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『おこられる』
という機会もなかなか無い。
山だと特に少ない。私はグループ山行をほとんどしないし、やったとしてもリーダーをやらされるので、どちらかと言えば怒る側の立場に立たされてしまう。
だが、3年ほど前から雪山を初めたので、
ボチボチ人からおこられもするようにもなった。
ちなみにワタクシ、自分で言うのも何だが、
『人に習うのめんどくさ〜〜』
『自分で考えて試す、だ〜〜いすき!』
と言う、
ま、典型的な独学タイプだ。
昔、仲間とスノーハイクにいった時なんか、自分たちで竹を曲げて『ワカン』を作っていたし、
(雪の上をバッチリ歩けた)
古い自転車のペダルを靴底にくくりつけて『コレはアイゼンだ!』と豪語していた仲間もいた。
(凍結した道路で一瞬にしてコケた)
そんな性格も相まり、初級の程度の雪山は、書籍を読んだり練習して技術を身につけて登っていた。
しかしそのレベルの雪山も決して多くはない。すぐに登り尽くしてしまう。
『じゃあ次は赤岳でも登りますか〜?』
と言いたいところだが、この辺りに独学の限界を感じた。
精度の高い歩き方や、危険な状況で対処するような技術は、"安全が確保された危険な状況"で人から教えてもらわないと学習しにくいからである。
『人に学ぶ』というのも抵抗があったが、避けては通れぬ道と腹をくくり、受講することにしたのである。
さて、"本番の日"がやってきた。
登頂前日はなんとも気持ちの良い天気で、のんびり宿泊地まで歩いて行けたが、登頂当日は、天気予報が芳しく無い。
ただ講習会は厳しい環境のほうが勉強になるので、それはそれでチャンスだと思っていたのだが・・・
夕食の席で悪天候の話題になった時、
『勉強になるからむしろいいですよね!』
と明るく言い放ったら、みんなに"ドン引き"された。
((((;゚Д゚)))))))
『・・ナニカ、ヘンナコト、イッタカシラ?(汗)』
思いっきり勘違いしていたのが、コレ実は講習会じゃなくてツアーだったのである。
ツアーは"練習"でなく"本番"。そりゃ晴れて欲しいと思うのがフツーである。
ヒョットするとMな人とか思われたかもしれない・・・。
そして登頂当日は、途中でガイドさん1名+参加者3名の小パーティーに分かれ、安全のためアンザイレン(みんなでロープでつなぎあうこと)して、登り始める。
だがしかし・・・ここからは”いろいろな”出来事のオンパレードが始まった。
まず前を歩いてる人の様子がなんだがおかしい。
なんだか、はげしくスリップしながら登っているのである。雪面は40〜50°近くあるものの、雪は柔らかいので爪先を蹴り込んで登れば苦労はしない。だが「フツー」にあるいてしまっているため、滑りまくっているのだ。
歩くごとにスリップして私の顔面に向かってアイゼンの鋭い12本爪が蹴り出される!
これは、なかなか怖いゾ・・・
『ネコパンチ』どころではない。滑り落ちてきて『ドロップキック』でも喰らおうものなら体に穴が開くのは確実だ。しかし逃げようにもアンザイレンをしているので離れられない。
ジャブを避けるボクサーのごとく、動きを観察し、いつでも避けられるように身構えていた。
また、あたりを見ると、セルフビレイ(鎖などに命綱をつなぎ、安全を確保する)して休んでいる人の命綱を間違えてつかんで登ろうとしている人がいる。
休憩している人は引きずり降ろされそうになっていて『違う!それロープじゃない!』と悲鳴をあげている。
基本は初心者なので、まぁいろいろやらかすのである。
そんなこんなで『地蔵の頭』と言う主稜線との分岐についたのだが、あたりは真っ白で、強風が吹き荒れていた。しかも予定より時間が遅れているっぽい。
ガイドさんに行きたいかどうか希望を聞かれた。講習会と勘違いしていた私は
『行ってみたいです!』
と素直に答えてしまったのだが、そうしたら『行けるところまで行こう。』ということになった。
だが途中で風が止み、真っ白だった視界は和らぎ、アッサリ山頂に着いてしまう。
(と言っても30mほどしか視界は効かなく、他の登山者もほとんどいなかった)
他のパーティーはすべて引き返していたので、幸運にも登頂出来た我々は、喜びを分かち合ったのであった。
ここまではよかったのだが、下りでは、さらにさまざまな事態が起こった。
一つは下りの苦手なメンバー(というかウチの相棒だが)がいて、急斜面でしゃがんで降りるのでなかなか進まず、どえらく時間がかかったこと。
もう一つは、よりによって地蔵尾根のナイフリッジ(左右が切れ落ちた綱渡り状態の雪稜)でもう1人がモロに滑落したことである。
ロープで繋がれた私と相棒でそれを食い止めたわけだが、
『練習なしのぶっつけ本番』である。
滑落の衝撃が来るまでえらく長く感じられたことをよく覚えている。
もちろんガイドさんが安全のためアンザイレンのロープの先端を支点に結びつけていたので、問題はなかったとはいえ、
『雪山では、人はこうやって死ぬんだ』
と言うことが、身をもって理解できた。
(この話は一年前の日記に詳しく書いてある)
なんとか這い上がってきてもらい、やっとこさっとこ安全地帯である小屋まで下ってきた。
『さあもう安心だ・・』
とようやく、みんなホッと一息つけたのであった。
・・・だがしかし!
