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Yamareco

記録ID: 866222
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
白馬・鹿島槍・五竜

【親不知〜白馬岳】GW栂海新道縦走(白鳥、犬ヶ岳、サワガニ、長栂、朝日、雪倉、白馬、乗鞍)

2016年05月01日(日) 〜 2016年05月04日(水)
 - 拍手
MSK0 その他1人
GPS
80:00
距離
36.0km
登り
2,998m
下り
1,179m
過去天気図(気象庁) 2016年05月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
親不知コミュニティロード駐車場から海岸に降りていく
親不知コミュニティロード駐車場から海岸に降りていく
立派なレンガ造りのトンネル
立派なレンガ造りのトンネル
親不知海岸
波にさらわれそうになった
波にさらわれそうになった
ここをスタート地点とする
ここをスタート地点とする
栂海新道縦走開始
栂海新道縦走開始
駐車場に戻ってきた
駐車場に戻ってきた
道路の山側に登山ポストあり
道路の山側に登山ポストあり
4日分の荷物が重い
4日分の荷物が重い
まだ低山の雰囲気
まだ低山の雰囲気
とりあえず一座目
とりあえず一座目
まだまだ低山
説明の看板あり
まだまだまだ低山
まだまだまだ低山
舗装道路に出た
急登をゆく
雪がでてきた
頭(かしら)からの眺め
頭(かしら)からの眺め
明確な稜線がない
明確な稜線がない
白鳥山への稜線
山小屋が見えてきた
山小屋が見えてきた
白鳥山到着
まだまだ先は長い
まだまだ先は長い
降りたり登ったり
降りたり登ったり
アップダウンが予想以上
アップダウンが予想以上
下駒ヶ岳
まだまだ
まだまだ
かなりつかれた。この山の奥で幕営することとした
かなりつかれた。この山の奥で幕営することとした
2日目スタート
栂海山荘
細い稜線
犬ヶ岳到着
これからのルート
これからのルート
今日はいい天気
さわがに山
雪山へ突入する
すばらしい斜面
長栂山
2016年05月08日 09:27撮影
5/8 9:27
長栂山
雪原
2016年05月08日 09:28撮影
5/8 9:28
雪原
吹上のコル、ここで栂海新道は終了
2016年05月08日 09:28撮影
5/8 9:28
吹上のコル、ここで栂海新道は終了
朝日岳へ
白馬岳が見えてきた
白馬岳が見えてきた
2日目のテント
雪倉岳のトラバース
2016年05月15日 06:22撮影
5/15 6:22
雪倉岳のトラバース
そして稜線にとりつく
そして稜線にとりつく
ライチョウ
素晴らしい景色
ライチョウ
このピークはまいていく
このピークはまいていく
雪がつかない
高度を上げると足元も凍ってきた
高度を上げると足元も凍ってきた
振り返る
三国境からの急登
三国境からの急登
そのさきにラクダのこぶ
そのさきにラクダのこぶ
あとはなだらかな白馬岳へのみち
あとはなだらかな白馬岳へのみち
白馬岳到着!
またライチョウ
小蓮華山に向かって下山
小蓮華山に向かって下山
小蓮華山
歩いてきたルートのパノラマ
歩いてきたルートのパノラマ
風が強いのでどんどん高度を下げる
風が強いのでどんどん高度を下げる
船越ノ頭
白馬大池がみえてきた
白馬大池がみえてきた
ここも風つよし
幕営はあきらめて、乗鞍岳を越えていく
幕営はあきらめて、乗鞍岳を越えていく
ここを幕営地とする
ここを幕営地とする
4日目はあいにくの雨、早々と下山しよう
4日目はあいにくの雨、早々と下山しよう
栂池ヒュッテにゴール
栂池ヒュッテにゴール
おつかれさまでした
おつかれさまでした

装備

個人装備
長袖シャツ 長袖インナー タイツ ズボン 靴下 グローブ アウター手袋 予備手袋 防寒着 雨具 ゲイター 着替え 予備靴ひも ザック ザックカバー アイゼン ピッケル ビーコン スコップ 行動食 調味料 飲料 ガスカートリッジ コンロ コッヘル コンパス 計画書 ヘッドランプ 予備電池 筆記用具 ファーストエイドキット 日焼け止め ロールペーパー 保険証 携帯 時計 サングラス タオル ナイフ カメラ シェラフ
共同装備
ポール テント テントマット

