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標高が上がる程に積雪が増す八幡平アスピーテラインに暫く車を走らせると、後生掛温泉入り口の少し先にあるバリケードにて通行止めとなった。
どうやら今日の出発地点はここのようだ。
しんしんと雪が降り積もる中、久しぶりの雪山装備を身に付け、7時10分、今季初めての雪山登頂を目指し、バリケードの先に歩みを進めた。
スノーシューで雪を踏みつけるググッ、ググッ、という音と、頭に被ったフードに落ちる雪のサラサラという音以外は何も聞こえない。
少しすると、昨日のものだろうか?
スノーモービルが走った跡がうっすらと続いており、人口的な痕跡に少しガッカリした。
そして8時、蒸ノ湯ゲートへと到着し、左手にモクモクと立ち上がる蒸気を眺めながら、ぬかるむ雪を踏みしめ更に進むと登山道入口を示す標柱が現れた。
この標柱が無ければ、ここが登山道だと気付くことなく通りすぎてしまう程に雪は深い。
未だ雪は降り続いており、このまま20cm程のぬかるむ雪の中、車道を進むか、一度も足を踏み入れたことが無い雪に覆われた登山道へと進むか少し悩んだが、折角の今季初の雪山登山なので、味気ない車道を進むよりトレースが全く無い森の中へと進むこととした。
積雪により判別が難しいやや勾配が急な登山道を暫く進むと、やがて勾配は緩くなり、雪の重さで垂れ下がった笹藪や木の枝を掻き分けつつ進むが、太腿程度の深さの踏み抜きが多発し、その度に笹藪や岩の隙間からスノーシューを履いた足を引き抜くのに一苦労する。
実は先日、雪山に備えて車のタイヤ交換をした際に腰を痛めたので、今季最初の雪山登山はなるべく勾配がキツくない山ということで、今日は八幡平を選択したが、予想以上の難易度の高さに、早くも山頂到達は難しく思え、トレースが無い訳を実感することとなった。
雪が降り続く森の中は進む程に積雪を増し、既に膝下程度のラッセルとなっており、数十メートル進んでは息を切らして立ち止まりつつ延々と登り続ける。
針葉樹で覆われた山中は見通しも悪く、雪が降り続ける空を見上げれば、どんよりとした灰色の雲で覆われている。
出発から二時間以上経過し、既に予想外に重いラッセルや踏み抜きで大分疲れたので、雪の重みで垂れ下がった枝が天然のテントを形成しているアオモリトドマツの木の下にザックを下ろし、休憩することとした。
幹の周辺は垂れ下がった枝で雪と風が遮られ、休憩場所には丁度良く、なんだか秘密基地のようで、ここに一泊するのも悪くないように思える。
そして水筒のお湯と共に冷えきったアンパンを口に頬張ると、幸せが口いっぱいに広がった。
少しの休憩の後は、また山頂を目指し黙々と雪を漕ぎ続ける。
雪はいつの間にか止んだが、進む程に積雪は増え続け、今は膝丈以上となっており、歩行距離は遅々として進まず、まだ雪慣れしていない体には体力的に厳しい為、山頂到達はそろそろ諦ようかと思い始めた時だった…今まで灰色の雲で覆われていた空が突然明るくなり、雪化粧をした木々の隙間からは清々しい水色の空が見え、真っ白な雲が次から次へと形を変えながら足早に流れ行く。
ほんの数十秒の出来事だったが、どうやら八幡平は山頂に誘っているようだ。
山頂まではまだ1km以上あるが、折角のお誘いに俄然ヤル気が湧いてきた。
相変わらずズボズボと埋まる森の中を息を切らせながら暫く歩き続けると、木々の合間には待ちわびていた展望台の姿が見え、そして山頂を示す八幡平と記された標柱の下へと12時8分到着した。
ザックをおろし、スノーシューを外し、階段に積もる雪を掻き分けながら展望台に上がるが、残念ながら視界は数百メートルしかなく、相変わらずどんよりとした灰色の景色が広がっている。
仕方なく展望台から降り、水筒のお湯をカップラーメンに注ぎ昼食にすることとした。
苦労の末に到達した誰もいない山頂で食べるアツアツのカップラーメンが実に旨い。
そして昼食を済ませた直後、待っていたかのように、またしても頭上には一気に水色の空が広がり、太陽の光が辺りの景色を露にした。
すぐさま展望台へと上がり、周囲を見渡すと、そこには360°の感動的な景色が広がっていた。
水色の空には次から次へと通りすぎて行く真っ白な千切れ雲。
地上には、白く輝く雪を纏った針葉樹が見渡す限り何処までも続いていおり、その森の中には自分だけの足跡が続いている。
そして遥か遠くの南東の方角には、山頂付近の雲が瞬く間に形を変えながら流れ行く岩手山の姿が見える。
360°どの方角を眺めても感動的であり、清々しい寒風を浴びながら、展望台にて一人心ゆくまで景色を楽しんだ。
そして美しい景色を見せてくれた八幡平に感謝し、後名残惜しいがこの先の天候の悪化や復路での時間を考慮して早めに引き返すこととした。
前日の天気予報より、当初あまり景色は期待していなかったが、結果として山頂到達により展望台から眺めた景色は大満足であり、今回の雪山登山もまた思い出の1ページを飾るものとなった。
次回は、無雪期にこのコースをまた訪れ、雪山の思い出を振り返りつつ山頂を目指したいと思う。
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