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2014年11月01日 10:33私と百名山全体に公開

私と百名山 100.宮之浦岳(1935m)2002年10月13日

 百名山の最後の山は宮之浦岳にしようと残り20座位になったときから決めていた。北海道の残り三座をこの年の8月に登り、いよいよ宮之浦岳だけとなった。そして10月の連休に宮之浦岳に向かった。しかし出発するまでが大変であった。会社で私の部門の中期経営計画案を翌日中に社長に提出しなければならない。翌日、山に行くために休暇を取っているので本日中に作成する必要がある。各部長に指示していた資料が出揃ったのは21時、それから生産・技術・営業部門間の整合性を付き合わせ、資料の形に纏まったのは朝の4時半過ぎになっていた。急いで家に帰り山の仕度をして朝1番の新幹線で東京・羽田に慌ただしく出発した。
 コースは荒川口から入り、縄文杉を見て、新高塚小屋に泊まり翌日、永田岳、宮之浦岳を登り花乃江河から淀川口に下山するコースに決めている。
 翌朝、タクシーを呼び、弁当とパンの売っている店に連れて行ってもらい2日分の食料を準備する。途中、猿の一団が道を占拠していて警笛を鳴らしながら走る。運転手の話では屋久島では人の数よりも猿や鹿の数の方が多いとのことであった。
 荒川登山口は小さな島とは思えない山深さを感じさせた。マイカー、レンタカーも多く駐車している。運転手さんに翌日の14時半に淀川登山口に迎えを予約してから出発。
雨がしとしと降っていて、雨具を着ようか迷ったが取りあえず傘をさして、屋久杉を伐採し運び出すために作られたトロッコ軌道を歩き出す。軌道には時々、猿と鹿が現れたが鹿は1〜2mくらいまで近づいても逃げない。本当に鹿と猿は多かった。
 三代杉付近までくると大きな古い杉や木株、こけむした朽ちた杉などが目に付くようになる。大株歩道入り口で軌道から分かれ本格的な登山道となった。翁杉は大きすぎて前の広場からはビデオに収まりきれない。ウィルソン株では団体さんと一緒になり、今まで一人、太古の雰囲気を味わいながら歩いていたのが急ににぎやかになった。株の中は空洞になっていて10畳ほどの広さがあり、その大きさに驚嘆する。
 団体を先にやるためにここで昼食とした。雨が本降りになってきたので傘をたたんで雨具を着る。木の階段を登って行くと大王杉、夫婦杉など名前の付いている巨木杉が見られるがそれ以外にも巨木な杉ばかりで歴史を刻んだこれらの木を目の前にして感動しっぱなしであった。
 縄文杉は根の保護のため、かなり離れた所に柵が施され、展望台からしか見ることができない。確かに縄文杉には風格を感じ、素晴しい感動を覚えたが、私はどちらかと言うと直接手で触ることができた翁杉や大王杉のほうが太古の息吹を感じて感激した。
 縄文杉の騒がしさを後にして、静かな登山道をこの日の宿泊予定の新高塚小屋まで行く。小屋に着いたのは13:40で早いためか7〜8人しか居なかった。次第に混み始め小屋に入りきれなくなり、軒先に寝袋を広げている人も出てきた。窓の外は青空が広がり夜になると星がまばたいており、明日が楽しみで気持が高ぶってくるのを、持参した日本酒で静めてから寝る。
翌朝、雲1ツ無い快晴である。早く出発したかったがトイレが行列で30分待ちのため、出発は6:20となってしまった。日が昇ってきてこけむした太古の林が赤く染まる中を一人で歩くのは心躍るものがあり感激していたら突然、女性の悲鳴のような猿の鳴き声で驚かされる。
林の中の第1展望台に出ると、朝日の当たった宮之浦岳、永田岳を初めて眺めることができ一人悦に入る。このパノラマを見たら興奮してどうしてもピッチが早くなる。
平石岩屋の岩の上からの、目の前の宮之浦岳と好対照の大岩の重なり合った永田岳の景色も気に入った。熊野三差路に荷物を置いて空身で永田岳を往復する。40分で頂上に着くと誰もおらず、目の前の最後の百名山の宮之浦岳をじっくりと眺める。
 三差路に戻り、宮之浦岳への最後の登りを1歩1歩、うれしさをかみしめながら登る。山頂には10人前後の人が休んでいた。日本百名山完登と書いた紙を出して回りの人にビデオを撮ってもらい収まる。
「1ケ月に35日、雨が降る」と言われる屋久島でこの日のような快晴の日に百名山達成の日を迎えることができたことは、山の神が私を導いてくれたおかげと感謝する。いや、もう一人にも感謝しなければならない。標高100山、日本百名山を達成できたのも連れ合いのおかげである。私の認知症の両親の面倒、子供の面倒を見ながら、時にはけんかをし、嫌みを言いながらも私の我儘を許して笑顔で毎回、送り出してくれた連れ合いが居たからこそ達成できたのであり、ただ頭を下げて感謝・感謝である。私はなんと幸せ者かと思った。
 山頂はいつの間にか私一人になっていた。一人の山頂で日本百名山を達成した喜び、感激よりもこれでピークハンティング的な山登りから開放されて、本来の私好みの山に登れるなと考えていた。
 翌朝、1番の船に乗り、電車、飛行機と連絡は良く、富士宮の家には16時30分に帰ることができた。すぐに工場に行き、本社の社長と連絡を取り、屋久島に行く日の早朝に提出した中期経営計画案を社長の意向を加味して手直しをし、22時近くに第1次案としてまとめ関係者にメールで送る。
家で酒を飲みながら連れ合いに感謝しつつゆっくりと百名山達成の余韻を楽しむことはできなかったが、これで私の山の1ツの目標が終わった。       完
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コメント

