くなっていました。 |
写真
感想
年末年始の休暇を利用し、南アルプスの北岳へ登ってきた。
当初の予定では、北岳、間ノ岳、農鳥岳の白峰三山縦走を計画していた。
しかし、中日となる1月2日〜3日は悪天候となった為、北岳山頂の往復に変更となった。
【2012年12月31日】
6時45分、日の出前に奈良田温泉の駐車場を出発。
車道を20分程歩くと冬期閉鎖ゲート前に到着した。
冬期閉鎖ゲート前には発電所職員用の駐車場があり、多くの車両が駐車してあるがその殆どは山梨以外の他県ナンバー。
どうやら北岳登山者の車両らしい。
登山口に近くて便利、ではあるが・・・後でトラブルにならないのかな?
そんな事を思いつつゲートを越え、トンネルを通り林道を進む。
池山吊尾根登山口の歩き沢橋前までは約12Kmの林道歩き。
林道上に雪は無くスムーズに歩けるが、とにかく長い。
いい加減、嫌気がさしてきた頃、ようやく歩き沢橋前に到着した。
今年は雪が多いようで、登山道は最初から雪道だった。
さっそくアイゼンを付けて、池山吊尾根を登る。
池山吊尾根は夏場は殆ど利用されない登山道だが、積雪期は雪崩の危険が少ないルートとして多く利用されている。
年末に多くの登山者が入山しているようで、明瞭なトレース有り。
登山道の雪は踏み固められ歩き易い状態だった。
13時に御池小屋到着。
まだ時間は早いが、長い林道歩きで足が痛くなっていたので、今日はここで幕営する事にした。
小屋利用も悪くないが、あまり大きい小屋では無い。
きっと鮨詰め状態だろう、と思って無難に幕営を選んだ。
今日は登山初日、かつ大晦日、なので少し食事は豪勢に「おでん」。
ちくわ、厚揚げ、ガンモ、ゴボウ巻き、etc…
重くてかさばる食材ではあるが、山でひもじい思いはしたくないので少し多目に持参した。
意外に空腹だったので、2食分の具材を全て食す。
予定よりも食料の減りが早くなったが、明日から担ぐ重量が減ったのでまぁ良し。
そうして、2012年最後の日は過ぎていった。
【2013年1月1日】
朝食は年越しソバ(インスタントだけど)
ソバを食べ、とりあえず正月らしい気分になったところで、御池小屋を出発する。
朝6時、まだ暗い中、ヘッドランプの明かりを頼りに樹林の道を進んで行く。
登るにつれて空は明るくなってゆき、やがて初日の出を迎える。
眺望の無い樹林帯ではあったが、木々の間から真っ赤な日の出を見る事が出来た。
樹林の中には、所々でテントが張ってあった。
殆どのテントに人の気配は無く、家主は出発した後のようである。
やがて森林限界を越えると、一気に眺望が開けた。
晴天の空の下には、今回の目的地である農鳥岳〜間ノ岳の真っ白な稜線。
今日は良い登山日和になりそうだ、と期待しつつ登り続ける。
しかし、ボーコン沢ノ頭に到着し、北岳方面を眺めると・・・
山頂にはガスがかかっている。
更に先へと進み、八本歯手前に差し掛かるとガスで視界は悪くなり、ケルンの前で一時待機。
八本歯からは難所になるので、出来れば視界のある状態で進みたい。
昼食を摂りながら待機するが、ガスが一向に晴れず。
寒くなってきたので、諦めて先へと進んだ。
八本歯に到着し、コルへの下りに取り掛かる。
ここには去年はフィックスロープが設置してあった。
しかし、今年はそれが無い。
一応、支点にロープの残骸はあるのだが、どういう訳か切れ落ちている。
危険なのは4m程度の急斜の下りなので、ロープ無しでも行けそう、
ではあるが、20キロ近い重量を背負った状態で下るのは不安だ。
一旦戻り、平地にてロープを出し、ハーネス装着。
支点にロープを通し、懸垂下降で通過した。
その後は特に難しい箇所は無し。
際どい箇所はあるが、登山道にはトレースがあるので問題なし。
北岳山頂へ続く道を進み、やがて吊尾根分岐に到着。
ここで、北岳山頂と北岳山荘方面に道は分かれるが、北岳山頂方面を見ると、相変わらずガスで覆われている。
登るかどうか、しばし迷うが、今回の目的は北岳登頂ではなく、白峰三山縦走。
“北岳は目的地では無いし、去年も登っているから今回はいいや”
と考えて、山頂へは行かず、山荘方面へと進んだ。
山荘方面への道は危険箇所なので、トレースは殆ど無い。
しかしよく観察すると、消えかけているトレースが見つかった。
