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2019年11月19日 22:25老人と山全体に公開

付いて行っていいですか

「付いて行っていいですか?」
こう見知らぬ女性から声をかけられました。

でも、内心、自分は超スローペースだし、へたったりするから、そのうちペースが合わなくなりかえって迷惑をかけるのではないか、また、女性を引率する以上は怪我などしないように守ってあげる責任が男にはあるし、などと妙な感情にとらわれちょっと狼狽えました。

ことの次第は、こうです。
その日は、小下沢林道の惨状をこの目で確かめようと小仏行きのバスを大下で下車し、通行止めのロープを潜って進入しました。危ない場所に出会ったら引き返すつもりで周囲の様子を眺めながらのんびり歩いて行きました。でも30分近く経っても大雨の被害らしき場所は一向見当たらないので飽きてしまい、もういいや、無意味な時間を潰してしまった、と後悔して引き返しました。

その引き返す途中、前方から単独の女性がせっせと歩いて来るのに出会いました。あれ、あの人も通行止めを無視したのだろうか、それにしてもどうゆう目的でこっちへ来たのだろう、と不審に思い、山の挨拶をしたついでに、自分のことを棚に上げ、この先はロープが張られて入れないですよ、などと状況を教えてあげました。

女性は、曖昧な風で要領を得ず、結局私と一緒に引き返すことになりました。道すがらおしゃべりをするうち、これからどこへ行くのか尋ねられ、
「東尾根を景信山へ登るつもりなんですよ。」
「あらー、私は東尾根を登るつもりだったのに入口が判らなくて、どこなんでしょう。教えて下さい。」
というので、登山口のある広場へ案内しました。

この広場は林道から車が入れないように入口にロープが張ってあり、登山口はその奥の見えないところにあるため、下調べをしないで漫然とやってきても登山口を発見することは困難です。

2人でロープを越えてから、あそこの奥の突き当りに登山口があるのでそこから入って急坂を登ればいいのですよ、と教えてあげました。女性は、早速登山口へ向かって行きすぐに姿が見えなくなりました。

私は、切り株に腰を下ろし、おにぎりを食べたりしてのんびりしながら、あの最初の足場の悪い急坂に苦戦しているだろうなと想像していたら、間もなく女性は登山口に姿を現しこちらへ戻ってきました。そして傍らの切り株に腰を下ろして思案顔です。ははあ、あの急登に恐れをなしたか、なんといっても道は錯雑し足元も悪いからなあ、などと推察し、
「どうしたのですか」と聞いてみたところ、
「ちょと、もう年だし、認知症の気もあるし・・・」
などとはっきりしません。明瞭な登山道ではないので高齢の女性1人ではやはり心細いのでしょう。

まあ、高齢だといっても、女性に年を尋ねるのは失礼だし、自分よりは年下だろうと思い、なーに、自分はもう80歳、まだまだ大丈夫ですよ、などと励ましたところ、おや、としげしげ私の顔を見つめてから、私は70歳、脚が痛くなってしまって、股関節のところがね、などと気弱なことを言います。でも装備は完全武装、がっちり着込んでスパッツまで着用し、頑丈な登山靴を履いています。60歳のころはこの辺を盛んに歩いていたそうで、かなり山慣れしている雰囲気です。

話も一段落し、私がザックを背負ったときにためらいがちに掛けられたのが冒頭のことばで、咄嗟に心に浮かんだのが冒頭の思いです。

もちろん男である以上断るわけにはゆかず、ただ途中事故を起こさないようにと念じながら一緒にスタートしました。老人同士、離れないよう気を付けながら歩いたのですが、その心配は杞憂でした。私以上にしっかり歩きました。

このコースは、最初のピークまでが勝負で、その後はたいしたことありません。私のスローペースに合わせて無事景信山へ到着できました。
年寄りの二人ずれ、話が合います。念願の東尾根コースを歩けたと非常に喜んで頂いて、私も案内してあげた甲斐があったとほっとしました。

山ではいろいろ出来事が起こります。これもそのひとつ、ささいなハプニングですが、私の楽しい思い出になるでしょう。また、彼女も自信を深めてまだまだ頑張れますようにエールを送ります。

写真1 小下沢林道に張られたロープ
写真2 広場から見た登山口
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