感想

日程: 2016年5月1日(日)〜4日(水)[テント泊縦走]

メンバー: MS, MuS

アクセス: 親不知コミュニティーロード駐車場

コース:

●1日目(5月1日)晴れ: 親不知〜尻高山〜坂田峠〜白鳥山〜菊石山〜黄蓮山(テント泊)

●2日目(5月2日)晴れ: 黄蓮山〜栂海山荘・犬ヶ岳〜サワガニ山〜黒岩山〜長栂山〜朝日岳〜赤男山のコル(テント泊)

●3日目(5月3日)晴れ: 赤男山のコル〜雪倉岳〜三国境〜白馬岳〜三国境〜小蓮華山〜白馬大池〜乗鞍岳〜天狗原(テント泊)

●4日目(5月4日)雨のち晴れ:天狗原〜栂池山荘〜(ロープウェイ)(ゴンドラ)〜栂池高原スキー場



北アルプスが生まれる親不知からその尾根をたどる栂海新道縦走。海抜0mの親不知から白馬岳2932mへのSea to Summitなコースだ。夏だと標高の低いところが非常に暑いので、ゴールデンウィークに親不知〜栂海山荘〜朝日岳〜白馬岳〜栂池山荘とテント3泊4日縦走を計画した。

入口と出口が違うので2台のマイカーを駆使し、一台を栂池高原スキー場にデポし、もう一台で親不知に向かった。

●1日目(5月1日)晴れ: 親不知〜尻高山〜坂田峠〜白鳥山〜菊石山〜黄蓮山(テント泊)

栂海新道縦走の初日は、親不知コミュニティーロードの駐車場からスタートした。
国道8号線沿いのパーキングエリアで駐車スペース10数台とトイレがある。カーナビで探すには親不知観光ホテルのすぐ隣としたほうがよいだろう。ここにクルマを泊めて、栂池にデポしてあるもう一台のクルマで戻ってくる予定だ。

親不知コミュニティーロードの駐車場は海抜80mなので、Sea to Summitをやるために海まで降りてスタートする。

海に降りていく途中、北陸線で使われていたトンネルがあった。煉瓦造り668mの鉄道トンネルで日本の土木遺産に登録されている。そのほかにも断崖絶壁を削ってつくった道路など、親不知は観光できても面白そうなところだと思った。

歩道を降りていくと、海が見えてきた。細い沢が海に流れ込んでいるところで、ちいさな砂利浜になっている。天下の剣と呼ばれる親不知は山脈が 日本海に突き出したような地形になっているから、海面下も急になっているのだろうか、遠浅の浜と比べて打ち寄せる波が高い。

海面タッチをしに行くと高波が襲ってきた。この波でひざ下まで波が被ったのだが、オーバーパンツとスパッツ、登山靴のおかげで靴の中への浸水はなかったとのこと。これから4日間の長い縦走なので最初からダメージを負った状態でのスタートにならなくてよかった。

海面タッチの際は、波をよく観察して強い波のあとの引き際にタッチしに行くようにしたほうがよい。

栂海新道の起点となるこの砂利浜で、時計の高度計を0mに補正して、いざ縦走開始。
北アルプス栂海新道縦走、親不知の海抜0mから白馬岳目指してスタートだ。
登山ポストは、コミュニティーロードの駐車場から国道8号線を渡った反対側の山側にある。

最初からなかなかの急登だ。とはいっても登山道はしっかりとしているので歩きにくいということはない。栂海新道を開拓し維持しているサワガニ山岳会に感謝。2014年北アルプス(折立〜扇沢)以来の久しぶりのロング縦走。からだはついて行ってくれるだろうか。

4日間のテント泊縦走なので荷物も多い。ゴールデンウィークの3000m級の山まで登っていくので、雪山に対応したフル装備になる。食料担当の私はだんだんと荷物が減っていくが、テント担当は減るどころか濡れると重くなるので、率先して担いでいただいたMuSに本当に頭が下がる。

一つ目の看板は入道山。標高は400mちょっとだと思うが正確にはわからない。
5月の曇りで適度に風があり、行動中は半袖でよいくらいの天気だった。まだ標高が低いので、夏だとかなり暑そうだ。年に3回の連休のうちどれかと問われたら、厳冬期の冬休みは排除するとしても、ゴールデンウィークのやや過酷な2000m超の天気と、夏休みの低標高の酷暑が天秤にかかることになる。

