皇海山は深田久弥も書いているようにあまり知られていない山であり、私も日本百名山を読むまではこの山を知らなかった。むしろ子供の頃、読んだり映画を見たりした滝沢馬琴の小説「南総里見八犬伝」の舞台となった庚申山の方に興味があり一度、登りたいと考えていた。皇海山は庚申山の隣の山であることを知り、庚申山荘から往復する計画を立て出発する。
秋の3連休、紅葉の日光いろは坂方面に向かう車で日光清滝の先の細貝入口まで渋滞に巻き込まれる。帰りは7分で通過できたが行きは抜けるのに3時間を要してしまった。そのため登山口の足尾町銀山平に着いたのは15時。ここに車を置いてすぐに歩き出す。
林道を急ぎ足で歩いて一の鳥居登山口に着いたが、ここから薄暗い樹林の中の登山道となる。渋滞のため昼飯抜きとなってしまい力が入らず、仕方なく非常食用のパンを1かけら食べる。秋の早い日没時の暗くなった山道は心細かったが16:50、庚申山荘に到着。
管理人は居ないものの立派な建物で寝具も用意されていた。利用者は料金箱に2000円を入れることになっていたが、それ以上の価値は十分に有る小屋だと思う。夜明け前には森の奥で猿の声がうるさく目を覚ます。寝袋、自炊道具を部屋の角に置き、身軽になって雲1ツない秋晴れの下を勇んで出発する。
山荘のすぐ上から昔、映画で見たような気がする岩壁沿いの道で大胎内や岩小屋などと命名された地形を楽しみながら登る。紅葉は上の方は今が盛りであるが全山燃えるという程ではなく、東北地方の山の紅葉を見慣れた目には少し物足りなさを感じてしまった。
庚申山頂は木に囲まれて展望は無いが、少し先の展望台からはこれから行く鋸山、皇海山が大きく見える。しかし距離は長く、かなり時間がかかりそうなので先を急ぐ。鋸山まで鋸11峰と言われ、それぞれ名前の付いた痩せた尾根のピークの登り下りは結構厳しい。
鋸山からは、これをまた登り返すのかと思うと嫌になるほど急な下り。樹林帯の中の皇海山頂は平凡な山頂で少し、がっかりした。庚申山方面から見た皇海山はどっしりとした風格を感じさせたがが、実際に登ってみると面白味がない。私ならば百名山に入れるのは躊躇してしまうような山であった。
帰りは鋸山まで登り返してから六林班峠経由で庚申山荘に戻る。峠までの道は熊笹で覆われて分かりにくい箇所が数カ所あったが、往路の緊張しながら歩いた道と違い、紅葉を楽しみながらのんびりと歩くことができた。
山荘近くになるとまた猿の声が頻繁に聞こえる。荷を纏めて山荘から銀山平に戻る途中、実際に猿が2回、姿を現し、ここは俺たちの縄張りだと木の上から私を威嚇する。庚申山はまさに申(猿)の山であった。
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