【賀茂川と高野川の分水嶺を辿る (三)下流域 +泉川水系を辿る】の補足

2023年08月05日 22:36道全体に公開

【賀茂川と高野川の分水嶺を辿る (三)下流域 +泉川水系を辿る】の補足

このページは、山行記録【賀茂川と高野川の分水嶺を辿る (三)下流域 +泉川水系を辿る】（ https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-5793439.html
）の補足です

泉川水系と第二疏水分線・疏水分線については、山行記録【松ヶ崎/下鴨泉川水系前川談所川タテ川】（ https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-5800350.html
）に書きました

（3-2）下流域の分水嶺に付いて
　予定ルートを作成していて、初めは何も考えずに、上流からたどってきた分水嶺をそのまま延長していた。そして松ヶ崎の東山～城山まで線を引いて、そこで困惑した。
　これより先、下流域には山がないので稜線がない。こんな単純なことが初めはのみこめず、GPS（ヤマレコアプリ）の標高表示を見ながら、高野川と加茂川の間を行ったり来たりした。標高の高い所を探したのだが、高いどころか、どこも川の土手より低かった（山行記録の写真1）。賀茂川は極端じゃないが天井川と言っても良い。
　山歩きで、尾根を下ってきて、川の股に挟まれて尾根が終わる。これは普通にあるパターン。その後、そのまま谷道になる場合もあれば、左右どちらかの尾根に上る場合もあるだろう。だが、（私が歩く程度の短いルートでは？）そのまま谷筋を下る事がよくある。
　そこで、分水嶺がなくなった後は、逆に標高の低い所を歩く事にした。問題は、分水嶺尾根はどこで終わっているのかだ。
　地理院地図（電子国土）に、断面図を作成する機能がある。松ヶ崎付近のかなり山地寄り（北寄り）の、新宮神社の南付近で東西の線を引いて断面図を作ると、新宮神社の鼻先が最も標高が低い（山行記録の写真2）。一方で、その少し北、新宮神社の後ろで断面図を作ると、当然ながら新宮神社の北側が最も標高が高い（山行記録の写真3）。それなら、その北にある林山から新宮神社を経て南下しようか。林山から新宮神社へ直接降りられるだろうか。等高線からすると降りられてもおかしくないと思った。
　別の面から分水嶺尾根はどこで終わっているのかを考える。尾根の左側の水が高野川に流れ、右側の水が賀茂川に流れていれば、その尾根は確実に分水嶺だと言える。この点からの考察はこの「（3-2）下流域の分水嶺に付いて」の末尾に書く。
　断面図を作る際に、京都盆地が南北に細長いことから、感覚的にまっすぐ東西に切って断面を見たが、完全に合理的だとは言い切れない。東寄りから流れ込む高野川より西寄りからの賀茂川の流水量が多いので、少し右を上にあげた斜めの方が正しいかも知れない。右を上げて行くと尾根先端は松ヶ崎の東山の南の尾根になる（山行記録の写真4）。分水嶺の尾根を辿ってくると最後は東山の北の尾根（城山の北の尾根）か東山の南の尾根に到達する。そこは泉川水系の起点でもあるので、「東山→泉川水系→鴨川デルタ」なども良いような気がするが、林山から新宮神社を経て南下する方が面白そうなので今回はそうした。
　話が前後してしまったが、泉川(いずみかわ)水系と言う一連の川がある（山行記録の写真6、但し写真6は現在ではなく、昔の水路図）。山端橋西詰（宝ヶ池子供の楽園入口前）の井出ヶ鼻井堰で高野川から取水された高野川分流で、幹線水路は上流では前川と言うが、その後、今海道川、泉川と名前を変える（この説明は一般的なものですが、山行記録の写真6とは少し違っています）。北部の支流の樋ノ上川は、その後、談所川と名前を変えて松ヶ崎小学校のグランド南側を流れて、新宮神社の南で前川に注いで終わる。北山通の少し北から南下する支流はタテ川と言う。タテ川の流路は資料がないので、先日実地調査した。（実情は判ったが、歴史的な本来の流路ではない可能性もある。）
　前川は泉川幹線水路ともばれ、本流は前川や今海道川、泉川で、これらを含めて幹線水路全体を泉川と書いている事が多い。単に泉川と表示されている水路図も前川や今海道川を含んで描かれている。また泉川水系前川とも言われる。前川はその後今海道川と名前を変え（多分、今海道町の区間＝松ヶ崎駅付近～松賀茂児童公園付近）、その後、泉川となって最後は下鴨神社の中を流れ、高野川と賀茂川の合流直前に高野川に戻される。
　それまで井出ヶ鼻井堰の下流で取水していた一乗寺村（高野川右岸）が、石川丈山の肝いりで1673年に井出ヶ鼻井堰の上手に太田井堰（水路は太田川と言う）を作り、ここの取水が増えると井出ヶ鼻井堰ではわずかしか取水できなくなり、1677年から1842年の間に多くの争いが奉行所に持ち込まれている。北浦溜池（のちに寶池、宝ヶ池）も1763年（江戸時代中期）に松ヶ崎が水源として整備した溜池で、宝ヶ池一帯の山地は上高野（旧高野村）や山端(やまばな)ではなく松ヶ崎の各町（宝ヶ池は松ケ崎北裏町）になる。宝ヶ池の水をどうやって松ヶ崎に流したのだろうか。現在も同じで、まず岩倉川に放流する。すると岩倉川は太田井堰より下手の山端橋で高野川に合流する。その水をすぐ下手の井出ヶ鼻井堰で取水する。