新緑の中を進む。

入道山から少し高度を下げて二本松峠。

アスファルト道路も横断していく。

またひと上りして、、、

尻高山677mに到着。

坂田峠で再びアスファルト道を横断。ここ坂田峠には駐車できるスペースもあるが、Sea to Summitのためにはここがスタートでは意味がない。
坂田峠の後は金時坂と呼ばれる急坂になる。鉄階段を織り交ぜながら高度をあげていくと、、、

登山道にも雪が出てきた。海抜600m超で雪がでてくるとはさすが日本海側。2016年は雪が少なめでもこの状態なので、例年はもっと低いところから雪がでてくるのだろう。

金時坂の頭になるころには一面雪。

金時坂を登ったあと、明確な尾根がなくなる地形になるので、ルートを探しながら進んだ。踏み跡が雪で覆われる季節は道を迷わないように注意が必要だ。
白鳥山への稜線。左奥に見えるのが本日の目的地である犬ヶ岳・栂海山荘で、かなり遠く見える。心配になる。

まず一つ目の小屋、白鳥小屋が見えてきた。北側から登っているので、北斜面は雪で覆われている。

一方で、頂上や下りとなる南斜面は土が見えていた。中央奥が目的地の犬ヶ岳・栂海山荘、遠い。。。

白鳥小屋のある白鳥山頂1287mに到着。坂田峠から金時坂の急坂と、その後のだらだらと続く雪の稜線でかなり疲れた。

白鳥山の先はアップダウンが厳しいルートだった。せっかく登った高度を下された後にまたピークでもない坂を上らされ、また下されるの連続で、疲れた足に堪える。
ここがピークだと思ったら、下駒ヶ岳は次のピークだった。今日の目的地は1500m台なのに、白鳥山の1287mから、下駒ヶ岳の1241m、菊石 山の1210mとギザギザと高度を下げていく。栂海新道縦走の中で、白鳥山〜犬ヶ岳の区間がいちばん辛かった。

下駒ヶ岳1241mで、疲れを表に出す人とカラ元気な人。

次は菊石山。だんだんと日が傾いてきた。コースタイム的にも押され気味だ。結果的には栂海新道縦走の中で、白鳥山〜犬ヶ岳の区間がいちばん大変だったのだが、初日からコースタイムから遅れていると、2日目以降の最深部でもっと深刻な状況になるのではないかと心配になる。

菊石山1210m、作り笑顔な2人。

次は黄連山。また強烈なアップダウンだ。

黄連山への登り。ここにきてピッケルに持ち替えたほうがいいような急な雪面も出てきた。栂海山荘はまだ遠い、栂海新道恐るべし。。。

黄連山を登りきったところで、精魂使い果たして幕営することにした。栂海山荘まで行く予定だったから、初日は計画未達。2日目以降に影響が出る ことは明らかだ。そういった精神的なダメージや焦りもあったと思う。かなり疲れた。とにかく2日目は早立ちして挽回するしかない ので、頂上から少し下った風避けのあるところを整地して幕営。

計画していた栂海山荘まで到達することができなかった。翌日の栂海山荘までの実際のコースタイムを足して表示したのがこのグラフ。白鳥山〜菊石山の区間で遅れていることがわかる。その要因は積算標高差上り2263mという強烈なアップダウン。実際には栂池山荘まで届いていないので少し差し引いて初日の実際は 2000m/日くらいだと思うが、1500m/日くらいで一般的な健脚コースな感覚だったので、2000m/日は非常に堪える。

また今回の栂海新道ルート全体の積算標高差上りは4日間で5301mなので、その43%を初日に登らなければいけないということもわかる。感覚的にも、数字的にも、栂海新道初日は過酷だった。




●2日目(5月2日)晴れ: 黄蓮山〜栂海山荘・犬ヶ岳〜サワガニ山〜黒岩山〜長栂山〜朝日岳〜赤男山のコル(テント泊)

初日は親不知から栂海山荘まで行く予定だったが、精根尽き果てて黄連山の先で幕営した。2日目は初日の遅れを取り戻すべく早立ちして先を急ぐ。残雪期の栂海新道2日目の行程はエスケープルートなし。進むも戻るも下界まで1日以上かかる最深部に踏み込んでいく。

