この年の4月に大学を卒業して東京の会社に就職した。社会人になったら学生時代のように山には行けないなと覚悟はしていた。しかし田舎育ちの私にはビルに囲まれ、山が間近に見えない東京の生活には物足りなさを感じていた。山に出かけようと思ったが仕事もまだ研修中であり、都会の生活に慣れるのが先だとの思いでなかなか決心が付かない。
気が進まない自分をしかり付けるようにして思い切って出かけることにした。東京都の山と言えば雲取山である。土曜日の仕事が終り、山の仕度をして電車に乗るがザックを担いだ姿がなんとなく恥ずかしく感じられた。
三峰登山口の逸見旅館に21時に着き、宿泊。翌朝、起きると晴れていて、旅館の窓から山や河が見え、山に帰って来たのだと無性にうれしくなった。実際には2ケ月前に故郷の山に登っているのだが、何年も山を見ていなかったような気になる。ただ単に山を見ただけでこんなに感動したことは今までにはなかった。
三峰口からバスで大輪まで行き、ロープウエーに乗る。8時過ぎに山頂駅から歩き出すが森のにおい、小鳥のさえずり、これが山だと実感する。東京のビルの中ではなく、山に帰ってきたのだとつくづく感じた。
人気のある雲取山であるが、天気予報が雨だったためか意外と一人の静かな山歩きを楽しむことができた。朝晴れていた天気も、前白岩山付近からは雹混じりの雨が降ったり止んだりの天気となったが、久しぶりの山、雨も気にならない。東京都と埼玉県の県境で両方にまたがって建っている雲取山荘あたりから山頂までは、さすがに人が多かった。雲取山荘は東京都と埼玉県の両方に税金を納めていると聞いたことがある。
当時、私の山の服装は古い背広等の古着を着て登っていたが、ここの登山者は山専用の服装でいかにも登山者といういでたちであり、自分の服装が少々、恥ずかしくなった。頂上からの展望は、天気の悪かったこともあるがあまり感動は得られなかった。この時はただ山の中を歩けたことだけで満足していた。
下りは石尾根を七ツ石小屋まで下り、ここから小袖集落を通り鴨沢に下った。バスの時間に間に合わせるため、小袖集落からは駆け足で14:45に鴨沢のバス停に着き、14:50の氷川行きのバスに汗を拭く間もなく飛び乗ることができた。
本当に疲れたが、山は都会生活を癒してくれ、社会人になっても自分が山への執着心を失わない限り、山にはいつでも行ける事が実証でき、これからも山に登り続けようとの思いを強くした。
雲取山は私に山を歩くことのできる喜びを再認識させてくれた山である。
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日記
私と百名山 22.雲取山(21018m) (登山日:1967年5月14日)
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ヒデさん、こんばんは。
この日記に対するコメントではありませんが、先日は大変お世話になりまして有り難うございました。
何とか無事に六合目までは到達出来たものの疲れと酒のせいで見事に寝坊してしまい、予約をして頂いていたタクシーの時間に間に合わないため宝永山に切り替えました。
登っている時は苦しいばかりで「もう二度とこのルートは歩かないぞ」などと考えていましたが・・・道迷いとかがなければもう一度歩いてみたいと思うようになりました。
海から村山浅間までは省略してその上をもう一度歩いてみたいと思います。
このたびは本当に有り難うございました。
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