　また明神川(みょうじんがわ)と言う川がある。本流は西賀茂橋上手(かみて)の明神井堰で賀茂川から取水し、それより北の志久呂橋付近の毛穴井(けあない)井出で賀茂川から取水（昭和10年以後～現在はさらに上流の柊野砂防堰堤から取水）した毛穴井用水路（毛穴井水路、毛穴井川とも呼ぶ）や蟻ヶ池（阿礼ヶ池）・小池からの御手洗川(みたらしがわ)の水を合わせ、上賀茂神社を通った後、一部を放水路に流す。社家の間を流れ、さらに菖蒲園川を分流する。その後、農業用水になって上賀茂用水路と名前が変わり、現在は北山大橋付近で賀茂川に戻される。上賀茂橋と北山大橋付近で賀茂川に戻されるとも言う。あるいは、疎水分線にそそいで終わっているとも言う。諸説あるが、上賀茂用水路が枝分れしているからじゃないだろうか。放水路は御園橋下手(しもて)で賀茂川に流れ込む。菖蒲園川は植物園の中を流れて、北大路橋付近で鴨川に戻されている。（しかし、上賀茂用水路が北山大橋付近で賀茂川に流れ込もうとすると、菖蒲園川と交差するではないか！）＊　井出＝井堰です。
　以上は現在の流れで、昔の水路図では明神川は分流も含めて最後はすべて泉川にそそいでいる（山行記録の写真5）。明治大正期あたりまでは泉川にそそいでいたが、その流路は現在消失しているという（痕跡がどこかにないだろうか！）。要するに、上賀茂、下鴨の水はすべて最終的には泉川に集まっていた。これは標高からすると自然な流路だ。
　下山地点の新宮神社の62m先を、この泉川幹線水路の前川が流れているので、新宮神社から後は泉川本流に沿って行く。泉川が第2疎水分線と平面交差するという胡散臭い光景も見られる。
　先ほどの「尾根の左側の水が高野川に流れ、右側の水が賀茂川に流れていれば、その尾根は確実に分水嶺だと言える。」の続きだが、今書いたように志久呂橋付近で取水する毛穴井用水路の水は明神川を経て、大正時代までは泉川を通って高野川に流れ込んでいた。神山から産業大学西側に下山する場合にバス通りまでに山口池、枯池、西側に大池、前池などいくつもの池があるが（溜池か？）、これらの水は多分毛穴井用水路に注いでいる。すると大正時代までは高野川に注いでいた訳で、原峠が分水嶺ではなくなってしまう。明神川や前川のような人工河川（用水路）は考慮外でも良いと思うが、一点の曇りもなく分水嶺と言えるのは神山の山頂辺りまでだろう。
＊参考文献（一部）：
松ヶ崎学区（旧） > 2012 松ヶ崎エコ学区プラン(案): https://kyoto-machisen.jp/chiiki_hp/matsugasaki_hp/top-ecogakku/pdf/20120128gakushukai2.pdf
松ヶ崎学区（旧） > 松ヶ崎の歴史・史跡 > : http://kyoto-machisen.jp/chiiki_hp/matsugasaki_hp/history/history.htm#mizu
松ヶ崎学区ホームページ（新） > 各種団体の紹介 > 京都市左京消防団　松ヶ崎分団 > トピックス > 2020年9月6日（日）松ケ崎消防分団は台風に備え泉川水系前川と井出ヶ鼻水門で水利調査（警防）と水災訓練を行いました。（前川分岐口の場所が特定できる写真がある）: http://kyoto-matsugasaki.com/archives/3216/
京都府トップページ > インフラ > 公共事業・一般 > 鴨川真発見記＜253から258＞（毛穴井用水路はウエブ記事が少ないが、こちらに詳しく書かれている）: https://www.pref.kyoto.jp/shinhakken/12345701.html
）
京都風光 > 前川・松ヶ崎　(京都市左京区): https://kyotofukoh.jp/report91.html
京都市都市計画情報検索システム（地理院地図電子国土Webにない標高点や地名がある）: https://keikan-gis.city.kyoto.lg.jp/kyotogis/webgis/index.php/autologin_jswebgis?ap=jsWebGIS&m=2&x=4172893.6164785093&y=15112633.25308125&u=chikeizu
きょうのまなざし > 京都の寅年の山虎ノ背山（虎山、虎の背山）干支の山（このページからリンクのある各ページも参照）: https://www.kyotocity.net/diary/2019/0324-kyoto-toradosinoyama/
親水紀行 > 京都の親水 > 明神川と泉川: http://waterside.fc2web.com/k4.html

