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6時08分、林道の奥地にある中村コース登山口より1.5km程下った林道脇に車を停め、先ずは県道308号へと下った。
夜が明けたばかりの林道は風もなく、轍が続く静かな林道脇には美しく紅葉した木々が並んでいる。
暫く下り続けると、県道へと繋がるT字路があり、正面には紅葉真っ盛りの山々の中腹が朝靄に包まれた幻想的な光景が広がっている。
左手にその景色を眺めながら県道を西へと向かい、更に戸鳥内コース入口と記された大きな看板があるT字路を北の方角へと進んだ。
暫く歩き続けると、煙突から薪ストーブの煙がたなびく集落へと入り、すれ違う方との朝の挨拶を交わしつつ登山道を示す小さな案内板を頼りに進んだ。
やがて足下はアスファルトから湿った土へと変わり、山域へと入っ行く。
そして突き当たりに現れた小さな広場より、いよいよ山道へと足を踏み入れた。
落ち葉の絨毯が敷き詰められた斜面には、ハッキリとした山道が山中へと続いている。
事前情報では、マイナールートとして認識していたが、この様子では意外にも普段から利用されている山道のようだ。
山道を道なりに歩き続けると、辺りの景色は杉林から紅葉樹林へと変わり、それと伴に辺りを包み込む森の香りも一変した。
柔らかく香る森の中には、朝日が木漏れ日となってキラキラと降り注いでいる。
暫くすると左手が開けた場所へと差し掛かり、周辺の山々の美しい姿を眺めながら進み、また森の中へと入って行く。
そして、7時34分、目の前に現れた急な斜面を登りきると、林道へとぶつかった。
林道を右手へと進み、少しして林道から左手へと続く山道へと進んだ。
こちらの山道は紅葉したブナの木に覆われており、辺り一面の美しいオレンジ色の風景が続いている。
時折近くの林道を走る車の音が聞こえるが、それ以外には何も聞こえない。
秋の深まりを感じながらブナ林を歩き続け、8時20分、ブナ帯コース上にあるトイレ棟の前へと差し掛かると、登山者のものと思われる車数台が停まっているのが見えるが、皆既に出発しているようだ。
ここからは、登るほどに落葉が進んでおり、山道につけられた階段を暫く登り、ゴンドラの山頂駅に到着する頃には、周辺には紅葉した木々はあまり見られなくなり、殺風景な晩秋を感じさせる景色へと変わった。
人が多い賑やかな山頂駅を通りすぎ、森吉山山頂へと続く木道を進む。
進むごとに、遠くを見上げる視線の先には、山頂に立つ標柱が見え隠れしている。
静かな阿仁避難小屋を通りすぎ、山道は木道から浮き石が多いガレ場へと変わり、辺りはいつの間にか灌木と笹藪に覆われた景色が広がっており、いたるところに悪戯っぽく絶妙なバランスで積み上げられたケルンが存在している。
そして振り向けば、眼下にはゴンドラの山頂駅が小さく見える。
山頂まで後少しだ。
足元には数日前に積もって溶け残った雪があり、目の前の雪と冷たい風に少し肌寒く感じながら更に進むと、山頂を示す標柱の元へと10時05分到着した。
山頂には意外にも、数人の登山者が居るのみで、視線の先にはぐるりと周辺の主峰が並んでいるのが見え、北西の方角には先日登頂した白神岳と岩木山、その手前には雲海が広がっている。
上着を羽織り、少し早いが山頂にて昼食にすることとした。
岩に腰掛けると、正面には山頂付近が雲で覆われた岩手山が見える。
冷たいオムスビを口に頬張り、水筒の熱いお茶で体を暖めながら、これから下る中村コースの方角を眺める。
藪や危険なトラバースもあると聞くので、少し心配だが、山道が存在するコースなので、何とかなるだろう…。
そして昼食を終え、中村コースへと下山を開始した。
さて、どんなコースと景色が待っているのか、楽しみだ。
岩の隙間を縫うようにしてつけられた山道を南へと進むと、笹藪が刈り払われた広い山道へと繋がり、やや急な斜面を下って行く。
見晴らしの良い眼下には、住居が並ぶ集落が小さく見える。
更に下ると、尾根を少し外した急な斜面に続く山道には湿った落ち葉が積もっており、非常に滑り安い為、慎重に下った。
そして暫くして急な一枚岩を流れる沢が現れた。
水が流れる岩場を慎重にトラバースし、更にその先の崩落地を通りすぎ、また小さな沢を横切る。
見上げれば、頭上には岩が覆い被さるように切り立っており、やや緊張感を感じる場所だ。
そして更に高度が下がると、辺りはまた紅葉真っ盛りの美しい景色に覆われ、赤や黄色、オレンジや緑といった色彩が溢れる雑木林が続く山道の中へと心地よい山歩きが続いて行く。
相変わらず人気は無いが、意外にも見通しが良い山道は歩きやすく、時折背丈の低い植物が山道に覆い被さるが、相変わらず足下の踏みあとは固くハッキリとしており、迷う心配はない。
中村打当内コース分岐点と記された標柱が立つ分岐を右手へと進み、12時46分、林道上にある中村コースの登山口へと到着。
そして杉の木が立ち並ぶ林道を下り、13時05分、出発地である駐車地へと到着した。
今日の山行は、難路を想定していたが、戸鳥内・ブナ帯・中村コース共に難路と言えるような箇所は無く、寧ろ紅葉で飾られた広い山道は見通しが良く歩きやすい。
また、比較的急な斜面が続く中村コース上に時折ある眺望地点のロケーションも良く、他のコースのなだらかなイメージとは異なり、一風変わった森吉山の景色も堪能できる。
20km程のコースとなるが、誰も居ない静かな森吉山周辺の森の中をゆっくりと味わうには、オススメのコースであり、数ある森吉山山頂へと続く山道の中でも高い充実感を得られるコースであった。
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