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2021年01月02日 23:36未分類全体に公開

単独行〜白神岳・2021年 元日

2021,01,01
真っ暗な日本海からの横風に煽られながら、行き交う車も殆ど無い国道101号線を北へと向かう。
国道脇の温度を知らせる電光掲示板には、-5℃と表示されており、道路は所々地吹雪となり、吹きだまりに乗り上げる度に大きく車が揺すられる。
暫くして黒崎地区から轍が無い林道へと右折し、タイヤの半分程の深さの雪を車で掻き分けながら進み、誰もいない登山口駐車場を一周した後は、更に数百メートル先の記帳所の建物を目指した。
積雪により空転するタイヤを騙し騙し到着した記帳所には人影も無く、雪を伴ったザーッという風の音だけが響き渡っている。
数年に一度の大寒波と報道されている通り、予想される高層天気図のこの場所の上空5500mには-39℃、1500mには-18℃の等温線が横たわっており、等高度線の間隔も狭く山頂付近は猛烈に荒れた天候が予想される。
僅かに期待が持てるとすれば、地上天気図の等圧線の間隔が広ということだけだ。
今回は、元日の誰もいない穏やかな白神山地をゆっくりと堪能できればと思っていたが、どうやらそれは叶わないようだ。
弱い雪を伴う冷たい風を浴びながら身支度を整え、スノーシューに足を通し、6時30分、ヘッドライトの明かりを頼りに前日までに積もった雪がぬかるむ登山道へと足を踏み入れた。
トレースが無い雪上に自分だけの足跡が続いて行く。
暫く山道を進み、夏道と冬道の分岐点へと差し掛かり、やや藪が濃い冬道へと進んだ。
そして蟶山へと突き上げる尾根へと取り付き、藪を掻き分けつつ急な斜面を登り続けると、少しして辺りは明るくなり、2021年最初の夜明けをこの斜面で迎えることとなった。
振り向けば、遠くの黒い雲の下には白波を立てる日本海の荒波が見え、辺りにはザーッという風の音と共にポキポキという木々が擦れ合う音だけが聞こえている。
少しの間、新年の雰囲気を味わった後は、また一人黙々と急な斜面を登り続ける。
スノーシューのスパイクの利きに助けられ滑り落ちることはあまり無いが、トレッキングポールが藪に絡まり、その度に足止めを食らう。
そして、高度を上げる程に積雪は増し、高度約800mからは膝下程度のラッセルとなった。
重い雪は体力を消耗させ、数歩登っては立ち止まることを繰り返しつつ8時50分、蟶山山頂に到着した。
ここで少し休憩したいところだが、風雪により、立ち止まると一気に体が冷えるので、記念撮影を済ませ、早速尾根が続く東へと向かった。
相変わらず膝下程度の深さの雪は重く体力を消耗するが、登る程に積雪は増し、高度約1000m付近からは、ついに膝上のラッセルとなり、一旦膝で雪を固め、そこへ足を突き刺すように載せる作業の繰り返しとなった。
また、行く手を立ち塞ぐ吹きだまりを越えるには、四肢を使い這い上がらなければならない為、歩行は遅々として進まず時間だけが過ぎて行き、更に雪を伴う風はいよいよ強さを増し、時折視界を失う程だ。
12時、高度約1140m、この目の前の疎らとなった灌木が生える急登を登りきれば、山頂へと続く稜線に上がれるのだが、天候を考えれば、果たして行くべきか…。
少し悩みつつ、ふと、日本海がある背後を振り向くと、どす黒く低い雲が土手のように北から南へと一直線に並び、今まさに背後から襲いかかろうとしているのが確認できる。
身構えていると数分後、辺りは白から一気に灰色の景色へと変わり、強烈な風と共に全身に氷の粒が叩きつけられた。
風雪は凄まじく、とても立っていることが出来ない。
堪らずに風上に背を向け、近くの僅かな窪みに身を隠したが、一向に止む気配は無く、体温だけが奪われて行く。
これでは登頂を諦めざるを得ないが、撤退するには、風上に向かわなくてはならない為、状況が好転するのを期待しつつ暫く窪みに身を屈めて停滞した。
メガネが凍りついた為、ハードシェルの中に着ているフリースのポケットからティッシュを取りだそうとしたが、ハードシェルとフリースが霜で接着剤のように貼りついており、上手く取り出せない。
何とかメガネを拭き、ザックの中からゴーグルを取り出して装着したが、相変わらず視界は無く、このままでは体温が奪われるだけの危険な状況なので、既に薄くなった足跡を辿り下山することとした。
急な斜面を小さな雪崩と共に滑り落ちるように下り、背の高い樹林帯へと入ると、強烈な風雪は幾分おさまり、灰色の景色も白へと変わり、後は足跡を辿り下山するだけとなり、ホッと胸を撫で下ろした。

今回は、悪天が予想される中での登山だったが、低山とは言え、改めて日本海に接する白神山地の、厳冬期の厳しさを実感する山行となった。
さて、2021年、今年はどんな山行が待ち受けているのだろうか…登山を始めていなければ一生出合うことが叶わなかった景色を求め、今年も小さな冒険の旅に出掛けようと思う。
山を越え、谷を越え、苦労の果てに大好きなおむすびを口に頬張りながら見える景色は、さぞかし感動的だろう…。
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