どうやら単独者のトレースのようだ。
そのトレースを辿って、山荘方面へと進む。
トレースは岩稜の西側を巻くように続く夏道を辿っており、しばらくその道を進む。
しかし、夏道は雪で完全に覆われており、所々で危険箇所が点在する。
このまま進むのはヤバそうなので、ハシゴ場を通過した先にて、西巻きの夏道に見切りを付けて、岩稜上へと登った。
岩稜上は、岩と雪のミックスルート。
しかし傾斜は緩く、危険な箇所は無い。
西の巻き道よりはよっぽど安全だった。
右下方に続くトレースを目で追いながら、しばらく岩稜上を進むと、前方に北岳山荘が見えてくる。
降り易そうな場所を選んで岩稜を降り、トレースと合流。
後は危険な箇所は無さそうなので、適当に歩き易そうなルートを選んで進み、山荘へ到着した。
北岳山荘は、2階のみが冬期利用として開放されていた。
階段を登り、冬期入口より中に入ると内部は無人。
明日は天候が荒れる、とあってか今日利用する登山者は恐らく居ないだろう。
予定では、明日はこの小屋で停滞。
その後、天気の様子を見て、縦走するか、それとも撤退するかを決めるつもりだった。
小屋に荷物を降ろし外を眺めていると、北岳方面から、一人の登山者がこちらに向かってくるのが見えた。
明日は大荒れの天候なので、今日の山荘利用者は私一人かと思っていたので意外であった。
その登山者・・・北岳山荘で会った方なので、Kさん、と呼ばせて頂こうか。
Kさんに話を聞くと、私と同じく白峰三山縦走を計画しているとの事。
しかし、明日、天候が荒れる事は知らなかったらしい。
私がその事を伝えると、Kさんは驚いたような表情を見せた。
Kさんの予定している山行日数はあと2日。
明日、行動しなければ縦走は達成できない、
という事で例え明日の天候が荒れる、としても農鳥岳まで行く意気込みだった。
しかし、明日の稜線上は、風速30m/sを越える。
どんなベテランでも、行動するのは不可能な環境だ。
そして、その日数では縦走は恐らく無理。
私はその旨を主張し、縦走の中止と明日の停滞を薦めた。
一応、Kさんは聞き入れてくれて、縦走は諦めてはくれた。
しかし、残り日数の都合上、明日は行動したいと言う。
ここから撤退するにしても、2日は必要なので、明日は来た道を引き返しボーコン沢ノ頭まで撤退したい、との事。
うーん、ちと困ったな。
私としては、明日は山荘で停滞して欲しいところだが・・・
Kさんは私よりもずっと年長の登山者なので、あまり強く主張も出来ない。
「無理だと判断したら、山荘へ戻ってきて下さい。」
と言う事しか出来なかった。
夕刻、山荘の外に出て周辺散策に出かける。
少し足を延ばして中白根山方面まで偵察しに行ったりしながら、周囲の景色を鑑賞する。
散策を終え、小屋に戻る頃には見事な夕映えの景色が広がった。
遠方の富士山、そして北岳が真っ赤に染まる。
明日は天候が荒れる、なんて思えないような美しい光景だった。
しかし、日が沈み暗くなるにつれて、予想通り風が強くなってくる。
そして・・・
山は荒れ始めた。
【1月2日】
強い風の音で目が覚めた。
Kさんは、もうすでに出発準備を始めており、やはり行くつもりのようだ。
外は吹雪。視界は10mも無い。
山荘を後にし、北岳方面へ進むKさんを不安な気持ちで見送る。
Kさんの姿はすぐに吹雪の中へと消え、見えなくなった。
山荘にて一人残る私。
3000m級の破天は恐ろしい。
一昨日、御池小屋では電波が入ったので、この先の天候を調べる事が出来た。
その情報によると、明日は風が弱まり、天候は幾らか回復するらしい。
その事が判っているので、私の場合は問題無かったが…
心配なのはKさんだ。
ひっきりなしにジェット機の噴流のような風の轟音が響き渡る。
一旦、風が止んでも、すぐに西の空からはゴゴゴ、という重低音が聞こえてきて、
それは震災の時に幾度も聞いた地鳴り音とよく似ており、不吉な気持ちにさせられる。
堅牢な山荘内は安全であるが、その外を一歩出れば地獄の様な環境下。
トイレに行くだけでも完全防備で行かなければならないような状況だ。
果たしてこんな環境で無事でいられるのか、非常に心配である。
そんな中、山荘で過ごしていると・・・
突然、山荘のドアが開き、人が入って来る。