まず前日の残りの行程、栂海山荘への登りに取り掛かかる。

幕営地から1時間程度で6:00に栂海山荘到着。計画ではここを5:00に出発する予定だったので、遅れも気にならなくなってきた。栂海新道の白鳥山から犬ヶ岳(栂海山荘)への稜線を振り返る。間違いなく栂海新道の中で最もきつかった区間だ。

栂海山荘のすぐ上にある犬ヶ岳の頂上尾根。なかなかシャープな稜線だ。風もあるので、休憩は頂上から少し降りたところで。

犬ヶ岳1593mに無事登頂。栂池山荘で幕営していたら、栂池山荘からすぐなのだが、早朝からがっつり登ってきたので2日目の1座目にふさわしい達成感。ここからが本当の2日目だ。

犬ヶ岳頂上から本日の稜線。犬ヶ岳からサワガニ山、黒岩山、長栂山を経て朝日岳まで行く予定だ。周囲の尾根が合流するジャンクションピークをいく つも越えていき、後立山連峰っぽい大きな尾根になっていく。最奥には朝日岳、初日に白鳥山からみた犬ヶ岳のような遠さを、朝日岳にも感じる。2日目 は計画どおり歩ききることができるだろうか。

犬ヶ岳からサワガニ山への稜線。犬ヶ岳の前までより雪の量も増えてきたが、南側斜面では土が出ているところもある。そのたびにアイゼンを脱着していては進みが遅くなるので、基本的にアイゼン装着で夏道にも対応していく。

サワガニ山1612mに登頂。栂海新道を開いたサワガニ山岳会の名前はこの山からとられている。

栂海新道2日目のこの日はとても良い天気で、日焼けが心配だ。太陽からの直射日光だけでなく、雪面からの反射も含めダブルで効いてくるので、日焼け止めを塗りたくった。

サワガニ山から黒岩山へ。白鳥山、白馬岳など白シリーズの中に唯一「黒」を名乗る黒岩山はどんな山なのだろうか。

黒岩山1624mに到着。名前の黒い岩はよく分からなかった。

特徴的だったのが頂上の標識。栂海新道の頂上標識は、プレートをくりぬいて文字としている共通点があり、この黒岩山はドリルで少しずつ抜いたような手作り感。愛着がわく書体だ。

黒岩山から朝日岳方面はなだらかな広いバーン。犬ヶ岳から黒岩山までは小ピークが続く明確な稜線と比較すると対照的だ。スキーを持っていたら 縦横に滑ってみたくなるような広大な斜面だった。

その反面、稜線は明確でないためルートどりが悩ましいところ。夏道や木道は雪の下に隠れているから、樹木に囲まれて詰んでしまわないようにする必要がある。今回は、山と高原地図にマーキングされているルートと同じように写真右側(西側)へ進路をとった。

私たちも主体的にルートを決めてきたつもりでいたが、いつも現れるのが先行者のトレース。このトレース、結構新しいもので、進行方向は同じ上り方向、時期は1〜2日前のもののように見えた。このトレースのすごいところは視界に入っていないその先の地形も見通しているかのような、コースをよく知 り尽くした絶妙なラインであること。直接はあっていなくても、こうやってトレースをとおして思いが伝わってくるのって素晴らしいことだと思う。

上の写真の雪壁をトレースは直登。右からゆるやかに巻くのはかなり距離があるので、先行トレースと同じように一気に直登して抜けた。

雪壁をあがったら広いバーンの頂上にある長栂山までもう少し。この広い区間は、これまでのように稼いだ高度を失うこともなく、どんどん高度をあげて来れれたのでとても気持ちいい区間だった。

長栂山に差しかかると風強し。風が強く、雪がつかない長栂山に登頂。

この長栂山頂上付近は夏道が見えていた。次のピークは右に丸く見えてきた朝日岳、栂海新道縦走2日目のメインディッシュだ。

アルプスっぽい風景になってきた。正面奥に白馬岳ととんがった旭岳。右の丸いのが朝日岳。

真っ白な雪原。これまでの残雪と比べて、高度を上げると雪もきれいになる。

2日目はかなりいいペースで登ってきた栂海新道縦走も、ここ吹上げのコルでフィナーレ。吹上げのコルは蓮華温泉への道との分岐点で、ここまでは昔からあった道なのだろう。そして、この吹上げのコルから親不知までの新たな道を開拓したのが、さわがに山岳会であり、中心となった小野健なのだ。

