八ヶ岳 (百名山64)
- GPS
- 32:00
- 距離
- 13.3km
- 登り
- 1,382m
- 下り
- 1,375m
コースタイム
11月6日(土)
新宿発00:1 茅野着5:38-6:00 美濃戸口6:45-7:00 美濃戸山荘7:45-8:06 行者小屋11:00-11:30 赤岳石室13:40-14:10 赤岳15:00-15:20 赤岳石室15:50
11月7日(日) 晴れ
石室小屋7:30 大鎖取り付き8:00-8:05 横岳9:25-10:00 硫黄石室10:45-11:00 硫黄岳11:35-11:40 赤岳鉱泉分岐12:05-12:10 赤岳鉱泉13:10-13:30 美濃戸山荘14:40-14:55 美濃戸口15:40
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
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写真
感想
八ヶ岳・赤岳と横岳 1990.11.6-7
11月6日(土)
新宿発00:1 茅野着5:38-6:00 美濃戸口6:45-7:00 美濃戸山荘7:45-8:06 行者小屋11:00-11:30 赤岳石室13:40-14:10 赤岳15:00-15:20 赤岳石室15:50
今年の夏に槍ヶ岳と立山・仙人池に登った勢いをかりて、11月の第一週の土日に、初冬の赤岳を計画した。6月に若い福田君と地蔵尾根から石室の道を歩いたので、道に不安はなかった。FACの時代にも八ヶ岳の合宿はあり、冬に阿弥陀岳の東稜を登り、阿弥陀岳の稜線でビバーグして、赤岳と横岳を縦走した記憶がある。このときは3人のリーダーだった。そんな思い出を辿りながら、茅野からの始発バスで美濃戸口に着く。
晴天である。
美濃戸口から林道を行く。朝陽を浴びながら木立が黄金色に光って、秋の深まりをいっそう印象深くする。美濃戸山荘の戸口は閉まっており、営業の気配はない。山荘の前のベンチで二人座って休憩をとる。しばらく休んでから行者小屋へ向う。
この時、山頂の小屋が営業しているかどうかなど考えてもいなかった。
行者小屋への道は感じられたけれど歩きやすい道であった。御前11時になって太陽も高い位置にあって寒さを感じることはなかった。行者小屋からは赤岳や
横岳の稜線がはっきり見えて小屋の高度高いことがわかる。小屋の外で早い昼食をとる。小屋には顔を出さなかった。稜線は雪がついている。軽アイゼンを用意しているので大丈夫だろう。
30分の休憩後に出発。地蔵稜線にとりつく。軽アイゼンを装着させる。岩が凍っていると危険だ。鎖場などがある。かなり登りがきついが、距離は短い。裕子も鎖場を緊張はしているが楽しみながら登っていく。私は写真など撮りながら余裕で登る。高度を稼いで、登りきるとひょっこりと首のない地蔵が出迎えてくれる稜線に出た。いっぺんに視界が広がり、長野側と山梨側の眼下の光景が飛び込んでくる。八ヶ岳の裾野の広さを実感する。
稜線に出ると赤岳も間近に見え石室はもうすぐだ。急な登りから開放されてホッとする。雪の稜線をのんびり歩いて石室の小屋に到着。入口の引き戸をあけて中に入る。
「こんにちは。今日お願いします」
「はい、いらっしゃい」
小屋番が一人。中年の男性だった。
「明日は小屋を閉じようと思っていたんですよ。普段だともっと早く閉めていたんだけど。」
「あれ、閉まっていたら大変だったわ。開いてて良かった。」
「今日はお二人さんだけでしょうね、荷物をおいて休んでください。」
荷物を降ろす。小屋番が窓越しに横岳の方を見ている。
「さきほど学生のパーティが出て行ったんだけど、なかなか進んでいかないね。」
彼らは4,5人のパーティで横岳の岩稜に取り付くところであったが、その動きは遅々としている。
「硫黄にでもテントを張るんだろうか」
小屋番は不安げにつぶやいた。
「彼らは冬山用のプラスチックブーツをはいていたね。」
「高いんでしょう?」
「だと思うけど。」
冬山用のプラスチックブーツは最近話題になってきていた。
窓から横岳に取り付いて動き始めたところが見えた。
お茶など振舞ってもらい、だいぶ落ち着いてから、小屋番さんと一緒に赤岳に上ることにした。小屋番は長靴である。狭い稜線の雪の上を、風もないので気持ちよく歩く。それでも小屋から50分ほどかかった。
山頂からは富士山、南アルプス、など手に取るように見える。秩父の山が神々しく逆光のなかにあった。蓼科や近くの山々、しばらく山頂でこの眺望を堪能する。山頂にはわれわれ3人だけである。赤岳の山頂は意外と狭い。そういえば高校時代に一人で登った県界尾根が眼下に長く延びている。風の音もなく静寂の世界であった。陽も傾きかけてきたので小屋に戻ることにした。初めての雪山に裕子は満足気である。
小屋に戻るとさすが小屋の中は暖かい。小屋番と少し話をする。
