雑誌に小さな子供が深田氏の日本百名山を完登したことが載っていた。
すごいことだとは思うが、私には素直に受け取れない。
もう20年以上前になるが、正月休みに北鎌へ行ったことがある。もちろん北アルプスの槍ヶ岳北鎌尾根である。千天出合の手前で一組の親子パーティに追いついた。父親とまだ小学生位の女の子である。僕らが追いついたとき、彼女は雪の急斜面を登れなくて、泣きながらもがいていた。父親はなかなか登ってこない娘に苛ついているせいか、上から罵声を浴びせている。なんとか彼女が父親の所までたどり着くと、あろうことか、父親は彼女を殴り倒し、斜面にけり落としたのである。彼女は激しく泣きながら、また父親の所まで這い上ろうとしていた。たぶん、まだ10歳くらいの女の子が、冬の北アルプスの山中で泣きながら、必死に雪の斜面を登っているのである。
僕らは唖然として声も出なかった。僕らが凍りついたのは寒さだけではない。しかし、ここで立ち止まっていてもしょうがないので、僕らも登り始めた。父親の脇を通り過ぎる時、僕は「あのー」と声をかけた。彼は険しい顔をして「なんだ!」と言って僕を睨んだ。なにか意見されると思ったのだろう。彼女が泣きながら登っているときに、ゴーグルを落としていた。僕は落としたゴーグルを拾っていたので、それを黙って差し出した。彼は険しい顔を少し和らげ、お礼の言葉を短く言った。
僕らはしばらく無言で登っていた。暗い気分だったのは天気が良くなかったせいだけじゃない。北鎌は登りきったが、最後まで楽しい気分にはなれなかった。
後日、山の雑誌に小学生の娘と冬の北鎌を登ったという投稿記事が載っていた。親子で楽しく登ったというようなことが書いてあったと思う。
彼女も今は立派な大人になっているはずだ。いまでも山を登っているのかどうか、知りたいような気がする。
アンコタさんこんにちは
親の愛情というか情念にはさまざまな形がありますね。時代に流行らない形だったり、良かれと思って裏目に出たり。何年も経ってから意外に価値を感じたり。
こどもは辛い思いをしたほうが良いのか悪いのか?それもよくわかりません。辛い思いをしなくても何かを学ぶ方法はありそうだし、しかし辛い思いからしか学べない事もありそうだし。わざわざ辛い思いをしなくても人生はそもそも辛かったり?
こどもは親を選べないし、親もこどものときは親を選べなかった。
その時代のその年齢の親子なら、親は山でシゴかれて登った世代かもしれませんね。こどもに対しては人の心はより純度が高い形で表出すると思います。
印象的な北鎌尾根でしたね。山で滅多に人に会いませんが、あえば印象的な人が多いですね。暗い気持ちに覆われた北鎌でも、それはそれで外に無い北鎌かも。
その女の子はその後、どうなったか。20年なんてあっという間ですね。
yoneyamaさん、コメントありがとうございます。
この経験が少女にどのように働いたかは興味のあるところです。
私が言いたいのは、冬の北鎌は小学生が登るところではないということです。
父親は雑誌に投稿して自慢したかったのでしょうか。それなら子供にとって、この登山は迷惑以外のなにものでもありません。
山が嫌いになってもおかしくありません。
年齢の低い子が、高い山、難しい山に登ったかを自慢しているようなレコをみかけることがあります。
まだ精神的にも肉体的にも発達過程にある子供には、それに適した登山があると思います。
親がその山に行きたいからと、自分の都合で子供を連れて行くのは危険です。ましてや自慢するためだったらなおさらです。
子供が小さければそれに合わせた登山をして、年齢が上がるにつれてステップアップすれば良いのではないでしょうか。
今でもあの光景は鮮明に覚えています。女の子より私の方がトラウマになっているかもしれません。
ankotaさん、はじめまして
我が子を千尋の谷へと突き落とすような事が本当にあったのですね・・・・・
百名山の記事は私も拝見しました。雑誌に投稿するのはいかがなものかとも思いましたがヤマレコで記録上げるのも大差ない行為ですね。
百名山、一日一座としても百日、目指す山に効率よくステップアップして登るにはその1.5倍くらいは登る必要があるでしょう。
目的はなんであれ100日以上、親子で共に汗を流す濃密な時間は何物にも代え難い貴重な時間ではないかと最近感じています。
子供の将来にとって大した実利がないかもしれない登山に多大な労力を投入する壮絶なムダなのでしょうか・・・同じ労力を野球やサッカーやゴルフなどに注げばそこそこの選手になれるかもしれませんが、それで良いのか・・・よく判りません。
ただ、百名山終わった後の親子関係がどのように展開していくのか、親は気をつけるべきでしょうし、登山で起こりうる医学的な問題には細心の注意が必要だと考えます。
幸いなことに愚息は困難に打ち勝ち歩く楽しさに目覚め、家族で過ごすお山を今のところは楽しんでくれているようです。
また個人的なことですが、以前に私たち親子の記録を見て同じコースを歩いた親子連れが日没ヘッデン下山ということがありました。以後、子供を連れて歩き始めた頃を思い出しながら厳しいところは厳しいと書くなど気を遣っているつもりです。自分たちの記録を見て遭難されたら良い気持ちしないものですから。
長々と失礼しました。
1955さん、コメント有難うございます。
少女が父親に蹴られた時、小さな体が一瞬宙に浮いた光景は信じ難いものでした。
今でも悩むのですが、あの行為は私たちに、父親自身の厳しさを見せつけるためにやったのではないかと。もし、私達がいなかったら、父親はあそこまでしなかったんじゃないかと。本当に分かりません。
是非ともお子さんと楽しい登山を続けて下さい。
ankota さんこんばんは
子供には笑顔でいてほしいですね
父親のシゴキ方に女の子への愛情が感じられたら
そんなに暗い気持ちにはならなかったのではないですか?
子供にとって唯一自分を守ってくれる人から
虐待を受けて泣いているように感じられ
心が痛くなったのではないでしょうか?
私も日記を読んでて
とても辛い気持ちになりました
子供大好きなので
もし母親だったら
子供に貼り付いて離れないかも?
父親は時として厳しい先生になることが
あるかも知れないけど
やり過ぎはだめですよね?
子供を優しく包み込む母親になって
そういう父親がいたら
しっかりストッパーになります!p(^-^)q
度々すいません
>もし、私達がいなかったら〜
確かにそのように考えてしまうと、トラウマになりますよね。
では、その場で何か出来ることがあったのか?
お山に限らず、似たような状況に置かれた時にankotaさんがどのようになさるか・・・
今となってはその女の子が父親を乗り越えて立派な女性になって居ると信じようではありませんか。
偉そうなこと書きたてた失礼、お許しください。
itigpさん、御無沙汰です。
自分が小さいときは体罰が当たり前だったので、体罰イコール愛情なしとは思わないのですが、なんせ目撃した場所が場所だったからビックリしたんです。冬の北鎌は経験を積まなければいけない所に小学生がいたんですから。
itigoさんの日記も拝見させていただいています。症状がなかなかとれず大変でしょうが、明るく前向きな方のようで安心しています。
1955さん、ご意見ありがとうございます。
たしかに、あの時自分になにができたか、もし、今あのような状況に遭遇したらどうするか。
結局は見て見ぬふりをするだろうと思います。
辛いことも、気持ちの持ちようで、良い方向に向います。あの少女も、今りっぱにやっていることと信じます。
本当にありがとうございました。
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