海抜0mから山あり谷あり、海抜2000mまで素晴らしいコースだった。一応 吹上げのコルが栂海新道の始点/終点だが、この先 白馬岳までの素晴らしいラインを継続していく。

吹上げのコルから朝日岳への登り。この朝日岳は、山塊としてボリュームがあり 登り甲斐があった。

栂海新道2日目の目標である朝日岳2418mに無事登頂。出発したのは1200mくらいだったので、倍の高度まで上げてきたことになる。朝日岳からは3日目の雪倉岳、白馬岳がよく見えて素晴らしい展望だった。

計画では朝日岳の肩にある朝日小屋で幕営する予定だった、このまま主稜線をできるだけ進んでおくことにした。山あれば谷あり、朝日岳から再び急降下。奥には雪倉岳、白馬岳が鎮座している。

朝日岳から降下して、赤男山はトラバースして、赤男山と雪倉岳のコルあたりまで駒を進めることができた。栂海新道2日目は、初日の遅れを取り戻し、さらに貯金をつくる予想以上の進み。まだまだ縦走は続きますが、精神的にも余裕がでてきた。

初日のテントはなんとか遅れを取り戻そうと知恵を絞っていましたが、2日目のテントは3日目の行程を攻める戦略作戦会議。時間的に余裕があると考え方がポジティブになる。

夕食は勝利のカレー。

今回の山行ではアルファ米シリーズで軽量化を図った。一食あたり、乾燥状態で100g、雪を解かした湯を170g入れて合計270g。10時間 超歩いた体には物足りなくないかと心配したが、心配及ばずおなかがいっぱいになった。やや高価いのが難点だが、荷物を減らしたいときには惜しみなく使っていきたい。

栂海新道2日目の大勝利に乾杯して、3日目につづく。




●3日目(5月3日)晴れ: 赤男山のコル〜雪倉岳〜三国境〜白馬岳〜三国境〜小蓮華山〜白馬大池〜乗鞍岳〜天狗原(テント泊)

初日は計画より遅れ気味だったが、2日目に遅れを取り返しさらに駒を進めた。そして満を持して3日目に臨む。3日目は、赤男山と雪倉岳のコルからスタートして、この縦走の目的地である白馬岳を目指します。計画では白馬岳山頂宿舎でテント泊と考えていましたが、4日目は天気が下り坂になる予報なのでできるだけ高度をさげておく作戦に変更した。

まずは雪倉岳の前衛壁をどうやって攻略するか。幕営地からは見えなかった東側にトラバースして尾根に取り付く夏道と同じルートで進んだ。

トラバースで久しぶりに別パーティーとすれ違い。初日、白鳥山で会って以来2日目は誰にも会わなかったので久しぶりの遭遇だ。ここですれ違ったパーティーは栂海新道を北上して親不知にゴールするという、私たちと逆のコースだった。

雪倉岳の尾根に上がったところ。アルプスっぽい雪と岩の世界になってきた。

雪倉岳のトラバースでピッケルに持ちかえて進んできた。

雪倉岳頂上の手前で雷鳥に遭遇。ぽっちゃりした可愛らしい姿に癒される。

標高2000mの幕営地から600mあげて、雪倉岳2611mに登頂。黒大理石のような立派な頂上標識があった。

山あれば谷あり、雪倉岳から雪倉岳避難小屋のある鞍部までおりていく。次の鉢ヶ岳は巻いたので、今回のコースの最高地点である白馬岳が次のピー クになる。2500mは風さえなければぽかぽかだったが、3000m近い白馬岳は凍りついたような様相。しかも雪倉岳避難小屋のある2400m付近でもかなり風が強かったので、白馬岳はもっと強いと予想し一気に攻めるつもりで行動食を腹に詰め込んだ。

雪倉岳避難小屋手前でも雷鳥に遭遇。雪倉岳北側に続き、今回2回目だ。

雷鳥のつがい。毛の色と目の上の赤いとさかが異なる。白/茶色まだらがメス、体が白/黒まだらで目の上が赤いほうがオスだ。

さて雪倉岳避難小屋で完全装備になったので、本丸白馬岳に攻め込む。鉢ヶ岳は夏道ルートどおりピークをとらずトラバースした。夏道は見えていないが、次のコルまで見通しがきくのでルートを見失う心配はない。

