まだ世界遺産になる前のお話です。
保育園児の娘二人を連れて一家4人、2泊3日でテントを背負って縄文杉を見に行きました。
楠川歩道から入ったのですが、東屋で登山者に食べ物をねだっているはぐれザルが居ました。少し離れたところに子分サルが居ます。はぐれサルは片手がありません。ボスの争いで敗れたのでしょう。
帰りは小杉谷のトロッコ道を歩いて荒川口に出ました。
途中からは保育園児を見て不憫に思ってくれた樵さんがトロッコに便乗させてくれました。
生涯で最もスリルがあって忘れ得ない乗り物となりました。
さて、タクシーを待っている間に例のはぐれザルが現れました。
私の目の前の倒木の座り、煙草を吸う私を見ています。
私が煙草を吸い終わり、地面に落とし靴底で火を消し、ゴミ袋に回収しようとすると例のサルが歯茎を露わに威嚇します。
私が口にしていたものなので食べられるものと解釈したようです。
「これは食べ物ではないよ。食べたら死んじゃうよ。」と諭しました。
しかし彼は納得しません。
拾おうとすると声を荒げて威嚇します。
「だから、これは食べ物じゃないと言っているでしょう。」と再度諭します。
彼は私に飛びかかろうとします。
私も覚悟を決めました。
野生動物に弱みを見せたら負けです。
多少の怪我をしてもこの登山靴で蹴り上げれば、勝つだろう。
次の瞬間、吸い殻の所有権を主張する彼は私に飛びかかってきました。
私も負けてなるものかと蹴り上げようとしたその瞬間。
なんとサルは空中でくるりとUターンして元の倒木に戻りました。
彼のその表情は負けを認めていました。
離れたところで成り行きを見ていた子分は目をぱちくりさせていました。
私は子どもたちの前で勝ち誇り、吸い殻を回収しました。
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