RE: 私と百名山 100.宮之浦岳(1935m)2002年10月13日
長い間楽しませていただきありがとうございました。
自分の登った時のことを思い出しながら、いつも読んでいました。(多くは忘れていたことばかりでしたが。)
最後、奥さんへの感謝の気持ちを述べたこと良かったです。やはり周りが理解してくれないことには山登りは出来ませんからね、これからも。
2014/11/1 10:56
RE: 私と百名山 100.宮之浦岳(1935m)2002年10月13日
toshiさん、有難うございます。
連れ合いも子供が小学校の時までは一緒に槍や穂高にも登っていましたが、その後は私の親の介護などで遠ざかってしまいました。両親が亡くなった後にまた山に引っ張り出しましたが最近は歳で行く気がないようです。
連れ合いが許してくれたから52年間、ずっと山に登り続けることができたと感謝しています。
2014/11/2 11:20
RE: 私と百名山 100.宮之浦岳(1935m)2002年10月13日
 100編に渡る大仕事、お疲れ様でした。
 “ピークハンティング的な山登りから開放されて”が妙に納得できたのは、1座1座を丁寧に登られている様子が、今までの文章から滲み出ていたからだと思います。ですので、fujinohideさんの百名山は、作業的なピークハンティングとは全く違うという感想です。謙遜されての“ピークハンティング的な山登り”と受け止めました。
 かく言う私も雑に登ってしまうときがありますので、たとえ100mの山でも、喜びと感謝をもって歩きたいと願っています。では、次のチャレンジも楽しみにしています!
2014/11/1 21:22
RE: 私と百名山 100.宮之浦岳(1935m)2002年10月13日
ittaさんの家族を大切にしながら、日頃の山への打ち込みようは素晴らしいものがあり感心しています。
百名山マニアにはただ単に山頂に立てば良しとする人も見受けられます。私も最後はそれに近い感じでその山を楽しむよりも登った実績のみを追求し、その過程を無視し、楽なルートで山頂に立つことばかりを考えていました。せっかくの山ですからその山を十分に楽しみながら登りたいと、やっと最近考えられるようになりました。
2014/11/2 11:31
RE: 私と百名山 100.宮之浦岳(1935m)2002年10月13日
fujinohideさんの私と百名山完結しましたね。私もずっと拝見させてもらっていました。初期の頃の日記はまだ読んでいませんので少しづつ読ませていただきますネ。
山へは私一人で行っている気になっていましたが私も家族への感謝の気持ちを忘れずにいこうと再認しました。
2014/11/1 21:31
RE: 私と百名山 100.宮之浦岳(1935m)2002年10月13日
Johnnnyさん、いつも読んでいただきありがとうございます。
日頃からJohnnnyさんも家族を大切にされていることが記録からも良く判ります。
一社会人として家庭、仕事をしっかり守ってこそ、皆から理解され山を楽しむことができると思っています。
お互いに家族に感謝しつつ、永く山を楽しみましょう。
2014/11/2 11:37
RE: 私と百名山 100.宮之浦岳(1935m)2002年10月13日
fujinohide さま

記録と記憶
何れもご自身のものですね。
私も自分なりの記録と記憶を作ってゆきたいと。
さらに精進致しましょう。

ittaさんおっしゃる通り、次のチャレンンジ
2014/11/1 23:14
RE: 私と百名山 100.宮之浦岳(1935m)2002年10月13日
芋さん、ありがとうございます。
私はどちらかと言えば几帳面なほうで記録、山日記をつけていますが52年の山歴の中で新婚当時と、仕事が超多忙の期間の7〜8年間ほど記録のみ、ひどいものは記録も残っていない山もあります。
その山については記憶を便りに書きましたが書くことがなく字数を合わせるのに苦労しました。
2014/11/2 11:44
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