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3行では無理なので、分割して。
火山が好きで、横浜在住のため、特に東海地方の火山に行くことが多い。
東海地方の火山といえば、何と言っても富士山周辺、箱根、伊豆全般だが、伊豆・小笠原火山フロントに注目していれば、当然丹沢にも行き着く。
伊豆半島は、南の海からフィリピン海プレートに乗って、日本本土にぶつかってきたわけだが、その前には、丹沢地域もやはり同じように日本にぶつかってきたのだ。というより、丹沢の地域が日本にくっついた後、さらに南からやってきた伊豆におされて、隆起して丹沢山地が生まれた。このあたりのことは、多分ご存知の方も多いと思うし、すぐ検索して調べられるので、特に詳しく書かない。
というわけで、地質学的な面からも、丹沢には非常に興味がある。
丹沢の地質というのは、簡単にいえば、おまんじゅうを二つに割ってその断面を上から見ているような感じだ(あくまで表面の見かけだけ)。
西丹沢自然教室のあたりの中川川の川原に出ると、全部真っ白い石だ。よく見ると、真っ白い中に、黒い粒が散りばめられている。これは石英閃緑岩(トーナル岩)という。地下深くのマグマがゆっくり固まって出来た深成岩で、これがおまんじゅうのあんこの部分。丹沢の中心部は、大抵この石でできている。
その周りのおまんじゅうのかわの部分は、遠い昔、南の海で海底火山が噴火し、噴出物が海底に堆積した岩でできている。丹沢に多いきれいな緑色の岩は、大抵これである。
この石は、丹沢の中心(の石英閃緑岩地域)に近いところほど、その圧力や熱で、崩れやすい結晶片岩という岩に変成されている。中川温泉のぶなの湯から川原に降りると、はがれるように崩れやすい緑色の岩だらけだが、これが結晶片岩である。白い筋が入っているのは、温泉の成分。
加入道山から北側の道志に下る道の途中、石灰岩の採石場跡というのがあるらしい。ここの石灰岩というのは、海の生物の死骸が海底に堆積して出来た石。だからたまに化石も出る。
この石灰岩が熱を受けて変成すると、晶質石灰岩という岩になる。これが大理石だ。つまり、石英閃緑岩に近い加入道山の南側の石灰岩は、そのマグマの熱を受けて、大理石になったのだ。
西丹沢自然教室のすぐそばに、ここに出てくる岩が全部飾ってあるのは、行ったことのある人なら知っていると思う。他にも、丹沢の主稜線上に見られるホルンフェルスという変成岩の標本などもある(まあ全部山に行けばあるんだけどねw)。今度ぜひ見てみて下さい。多分ちゃんと見たことのない人がほとんどだろう。
教室の建物の中には、とりわけ珍しい石だけ飾ってあるのだが、これも見た覚えのある人は多いと思う。ベスブ石(晶質石灰岩中にまれに見られる)だとか、菫青石(きんせいせき、ホルンフェルス中にまれにみられる)など、これも石英閃緑岩による変成の結果生まれた石たちで、これらや白石沢の大理石は神奈川県の天然記念物になっている。
ここからはすべて個人的感想。
丹沢の沢が美しいのは、これらの岩のおかげだと言っても過言ではないと思う。
深い緑がかった青い岩を滑るナメ滝、遠くから見ると真白く見える石英閃緑岩の淵は、息を呑むような純粋な水の色だ。
「丹沢」の語源を調べると、もっとも有力な説として、「丹は朝鮮の古語で谷を意味し、沢は流れを意味する」らしい。けれども、「丹」の字から最初に想起されるのは、道教、陰陽道、密教、修験道という流れだ。そこでは「丹」は水銀のことで、神仙の不老長寿の薬(色でいうと赤なのだが)。自分としては、「丹が流れるような沢のある神仙の山」という意味の方が、美しいので好きである。修験道の山、多くの山の神様が住む山、古い金坑のある山(もっとも金はとれず黄銅鉱ばかりだったとか)、さらに天皇家にゆかりの隠し財宝の噂もあった山としては、そのほうがふさわしい。
(写真は中川温泉付近の川原)
次は、現代の宝、天然記念物の石を探しに行くお話へ続く。
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