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折立から太郎平小屋−北ノ俣岳−黒部五郎岳−三俣蓮華岳−双六小屋−笠が岳−新穂高温泉の2泊3日のコースである。
雨の中、折立を出発。太郎平小屋に正午過ぎに着き、天気が良かったら薬師岳を空身で往復するつもりであったが、すでに2回登っている薬師岳に雨に濡れてまで行く気が起こらず、太郎平小屋で半日沈殿する。翌日は更に雨がひどく、気が進まなかったが、双六小屋まで行くことにする。激しい雨の中、展望もきかず、ただひたすらに歩く。北ノ俣岳まではそれほどの登りも無く、楽に通り過ぎる。
黒部五郎岳山頂コースとカールコースの遭難碑のある分岐点では、雨で何も見えないが雲ノ平から見たあのカールを歩きたい気持が強く、カールコースを取ることにした。分岐から一応、山頂を往復する。山頂でも当然、何も見えず、ただ山頂を踏んだという満足感だけですぐに分岐に戻る。カール部分はお花畑になっていたが、横殴りの雨で花を楽しむどころではなく一人黙々と歩くのみ。当時の雨具は今のように通気性、防水性が良くなく、ビショ濡れになって黒部五郎小屋に潜り込み、ホットした。ガチガチ震えながらストーブに当たり、昼食の行動食としてのパンとカンパンをかじる。
この頃の私は融通がきかず、今日は双六小屋まで行くと決めたら何が何でも決行するようなところがあり、この雨なので無理をせずに黒部五郎小屋または三俣山荘泊まりでも日数的には良かったのだが、今から考えるとむきになり、双六小屋に向かって激しい雨の中、小屋を出発していた。このような臨機応変の対応が出来ないことが遭難につながるのであろうが、今まで大きな遭難事故を起こさずにすんだのは、ただ単に運が良かっただけのことと最近では猛省している。
三俣蓮華岳に着いた頃からやっと、雨足も弱くなってきた。ここまでくれば双六小屋までは何回か歩いたことのある道なので気が楽になる。尾根越しに双六岳経由して双六小屋に15時過ぎに到着。すぐにビショ濡れの衣服から着替え、雨で冷えた身体を担ぎ上げた日本酒を熱燗にして温める。小屋泊まりは雨の日のテント泊に比べたら天国である。
結局、黒部五郎岳はこのとき1度だけの登山となり、深田久弥の日本百名山の中では利尻岳、光岳と合わせた三山が豪雨のため、ただ頂上を踏んだだけで終わってしまっている。
この三山は天気の良い時にもう一度、登ってみたいと念じているが、その中でも黒部五郎岳のカールコースは夏の高山植物花盛りの折にぜひとも歩きたいコースの一番手である。
写真:雲の平からの黒部五郎岳
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