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2020年11月13日 15:30未分類全体に公開

白神山地〜白神岳から十二湖 周回・初冬

2020,11,12
5時、まだ夜が明けない真っ暗な白神岳登山口の駐車場は風もなく、遠くからは海鳴りだけが聞こえている。
額のヘッドライトの明かりを頼りに駐車場で一人身支度をしていると、登山者だろうか…1台の車が入って来て車のライトに照らし出された案内板を眺めているようだ。
さて、職場の都合により突然休日となった今日は、特に登山計画も立てていなかったが、登山を趣味とする者として季節柄こんな天気の良い日を見逃す訳にもいかず、あれこれ思案したが、時間潰しのような登山に行く気にもならず、どうせなら五感を満たす登山がしたいと思い、探しだしたのが今回のルートだ。

白神岳登山口(黒崎)〜白神岳〜大峰岳〜崩山〜青池〜鶏頭場の池〜落口の池〜沸壺池〜長池〜四五郎の池〜金山の池〜濁池〜大池〜松神発電所〜国道101号線〜白神岳登山口(黒崎)

歩行距離27.4km 累計高度1999m

身支度を終え、5時45分、駐車場を後にし、少し先の記帳所にて入山届けを済ませてから、暗闇の中へと続く山道へと足を踏み入れた。
ヘッドライトに照らし出される景色には動くものも無く、ただ穏やかな森の姿だけが映し出され、辺りにはキーン、キーンという熊避け用のベルの音のみが響いている。
少しして木製の階段を上り、暫く歩みを進めると夜が明け初め、辺りには既に広葉樹が落葉を終え、見通しがよくなった森が姿を現した。
紅葉の賑やかさを終え、後は冬を待つだけの森は寂しげだが、やがて雪が積もれば厳冬期の山頂を目指す強者達で賑わうはずなので、それまでの束の間、森の木々達も一休みといったところだろうか…。
やがて山道は蟶山コースと二股コースとの分岐点へと差し掛かり、蟶山コースへと進んだ。
この辺りから道端に雪が見え始め、6時40分、最後の水場に差し掛かる頃には、山道は数センチ程の雪に覆われ、登山を趣味として始めた頃に購入した使い古しの安いトレッキングシューズではツルツルと滑り歩行に気を使うが、冬季に備えて足の運び方の練習も兼ねてフラットフィッティングを心掛けつつ歩行を続けた。
進む程に積雪は増え続け、山道がやや不明瞭な場所もあるが、タヌキだろうか…雪の上に残る沢山の小さな動物達の足跡をガイドに、蟶山へのやや急な山道をスリップに注意しつつ登り続けると、黒いガイドさんの足跡も現れたが、間も無く薮の中へと消えた。
どうやら今日はガイドをしてくれる気分ではなさそうだ。
蟶山への分岐を通り過ぎ、小さなガイドさんの足跡が続く山道を更に暫く進むと、高度1000mを超えた辺りから木の枝に着いた氷の破片が太陽の光を浴びて頭上にバラバラと降り注いでくる為、たまらずにウェアのジッパーを上げた。
更に進む程に積雪は増し、暫くして大峰分岐に差し掛かる頃には10cm以上の積雪となり、山道の脇に並ぶ真っ白な霧氷を纏った灌木達の姿が非常に美しく、辺りは既に雪山の様相だ。
そして目の前には険しい山肌を魅せる向白神岳の稜線が迫る。
月日が流れるのは早いもので、あの稜線上を太夫峰から白神岳まで歩き通したのは、既に7ヶ月も前の事だ。
何よりも深夜稜線上のツェルトの中で味わった強烈な風の中で真横を通り過ぎる雷雲や、雪庇の踏み抜きは今でも鮮明に脳裏に焼き付いており、生涯忘れることはあるまい。
そんな思い出に浸りつつ山道を進むと、トイレ棟が見え、間も無くして避難小屋に到着した。
霧氷で覆われた木々の中にひっそりと佇む避難小屋は、いつもながらメルヘンチックな雰囲気を漂わせている。
避難小屋への一番乗りは今日次に訪れる登山者へと譲り、先ずは相変わらず小さなガイドさんの足跡が続く山道を山頂へと向かい8時35分、白神岳山頂へと到着した。
穏やかな山頂からは、北側には朝日に照らされた向白神岳が見えるが、南側は生憎ガスが濃く、視界は数百メートルといったところだ。
しかし、それでも霧氷に覆われた周辺の景色は非日常的で感動的だ。
いつもの事だが、まだ時間が早いので少し待てば晴れるのはわかっているが、今日の行程を考えれば、ここでゆっくりしている訳にはいかないので、記念撮影を済ませた後はこの先の行程に備え、ザックからアンパンを取り出し、熱いお茶と共に口に頬張る。
お茶の渋みとパンの甘さが口いっぱいに広がり、幸せを感じる。