「この小屋の持ち主はケチでね、小屋番がしょっちゅう変わるんだよ。」
そういえば、6月に来たときは夫婦だった。
「来年はやるかどうか、わかんねぇな・・・」
と、小屋番がつぶやくように言う。いろいろ問題があるのだろう。
夕方、早めだけど、簡単な盛り合わせのおかずで夕食を済ませる。部屋は別棟の個室をあてがわれたが、火の気がまったくない部屋なので、建物全部が凍りついているようだ。布団も湿って凍り付いているように思える。二人ともほとんど眠れず、寒い一夜をすごす。
11月7日(日) 晴れ
石室小屋7:30 大鎖取り付き8:00-8:05 横岳9:25-10:00 硫黄石室10:45-11:00 硫黄岳11:35-11:40 赤岳鉱泉分岐12:05-12:10 赤岳鉱泉13:10-13:30 美濃戸山荘14:40-14:55 美濃戸口15:40
翌日は御前5時に起床して、小屋番のいる棟に行き、コタツに体を押し込んで体を暖める。朝食をとって遅い出発だった。あまり早く出ても横岳の岩場が凍っていると危険なので、太陽が時間がいい。天気は今日も快晴である。
裕子はコタツで休んだのが効いたのか体調はよさそうだ。横岳の登りに取り付くが岩場の連続で、日陰の部分は凍っている。印象的だったのが横岳の山頂近くで横にトラバースする箇所が暗く陰になっていて緊張する。
「ゆっくり、足元を見て!」と裕子に声を掛ける。裕子にとってはこれもはじめての経験だから、見ているこちらが緊張する。ともかく慎重に横岳の岩場を通過して山頂に着く。
「えらいえらい、怖くなかった?」
「大丈夫だったわ」と裕子。
山頂までだいぶ時間がかかった。山頂を二人で占領してゆっくり展望を楽しみながら、お茶を沸かして一服する。風はないので落ち着いていられる。いいときに来たものだ。赤岳のピラミダルな形が迫って見える。赤岳が70mくらい高いのだが、迫力は赤岳だ。阿弥陀岳の稜線が白く光っている。冬の景色は来たものでしか味わえない。北八ヶ岳方面から蓼科や美しヶ原の眺めは、まるで庭園のように見える。北アルプスはもうまっ白である。その中で常念岳の三角形の形がぬきんでている。槍や穂高も見えている。
「最高だね」
「すごい眺めね」
夫婦へのすばらしいパノラマのプレゼントだ。横岳の緊張から開放されてほっとしたが、これからいよいよ硫黄岳へ向う。硫黄へは緊張する箇所もなく稜線を歩いた。硫黄岳はずんぐりとした山容だが、火山であり、山頂の右半分は火口壁である。裕子と本沢温泉から天狗岳に登ったときに、その削がれた火口壁を遠望した。本座温泉の畳一畳ほどの露天風呂からよく眺められるのだ。
鞍部に立つ赤い屋根の小屋の外で休憩する。小屋番がトイレの掃除をしていた。排泄物を埋める作業だ。冬篭りの準備である。小屋番さんご苦労様と挨拶して硫黄の山頂に向う。硫黄岳は2760mだが、図体が丸いので迫力には欠ける。しかしここにきて風が吹き始めて、かなり強い。山頂は風の吹きさらしの場所で、火口壁を覗き込むなんて危険でできない。
裕子の様子がわるくなった。この風で緊張したのと体が冷えたのかすっかりおとなしくなってしまった。寝不足もあるだろう。早々にこの風を避けるためにも赤岳鉱泉への分岐の道に入る。
山頂からくだりはじめると風を避けることができ、太陽の暖かい日差しを正面から受けて、ポカポカと肌にやさしい。山頂の寒さがうそのようになる。
「どう、気分は」「暖かくなったから、少し落ちつた。風がすごいでしょう。あれでくたびれたわ」
赤岳鉱泉まで一時間下った。
赤岳鉱泉で休憩。ラーメンをつくって遅い昼飯。小屋は営業しているようだけど人影はなかった。猫がいた。
「ここの鉱泉も冬には凍ってしまうんだって。だから正月に鉱泉に入るなんてできないんだって」
「そんなに寒いの?」
「かなり寒いと思うね。でもこの小屋は年中やっているんだと思うよ。冬にも人は入るからね。昔ここでテント張って合宿したからね。」
「ふーん」
そういえばここだっただろうか、行者であったろうか。冬の八ヶ岳の合宿の写真が残っている。
裕子とそんな会話をしながら美濃戸へ下る支度をする。そして午後1時半に鉱泉を出る。冬は確実にやってきている。朝から歩いた稜線を振り返る。いずれ白一色に埋もれてしまうのだろう。林道をひたすら歩いて美濃戸山荘に着く。山荘は営業していて、ここでお茶と漬物をご馳走になった。ここの牛乳がおいしいので裕子にも勧めた。一息ついて美濃戸口に向う。美濃戸口に着いたときタクシーが偶然来たので、それに乗って茅野駅に向う。
11月のはじめ、まだ小屋が営業していると思い込んでいた。まだ山の感覚が戻っていないようだ。小屋が営業していてほんとに良かった、という山行でした。
http://www.youtube.com/user/tabioyaji30?feature=mhum
(YouTube)
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