完全装備で臨んだものの、トラバース斜面に入ると風避けになりぽかぽか陽気。たまらず装備を解いた。

鉢の鞍部にでたら、再び風強し。かなりの強風で風でよろけるくらいの横風だった。コンディションが目まぐるしく変化する。

風があると体温も体力も奪われるし、精神的にも不安になるので、岩陰でジャケットを着こんだ。稜線から数メートルおりるだけで全然風がなくなるが、稜線上はとにかく風が強かった。

一面がだんだんと白くなってきました。高度があがるにつれて雪がないところにも氷がついているので全体的に白く見える。

三国境付近から雪倉岳方面を振り返る。

三国境2751mから白馬岳2932mへの最後の登り。白馬岳南側のルートは初めてなのだが、単調に登っていく南側とはちがって雪の急斜面が2か所ほどあった。

小蓮華岳をバックに第一の急坂を登る。三国境に登ってくる間に白馬稜線に人影をみたり、稜線上では他の登山者とすれ違うようになる。

地図には馬ノ背と書いてあるが、ナイフリッジのように狭いわけではなく、2か所ほど急な登りがあった。第二の急坂はラクダのコブみたいに見える。第二の急坂は右斜面を登るので、第一の急坂より高度感がある。

第二の急坂を登ると、あとは頂上まで単調な登りを残すのみだ。ただし左側(東側)は崖で雪庇もでているので、夏道通りに西側のなだらかな斜面をトレースしていく。

頂上付近に人影がいて、その崖下にも人がいる。この方たちは白馬岳主稜の登攀者。稜線にでるあたりは垂直に近い壁で雪庇も張り出しているので、ラストが難しそうだ。

ここでも雷鳥に遭遇。この山行で3回目だ。雪庇の上から白馬村を見下ろす雷鳥。

そして白馬岳に無事到着。

海抜0mから山あり谷あり、2932mの白馬岳まで高低差2932mから予想していた積算高度差以上にアップダウンがあった。初日は小ピークの 登降が連続していたし、後半になってからは山塊が大きくなり大きく上って大きく下るようになり、白馬岳までのトータルの積算高度差は4993m。

Sea to Summit、o-3000m、それ以上に日本海から水平移動距離も34kmの距離を進んできた。親不知から栂海新道を登って白馬岳頂上まで、達成感のある登頂だ。このルートを登ってみて本当によかった。

登ってきた北側の稜線を望む。一本尾根ではなく山々が重なり合っている。親不知は見えませんが、西側には日本海・富山湾が見えたので、海からの高さを実感する。

南側の稜線は後立山連峰と穂高連峰。南西には立山連峰も見えた。まだまだ雪と氷で覆われた厳しい世界だ。

さて白馬岳頂上を堪能したので、そろそろ下山する。これまでの青空が見えなくなってきて天気も下り坂なので、白馬大池方面に高度を下げていく。

下山中にも雷鳥に遭遇。左のメスはまだ冬毛で真っ白だ。雪倉岳避難小屋にいた雷鳥とは違い、このあたりに生息している個体はまだ冬仕様ということだろうか。

風がでてきたので慎重に下山。2か所の急坂は風に吹かれると怖かった。三国境から小蓮華山を経て、白馬大池山荘へ向かう。

風がどんどん強くなっていき、小蓮華山への行程が大変だった。ものすごい横風で、ジャンプしたらカラダが持って行かれるのではないかと思うくらいの恐怖を感じる風だった。こりゃ早くおりたほうがいい。

風の強さも一定というわけではなく、強弱の波があり、強いほうに合わせてカラダをかたむけていると、次の瞬間にいきなり弱くなってよろけたり。風で巻き上げた氷が顔にバチバチあたって、もうまったく落ち着かない。

小蓮華山から白馬岳を振り返る。名残惜しい半面、凶暴な風になってきたので早くおりたい。

小蓮華山からの主稜線をパノラマ合成。こうみると右から高度を上げるにつれて雪そして氷がついていく様子がよくわかる。これまでの行程をの山々を振り返るのもまた一興だ。

断続的な風にあおられながら小蓮華山通過。

風が強いのでどんどん高度を下げていく。次は船越ノ頭。

船越ノ頭も無事通過。

白馬大池山荘がみえた。周りを山に囲まれた地形、これなら安定した風になっているか。

近づいても風は一向に吹き止まず。ここにテントを張れるか不安になってきた。

大池は雪の下。写真で見る限り、夏は天国のようなところなのでまた来てみたい。いまは風が強すぎるので早く下山したい。

白馬大池山荘にはテントが数張あったが、鉄壁の雪ブロックにもかかわらずテントが風でバタバタとあおられていた。いまからこの要塞を築くのも大変なので、下山するだけの私たちは先に進むことにした。

