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二日前の手術を終え、抜糸前だが長雨後のせっかくの休日なので、山に向かうこととした。
本日登頂を目指すのは、十和田湖の外輪山、白地山。
右手に湖を眺めつつ、いつもの山行とは少し違った景色が期待できそうだが…。
鉛山登山口からの入山では、歩行距離片道約7km、標高差約200メートルであり、手術後に縫合した上に貼ってあるパッドが剥がれないよう、あまり汗をかかない程度に歩けば、何とかたどり着けそうだ。
登山口にある周辺案内図を一通り眺めた後、7時50分、山行を開始した。
小雨が降り続く中、レインウェアの上着を着用し、先ずは石で造られた人工的な階段が続く鬱蒼とした森の中をゆっくりとしたペースで登って行く。
辺りには霧が立ち込め、静かな森の中には、生き物の気配は感じられない。
少しすると、鉛山峠へと差し掛かるが、熊のものと思われる噛み跡がある標柱が立っている以外は特に見るものも無く、更に先へと進む。
間も無くして山道は藪に覆われ、雨で濡れた藪を払い除けながら進むが、早くも全身ずぶ濡れとなり、この状況では先が思いやられる…。
やがて山道を覆う藪は無くなり、足下には木道が現れたが、この濡れた木道が非常に滑りやすく、特に下り坂ではブレーキがかからず、歩行を困難なものとさせた。
辺りは、チシマザサで覆われており、ダケカンバやブナの木の枝が頭上の空の景色を遮っている。
気がつけば、雨は止んでおり、鬱蒼とした静かな森の中をうっすらとした靄が包み込んでいる。
少し汗ばんできた為、レインウェアをザックのバンジーコードに括り付け、スポーツドリンクで喉を潤した。
眼下には、靄がかかった十和田湖の湖面が見える。
更に暫く進むと、8時23分、東屋が建つ白雲亭跡展望台へと到着した。
ここから見える景色も相変わらず靄がかっており、視線の先には右手から湖面に突き出た中山半島が見える。
天気が良ければ、美しい十和田湖の風景を楽しめたかと思うと、残念に思う。
代わり映えしない山道は、更に続き、ミソナゲ峠を通り過ぎ、10時7分、高度997メートルにある展望所へと到着。
ここで一息入れ、眼下に見える靄のかかった十和田湖の景色を眺める。
ここから先の山道には、笹が覆い被さっており、また笹の葉に着いた水滴でずぶ濡れになるかと思えば、やや気落ちした。
短い休憩を終えた後は、まだ乾いていないレインウェアを着る気にもならず、山道に覆い被さる笹を掻き分け、体を濡らしながら暫く進むと、突然目の前の景色が開け、白地山湿原へと到着した。
木道が真っ直ぐに延びる湿原には、秋を思わせる冷たい風が吹いており、山道脇に僅かに咲いた白い小さな花を揺らしている。
見上げれば、灰色の空には雲が流れ、今にも雨が降りだしそうだ。
仕方なくまだ乾かないレインウェアを再び着用し、木道にコツコツと登山靴の音を響かせながら先へと進んだ。
そして湿原を通り抜け、最後の緩やかな上りを進むと小さな広場が現れ、10時39分、白地山山頂へと到着した。
人気の無い山頂の広場には、山頂を取り囲むように木製のベンチが並んでおり、その中程に山頂を示す標柱と三角点を示す標石がある。
そしてその脇には、ささやかな歓迎をしてくれるかの様にピンク色のアザミの花が数本咲いており、山頂を吹き抜ける風を受け、御辞儀を繰り返している。
少し目線を上げれば、日差しがない灰色の空には、早い速度で雲が次から次へと流れ、十和田湖周辺の山々の景色を目まぐるしく変えて行く。
人里離れたこの白地山の山頂にて、古ぼけた標柱を前に、一人夏の終わりの侘しさを味わう。
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