最後の最後に怖ろしい『ラスボス』が待ち受けていたのである。
それは行者小屋で待ち構えていたツアーリーダーのガイドさんであった!!
無言ではあったが『怒りの炎』が燃えたぎっていた。
我々の『お客さま』としての立場は微塵もなく、怒りの矛先が容赦無く全員に向けられているような気がしてならなかった。
『・・・ボクタチ、ナニカ、ワルイコト、シタカシラ?(汗)』
心当たりがあろうが、なかろうが、問答無用にこちらが悪いと思わせる凄みがある。
ただ、よく考えてみると、悪天候の中突っ込んでいる上に、イロイロな遅れが積み重なり、気づけば予定を超絶オーバーしていたのである。他のパーティはとっくに下山したらしい。
ちなみにこの時点で滑落事件のことはまだバレていない。(汗)
その後、最後尾をついてくるガイドさんの無言のプレッシャーや凄まじく、その時のメンバーはおのおの自分の過ちを振り返って反省したり、人のせいにしていただろう。
私は地蔵尾根の時点で
『"行きたい"というべきでなかったかのではないだろうか?』
とヒソカに反省していた。
唯一の救いは自分が客であったことだろう。これが部活や山岳会ならブン殴られていたかもしれない。
最後、車で送ってくれるとは言ったが、さすがに気まずく、
『風呂に入りたいので・・・』
と丁重に断った。
メンバーが地蔵尾根で滑落したと知ったら、もはやただごとでは済まなかったかもしれない・・・
後日、ニュースを見ていると、我々が赤岳に登頂した丁度その日に、目と鼻の先の阿弥陀岳で大学生二人が遭難し、亡くなったことが書かれていた。
自分達だけなら遭難する可能性のある天候だったのではないかと改めて考えさせられた。
今思えばあのガイドさんの厳しさは、山の厳しさを鏡に映したもののような気もする。
ちなみに凄腕のガイドさんだったようで、後日、ある作家が海外の山に登ったことを書いた本を読んでいたら、名前が出てきてビックリした。著者をガイドしたらしい。
本の中ではやはりとても厳しい人だったということが書かれていた。
この雪山ツアーからはお釣りがくるくらいさまざまなことを学び、そして考えさせられる、まさに『講習会』であった。
色々な事があったが、非常に大切な経験をさせてもらったと思っている。
他の雪山チャレンジ日記を読む
www.yamareco.com/modules/diary/36225-category-6
cajaroaさん、今晩は。
『おこられる』で思い出しましたが、6月に槍ヶ岳登山ツアーに参加した時の事です。
二泊三日のツアーで、最終日の下山の時に、ガイドさんと私以外の参加者2名は、歩くペースが速くてしんどくてしんどくて、明神館で休憩した際に、一緒に参加した知り合いに「ちょっとしんどいから、ここから一人でゆっくり帰るとガイドさんに伝えようかと」と話したら、「ダラダラ歩いていたら駄目よ」と言われました😢
彼女は、さっさと帰りたいタイプで、逆に私は下りの帰り道ほど、ゆっくり歩きたい方なので、「やっぱり一人がいい」と思ったものです。
下山中もガイドさんより先を歩いたり、「ペース速すぎます❓」と何故かガイドさんに聞いていました( ゚д゚)
まぁ、彼女はガイドさんと仲が良いので、友達感覚で話しかけたと思いますが、ガイドさんも「いや、大丈夫だよ」って返事してました😲
私の存在は何処へやらでした・・・😂
ak0211さん
こんばんは
集団山行だと、ペースが合わなくて苦労しますよね。
下山するとき、例のガイドさんが、
参加者の一人を電車に間に合わせるために
『少し急ぐよ』
と先頭をきって下っていったのですが、
これが早い早い・・・ついていくのがやっとでした。
しかもノーアイゼンで・・・
また、ツアーや講習会を受けていて思うのは、
なんだかんだ言って、技術の高い人の方が、発言力や存在感があるのかも、、、
て思います。
ガイドさんも人の子で、結構そういう人に引っ張られたりする様子は
よく見かけます。(笑)
でも、もうちょっとみんなに気遣ってほしいなーと思うこともありますよね(笑)
いつも読んでいただいてありがとうございます!
cajaroaさん、こんばんは☽
なんだか手に汗を握るような感じで読まさせていただきました。
そうですよね、山は舐めてはいけない、厳しい場所であるという事をわきまえないと…という教訓なのでょうか…
とはいっても、ガチガチの体育会系のノリばかりですと、やっぱり楽しくないですし…(なんて言ってるから駄目なのかしら…?)
