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暗い山中をヘッドライトが照らす明かりを頼りに歩き続け、白神岳山頂手前にある避難小屋に到着。
カチカチに凍りついた誰も居ない避難小屋脇で、凍るような冷たい風を避けながら一息つくが、既に夜が明けた山頂付近は吹雪の為、生憎5メートル程の視界しかなく、辺りは真っ白で何も見えない。
行くべきか…戻るべきか…。
小屋脇の冷たい斜面に腰掛けながら、向白神岳へと続く稜線がある筈の方向を暫く眺めていると、視界は時折数キロメール先まで広がり、未だ雪深い白神山地の姿を見せてくれる。
どうやら白神の神は、向白神岳に来るように誘っているようだ。
ならば…重い腰をあげ、強風により打ち付ける横殴りの雪を左頬に受けながら、南側にせり出した雪庇に注意しつつ歩みを進める。
足元は凍りついた雪面の上に乾いた新雪が数十センチ程積もっており、スノーシューのスパイクの効きが非常に悪い。
暫く進むと、最初の難所である玄関岳が目前に迫る。
天に突き上げる様な山頂の北側を、ズルズルと谷に引き寄せられながらトラバースぎみにやり過ごし、北東側の急斜面を小さな雪崩と共に滑り落ちる様にして下る。
更に稜線上に続く大小ピークのアップダウンを幾度か繰り返すと、運よく雪が収まり、行く手には向白神岳山頂周辺の連なりが姿を現す。
真っ白に雪化粧した山頂の連なりは、正に白神の字の如く日の光に照らされ神々しく輝き、青い空を背景に尖った山頂からは、強風が作り出した白い雪煙が東へとたなびいているのが見える。
美しい景色に感動しつつ更に暫く稜線上に歩みを進め、白神山地最高地点の1250ピークに到達し、一人喜びを噛み締めた後、少し北側のピークへと進むが、ここから向白神岳へと向かう稜線上は、ナイフリッジと言っても良い程の鋭角に尖った積雪の上を歩く事になる。
もはや憧れの向白神岳山頂は目前だが、はやる気持ちを押さえつつ、新雪の中に隠された深いクラックにも細心の注意を払いながら、最後の難所に一歩また一歩と歩みを進める。
ナイフリッジのような稜線を過ぎ、やや下った後、最後の上りに差し掛かると、膝丈程の新雪の中を一歩進むごとに確実に山頂が近づき、いよいよ手の届く程の距離に迫る…そして最後の一歩を踏み出し、向白神岳山頂に到達。
360°の視界が開けた向白神岳の狭い山頂からは、春を待つ世界自然遺産白神山地核心部のブナ林が一望でき、周辺の山々には雲の隙間から天使の梯子が降りているのが見える。
神々しい景色に思わず神の存在を感じつつ、一人山頂に佇む。
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