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早川尾根の栗沢山、アサヨ峰等のピークからの展望も素晴しく、特に北岳の鋭角的に突き出た山容に目を奪われる。早川尾根小屋は当時のガイドブックに「南アルプスの小屋の中でも、最も南アルプス的な小屋である。」と書かれていた通り、管理人もいない素朴な小さな小屋であった。私が着いたときは2人の各単独行者が先客として入っていた。その後、1名増え、4人の各単独行者で山の経験を明かす訳でもなく山の話を楽しんだ。
翌日、赤薙沢の頭、高嶺を越えて鳳凰山地蔵岳に足を踏み入れた途端、すごい人の数に驚いてしまった。5月連休であるから無理もないのだが、それまでがほとんど人に会うことも無く、静かだっただけに戸惑いを覚えた。地蔵岳肩の賽の河原にキスリングを置き、この銀座のような人出に似合った格好でと粋がって、背広の上着にアスコットタイを首に巻いてピッケルだけを持って地蔵岳、観音岳、薬師岳を往復した。鳳凰三山はそれまでに登った山頂とは違い、雪もほとんど消えて白砂の明るい山頂で、薬師岳などは西部劇の1場面のような感じを受けた。
賽の河原に戻り鳳凰小屋に下る。小屋はすごい人で溢れかえっていた。青木鉱泉への道を確認すると、踏み跡も無く無理だから御座石鉱泉に下るように言われ、仕方なく御座石鉱泉に向かう。山行最後の1夜を温泉でのんびりしようと御座石鉱泉に宿泊することにしたものの、すごい混雑で温泉どころではなかった。翌日、早朝に近くの沢を散歩がてら歩くと、付近の新緑が素晴しく、それまでは秋の紅葉ばかりに目が行っていた私であるが、新緑に包まれた春の息吹の美しさをこのとき初めて認識したような気がした。
2回目の鳳凰山は15年後の同じ5月の連休に、会社のハイキング同好会で経験の浅い人、しかも雪の中を歩いたことの無いメンバーに雪の楽しさを知ってもらおうと考えて計画した。夜叉神峠から入り、南御室小屋に泊まった。この時代は南アルプスでは食事を出してくれる小屋は少なく、その食事もご飯は芯飯で、おかずも本当に御粗末だったため、同好会のメンバ−が最初に行った尾瀬の山小屋との落差に呆然としていた。
しかし翌日の雰囲気のある鳳凰三山の山頂、北岳を初めとする3000m峰が目の前に聳え立つ景色、雪の中を歩く楽しさを実感して満足し、今まで以上に山が好きになってくれた。
私は鳳凰山には5月の残雪期にしか登っていないが、気軽に雪を楽しむことのできる山だと思う。
写真:地蔵岳オベリスクの下を行くハイキング同好会のメンバー
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