（4）区間ごとの説明
【原峠→P194.7 →P221.1 →本山】
　原峠南側からは市街地に近い山地あるいは市街化調整区域や市街地に入り、かなり難儀な事になる。原峠→P194.7 →P221.1 →本山の稜線が賀茂川と高野川の分水嶺だが、この区間は通れない。
　市街地に近い山地等は地価は安く交通は比較的便利だ。山林や市街化調整区域であってもゴルフ場や大学・学校の学舎やグラウンド、福祉施設等のための開発は許可ざれ易いと思われる。（ここのゴルフ場は敗戦後に進駐米軍の指示で作られたのが起源で、市街化調整区域などと言う制度もなかった時代。）原峠南側の市街化区域第一種中高層住居専用地域に、産業大学の教室を含む主要な施設がある。原峠南側の産大以外の地域は市街化調整区域。
　京都産業大学から賀茂川側には、次に京都カントリークラブ上賀茂コース（ゴルフ場）があり、その次に上賀茂神社がある。それぞれの間には隙間がなく、山地にはアクセス出来ない。カントリークラブには断り無く立入可能な接続道などがあるので、可能な範囲は調べたが、ゴルフコースに遮られて山地にはアクセス出来なかった。結局、二葉姫稲荷神社西側まで山地にアクセス出来ない。二葉姫稲荷神社西側は立入禁止が明示されていないが、柵で立入りが阻害してある。柵の意図を推測する責務はないので通行可能だが、微妙な感じ。
　次に、京都産業大学から長代川・高野川側。こちらは馬頭観音峠を通る鞍馬街道＋原峠を通る鞍馬街道（代表的な鞍馬街道）＋両者をショートカットする新道で囲まれている。（※鞍馬街道と呼ばれる道は幾つもある。）これらの道路と山地との間に多少の住宅地などがあり、山裾が直接見られない所もあるが、京都産業大学から次に大学共同利用機関法人人間文化研究機構総合地球環境学研究所（いわゆる地球研）があり、その次に京都大学農学部北山試験地の京都大学フィールド科学教育研究センター、その次に京都大学演習林がある。以前は京大内にあった地球研は、現在は組織としては京大に所属していないが、以上は元々ひと続きの京都大学演習林だ。さらに、南側山裾は京都工芸繊維大学上賀茂用地の京都工芸繊維大学付属農場（京都工芸繊維大学エコフィールド）も続いている。京都工芸繊維大学エコフィールドは管理不行届きで柵に切目があるが、入り込むと袋小路になるので注意。
　京都工芸繊維大学エコフィールドは、ちょうど今日の本山への取付の右手で終わっている。つまり、今日の本山への取付より北（北東）からは山地に入れない。
　また、実際に本山に行ってみると、西側はネット。北東の方から本山まで京大のネットが続き、南の谷は何か怪しいが、進む事が出来てもいずれゴルフ場にぶつかってしまう。本山の山頂には東（東南）からしか出入り出来ないことは一目瞭然だと思う。
【頼光橋→本山→馬頭観音峠】
　以上の様な事情で原峠→本山の分水嶺尾根は通れない。
　そこで、どこかからまず本山 P230 (P228.9) に行き、その後はほぼ分水嶺の尾根を辿り、P226.5、P約208※を経て馬頭観音峠へ降りる。（※ P約208は、地理院地図(電子国土右クリック)でP約205。京都市の地図では山頂から少し外れた所に標高点207.4mがあるが、山頂は2m間隔の等高線で208m以上∧210m未満にある。）　
　本山まではどこからでもよいと思うが、今回はできるだけ標高の低い所を通らずに行ってみた。（二葉姫稲荷神社西側からのルートでは獣避けネットの障害があったが、今になって回避できる見込みになったので、二葉姫稲荷神社西側からの方が標高の低い所を通らないと思う。詳細は未検討＆未調査。）
【馬頭観音峠→ケシ山→檜峠】
