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期待通りに雨は弓折岳に着く頃はやみ、少しずつ青空が広がってきた。今回の山に入って初めての青空がうれしかった。太陽の暖かさに感謝しながら気持ちよく笠ケ岳山荘に着く。笠ケ岳への到着に合わせたように完全な青空となる。やっと、槍ヶ岳から穂高岳連峰までが見えた。西側の笠ケ岳から見た槍・穂高連峰は東側の常念岳方面から見た槍・穂高連峰とは少し感じが違っていた。この晴天と、槍・穂高の展望を十分に楽しむために昼食をゆっくりと頂上で過ごす。到着時、頂上には先客の2パーティーが居たが、先に下りて行ったので私一人の笠ケ岳山頂を心行くまで楽しむことができた。
下りは錫杖岳の岩壁に圧倒されながら新穂高温泉に降り、蒲田川沿いの槍見温泉の露天風呂で汗を流す。露天風呂からは槍の穂先がわずかに見えるだけであるが、誰も入っていない風呂を独り占めして、ゆっくりと湯船に浸かった。その後、槍見温泉に行った事がないので最近の状況は知らないが、当時は更衣場に少し壁があるだけで周りからは丸見え状態であった。新穂高温泉のバス停で女性を含むバス待ちのグループに槍見温泉に入浴してきたことを話したら、「露天風呂に入っていたのはあなたでしたか」と言われ、丸見えだったことが分かり、少し恥ずかしかった。
笠ケ岳は遠くからでもすぐに判別でき、私も多くの山から笠ケ岳を眺めてきた。深田久弥も書いているようにどこから見ても、いわゆる笠の形をしているが、私は雲の平や水晶岳からの笠ケ岳が独立峰のごとく聳えて見え、好きである。
その後、笠新道から笠ケ岳に登っているが記録が無く、笠ケ岳山頂での槍ケ岳穂先の少し左からの御来光の写真だけが残っている。私はどちらかといえばきちょうめんな性格で、山の記録などはきちんと書いて残すタイプであるが、2度目の笠ケ岳の頃は残業に追われた仕事人間で、寝るために家に帰るだけの生活が続き、無理に連休を取って山に出かけても帰ったあとの整理は何もできなかった。この当時の50回前後の山行は山日記も記録も無く、写真も散乱したままで記憶が薄く、完全に忘れてしまったものも多い。山仲間と昔の話をしながら初めて思い出す山行もかなりある。2度目の笠ケ岳もそんな山行の1ツである。
しかし、私の山行記録には他人に誇れるようなものはないが、その人生の中で、その時・立場で不本意ながら一時的に山から遠ざかるを得なかった山仲間がほとんどであるのに対し、私は仕事が多忙を極めた時でも、親が入院にしていた病院から親を看護しながら仕事場に出勤した時期でも、数は少なくなったものの、山を一年も欠かさずに登り続けたことだけが1ツの記録と思っている。
写真:三俣蓮華岳からの笠が岳
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