タイトルの通り「七大陸最高峰」に登った時のお話ですが、全部で7章ではなく。8章から構成されているのは、第2章「私が子どもの頃」が加わっているからです(その他は七大陸の最高峰1座につき1章の割り当て)。「あとがき」で著者が最後に振り返っているとおり、小学館の方の「子ども向きに」という意図に心動かされて書いた、とあります。帯にも「大自然の中でつかんだ感動を少年少女に! 女性として、世界で初めて七大陸最高峰に登頂成功。家族を想いつつ、ひたすら登り続けた母のさわやかノンフィクション」という宣伝文句が載っています。そして、本文も難しい漢字にはルビがふられています。第1章のエベレストについても、前作「エベレスト・ママさん」では触れられていないエピソードが数多く登場しますし、なんといってもドロドロした負の側面については、さらっと触れるか触れないかの程度ですので、少年少女が登山の楽しさを感じることができるようにアレンジされていました。
どの章も楽しいのですが、中でも私が一番印象に残ったのは第6章「ビンソンマシフ」です。エベレスト登頂後に田部井さんが次の「夢」として掲げていた(一般人が南極に行くことが不可能だった時代に掲げた目標)だけあって、その思い入れを反映しているとともに、“(元)少女隊”を自称する三人組、すなわち、田部井淳子さん、北村節子さん、真嶋花子さんが、全員そろって山頂に立てたという意味でも、田部井さんにとって大きな意味のある登頂だったようです(その前のマッキンリーでは3人の中で北村さんがアイゼントラブルで山頂を目の前にして引き返していた)。その感動が文面からも伝わってきますし、登山中に湾岸戦争が勃発するというハプニングもある中、どの国にも属さない南極という地球上の宝(神様が作った地)に思いを馳せています。
文末に付録として「登山用語解説」がついていて、イラスト入りで「アイゼン」「ハーケン」などを説明しています。これも若い人たちへの登山普及を願った田部井さんらしいなと思いました。後に出された著書「山の単語帳」につながる意識でしょう。
【読了日:2018年6月6日】
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