山歩きは、別に訓練でもないし、各々がそれぞれの楽しみ方、ペースで歩くのが一番かと思う一方、命にかかわる場合はそんな、アマちゃんじゃいけないでしょうね…そこの見極めが難しいですね。
でも、そこそこ厳しい条件でもない山歩きのツアーで「なんだかんだ言って、技術の高い人の方が、発言力や存在感があるのかも」ということで、その方に合わせなくてはいけないのはちょっとって思います。
むしろ、技術の一番低い人に合わせないといけないような気がするんですけどね…
(自分、その部類なもんでして…)
machagonさん
こんにちは
私もツアーや講習会に参加するのはここ一、二年なのですが、
初めての人って、何を聞いていいか分からなかったりして言いづらかったりする上、技術の高い人に気遅れしてしまったりするんですよね。
そこをフォローしてくれる方とそうでない方はやはりいらっしゃいます。
今回のケースだと、実は怖いツアーリーダーのガイドさんが前者で、パーティに分かれた時のガイドさんが後者だと思うのです。
技術のないメンバーもいるのだから突っ込むべきではない。『まあ仕方ないよね。』と引返すいうのが本来のGoodStoryな訳で、
『山頂に行きたい』と言ってしまった私と、それに引きずられてしまったガイドさんは実は良くありません。
ただ一方で、厳冬期の赤岳を登る技術のない人(ドロップキック=滑落した方)を参加させているツアー自体にも問題があります。
あの滑落は必然的なもので、歩行技術の不足か、ゴーグルを曇らせてしまい視界が失われていたか(曇らせないのは命に関わる大切な技術)と考えています。
ツアーの常連さんとその厳しいガイドさんの噂話を色々話していたのですが、衝撃的だったのは、ずいぶん丸くなったと言う話と、雪中キャンプの時にはワイングラスを持ってくるなんてステキなこともするらしく、
『あの厳しい〇〇さんが、ビックリしましたよ』
なんて話をしていました。
まさに、楽しむことと、命に関わることの見極めの難しさの中にいるのだろうなと思いました。
それでもやっぱコエーなーと思います。
天気が違えばまた違ったのかもしれませんが
努力が必要なこともありますが
基本的には山は楽しむものだと私も思います。
そういう意味で『私は楽しんでいます』と言えることは物凄いことなのだと思います。
こんばんは。面白い日記、楽しませていただいております
それにしても、ツアーだからと言って、キックステップもできない人が参加するって、そういう非常識はなんとかならないものでしょうか。
私自身、隊長として、結構、マジ切れしておりますが
ちなみに、私は個人的に、クライミングの練習などもしております。興味があれば、どうぞ
http://www.yamareco.com/modules/yr_plan/detail-194235.html
NYAAさん こんばんは
はじめまして。
コメントありがとうございます。
そのツアー自体、信頼ならないものではなさそうなのですが、直接ツアー会社に申し込んだ場合と、山道具店からの申し込みのルートによって、山行歴の入力がスキップされてしまう場合があって、チェック漏れが起こってしまっている様子が伺えました。
ただ、仮に山行歴がわかったとして、判断できるかというと、そうでもなく、
(その方、以前冬季赤岳にツアーで登ったことがあったようです。)
参加の可否はお互いに注意しないと、今回のような事態に陥るのであろうと感じます。
技術の不足によってどんなに危険が潜んでいたとしても、ほとんどの場合、偶然成功してしまうことの方が多いと思うのですが、その成功体験で、本人が『それでいい』と思ってしまうのはやはり危険ですよね。
私の場合はある意味偏りのない(逆の意味で極端かもしれませんが)見方ができてよかったのではないかと思っています。
クライミングの練習のご紹介ありがとうございます。
ただ、現在、外岩に出ることを目的とした一連の講習会を受講しておりまして、まあ、マイペースでやっていこうかと思います。
そういえば思い出したのですが、先日裏妙義に行った時にNYAAさんのレコを参考にさせていただきました。また、カラビナがうまく鎖にかからず、後で買おうと思った時も、NYAAさんのレコに、鎖に入るカラビナとそうでないカラビナの対比の写真がアップされてましたので、非常に参考になりました。
いろいろ勉強させていただいております!
大変な長文ですが、読んでいただいてありがとうございました!
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