物語は富山刑務所で作業技官として働く寡黙な主人公の倉島英二が、53歳という若さでこの世を去った妻洋子の遺言に従って洋子の故郷長崎まで洋子の為を想い作ったキャンピングカーで旅を始める所から始まる。
道中、この旅を通して出会う訳ありな人々と交流し、生きる喜びを主人公なりに身を持って実感していく。寡黙な主人公は一期一会を大切にすることによって不思議な縁も生まれ、洋子の座右の銘『他人と過去は変えられないけれど、自分と未来は変えられる』『人生には賞味期限がない』との言葉は主人公と係わりを持った人々の生き様をも変えてしまう。
先に高倉健さん主演の映画があり、その脚本を元にしてこの小説が書かれていますのでしっかり主人公の倉島英二が高倉健さんになってしまい主人公像をわたくしなりに想像出来なかった事が少し悔しい。
物語の各所に風鈴の凛の音と種田山頭火の句がこの小説に彩りを添えているのも読み進むに従い心地良い。
新年1冊目に巡り会えた図書館本が森沢明夫の『あなたへ』だった事は今後の人生へ最高のお年玉をいただいた気分である。
これだから読書は止めれない。
映画を先に観るも良し、小説を先に読むも良し、興味無しも納得、各人それぞれの今を生きる想いをコロナ禍で暗い時だからこそ味わっていただきたい。
最後になりましたが
今年もよろしくお願いします。