もしや、と思い出迎えると、Kさんだった。
やはり無理だったようで、山荘に戻ってきてくれた。
Kさんにとっては災難であるが、私からすればKさんの安否が判り不安が解消されたので嬉しいところ。
話を聞いてみると、立っていられないような台風並みの強風だったらしい。
まぁ、何はともあれ、無事で何より。
後の心配は、この娯楽の無い状況下で何をして時間を過ごすか、だね。
そんな時は・・・
「酒!飲まずにはいられないッ!」
持参したウィスキー500ml、この日で全て飲み干してしまう。
明日も停滞だったらどうすんだよ・・・
【1月3日】
この日の天候は運命の分かれ道。
もし、天候が回復すれば、縦走決行。
この日を含めて山行日数はあと3日あるので、縦走は可能、と考えている。
しかし、今日も悪天であれば・・・
縦走は諦めなければならない。
今日停滞し、残り日数が2日になってしまうと縦走は難しい。
農鳥岳までは1日あれば十分行けそうであるが、その先の日数が読めない。
農鳥岳からの下り、大門沢経由の奈良田までの登山道には、恐らくトレースは無い。
ラッセルを強いられる事になるのはほぼ確実で、1日で奈良田まで下山できるか判らない。
この区間の通過には、最低でも2日は欲しいところだった。
風は昨日に比べて弱まっているが、問題は視界。
間ノ岳以降は地形が複雑なようなので、この稜線を歩いた事が無い私としては、
視界が無い状況での立ち入りは避けたい。
今日はここ4日間でも最も気温が低く、標高3000m近辺の外気温は-20℃を下回っている。
そんな中、ルートを探して長時間彷徨えば、どんな結果になるか、判り切っている。
果たして、吹雪は止んでいるか?
期待を込めて、山荘のドアを開けると・・・
残念!
相変わらずの吹雪だ><
だが、まだ時間はある。
それに、空には薄らと青空が見える事も有るので、吹雪が止んで視界が晴れる可能性も無くはない。
とりあえず、10時まで待ってみて、天候が回復したら縦走決行。
回復しなかったら、撤退する事にした。
一方、Kさんは今日中に山を降りなければならないので、視界がどうあれ出発しなければならない。
天候が回復しないものか・・・9時までKさんは待ったが、無駄だった。
昨日よりはかなりマシ、ではあるが吹雪の中、Kさんは山荘を後にした。
そして、10時。
吹雪は・・・止まなかった。
縦走の中止、を決断する。
残念だが、撤退だ。まぁ、仕方ないね・・・
さて、そうなると、次の問題は、「いつ撤退するか」、である。
今日の天候は、良くない。
もう一日、山荘で停滞するのが無難だ。
しかし、先行したKさんの行方が気になるところ。
なんでも、2日前に山荘へ来るまでの道中にて、一度滑落したそうだ。
幸い、途中で止まったので大事には至らなかったそうだが、危ないところだったらしい。
実際にその場に居合わせた訳ではないので、滑落した場所は正確には判らないが、
聞いた限りでは、恐らく私が岩稜上を登って回避した箇所だろう
そこは夏道が走っている箇所であるが、硬い雪で夏道は隠れて60°位の傾斜になっている。
アイゼンの前爪、ピッケルだけで斜面に張り付いて、7m程のトラバースで通過しなければならない箇所だ。
今日の天候では、この辺一帯に他の登山者が来る事はまず無いだろう。
もし、何かあったとしても、助けは呼べないだろな・・・
Kさん自身も、今日の天候で稜線上を歩く事に不安を訴えていた。
そう考えると、余計なお世話かもしれないが、またも心配になって来る。
安否が気になるので、撤退は今日にするか。
10時30分、北岳山荘を発つ。
北岳方面へ向かった、Kさんの後を追った。
Kさんのトレースは殆ど無くなっていたが、所々で北岳方面に向かう細かいトレースが残っていた。
トレースの方向は斜面西側の夏道に向かっていたが、それは追わずに2日前と同じく岩稜上のルートを進んだ。
ハシゴの手前側(山荘側)で岩稜を降り、後はKさんのトレースが続く夏道を辿る。
やがて吊尾根分岐に到着すると、トレースはそこから東方向、池山吊尾根へと向かっている。
どうやら無事に危険箇所を通過し、稜線を降りられたようだ。
もうあとは心配する必要は無いだろう。
稜線を降りれば風は弱まり、環境的にはかなり易しくなる。
