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そこで本書を手に取りました。
私たちが白い虹を見たのはツアー客が体調不良を越し始めた日本庭園であり、ツアー当時と同じように北沼の水があふれ登山道を洗っていました。
「防寒具にしろ雨具にしろ誰しもがひととおりしっかりしたものを持っていたようである。」という記述が示すように「ひととおり」「しっかり」「ようである。」と抽象的推測の域を超えていない。
具体的に、一人一人がそのときどのような材質の衣服、雨具をどの順番できて、フードを被っていたのか、雨帽子を被っていたのか、手袋は、スパッツは、ストックを持った時袖口が上を向くほど長かったのか、(ストックを使うと袖口から肘にかけて雨が浸透し易い。)雨具の裾は靴に被っていたのか、荷物の重さ、雨具の経年(撥水性の有無)を詳細に取材してほしかった。
少なくとも「低体温症と事故の教訓」と副題を付ける以上は。
同様に「生還者の証言でも、衣服は濡れていなかったという人が何人かいる。死亡者も同様であったとすれば、低体温症が主要因は寒さと風」とあるが、なにを根拠に「死亡者も同様」と仮説を立てるのであろうか。
知りたいことは死亡した登山者と生還した登山者の違いである。
個体差で片付けるのではなく、具体的な違いを発見してほしかった。
死亡した登山者のデータがほとんど得られていないのは残念であり、今後の課題と思う。
ひさご沼からの雪の斜面をアイゼンをつけなければ登れないようなツアー客を15人も引き連れて、熾烈な風雨の中を歩かせ、そして風の通り道である北沼分岐の鞍部に長時間足止めをさせたツアー会社の企画に、再び参加する当事者に違和感を覚えます。
全体の展開は羽根田氏、サブガイドの山崎氏へのインタビュー、気象遭難は飯田氏、低体温症は金田氏、運動生理学は山本氏という構成です。そしてまとめとしてツアー登山について最後に羽根田氏が記述します。
寒さを我慢しすぎて「あれ、」と思った経験のある人は再確認の意味で、ツアー登山をする方には勿論おすすめです。
遭難記は情緒的に読みがちですが、本書から読み取るべきテーマはツアー(旅行)登山の問題点と低体温症です。
併せて「トムラウシ山遭難事故調査報告書」ならびに「トムラウシ遭難事故を考える」シンポジウムの資料集配布についてを読まれることをお勧めします。
Webから検索してダウンロードできます。
本書籍は行方不明なので関連資料を掲載しました。
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