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ファーストデーで安く映画が観られるので『赤毛のアン』の鑑賞後、フランス映画『秋が来るとき』を観ました。アンは特別興行で1600円均一でしたが、こちらは1300円での鑑賞です。
物語の舞台は現代のフランス、ブルゴーニュ地方。主人公のミシェルは森での散歩に庭での畑仕事、友人とのおしゃべりなどを楽しみながら、悠々自適とした老後の日々を過ごす女性です。パリに住む娘が孫を連れて休暇を過ごしに来るのを何よりの楽しみに、この日も手料理を準備しながら、二人の来訪を心待ちにしていました。……と、こう書くと のどかなカントリーライフを描いた文芸映画のようですが、とある事件をきっかけに物語の雲行きは徐々に怪しくなっていきます。そして導入部の穏やかさからは想像も付かないような衝撃的な展開を迎えます。
人は誰もが秘密や罪を抱えながら生きている。幸せを守るためには、すべてを白日の下にさらすことが、必ずしも正しいとは限らない。そんなメッセージを感じさせられる作品でした。サスペンス的な要素がありながら、決定的な瞬間は描かれず、登場人物たちの言葉も、どこまでが本心なのか、どこまで事実に気づいているのか、あえてぼかされています。えげつない部分もありながら、過度に露悪的な描写は避けて観客に解釈を委ねながら、物語は静かに幕を下ろします。ミステリーとして見ると すっきりしない幕切れなのですが、あえて白黒つけないことが独特の余韻に繋がっていると思います。
「良かれと思ったことが裏目に出ることもある」という友人の言葉に対し、「良かれと思うことが大事よ」と返す主人公。ちょっとだけ、直前に視聴した『赤毛アン』の台詞がオーバーラップしました。とかく、大人の世界では結果や成果でのみ評価が下されがちです。努力が評価されるのは学生のうちだけ、なんてのもよく言われるところです。ですが、仮に結果が伴わなかったとしても、良いことをしようという思いそのものは大切にしていきたい、そんなことを感じさせられた作品でした。
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