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その国の最高峰が見える首都というのも、確かに珍しいようだ。東京からは富士山が見える。江戸時代は、日本橋からも見えたらしい。高速道路の下に情けない姿をさらす今となっては、到底信じられない。
けれども、高台や高層ビルの上ならば、丹沢の上にそびえる富士山は、冬ならば割と見やすい。自分は神奈川なので、大山の左に、長い裾野を引いた富士山をかなり大きく見ることができる。
東京から見える山を調べた人物としては、小暮理太郎がもっとも有名である。大正から昭和初期にかけて、約30年をかけて東京から見える山を調べ、富士山を含めて3000メートル以上の山が9座、2000〜3000メートルの山が64座見えたと結論した。
富士山以外の3000メートル以上の山というのは、南アルプスのことだ。東京からだと、丁度相模川、桂川の渓谷の彼方が南アルプスであり、その前の山は高尾山、陣馬山、城山など、低い山ばかりなのだ。白根三山、塩見岳、悪沢岳、赤石岳、聖岳などが見えたらしい。これはもしかしたら今でも、条件がよければ見えるのではないか。
冬の風の強く、前日に雨か雪などが降った日が最もよいらしい。土ぼこりもなく、靄なども吹き飛ばしてしまう。正月三が日ならば、工場も休業して、ばい煙もないだろう。
では、東京から見える(見えた)一番遠い山はどこだろう。
小暮が言うには、何と那須の三本槍岳だという。ただし、那須は非常に見られることがまれで、二十数年で3回しか見たことがないし、多少疑いが残る、と書いている。東京から、164キロの距離だ。
そこで、東京から本当に三本槍岳が見えるのか、カシミールで試してみることにした。ちょっと考えると、茶臼岳に隠されてしまうような気もするのだ。
小暮はどこから見たと特定しているわけではないが、特によく観測したのが、浅草公園にあったという凌雲閣、それに愛宕山の上にあったという愛宕塔だという。
凌雲閣は、明治23、24年ごろにパリのエッフェル塔を真似て作った展望台で、12階建て、下の10階はレンガ造り、上の2階は木造で、地高を加えて64メートルほど。このあたりの標高は2メートルほどだから、62メートルくらいの高さだったようだ。
愛宕塔は港区の愛宕山の上にあったレンガ造りの5階立てで、30メートルあったという。この2か所から、それぞれ62メートル、30メートルの対地高度で、カシミールで那須方面をカシバードしてみたのが、写真1、写真2だ。300ミリの望遠にしてある。
写真1:浅草凌雲閣最上階より、那須を望む
写真2:愛宕山愛宕塔最上階より、那須を望む
高さの分、浅草凌雲閣の方が見えている範囲が多いが、まあそれほど違いはない。
問題の三本槍岳なのだが、確かに見えてはいる。けれども、茶臼岳から白笹山の稜線にほぼ隠れて、頭がほんの少し見えているだけである。これは、はたして見えたのだろうか。本人も言うように、ちょっと疑問が残るといえるかもしれない。けれども、角度から言えば、確かに東京から見えるはずなのは確かだ。
他に東京から見える遠い山としては、162キロメートルの距離にある苗場山がある。
写真3:浅草凌雲閣最上階より、苗場山を望む
苗場山から白砂山への稜線が見える。写真の木戸山の後の高い山が白砂山だ。利根川の低い渓谷の丁度奥が苗場山になるわけだ。苗場山の左下に見える稲包山が、太平洋と日本海の境界、分水嶺で、向こう側は信濃川流域になる。
はたして、今現在、これだけ見える日が1年に1日でもあるのだろうか。まさか東京から苗場山が本当は見えるはずだとは思わなかった。
この話題、面白いので、多分続く。
昔は一番高い三本槍岳を那須連山の総称で言う人が多かった気がします。
冬の天気のいい日にスカイツリーに登ったら私も那須岳も苗場山もきれいに見えましたよ。
写真はないのですが↓こんな感じでした。
https://www.schwaben.jp/northmountain.html
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