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2022年08月23日 19:49山の価値観全体に公開

登山靴のあり方について今一度考える。

その昔。
私が高校生の頃、登山靴といえば革の重登山靴かトレッキングシューズくらいしか選択肢がありませんでした。
当時それほど道具にお金も注ぎ込めませんでしたので
表面が革で出来た安いトレッキングシューズにオイルを塗りたくって防水処理をしていたことを覚えています。

それから徐々にゴアテックスを使った靴が出回るようになり、
やがてトレランシューズの出現により登山靴の選択肢は大幅に広がりました。
それに伴い、昨今登山靴に関する価値観も人それぞれ千差万別となり
靴については皆さんそれぞれ意見をお持ちのことと思います。

本日の日記は、そんな登山靴に対する私の独断と偏見でお送りいたします。


まず登山靴の議論になると必ず争点に挙がるのが『重量』ですが
不思議なことに『そんなに重い靴が嫌なら裸足で歩けばいいじゃない』とは誰も言いません。
それもそのはず、我々素人が山を裸足で歩けばケガをすることなど誰の目にも明らかだからです。
つまり我々は重さ云々以前に『靴は足を護る道具である』ということを本能的には理解していることになります。

前回の日記で山道具の重量は何かとトレードオフの関係にあるという話をしましたが
https://www.yamareco.com/modules/diary/664242-detail-277487
登山靴の場合、重量とトレードオフの関係にあるのは『足の保護性能』です。
繰り返しますが、『登山靴は重量増と引き換えに足を護る性能を発揮する道具』です。
重さは『安全』に対する対価であって『足かせ』ではありません。

この前提を誤ると議論がおかしなことになるのですが、
近年、靴を語る上でどうにも『軽い』や『楽』といった要素が前面に出てきているように感じます。
個人的にスピードハイクは好きなので軽さの魅力はよくわかりますが…
それらは決して安全を担保してくれるものではありません。
元来靴というのは前述したとおり『足を護る』ことを目的として使うわけですから、
最も考慮すべきは安全性だったはずです。

しかしトレランシューズが登山靴と並んで選択肢に挙がるようになった事が、議論をより複雑化させています。
何故ならばトレランシューズは
『速く走るために安全マージンを削って軽量化した靴』であり
『安全に歩くために相応の重量を受け入れた靴』である登山靴とはスタンスが真逆だからです。

具体的に言えば登山靴派の人は
(山を安全に歩くには)トレランシューズのように安全マージンを削った靴は危険
一方でトレランシューズ派の人は
(山を速く走るには)登山靴のような重い靴は不要

というように、双方目的が違うのですから議論がかみ合うはずがないのです。
これら2つのコンセプトが異なる靴が同じ土俵に上がり
『登山靴の正解はどっちだ?』という議論が行われているのですから平行線を辿るのも当然の事だと思います。


正直、私個人としては足が護れるなら登山靴でもトレランシューズでも
あるいはスニーカーでも、地下足袋でも、長靴でも、冬靴でも好きなものを履いて構わないと思っています。
ただし、それらを人に勧めるかと言われれば話が違います。

極論を言えば、世の中には裸足で山を歩ける人もいるのでしょう。
だからといって、その人が他の登山者に対して『裸足で歩くの超おすすめ』とはならないはずです。
仮に裸足で歩ける人がいたとして、それはあくまでのその人の技量がそれを可能としているだけのこと。
結局何をどう履いて安全か否かは履く人の技量に依存しているのです。
靴自体はあくまでも安全マージンを提供しているに過ぎません。

現在私の山行のおよそ半分はトレランシューズです。
ですが私自身トレランシューズが登山靴の最適解だなどとは全く思っていません。

実際私はトレランシューズを様々なシチュエーションで使用してきました。
20kg超の荷物を背負って北アルプスでテント泊をしてみたこともあります。
その時は見事に足指と指の付け根を捻挫しました。
つま先をぶつけて爪が割れたことも、内出血で真っ黒になったこともあります。
それは単純に私の足運びが雑だったり、使うシチュエーションを誤ったという話なのでしょうが
逆に言えば同様のことは誰にでも起こり得ます。
トレランシューズが危険な靴とは言いません。
かといって自信を持って安全を担保できるほど信頼感のある靴とも思いません。

よって私は
『自分自身はトレランシューズを使うが、人には勧めない』
というスタンスです。

やはり安全マージンについては、本人が自分の実力と経験を考慮し、自ら熟考した上で答えを出すべきだと思います。
その上で、自分が十分と思うのであれば山を裸足で歩くのも良いでしょうw
誰の目も気にする必要はありません。


最後に
近年保護性能を高めたトレランシューズも増えている印象です。
特に足裏防御性を高めた厚底靴や、つま先周辺を手厚く護る構造の靴を目にする機会も増えました。
足裏や指先、爪などをもっと保護したいという声があったのかもしれません。
私のように実際にケガをした人が多かったのかもしれません。
いずれにしても選択肢が増えるのは喜ばしい事です。

しかし靴を選ぶ前に今一度思い出してください。
靴の要素は『軽さ』『楽さ』『快適さ』だけではありません。
『安全性』についても考慮した上で靴選びをしてみてはいかがでしょうか?
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コメント

