「死の記憶」
トマス・H・クック 著
佐藤和彦 訳
■あらすじ
時雨の降る午後、9歳のスティーヴは家族を失った。父が母と兄姉を射殺し、そのまま失踪したのだ。
あれから35年、事件を顧みることはなかった。しかし、ひとりの女の出現から、薄膜を剥ぐように記憶が次々と甦ってくる。隠されていた記憶が物語る、幸せな家族が崩壊した真相の恐ろしさ。クックしか書きえない、追憶が招く悲劇。
■感想
読後感は最高に重い。家族を殺す話なのだから重いのは当然としても、、、こんなに救いがたい結末が待っているなんて、想像していなかった。
重いのにも関わらず、読み終わった後の充実感がある。それは、かなり集中して一気にまとめて読めてしまうからだろう。少しずつ少しずつ主人公が記憶をたどり、新たな事実を発見しては、子供時代の家族に分析を加えていく描写は、読者もどっぷりひきこんでしまう。私も序盤部分はあいた時間にちょこっとずつ読んでいたが、後半に入ると、先が知りたくて先が知りたくて、一気にラストまでよみきった。
そしてズーンlllllll orz
そんな本だ。読書に集中できた爽快感もあるけれど。
この本を読んで気がついたことがある。人の認識の違いだ。
amazonへのURLのあとの記述は少々ネタバレになるので、嫌な人は読まないでください。
この本は重いし、再度読みたいとは思えそうにないにも関わらず、まだブックオフに売れない。
■amazonサイトはこちら
http://www.amazon.co.jp/%E6%AD%BB%E3%81%AE%E8%A8%98%E6%86%B6-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%83%88%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%83%BBH-%E3%82%AF%E3%83%83%E3%82%AF/dp/4167254425
------ネタネタバレばれ注意報発令中------
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父親は家出をするつもりだった。
そのことについて主人公は後年母や兄のことは考えなかったのかと問う。
父はこう答えた。
「気にしないだろうと思った」
気にしないだろうと思った。
いかに父が家族の中で疎まれていようと、
自らが報われず、存在価値などないのだと思っていたとしても、
行方をくらました時、気にしないわけはない。
気にしないどころか、父親はうらまれ、非難され、悪者にされるだろう。
家族を捨てたという点で。
家出以前に父が粗略に扱われていた点は、まったく考慮されず。
父にしてみれば、恨まれるとは思っていない。
苦難を乗り切る最善の策だとさえ思うかもしれない。
家族の失踪が、実は、「私がいなくなっても気にしないだろう」
という認識の下にたっていた。
この認識の違い。
この本は、読み終わっても手放せない。
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