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今の理解では、「GPS標高」はSRTM-3からバイリニア内挿で取得した標高値にかなり近い。なお、SRTMには格子サイズの異なるSRTM-1とSRTM-3の2種類があって、SRTM-1は緯度経度1秒(赤道上で約30m)格子 、SRTM-3は緯度経度3秒(赤道上で約90m)格子 である。
1年前に「GPS標高」はSRTMから取得した値ではないと誤って判断した理由の一つは、SRTMから最近傍法で取得した標高値と比較したからだった。SRTMのような格子間隔の大きい数値標高モデルでは、最近傍法で取得した標高値とバイリニア内挿で取得した標高値は大幅に違うことがありうるのだが、ヤマレコでバイリニア内挿を使用していることに考えが及ばなかった。
添付した標高グラフから分かるように、「かなり近い」というのはどうみても他人の空似とは思えないレベルである。私が使用したSRTMは、配布元のEarthDataからダウンロードした生のデータである。一方ネットで見ると、SRTMのノイズ除去のためにガウシアンフィルター等でスムージングを行うという話題が多い。ヤマレコではそういった何らかの操作を加えた数値標高モデルを使用しているため、完全には一致しないのではないか、と今のところ想像している。
それでは「SRTM標高」とは何なのか。今の結論は、「SRTM標高」と「GPS標高」の標高値は同じものであるが、両者の累積標高の計算方法は異なっている、ということである。
そもそも「SRTM標高」と「GPS標高」の標高グラフは、(ウェイポイント表示の有無を除いて)全く同じに見える。それでもなお、「GPS標高」は「SRTM標高」とは異なると1年前に判断したもう一つの理由は、両者の累積標高値が異なるからである。らくルートの自動入力ルートについて区間ごとに見てみると、「GPS標高」の方が大きい場合がほとんどで、2倍以上になることもある。巻道のようなアップダウンの多いルートで差が大きい傾向がある。まれに「SRTM標高」の方が大きい場合もある。
「SRTM標高」と「GPS標高」の累積標高値が違う理由として考えられるのは、標高値か累積標高計算方法のどちらか、あるいは両方が違う、ということである。1年前は、「標高グラフは同じものが表示されているが、実は標高値は違うのではないか」と考えた。
その理由は二つあった。一つは初めに書いたように「SRTM標高」はSRTM-1かSRTM-3から最近傍法で取得したものと思い込んでいたので、「SRTM標高」の標高グラフがおかしいのだと思った。もう一つは、「地理院標高」と「GPS標高」の累積標高計算方法は同じものであることが分かっていたので、「SRTM標高」だけ別の累積標高計算方法を用いるとは思えなかった。
しかし今、らくルートの手動入力で始点と終点だけの簡単な登りルートを作ってみると、「SRTM標高」と「GPS標高」の累積標高は全く同じである(たまに1mだけ違うことはあるが)。たとえば登り100mのルートでは、どちらも累積登り100m、累積下り-100mと表示される(なぜだか分からないが、累積下りはゼロのはずなのに、累積登りの値にマイナス符号がついた値が表示される)。これは世界中どこでもそうである(南緯56度以南および北緯60度以北では何も表示されないが、これはSRTMのデータが存在しないためである)。したがって、「SRTM標高」と「GPS標高」の標高値は同じということになる。
先ほどの2点だけのルートの後にもう1点加えて、下り90mの区間とする。すると「GPS標高」では、累積登り100m・累積下り90mとなるが、「SRTM標高」では、累積登り10m・累積下り-10mとなる。これは始点と終点しか見ていないと解釈される。4点目で登りの区間を加えても、この状況は変わらない。5点目で下りの区間を加えると、ようやく累積登り・累積下りとも正の値になるが、3点目までの登り下り分を除外した値である。
もっと複雑なアップダウンのあるルートではどういうことになるのか、一般的な計算ルールは解明できていない。しかし取り敢えず、「SRTM標高」と「GPS標高」の累積標高計算方法は異なるものである、ということは確実である。
ちなみに、「地理院標高」と「GPS標高」の累積標高計算方法は同じものであるということは、以下の方法で確認できる。まず、(ヤマレコ以外のアプリを使って)適当なルートに対して標高タイルDEM10Bのズームレベル14から最近傍法で標高値を取得する。これをgpxファイルにしてヤマレコの山行計画に登録すると、「地理院標高」と「GPS標高」は全く同じ累積標高値となる。次に、標高タイルDEM10Bのズームレベル14以外の数値標高モデルから標高値を取得したgpxファイルを登録すると、「地理院標高」と「GPS標高」は明らかに異なる累積標高値となる。これは、「地理院標高」とは標高タイルDEM10Bのズームレベル14から最近傍法で取得した標高値であり、かつ「地理院標高」と「GPS標高」は同じ累積標高計算方法を使用していることを示している。
この計算方法は、基本的には20m以上の標高差をカウントするというものだが、それでは20m未満の標高差は全くカウントしないのかというと、そうでもない。これは簡単には説明できないので、機会を改めて詳しく説明するつもりである。できればそれまでに「SRTM標高」の計算方法も解明して、一緒に報告したいと思う。
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