私は仕事で月2〜3回、東京に行っていた。東京で時間に余裕があるときには神田の古本屋街の山岳図書、山岳資料を中心とした古本屋の悠久堂書店を覗くことにしている。ある日、深田久弥の「日本百名山」初版16刷があったので早速購入した。
この本のことは勿論知っていたが百名山の内容までは知らず、初めて中を読むと、この時点で百名山中、既に63座を登っていた。日本アルプス、地方の有名な山、山岳雑誌で紹介されていた山等を中心に登っていたが、それらの山々は深田久弥も百名山に挙げているものが多かったのである。残り37座ならば、百名山の完全走破もなんとか達成できそうな気がした。
しかしこれまでは意識して登っていなかったので、この最近5年間では2座しか百名山に登っていない。「日本百名山」を読んで百名山を全部登ってやろうと意識して最初に登ったのが筑波山であった。
田舎物の私は東京都内を車で抜けて筑波まで行く自信が無かったので電車で行くことにして、筑波駅に11:05に着く。バスで筑波神社まで行き、格調高い随神門、神社を見学後、ケーブルカーを使用せずに小雨の中を登り始めたのは12:15になってしまった。展望台や土産物屋が並んでいる頂上鞍部の御幸ガ原に着いたときは、濃いガスで一寸先も見えない状況である。広い関東平野の独立峰である筑波山からは、恐らく何も遮る物の無い素晴しい展望が見られるであろうと期待していたので残念であった。でも、そのためか観光客、登山客も少なく週末にしては静かな御幸ガ原であった。
取りあえずすぐ近くの男体山頂を踏んでからアンテナが林立している場所を通り過ぎて、筑波山で有名なガマ石を見ながら女体山へ行く。女体山からは弁慶七戻り岩などのいろいろな奇岩を見ながら楽しく筑波神社に下山した。
神社から筑波駅まで都合の良い時間帯のバスが無かったので、小雨が降り続く中、駅まで歩くことにした。途中で下から上がってきたバイクが目の前のカーブでスリップして転倒したのには驚いたが、大した怪我はなかったようである。
筑波山は頂上にアンテナが林立して土産物屋が並び、他の百名山とは違って物見遊山的な山である。深田久弥も「筑波山を日本百名山の1つに選んだことに不満な人があるかもしれない。」と書いているが私も疑問を持つ一人である。日本百名山に挙げられていない宗教的歴史ある山は数多くある。なぜ、筑波山だけという思いはあるが、関東圏の人達にとっては気軽に自然を実感できる山であることも確かであろう。
その後、東北新幹線の車窓から関東平野の中に立ち上がっている筑波山を見ると、やはり名山かなと思ったりもした。
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