　ケシ山から檜峠側に降りておられる方は峠の最高点付近に降りておられるが、私だと降りるというより落ちるので、南に降りる。しかし、分水嶺の尾根と言う点では最高点に降りるべきだ。途中では地理院地図の破線の道が良い状態で残っているが、柵があって地図通りには降りられない。そもそも地図の道は公道に接続せずに家の裏（の作業小屋の裏）終わっている。今回降りた南の下山地点は今後の宅地開発や整備で通れなくなる可能性がある。地理院地図の破線の道は途中から西に分岐して下山するルートも記されているが、今回は目的地から離れてしまうので未確認。馬頭観音峠南側の町内会掲示板に「ケシ山にダニ異常発生」の告知があったので、このルートも通れるのかも知れない。
【檜峠→高山→万灯籠山】
　2023年03月17日の山行記録（ https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-5276475.html ）で「高山→ちんこ山→西山→万灯籠山」を歩いたが、今回は「ちんこ山→西山」を通る必要がないので、「高山→万灯籠山」間は道ではない所を歩いて直行した。直行と言っても、間に松ヶ崎浄水場の施設・フェンスがあるので、これを避けて歩くには遠回りを強いられるが、歩き易いルートで可能な限り近道した。
【万灯籠山→狐子坂(南側)】
　山行記録にはないように思われる松﨑山涌泉寺の墓地を上段から下段まで通るルートで下山した。このお寺はここより少し東の松ヶ崎大黒点の西隣にあり、後で通る新宮神社と関係がある。
【狐子坂→林山→新宮神社】
　狐子坂は狐坂とも書き、いずれも読みは「きつねざか」。
　新宮神社は「大比叡大明神」として創建。松ヶ崎にあった歓喜寺は日蓮宗への改宗に伴い妙泉寺と改称し、同時期に松ヶ崎村民も日蓮宗へ改宗し、これらに伴い大比叡大明神は妙泉寺の鎮守社となり、神事は僧侶が行った。同時期、新宮大明神を勧請した。村民は改宗に伴い神輿をドンドコ山の山中に埋め、「御神輿塚」「経塚」「数珠塚」と称したという。ドンドコ山は新宮神社から涌泉寺にかけての裏山と言う。とすると「林山」ではないか（もしくは、もう少し広い範囲を指す言葉かも知れない）。多分その南面だろうし、今日歩いた所だ。大比叡大明神はのちに「明神社」と呼ばれ、明治政府の神仏分離令後、1868年に妙泉寺から独立し「白鬚神社(しらひげじんじゃ)」となった。1887年に「新宮神社」に改称した。妙泉寺は松ヶ崎檀林「本涌寺」と1918年5月に合併し「涌泉寺」に改称した。松ヶ崎壇林本涌寺跡に涌泉寺があり、妙泉寺跡は小学校になっていて、寺の石垣と塀が残されている。万灯籠山からの下山の時に通った墓場は涌泉寺の墓地だった。※ 檀林は日蓮宗における僧侶養成のための学問所で、松ヶ崎檀林がその第一号。
　狐子坂の峠の北側すぐにある宝ヶ池公園の入口から、右側の尾根を登るとすぐにP143.3に達する。そのまま進めば間もなく林山 P171 (P170.6) が道の左に少しへっこんである。
　そこから南の尾根を下って新宮神社、と言いたいがどう見ても南は尾根じゃない。まあ良いか。やや傾斜がきつく、かさかさした落ち葉が堆積していてやや滑りやすいが、適当な大きさの木が適当な間隔で生えているので、特に難儀もせず安全に下る事ができる（個人的な評価）。とは言え、私は徐行してのろかった。この斜面の下半分にはほとんど消えているが幅のやたら広い道の痕跡がある様に、私には見えた（ゴミが落ってたからそう見えたのか？）。「御神輿塚」「経塚」「数珠塚」等があるかも知れない範囲内であり、何かあるだろうか。
【新宮神社→泉川幹線水路（前川→今海道川→泉川）→鴨川デルタ】
　新宮神社から南は山がないので分水嶺は無い。代わりに泉川水系の現在本流とされている流れに沿って歩く。町中(まちなか)歩きになり、分岐多数。「前川→今海道川→泉川」はまとめて「泉川」と書かれている事が多い。（写真が多くなったので、泉川幹線水路の物はほとんど割愛した。）

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