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聞きなれない言葉だが、この言葉を知ったのは、ニューヨークに行ってAvenuQ(アヴェニューキュー) というブロードウェイミュージカルを見た時だ。
セサミストリートの人形製作スタッフが参加した、まあ、あんな感じのパペットミュージカルで、濃いめのキャラがなんとも可愛らしい歌と踊りで物語を綴るのだが、セサミと大きく違うのは『R指定』というところである。
((((;゚Д゚)))))))
ダメ人間たちが集まるアパートの話で、差別用語が飛び交い、パペット同士の♡♡♡なシーンまである、抱腹絶倒のブラックコメディなのだが、あえてタブーやみんなが目をそらしたがる物事に光を当て、笑いで物事の本質に気づかせてくれるような歌は底抜けに明るく、最後は感動して涙が出るようなパワフルな作品だ。トニー賞にて最優秀ミュージカル作品賞を含む3部門受賞した名作である。
セサミストリートのパロディで、『さあ単語を勉強しましょう!』とカラフルなかわいいアルファベットで単語が示されるシーンがあるのだが、そこで出てきた単語が
『Schadenfreude/シャーデンフロイデ』
である。
まあ知っている人は、『何を言い出すんだお前は!?』というような意味なのだが・・・。
その意味は劇中の歌と踊りで説明されるのだが、ここはせっかくのヤマレコである。山を舞台にした話で上演してみよう。
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空飛ぶテントの話 〜 シャーデンフロイデ😜
以前ゴールデンウィークに雪の涸沢に行ったときの話である。このときは本格的な雪山登山とか考えておらず、単に雪の穂高を見に行くだけで、涸沢にテントを張ってその辺りを散歩するような計画だった。
涸沢は残雪期にもかかわらず人は多い。別に山頂まで行かなくても穂高の素晴らしい景色が見れるし、超本格的な雪山装備がなくても涸沢までなら登れるのも理由の1つであろう。
涸沢のテント場は穂高の山から強い風が吹き下ろしてくるので、みんな山側に防風壁をしっかりと作るのだが、中には身長くらいまでの立派なものを作っている人もいる。一体どれだけ時間をかけたのだろうという力作だ。ただうまく場所取りができれば場合はそう言う立派な方々の『力作』を拝借することができ、大変な省エネ効果が得られる。
私は、登山は計画をかなりキチンと立てるほうで、現地情報などはかなり収集する方だが、更に輪をかけて『悪知恵が働くヤツ』である。この時はまず一泊目を横尾で泊まり、次の日に涸沢に早く着き、前任者の『力作』を拝借することを企んでいた。
この作戦は功を奏し、中々立派に仕上がっていた暴風壁のある区画を見つけ、雪のレンガをあとチョット積んだだけで完成させた。まあ初めての雪山テント泊だったし、ちょっとくらい大目に見てもらってもいいだろう。
食事も終わって、のんびりくつろいでいた時だった。すぐ近くで「あっ!テントが飛んだ!!」という叫び声が聞こえた。
外に出てみると、私の2つくらい山側の区画にはってあったテントがなくなっている。どうもそこのテントが飛ばされたらしい。主はテントだけ張って荷物も入れずに小屋の方に出かけたらしく、そこにはザックが寂しそうに残されていた。みんなが見ている方を見てみると、涸沢の谷の方にちょうどテントが『ふわーっ』と飛んで行ってところであった。
だがその光景は実に優雅で美しく、感動的ですらあった。
真っ白に、広大に広がる涸沢の谷を
テントがゆーーーーっくりと
音もなく回転しながら、バウンドしては空に舞い、コローン・・・コローン・・・と
どこまでも・・どこまでも・・転がっていく・・・
それは実に詩的でありながら、そしてどこか滑稽でもあった。私はついつい見とれてしまい、谷底に消えて見えなくなるまで、しばらく見つづけていた。
実は私も2回ほど飛ばされたことがある。一回目は何処かの稜線上のテント場で、朝撤収する時に荷物をテントから出し、さあ畳もうかと思った矢先に、30mほどフッ飛ばされた。
ペグは打てるところ全てに打ち込んでいたのだが、テントが強風に煽られると風上側のペグが一本ずつ『すぽーん!』『すぽーん!』と吹っ飛び、『ふわっ』と斜めに持ち上がると、そのままなし崩しに残りのペグが『すぽぽぽ』と抜け、それらを撒き散らしながら一気に空中に舞った。
そのシーンを詳細に覚えているところを見ると、どうも何もせず『ぼーっ』と観察していたらしい。『はっ』と気づいてダッシュして慌てて取りに行った。
また、北八ヶ岳の冬の黒百合平で100m近く吹っ飛ばされた時なんかはギャラリーが大勢いたので大道芸人さながらであった。テントを華麗に飛行させただけでなく、木に引っかかったテントの下でカエルのごとくピョンピョンとび跳ねる様はまさに『柳に蛙』で、非常に滑稽であったろう。
その時、届くかな?届くかな?と心の中で『微笑みながら応援してくれた方』がもしいたら、ありがとう!
さて涸沢の話に戻るが、私も『大先輩』として、テントを飛ばされた気持ちは痛いほどわかりつつも『後輩』が戻ってきたらどんな反応をするだろうという、『いけないワクワク感』を少なからず感じてしまっていた。
しばらくして本人が帰ってきた時は、案の定そのありえないシチュエーションに硬直していた。誰かが『下に転がってったよ』と教えると、あわてて、谷の方に急いで降りていった。と言ってももう見えないところまで転がってしまっていたのだが・・・
しかしなんと!ちょうど上がってきた登山者が無事回収して上がってきてくれたのだ!めでたしめでたしである。
ふふふ、よかったね!(^_−)−☆
さて肝心の
『Schadenfreude/シャーデンフロイデ』
の意味であるが、
『他人の不幸は蜜の味』である。
タブーな感情ではあるが、その存在を認め、ほどほどに付き合えば、人生に活力を与えるものでもあるのだよ!
と言うのがAvenueQからのメッセージ。
お楽しみいただけましたか?😜
以下のリンクはAvenueQの『シャーデンフロイデ』の楽曲の一部である。興味がありましたらどうぞ!
https://www.youtube.com/watch?v=QcCk7wjfgtc
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