この先には八本歯の難所があるが、Kさんはあの岩場をノーロープで下っている。
あそこを下れたのなら登る事は出来るはず、きっと大丈夫さ。
さて、心配が無くなり気が楽になったところで・・・
北岳山頂方面を眺める。
そういえば、まだ今回は北岳に登っていなかった。
少し環境が厳しいが、縦走が中止になった今となっては、せめて北岳だけでも登っておきたい。
気温が低く、吹雪いているこの環境下では、アタックはすべきでは無いかもしれないが、現時点で体調は問題なし。
同じような環境で去年も登っているので、山頂までのルートは十分把握している。
よし、アタックしてみるか。
吊尾根分岐の標識に荷物をデポし、風が強いのでロープでしっかり荷物を固定した上で、
北岳アタックを開始した。
北岳山頂への道は、岩稜の西側に沿って続いているが、
昨日、今日は悪天候なので誰も登った者は居らず、トレースは一切無し。
まずは登山道に沿って設置されている鉄棒を目印に夏道を辿った。
このルートは北岳山荘への道と状況が似ている。
登山道は雪で覆われ、所々で角度50〜60°くらいの斜面になっている。
その斜面の雪は西風で硬くクラストしており、キックステップは出来ず。
アイゼンの前爪とピッケルを効かせて斜面に張り付きトラバース気味に登って行く。
重荷物をデポして身軽な状態であれば難しくは無いが、視界が無い中で目印の鉄棒を追うのは辛い。
ここは山荘への道と同じく夏道ではなく岩稜上を進んだ方が楽そうだ、
と考えて、岩稜上へと続くルンゼ状の傾斜を登って岩稜に上がる。
思った通り、岩稜上は登山道に比べてリスクは少なく歩き易い。
但し、所々で東側に雪庇が発達しているので踏み抜かぬよう注意しながら、慎重に山頂へと進んでいく。
そして、北岳山頂に到着した。
予想通り、視界は真っ白で何も見えず。
でも、今日登ったのが自分だけ、というのは妙な満足感がある。
北岳は国内2位の高峰。
もし今日、富士山に登った登山者が居ないとすれば、私が今日の日本で一番高い場所に到達した者、という事になる。
・・・まぁ、自己満足にすぎないけど^^;
山頂気温はマイナス23度くらい。
かなりの低温だけど、多目に着込んだ為、それ程寒くは感じず。
(普段は行動中には着用しないダウンも着込み、厚着薄着合わせて6枚着てた。)
10分程、山頂に滞在した後で下山した。
吊尾根分岐にデポした荷物を回収し、池山吊尾根方面へ下る。
稜線を降りると風は穏やかになり、その後の行程で特に問題となる箇所は無かった。
ロープで懸垂下降した八本歯も、登りであれば難なく通過出来た。
しかし、視界が悪く、登山者は全く居ないので道迷いには細心の注意を。
GPSで方角を確認しながら、ボーコン沢ノ頭まで戻ってきた。
その夜は、ボーコン沢ノ頭から山頂方面へ少し進んだ場所にて幕営。
本来であれば樹林帯まで戻って幕営するのが賢明であるが、間近で北岳が見れる場所が良かったのでそこを選んだ。
風が強まる恐れが有ったので、雪壁と張り縄はしっかりと設営したが・・・
案の定、夜間は風でテントが煽られ酷い状態。
壁があるのでテントが飛ばされる程ではなかったけれど、おちおち寝る事も出来ず。
0時過ぎても寝られなかった・・・
【1月4日】
散々な夜だったが、なんとか朝を迎え、テントの外に出ると朝焼けが広がっていた。
さっそく身支度をし、目の前に見えるボーコン沢ノ頭まで行って御来光を待つ。
やがて、富士山の向こうから太陽が登り、周囲の山々を紅く照らす。
空は雲一つない快晴。
昨日までの悪天候がウソのようだ。
風は相変わらず強いが、今日は登山日和になりそうだ。
さて、どうしようか・・・
予備日はまだあるので、明日下山でも構わない。
紅く染まった北岳を見ていると、また登りたくなってくる。
・・・でも、もう良いか。
さすがに5日も氷点下の山中で過ごしていると、暖かい下界が恋しくなってくる。
今日、山を降りる事にした。
テントに戻り撤収し、池山吊尾根を下る。
登山道を下りきった後は、長〜い林道歩き。
そして、最後は冬期閉鎖ゲート越え。
考えると気が重くなる行程である・・・
しかし、ゲート先のトンネル内にハシゴが置いてあったので、ゲートから出る事は楽なはず。
と、期待していたら・・・
ハシゴ、無くなっておる。。。
