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けれども当時、そのあたりの山はそれほど好きというわけでもなかったような気がする。岩がちであったり、森林限界を越えるような高山のほうが、展望もいいし、ハイマツや白い砂地に高山植物が咲いていたりして、確かに見映えがいい。日常の生活から遠く離れて、「異界」に来たという感じも強い。東京近辺の山ではほとんど日帰りになるが、遠くの山であれば泊まりがけ、夏休みには長い縦走などもするし、夜には、日常見ることのない、信じられないほど美しい星空も見ることができる。
丹沢(中核除く)や奥武蔵、奥多摩などだと、行程のほとんどは、樹々の中だ。もちろん場所によっては展望のいいところもあるけれども、植えて時間のたった植林の中は、晴れていてもびっくりするほど暗かったりする。
冬の広葉樹林は明るいけれど、樹々を透かして垣間見える山々は、肉眼だと割と見えるものの、いざ写真に撮ってみると、結局全然様にならない。手前の枝にピントがあってしまったりする。もっといいポイントはないものかと気にしながら登っていて、木の根っこにつまづいたりした経験がある人もいるのではないだろうか。
けれども、最近は、こんな地味な山の魅力がようやく分かってきたような気がする。
まっすぐに伸びた植林の杉や檜が作る直線の美しさ、自然の中で数えきれない年月を経て育ったブナやモミの樹の太い幹の存在感、日本の森は人を優しく包み込んでくれるようだ(南のジャングルはそんな優しくない(^^; 変な虫や毒ヘビなど気味悪い植物や動物でいっぱいだ。人間が向き合うにはあまりに強烈過ぎる生命力で、圧倒されてしまう)。
樹々に覆われた山々は、鋭角的な岩岩しい山よりも曲線的で、空との境界も滲んだようにぼやけ、絵でいうなら水彩、パステルといった感じ。いくつか尾根を隔てたくらいの距離から見ると、稜線のライン上にほんわかと樹が生えていて、優しげだ。
たまに開ける展望も、かえってありがた味が増すと考えればいいかもしれない(まあまったく見えないのはちょっとつまらないけれど(^^;)。
そういう山の代表として、この前行った、道志の御正体山を挙げたいと思う。
長く危険な自動車道路を通らずには周回ルートが作れず、結局、仕方なく道坂峠からの往復にした。車だったからまだよかったものの、電車とバスでは、大変行きにくいし帰りにくい。道志は車でよく通るのだが(富士山方面へ行ったときに通る機会が多い)、車なしでは、こんなに行きづらいところだったとは。
御正体山は実に目立つ山で、自分たちの行動範囲からだと、大体どこからでも、そのびっくりするくらい大きな姿を確認することができる。何度も各所で目にするうちに、これは絶対行かなければならないだろうと思うようになった。
どっしりとした姿が実に立派で、重量感に満ちあふれている。道志山塊の最高峰であり、さらに丹沢含めても最高峰だ(御正体山1681m、蛭ヶ岳1673m)。名前も、音だけ聞いて想像するのは「みしょうたい=未正体」で、なんとなく怪しい雰囲気が漂う。とても「地味な山」とはいえないと思える。
けれども、あれだけ周りの山々から見ると目立つのに、御正体山の頂上からは、何も見えないのだった(^^; 展望がきけば、多分すごいはずだ。すぐそばのはずなのに、山行中一度も富士山をはっきり見ていないという。。。
登山口までの長い行程で疲れ、登り始めれば、樹林の中の稜線を延々と歩きアップダウンをくり返し、最後の急登はとてもきつい。登り切っても、樹しか見えないw 気が利かないにも程があるだろう、といいたくなる山だ(そういえば丹沢の大室山もちょっと似た雰囲気ですね)。
行く前、昔登ったという知り合いに聞いたら、「面白くない山」と言っていた(^^;ヒドイ さらに「御正体山」「地味」でググったら、約695,000件もヒットしたw(ちなみに「蛭ヶ岳」「地味」だと、約6,740件だ)
でも、なぜかしら満足できる山行だった。この、どうしようもなく地味で、人気なさ気で、行くのも大変だけれど、ふところの深い山に、また行きたいと思ったのだった。
ちなみに、この御正体山は平成16年、皇太子さまも登った山なのだが(頂上に記念の標示もある)、なぜと思わずにいられない(^^; シブい趣味してるなあ。多分自分と同じように、他の山から見て御正体山が気になっていたんじゃないかなあと想像している(^^;
写真:岩下ノ丸あたりの稜線と、御正体山
おはようございます
「地味な山」・・・私はほとんどの山行がそんな山ばかりです
基本、家内と2人での山行ですが、家内は土日休み、私は不規則な休みなので、自ずと週末の1日だけが山行のチャンスってことになります
1日休みだと日帰りのみ、移動も考えると行くことの出来る山域は限られてしまって、近場の西上州や赤城、榛名、それに地元の「超低山」がどうしても多くなります
低山では森林限界も超えませんし、山頂からの展望も地味な感じ
それでも今のシーズンは新緑や春の花がたくさん咲いていますし、人工的な植林の林も美しいと感じます
アルプスにも行ってはみたいと思いますが、今の仕事を続ける間はこんな低山歩きが中心になりそうです
追伸)西上州の低山は侮れませんよ!
危険箇所も多いですし、地図読みの勉強にもなります
スキルアップには良い山域かも知れません
コメントありがとうございます!
自然林もきれいですが、確かに最近は植林の美しさも感じられるようになってきました。特に整然と並んだ檜や杉の森が、霧につつまれていたりすると、背筋がぞくっとする美しさですね。
群馬の山、実は大好きです! ヤマレコに載せるようになる前、榛名、赤城、草津、浅間周辺は何度も行きました。全部火山で、火山好きにはたまらないです。遠いので、日帰りで行くのはすごく大変なんですけど、先日はついにずっと気になっていた表妙義にも行きました。まあ低山だけれど、ここはとても地味とはいえないですね(^^;
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