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真山神社の駐車場には人影も無く、静まり返っている。
身支度を整え5時45分、山門をくぐり抜け、その先へと続く階段を登った。
最近さっぱり出番が無くなった登山靴は、靴底が硬過ぎて今日の山行には不向きだが、鮮やかなアクアブルーとレモンイエローを纏ったお気に入りの登山靴を久しぶりに履いての山行は、やはり気分が良い。
階段を登りきると小綺麗なお社があり、その左手に続く石造りの階段を登った。
大小様々な形の石で積まれた階段は非常に歩きにくく、油断すると捻挫をしてしまいそうだ。
少しすると、目線の先にはやや歴史を感じさせるお社が現れ、正面からオレンジ色の朝日を浴び神々しく輝いている。
山道はお社の左手へと続いており、まっすぐに幹を伸ばす大きな杉の木が立ち並ぶ山道へと進んだ。
眺望が無い山道には、左手の木々の隙間から陽の光が差し込み、まだ薄暗い鬱蒼とした森の中へと続く山道を照らしている。
杉林はいつの間にか雑木林へと変わり、暫くして小刻みな階段が現れ、歩幅に合わない階段に苦戦しつつ上へ上へと登り続けた。
そして6時36分、真山にある二階建てのお社へと到着した。
目の前にはうっすらと朝靄に包まれた下界の景色が広がっており、正面から昇る朝日が眩しい。
山道は更に南へと続き、眺望が無い山道をしばらく歩き続けると、突然砕石が敷かれた車道が現れ、本山山頂へと続くこの緩い上り坂を辿った。
左手の先には、真っ白な雲が浮かぶ空の下、青く穏やかな日本海が見え、海の香りを運ぶ風は道路脇に生えるススキの穂を揺らしており、目の前に広がるその美しい景色に感動しつつ、ゆっくりと山頂を目指した。
山頂が近付くにつれ、レーダー施設が放つこの場に似つかわしくない音が大きくなり、少しして金網で囲まれた施設の正面へと到着した。
巨大なアンテナが建つ施設の周りを半周程すると赤神社のお社があり、その下へと山道は続いている。
急な山道を下り、車道へと復帰し、次の目的地である毛無山を目指す。
しかし、毛無山にもレーダー施設があり、山頂にはいけない為、道なりに山頂周辺を回り、次の五社堂を目指した。
ハッキリとした山道が続く森の中には、ツクツクボウシの鳴き声が響き渡り、真夏の暑さを思い起こさせる。
眺望も無く代わり映えのしない山道は延々と続き、そろそろこの景色にも飽きてきた頃、9時、五社堂へと到着した。
綺麗に整備された敷地の中には大きな杉の木が一本立っており、その奥の高台にはお社が五つ並んでいる。
真ん中のお社の扉が開いていたので手を合わせた。
その後五社堂を少し下ると、何やら時代劇にでも出てきそうな井戸があり、傍らにある説明書きには、「姿見の井戸」とあり、中を覗き込んで自分の姿が水面に映らなければ、3年以内で命を落とすとの事だが…。
そっと井戸の中を覗き込むと自分の姿が見える。
どうやら「姿見の井戸」は、3年間の命を保証してくれるようだ。
気を良くして鬼が一夜にして積み上げたと云われる999段の石段へと進んだ。
木々の合間から降り注ぐキラキラと輝く木漏れ日を浴びながら、荒々しい造りの石段を延々と下り続ける。
そして仁王像が護る長楽寺の山門をくぐり抜け、更に石段を少し下ると、県道59号にぶつかった。
道路を渡り、高台を走る県道から眺める視線の先には、真っ青な日本海と陸揚げされた小さな舟が並ぶ門前漁港、そして左手には緑の木々に覆われ、海に突き出た潮瀬崎が見える。
避難路の階段を下り、住宅街の狭い路地を下る。
玄関や窓が開いている家が多いのだが、人気は無く辺りは静まり返っており、ここだけ時間の流れが止まっているかのようだ。
不思議な町並みの中を下って行くと、9時25分、真夏のような日差しが降り注ぐ小さな漁港へと到着した。
それにしても暑い…思わず目の前の浅瀬に登山靴のまま入り、ちゃぷちゃぷと打ち寄せる波に手を浸してみると、ひんやりとした感覚が山行で火照った手に心地好い。
目の前に広がる長閑な漁港の風景は、まるで水彩画を眺めているかのようであり、心を和せてくれた。
さて、真山神社までもう一頑張りだ。
少し名残惜しいが、一息ついた後は門前漁港を後にし、先程下ってきたばかりの999段の石段に歩みを進めた。
その後、五社堂にて昼食を済ませ、13時48分、無事に真山神社へと到着した。
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