栂池高原スキー場方面に下山する。乗鞍岳通過。

まだ風強し。かなり疲れてきたので、風がないところがあれば早いとこ幕営したいところだが、一向に吹き止まない。。。

乗鞍岳から天狗平へ斜面を下りていくと、岩陰に極上のスペースを発見。

これはうれしい。天に感謝。

以前にテント設営した跡地で、簡単な整地作業でテントに潜り込めた。高度を下げたのと、岩陰で風も気にならない。3日目はこれにて終了だ。

3日目は晴天の下、白馬岳登頂の目的を無事達成したが、午後からの強風にはアルプスの本気を痛感させられた。初日から目まぐるしく変わる山の思いでを語りながら夜は更けていきます。




●4日目(5月4日)雨のち晴れ:天狗原〜栂池山荘〜(ロープウェイ)(ゴンドラ)〜栂池高原スキー場

振り返ってみると実に濃い3日間だった。4日目は栂池高原スキー場へ下山するのみ。

4日目はあいにくの雨。前日の夜から降り始めて、朝になってもまだ降りやまない。あとは下山して温泉に入るだけなので、レインジャケットを着こんでいざ下山開始。天狗平も栂池自然園もガスの中だった。

湿った雪を大股で下ると夏道のコースタイムより早く栂池自然園とロッジが見えてきました。栂池と海を結ぶから一文字ずつとって栂海新道。こいうことで栂池は栂海新道縦走のゴールとしてふさわしい場所ではないだろうか。

栂池自然園までおりてくると、雲間から青空がのぞき始めた。でも雲の動きがものすごく速い。前日に飛んでいきそうな強風を体感しているので、空は青空でも強風の尾根だと想像がつく。前日はあの中に居たのかと思うと感慨深いものがある。

栂池自然園のヒュッテ・ロッジに着いたら、もう安全地帯。4日目の行程は1時間ほどだったので、あっけない感じだった。振り返ると3日目に栂池自然園まで来られなくもなかったと思うが、あそこはあそこで幕営にもって来いだった、なにより山の生活を一晩長く楽しむことができたから良しとしよう。

栂池ヒュッテをのぞくと、宿泊している方たちが朝食を食べたり、土産物を見たりしていた。いきなり普通の人に出くわしたので、こちらがびっくりした。

ロープウェイの始発は8:30。早く着いて時間は十分あったはずなのだが、なんだか下山するのがもったいない感覚におそわれた。せっかく海から登ってきて、もっとこの風景をみていたい、ちょっとさびしい感じだった。

ロープウェイ、ゴンドラと乗り継いであっという間にクルマをとめてある栂池高原スキー場の駐車場に到着。

おわった〜という達成感と、終わってしまったという喪失感が混ざった感じだった。

とりあえず、お風呂で酷使したカラダを労わって、コーラで乾杯。

達成感が心に深く刻まれた素晴らしい山行になった。


●1日目(5月1日)晴れ: 親不知〜尻高山〜坂田峠〜白鳥山〜菊石山〜黄蓮山(テント泊)

●2日目(5月2日)晴れ: 黄蓮山〜栂海山荘・犬ヶ岳〜サワガニ山〜黒岩山〜長栂山〜朝日岳〜赤男山のコル(テント泊)

●3日目(5月3日)晴れ: 赤男山のコル〜雪倉岳〜三国境〜白馬岳〜三国境〜小蓮華山〜白馬大池〜乗鞍岳〜天狗原(テント泊)

●4日目(5月4日)雨のち晴れ:天狗原〜栂池山荘〜(ロープウェイ)(ゴンドラ)〜栂池高原スキー場

https://oyamadaclub.wordpress.com/2016/05/01/tsugami-shindo/
https://turtleintheshell.wordpress.com/2016/05/01/tugami01/
https://turtleintheshell.wordpress.com/2016/05/02/tugami02/
https://turtleintheshell.wordpress.com/2016/05/03/tsugami03/
https://turtleintheshell.wordpress.com/2016/05/04/tsugami04/
https://turtleintheshell.wordpress.com/2016/05/04/oyashirazu/

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