こんばんは。
同感ですネ。
私自身は現在の山行スタイルはトレラン主体なのでトレランシューズ履いてますが、テント泊装備を背負ってアルプス縦走するなら登山靴履いていきます。
2022/8/23 20:18
off_roaderさん、こんばんは。
コメントありがとうございます!
百の頂があれば百通りの道があるわけですから、私もoff_roaderさん同様、ひとつの靴にこだわらず状況に合った靴を使い分ければよいのかな?と思います。
2022/8/23 20:28
こんばんは。はじめまして。
同感です。
私もトレランシューズ(ゲルフジですが)で登山をしていますが、状況によって使い分けています。
過去に地元の山でトレランシューズ履いて荷重トレーニング(20kg)した事がありますが、あれは辛かったです。柔らかく踏ん張りも効かず、重心も安定しづらく、かえって負担でした。
先日は先行者の踏み外したこぶしほどの石が転がって爪先に当たり(勢いはなかったので大丈夫だろうと過信したせいもあり)、しばらく悶絶( ;∀;)
私的には軽装でのトレランシューズ。トレーニング&近場で1〜2泊用のトレッキング。高山の残雪期〜夏山(縦走テン泊含む)用のライトアルパイン。厳冬期用のアルパイン。
最近は何でもウルトラライトがもてはやされている感じがありますが、
目的地の季節や環境によっての見極めと使い分けは大切ですね。
もっともテント場のサンダルに関しては軽さ優先ですが(^o^;)
2022/8/23 22:49
yoshipon0410さん、おはようございます。
コメントありがとうございます!
トレランシューズで実際に体験された方あるあるだと思いますが
重量が15kgを超えたあたりから、体勢崩した際や不安定な場所に足を置いた際のバランス補正がほとんど機能しなくなりますよね。
結果的に下半身(主に足の可動部)に負荷がかかり私の場合足指の捻挫に繋がりました。

ULも良いのですが、盲目的に軽さを求めて思考停止してしまうと、yoshipon0410さんの仰る通り『目的地の季節や環境によっての見極め』という重要な要素を考える機会を失ってしまうように思います。
まぁトレランシューズを履き始めると、1足で全てを賄えるような気分になってしまうんですけどねw 結果的には多くの人が『ケースバイケースで使い分ける』という結論に落ち着いているような気がします。
2022/8/24 5:07
分かりやすい説明ありがとうございます。私は学生時代の部活で足首を酷使した人間。ハイキングにもミドルカット、ハイカットが良さそうです。周りではローカットで颯爽、という方々も増えてきてますが。
2022/8/24 12:25
shizuma0920さん、こんばんは。
コメントありがとうございます!
近年『ハイカットは捻挫防止に効果がない』などと言われることが増えましたが
むしろ急な運動(ランニング)でもない限り下手に足首が動くことは百害あって一利なしと思いますので、ハイカットで適度に足首固定しながら歩くのが良いと思います♪
2022/8/24 18:22
はじめまして。コメント失礼します。

軽さの極論のところを拝見して思い出したのですが、以前とある山で(浅草岳のムジナ沢カッチ周辺だったか、とにかくかなりヤセ尾根やガレ場も連続してある足元も悪いコースでしたが)ビーチサンダルのような極端な足元の方とすれ違って驚いたことがあります。
荷物もそれなり背負ってらっしゃいましたしテン場や小屋などもない山中なのでサンダルスタイルには驚きましたが、山慣れしている雰囲気でいつもそのスタイルといった感じだったので驚きつつもそのまま背中を見送りました。

ただまあ極論、昔の人は草履でどこでも歩いてたし山伏の人たちに至っては一本足の下駄で歩いていたわけで、歩けないわけではないのでしょう。

安全性とトレードオフというお話がとてもわかりやすく、極論安全性を一切捨てればビーチサンダルでも歩けないわけではないわけですよね。
私はかたくて重たくミドルカットかハイカットの登山靴派ですが、それも渡渉箇所が安心とか蹴躓いたときに指先が痛くないとか荒れた道でも楽だとかそういう理由であって、まあ極端な話私はそっちのほうが重さを差し引いても快適だからなんですよね。

なのでローカット派とハイカット派で喧々諤々の議論を見かけますが、まあ別に本人が安全性や快適性と軽さや歩きやすさを天秤にかけてバランスを判断して決めればいいのでどっちが正解というものもないと思います。

そういったことがなんとなくそれがうまく言語化できなかったのですがこの日記拝見してもうまさにそういうことだよな、と思ってコメント失礼しました。
2022/8/24 15:08
ciao0318さん、こんばんは。
コメントありがとうございます!
サンダルとはこれまた目を疑う光景ではありますが…サンダルで安全に歩けるならその方にとっては最適解だったのでしょうね、実際足の蒸れとは無縁でしょうしw
重装備にサンダル、それでいて安全に歩ける技術、余程足運びがお上手なんでしょうね。
むしろ羨ましいですよ、見習いたいくらい。

現代人は最低限靴に足を護ってもらわねば街中を歩くことすらままならないわけですが、ciao0318さんの仰る通り昔の人達は今のような丈夫な靴はなかったわけですし、現在でも山岳民族の方達の中には普段から裸足で生活してるかたもおられるでしょう。
彼らからすれば登山靴なんて重くて邪魔なものかもしれません。

結局は『人それぞれ』
軽さに快適さを感じる人もいれば、重くても護られていることに快適さを感じる人もいるわけですから正解なんてものは無いに等しいのだと思います。
別に誰が何を履いて山を登ろうが自由なのですから、
敢えて自分を正当化する必要も、他者を貶める必要もないと思うのですが、その手の議論が絶えないのはいつの世も変わりませんね。

日記の内容に共感していただけたようで嬉しいです。
ダラダラと長くなってしまいましたが、書いた甲斐がありました♪
2022/8/24 18:55
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