感動的な景色を前に短い休憩を終えた後は、大峰分岐まで戻り十二湖を目指す。
いよいよここからが本番だ。
気が付けば、熊避け用のベルは凍り付き、用をなさないが、一人静かな白神山地を満喫するには、無粋なベルの音は無い方がかえって気分を盛り上げてくれる。
十二湖へ向かうこちらの山道にも小さな足跡が続いているが、どうやらここからは耳の長いガイドさんが道案内を務めてくれるようだ
トレッキングパンツの裾が凍りつく程の寒さの中、雪の重みで山道に覆い被さる笹藪を払いのけつつ、ガイドさんの足跡を追って歩みを進める。
雪で覆われた山道の急な斜面は、使い古しのトレッキングシューズでは非常に滑りやすく、気を抜くといとも簡単に小さな滑落を誘発し、急なアップダウンが連続するこのコースの今は無雪期とは違い、なかなか手強いルートへと変貌を遂げている。
右手に手が届きそうな位の近さに向白神岳の稜線を見ながら、神経をすり減らしつつ足運びを丁寧に藪の中に続く山道を進み続け、10時50分、大峰岳山頂に到着した。
山頂は藪で覆われているが、隙間からは水色の空の中、真っ白に雪化粧をした岩木山が見える。
岩木山の山頂から見える景色も今日は最高だろうなぁ…などとちょっと羨ましく思いつつ、ここで昼食にすることとした。
相変わらず風は穏やかだが、歩行を止めると身震いする程に寒い。
しかし、塩味がきいた鮭のおむすびと、熱いお茶が心を十分に満たしてくれる。
何とも贅沢な一時だ。
ここでも短目の休憩を終え、この先にある崩山を目指す。
ガイドさんの足跡が続く山道は、相変わらず急なアップダウンが続き、先はまだまだ長いが、雪による行程の遅れを気にしつつ先を急ぐ。
途中、名もないピークのトラバースがあり、急な斜面に通された申し訳程度の山道を滑落を警戒しつつハラハラしながら通り過ぎ崩山山頂に到着したが、藪に覆われた山頂からは全く眺望が得られないのでそのまま素通りし、12時37分に大崩に到着した。
以前来た時よりも更に崩壊が進んでいるようで、その名が示す通り脆い斜面は今も崩れ続けているように見受けられる。
眼下の視界が開けたこの場所からは、十二湖の池が点在しているのが見え、ザイルを使って降下したら、さぞかし気持ちが良いことだろう。
高度が下がった今は、既に足下の雪は薄くなり、山道は茶色い土が薄く見えているが、ここから先は泥で覆われた急な斜面に山道が続いており、気が抜けない状況だ。
眺望も無い林の中をクネクネと曲がりながら下り続ける山道にそろそろ飽きてきた頃、漸くキラキラと輝く水面が目に飛び込んできた。
鶏頭場の池だ!
意外にも池の周りには未だ紅葉した木々が立ち並んでおり、池の周辺は晩秋の落ち着いた美しい景色が広がっている。
13時25分、記帳箱の中にあるノートに下山の記帳を済ませた後は、青池を覗いてみることにした。
落ち葉がゆっくりと舞い降りる青く染まった水面は、疲れた体を癒してくれるかのように穏やかに迎えてくれた。
まだまだ先は長いが、先ずは一段落といったところだろうか…。
その後、紅葉が彩る誰もいない静かな遊歩道を進み、落口の池、沸壺池、長池、四五郎の池を経て金山の池にある東屋へと到着した。
意外な発見だが、この場所から見える大崩の景色は正に絶景だ。
更に濁池を経て大池に到着すると、山道脇に小綺麗な慰霊碑が現れた。
何のための慰霊碑なのか記述を見つけることが出来なかったので、後に調べてみると、近くの発電所の工事に関わるもののようだ。
これも意外な発見だった。
そして山道は終わり、池に架かる橋を渡ると、ここから先は舗装路となった。
11月も半ばだというのに、不思議と道路脇の木々は一層美しく色付いており、未だに紅葉真っ盛りといった景色が続き、頭上から木漏れ日となって差し込む太陽の光がポカポカと暖かい。
まるで今日の山行での労をねぎらってくれているかのようで、嬉しくなる。
舗装路を暫く歩き続けると、松神発電所へと到着し、その先の国道101号線へと抜けた。
水平線へと傾く太陽を右手に、南へと快調に歩みを進め、暫くして白神岳登山口を示す案内板を左に曲がり、登山口駐車場への見慣れた道を上って行く。
そしてやや薄暗くなった16時13分、誰もいない登山口駐車場へと到着し、日の入りと共にこの山行を終えた。
到着と共に一気に疲れが体を襲うが、「やった感」が心を満たしてくれ、今日の山行もまた充実したものとなった。
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