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その数も、密度もあがり、生息地域もかなり広がっているようだ。
南アルプスや八ヶ岳では、標高2500mを越える稜線上にまで上がってきているという。仙丈ヶ岳の馬の背近辺には、シカによる高山植物の食害を防ぐために、シカ柵が作られているそうだし、八ヶ岳の硫黄岳近辺には電気柵もあるらしい。中央アルプスでも、わずかな個体が稜線まであがってきている気配があるという。
丹沢あたりでマルバダケブキやバイケイソウが目立つのは、シカが原因なのだろうか(どちらもシカが食べられない植物)。
昨年、環境省が発表した全国のシカの数は、北海道をのぞき、推定260万頭(中央値)であるという。この数字が大きいのか小さいのか、イメージが湧かないが(まあ人間の数に比べたら圧倒的に小さな数字なわけだが(^^;)、現在の捕獲率のまま推移したとすると、10年後には500万頭まで膨れ上がるという。これはびっくりする数字だ。
今でさえシカが増えすぎて被害が大きいと言われているのに、ほぼ倍になったらどうなるのか(ただし、現在言われているシカの害とシカの因果関係に関して、きちんと調査を見たわけではないので、早合点してシカを悪者扱いするのは控えたい。食害による植生の衰退、それによる表土流出など、本当にシカだけが原因なのかどうか、ということだ。こういうのって、後になってから実は、って結構ありがちなので)。
最近、富士山麓の国有林でも、餌の誘引によるシカ猟が計画的に行われている。できるだけ群れごとに一網打尽しないと、学習して、餌をおいて集まらなくなってしまう。
猟といっても、肉などを得るためでなく減らすのが目的なので、埋めるそうだ。シカ肉は、捕ったあとすぐに適切に処理しないと、臭みがついてしまうので、食べるためにはかなり手間がかかるという。
ハンターは、シカとは正反対に、絶滅寸前だ。高齢化も激しい。若い人に狩猟(銃によるもの、ワナによるものがある)を広める試みもやっているようだが、正直一気に増えるとはとても思えない。
そんな中、今年の春、狩猟関連の法改正が公布された。今はその施行に向けて進んでいるところのようだ。
現行法は「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」、改正後は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」となる。
早い話が、現行法は、保護を主眼に置いており、改正後は、その管理のための狩猟(ようするに間引き)を進めやすくしているのだ。
「山のお話7 丹沢のシカ、自然の本質」で丹沢におけるシカの歴史をざっと書いたことがあるので、詳しくはそれを見てほしいが、昭和戦後くらいまで、シカの数は減少して絶滅すら危惧されていた(特に戦後の食糧難の時代にはかなり密猟も多かったらしい)。
ところが保護政策をとり、さらに天然林を伐採して植林をする拡大造林政策により、シカが一気に増えてしまった(伐採地や丈の低い幼齢林では日が当たるので下草が生え、シカの食べものが一気に増える)。
シカが増え、植林地も山の奥まで広がればその被害も増えてくるのは当たり前。さらに数十年たって植林が高く育って地面に日が当たらなくなってくると、下草が生えなくなり、シカの食べものもなくなってくる(立派な植林の森は暗いですよねぇ)。シカとしては、さらに山奥の天然林、あるいは人里に近いところなどに、食べものを探して広がっていくしかない。
こう見ると、何だかシカにとっては踏んだり蹴ったりだが、こういう具合で、山をめぐって、人間とシカがぶつかり合いながら暮らしているわけだ。
法の話に戻る。
現行法の「保護」と改正後の「管理」の違いは、一言で言えば、「保護」は数を増やしたり維持したりする、ということ。「管理」は、数を増やしたり減らしたり維持したりする、ということ。
今まで保護だけしようという話だったのが、保護したり、管理したりしようという話になったということだろう。
また、今までは都道府県知事にまかされていたその計画に、場合によっては環境大臣も関わることができるようになったらしい。
その計画のために、狩猟に関する様々な規制が緩められ、実行しやすくなっている。
例えば、一番目をひくのが、一定の条件で夜間の銃による猟が認められることか。
明治6年の狩猟規則以来、夜間の銃猟は変わることなく禁止されていた。まあ危険ってことですね(^^;
これが今回、特に認められた事業者が、特に認められた場合に限り、夜間にも銃による狩猟ができるようになるらしい。
他にも、住宅のある地域では網による捕獲しかできなかったのが(街で逃げた動物を捕まえたりするやつですね)、場合によっては麻酔銃も使えるようになるといった変更がある。
ここで普通ならそんな危険なと声を上げるところだが、自分はそんなことはしないのだ(^^;
正直なところ、これは仕方ないだろうと思う。シカは不憫ですけどね。。。
写真:蛭ヶ岳とシカ、臼ヶ岳にて
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