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2020年01月16日 18:07未分類全体に公開

単独行〜向白神岳・無雪期 エピローグ

2019,10,24-25
穏やかな風が吹き抜ける静かな山頂から眺める西の空には、ハヤブサだろうか…水色の空を背景にほぼ垂直に降下する黒い鳥の姿が見える。
世の中から隔離されたかのような美しくも穏やかなこの場所に今暫くとどまりたい気持ちもやまやまだが、秋も深まりをみせる山の夕暮れは早く、後ろ髪を引かれる思いで山頂を後にした。
そして本日の宿泊地を探すべく復路を辿るが、またしても先が見えない猛烈な藪が行く手を阻み、往路での藪漕ぎで疲れた体に追い討ちをかけ、歩行は遅々として進まず夕暮れが刻一刻と迫る。
やがて16:00頃に浅いコルに到着し、これ以上の行動は無理と判断するが、目の前には相変わらず根曲がり竹に灌木が混じる猛烈な藪が広がっている。
一見してツェルトを張るには不適な地に見えるが、この先にもツェルトを張るのに適した場所が存在しないことは既に往路で確認済みである為、本日の宿泊地はここにすることとした。
人差し指程の太さの根曲がり竹の藪を、畳一枚分だけ体重で押し潰し、ツェルトの床部分の四隅と数百円で購入したレジャーシートの四隅とを紐で結び、ほんの気持ち程度に体重で押し潰された藪の上に置き、ツェルトの棟に紐を通して両端を灌木の枝に結びつける。
後は、ザックと共に中に入れば、今日の宿泊場所の出来上がりだ。
しなりに強い根曲がり竹なら、これでも折れて突き刺ささることはなく、地べたに寝転ぶよりは寝心地が良さそうだ。
ツェルトの設置を終えて気がつけば、西に傾いた太陽はオレンジ色の光を放ち、もうすぐ日が暮れることを知らせている。
今日も一日が終わろうとしている…。
早速ツェルトの入口のジッパーを上げ、文字通り中へと滑り込み、質素な夕食を済ませてからダウンとレインウエアを着込み、ザワザワと風に吹かれる植物達の葉の音を聞きながらザックを枕に早めの就寝についた。
しかし、時間と共に風は強さを増し、日が変わる頃には強烈な風となった。
コルとはいえ稜線上の風は凄まじく、殆ど息もつかずに台風のような風が吹き続け、ツェルトもそれに伴いバサバサと音をたて、このままツェルトごと稜線上から吹き飛ばされるのでは…と思う程だが、それでも今、根曲がり竹の猛烈な藪が自分を風からうまく護ってくれていると思うと、心強く思える。
何度時計を確認しただろうか…待ちに待った朝が訪れる頃には風はかなり収まっており、運良く雨に打たれることもなかった。
朝食を済ませ、ツェルトをたたみ6:45復路を辿るべく宿泊地を後にした。
昨夜の風は状況を見兼ねた白神の神の計らいだったのだろうか…強烈な風のおかげで複雑に絡み合った根曲がり竹の藪が解れ、幾分藪を掻き分けやすくなっていることに気付く。
復路もまた藪を掻き分けつつ一歩、また一歩と進み、心配された脆い岩でできたキレット状の尾根も然程風に煽られる事もなく通過し、その後は幾つかの小さなピークを越え、吉ヶ峰への斜面を登り返し、風が強まった直角峰への稜線上を、紅葉で彩られた向白神岳を右手に見ながら藪の中を進み、往路での太夫峰からの最初のピークとなる直角峰に到着した。
猛烈な藪漕ぎで手首や顔は傷だらけとなり、ウェアやザックも既にボロボロだが、今の気分は最高だ!

天気は下り坂、時間と共に次第に風が強まる曇り空の下、人を寄せ付けない険しくも美しい山肌を魅せる向白神岳に名残を惜しみつつ暫くの別れを告げ…太夫峰山頂へと続く猛烈な藪が覆う最後の稜線へとまた歩みを進めた。


先日に引き続き、私の拙い山行記録を掲載していただいた「岳人」編集部の方々、登頂画像を掲載していただいた「山と渓谷」編集部の方々にこの場を借りてお礼申し上げます。(^-^)/

遠くから眺める素晴らしい景色の中にある、あの場所から見える景色はどんなものだろうか…また、数える程の者しか到達出来ないと言われる場所ではどんな素晴らしい景色が待っているのだろうか…是非その場に行って五感で感じでみたい。
そこは山道が無い山の頂きであったり、知る人ぞ知る滝であったり、そこまで到達するまでのルートそのものであったりしますが、どれをとっても登山経験の少ない私にとっては想像を超える感動が待っていました。
苦労の末辿り着けたこれらの経験は、私の登山人生において最高の宝物であり、また、山行中に偶然出会えた方々との思い出もまた宝物の一つです。(^-^)
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