どうやら撤去されてしまったらしい。
最後の難所はゲート越え。
なかなか苦労させられた^^;
コメント
この記録に関連する登山ルート
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自分は八本歯の頭にいた二人組の1人です(笑)懸垂下降を撮った者です(笑)やはり縦走は厳しかったんだね…遠くから来て残念だったけどナイスガッツですo(^-^)o…又どこかのお山で会える日を楽しみにしていますよ!(b^ー°)
明けましておめでとうございます。
連日、雪山遭難のニュースを耳にしては少し心配していました。
僕には真似できない厳冬期の北岳の山行、堪能させて頂きました。
厳しい行程を歩いた者にしか見ることの出来ない世界ですね。
ゆっくり休んでください。
tooleさんのレコにLuskeさんのコメントを見つけた(!!!)ので来てみました。
そうかー年末年始は北岳だったのですね。予定では白峰三山とのことでしたが、あの年末年始に大荒れに遭難のニュースに、気が気ではなかったです…
ところが文章見るとさすがLuskeさんですね、(当たり前なのでしょうが)とても冷静に天気を分析して行動していらっしゃる。
夏でさえ存在感のある北岳、雪の季節はますますですね、すごい世界です。
見せていただきありがとうございました。
八本歯では、御声援ありがとうございました
ギャラリーが居るので、懸垂下降は燃えましたよ
残念ながら縦走は達成できませんでしたが、充実した登山でした。
下降中に撮影させて頂いた御二人の写真、その登山の思い出の一つとして、いつまでも大切に保管させて頂きます。
南アは自宅から遠いので、年に数度しか訪れる事ができませんが、また御二人にお会いしたいものです。
今回はプルージック結びでしたが、次回は変形型バックマン結びを披露したいと思っております!
またどこかの山でお会いしましょう
帰ってから知ったのですが、この年末年始、遭難が相次いだようですね。
北岳では無いようですが、南アでも遭難者がおられるとの事。
縦走は達成できなかったものの、無事帰ってこれただけでも満足すべきだな、と思いました。
やはり、冬の3000m級はハードです。
しばらくは休養してから、また東北の山へ出かけようかと考えてます
そろそろ馬ノ神岳、行けるかな〜
御心配おかけしましたが、無事帰って参りました
2日は大荒れでしたが、入山前から荒れる事は判っており、その後回復する見通しもあったのであまり焦る事はありませんでした。
でも、天気の読みは完璧・・・とは行かず。
自分の予想では、3日時点で晴れると思っていたのですが、1日ズレました><
やはり、冬の天気は難しいですね・・・
まだまだ修行が必要だと思いました^^;
冬の北岳、素晴らしい世界でした。
恐ろしいけど、美しい、
どこか現実離れしたものを感じさせる神秘的な世界でした。
-20℃の中、20Kの荷物を背負い、タフな山行だったと思います。
またしてもLuskeさんのレベルの高さを実感しました。
Kさんも無事なようでなによりでした。
夕焼け、朝焼け、3000mクラスの山々。実際に見るとさらにきれいなんでしょうね。
自分は写真で堪能させていただきました。
きっとあの日の最高到達点はLuskeさんのものですよ
林道もゲートありトンネルありと手ごわいですね。
トンネルは確かに怖そうです・・・。
次回の年末年始も南アルプスでしょうか?
今回よりも天候に恵まれるといいですね。
それでは、今年も宜しくお願いします。
去年の最後であり、今年の最初の登山。
それに相応しい手ごたえのある登山でした
また来年も、できれば南アルプスに行きたいですね。
今回達成できなかった白峰三山縦走、次回こそは!
なんて考えてますが・・・
でも、問題はあの林道。
ゲートは有るわ、距離は長いわ、トンネルは怖いわ、の三重苦><
またあそこを通るのか、と考えると気が重いですね^^;
とりあえず、リベンジは検討中、としておきますか〜
拙いレコですが、昨年はご覧頂きありがとうございました。
こちらこそ、今年も宜しくお願いします
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